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特集 脳卒中患者の体力
脳卒中患者の体力評価とスポーツ指導のポイント
著者: 田川豪太1
所属機関: 1横浜市総合リハビリテーションセンター機能訓練室
ページ範囲:P.29 - P.34
文献購入ページに移動我々は障害児者に対するスポーツ指導の最終目標を「QOLの向上」としており,これは脳卒中患者においても全く同様である.この目標を達成する過程は,図1のようにモデル化できるであろう.スポーツの開始が対象者の活動性を高め,それによって体力の向上を図る.同時に「非日常的活動」「競争的活動」「明確な目標」といったスポーツの特性が,どちらかというと依存的になりがちな脳卒中患者の自立性(independency)を高める.更に集団での活動が中心となるスポーツ活動は,社会性の再獲得を促す.そして,適切に動機づけられた対象者は社会参加の機会を増やし,結果としてQOLが向上する.
このモデルは一見すっきりしているが,実は大きな問題を含んでいる.それは対象者がスポーツを開始することを前提としているところである.残念ながら,現状ではリハビリテーション過程のなかで一般にスポーツ指導は行われていない.このためスポーツ活動について,「何ができるか?」
「どのようにするべきか?」「何はしないほうがよいか?」ということについて指導を受けていない脳卒中患者にとって,自由意志に基づくスポーツの実施はかなり困難な状況にある.
そこで横浜市では,総合リハビリテーションセンター(以下,横浜リハセンター)や障害者スポーツ文化センター横浜ラポール(以下,横浜ラポール)において,一貫した脳卒中患者のスポーツ指導を推進してきた.ここでは過去10年間の経験を基に,脳卒中患者のスポーツ指導の実際と指導上のポイント・問題点などについて述べてみたい.
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