小児領域の臨床実習における現状と課題
著者:
萩原利昌
,
石原清
,
園部麻里子
,
小坂久美子
,
各務雅美
,
若山博史
ページ範囲:P.722 - P.728
1.はじめに
NHKが放映したマイケルクライトン監督のドラマ「緊急救命室(ER)」をご存じだろうか.好評をはくし現在もシリーズは継続している.このドラマのなかで,一般外科,血管外科で優秀な成績を収めた外科レジデント医師ピーターベントンが小児外科を選択し,悪戦苦闘の末,スーパーバイザーから適性に問題があると指摘され,小児外科のレジデントから外れるくだりがある.
スーパーバイザーが問題があると指摘した点は,①乳幼児の臓器は成人のそれと比べ形状がまったく異なり,繊細であり,特別な知識が必要であること,②外科手術を問題なく実施できるだけでなく,今後の見通しや家庭での注意事項を親身になって伝え,家族を元気づけること,の2点であった.ドラマのなかでスーパーバイザーが指摘した点は小児領域の医療全体にいえることであり,必然的に小児領域の理学療法にも深く関わってくる問題といえる.
1997年版理学療法白書によると,平成7年時点で,全国に肢体不自由児施設70か所,同・通園施設79か所,重症心身障害児施設78か所が設置されている.このほとんどの施設に理学療法士が配置され,都道府県単位で設置されている子ども病院と併せて相当数の理学療法士が小児領域の理学療法を支えていることになる.また,そのテリトリーも観血的治療を含む入院治療型から,通園・通所による地域療育型まで,かなりの広がりを見せている.このことも,臨床実習生の事前の学習を困難にし,小児領域の理学療法で学生自身につまずきを感じさせる一因になっているものと思われる.
本稿では,地域療育型に属する川崎市地域療育センターの臨床実習の現状について報告し,これをもとに小児領域における臨床実習の課題について考察することとしたい.