アミロイドーシスと理学療法
著者:
山鹿眞紀夫
,
大串幹
,
田中智香
,
高木克公
,
緒方友美
,
福本和仁
,
徳永英世
,
浦田貴絵
,
安東由喜雄
ページ範囲:P.793 - P.798
1.はじめに
アミロイドーシス(amyloidosis)とは,線維状の構造を持つ特異な蛋白であるアミロイド線維(amyloid fibril)を主とするアミロイド物質が,全身または限局した種々の臓器・組織の細胞外に沈着することにより機能障害を引き起こす一連の疾患群である.前者は全身性アミロイドーシス,後者は限局性アミロイドーシスと呼ばれる.従来まれな疾患と考えられてきたが,後述するように日常よくみられる疾患にもアミロイドが関係していることが明らかになってきており,その重要性が再認識されつつある.
1842年Rokitanskyにより初めて記載され,1855年Virchowらにより沈着物がヨードと反応してデンプンと同様に青変することから類デンプン(starch-like)・アミロイドと命名された.その後,骨髄腫に伴うアミロイドーシスの存在が20世紀になり認識され,1950年以降家族性アミロイドポリニューロパシーが,ポルトガル,日本,北アメリカなどで発見報告された.更に,1980年代になり,心房アミロイド,脳アルツハイマー型アミロイド,脳血管アミロイドという老人性アミロイドが注目され,老化や痴呆の病態の一端がアミロイドであることが判明した.また,同じく1980年代には,腎不全患者の血液透析において,導入後5~10年で不可逆的なアミロイド沈着により生じる種々の機能障害が報告されている.
このように,近年の研究の結果アミロイドーシスの概念が幅広く拡がり,意義の深い疾患群であることが明らかとなった.本稿では,アミロイドーシスに関する分子生物学的な最近の知見と,神経症状を呈しリハビリテーション(以下リハ)施行上問題となる家族性アミロイドーシスの臨床症状・所見,リハアプローチ,更に最近話題になっている生体肝臓移植による治療について述べる.