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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル33巻11号

1999年11月発行

文献概要

プログレス

Open Kinetic ChainとClosed Kinetic Chain

著者: 市橋則明1

所属機関: 1京都大学医療技術短期大学部理学療法学科

ページ範囲:P.836 - P.838

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 1.はじめに

 今流行のOpen Kinetic Chain(OKC)とClosed Kinetic Chain(CKC)という表現が,21世紀には使われなくなるかもしれないと言ったら読者は驚かれるだろうか.その理由は,この表現がもつ暖昧さにある.OKCとCKCは1955年にSteindler1)が定義したのが最初であるが,1990年代に入るまでは,CKCの動作などの筋活動や筋力を測定した研究があるにもかかわらず2),このような表現は使われていなかった.CKCとOKCという表現が使われだしたのは1990年代に入ってからで,スポーツ傷害のリハビリテーション,特に前十字靱帯(ACL)損傷再建術後の再建靱帯にかかる負荷が研究されるなかで盛んに使われるようになった.

 SteindlerはOKCとは,連動する関節のうち遠位部の関節が自由に動くことができる場合の運動であり,CKCとは,遠位部の関節の自由な動きが外力により制限されているような場合の運動であると定義している2).しかし,この定義の使用をめぐっては,日本だけでなく世界的にもかなり混乱している.現在の使い方としては,OKCは非荷重位での単関節の動きであり,CKCは荷重位での多関節の動きとしているものがい.具体的には,椅座位で膝を伸展するような運動様式がOKCであり,スクワット動作のように足部を床に接触させ荷重下で膝を伸展するような運動様式がCKCであるとされる.

 しかし,例えばSteindlerがOKCの例として示した手を振る動作は単関節の動きではない.また,レッグプレスのように,荷重位ではなく下肢に負荷をかけて脚を伸展した場合もCKCといえるのか,もし負荷がなければ遠位部の関節が自由に動くということからすればOKCなのか.OKCの代表とされる椅座位からの膝伸展動作も,遠位部に抵抗をかけて等尺性収縮としたらCKCになってしまうのではないか.このように,我々が行っている動作をSteindlerの定義によってOKCとCKCに分けることには無理があり,混乱が生じている.

 このため,新しい定義を作ろうとする試みもいくつか見受けられたが3),“Journal of Orthopaedic Sports Physical Therapy”のチーフエディタであるRichardは,新しい定義を作っても更に混乱を招くだけで,使わないほうが良いとさえ指摘している4).このように,OKCとCKCのもつ意味が不明確なため,本稿では,OKCを椅座位での膝伸展動作,CKCを立位でのスクワット動作および長座位での脚伸展動作(レッグプレス)のみを意味するものと規定して話を進めることとする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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