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連続的他動運動による筋緊張抑制効果について―脳卒中片麻痺における検討
著者: 瀧昌也1 内田成男1 横山明正1 岡島康友1 榊泰輔2 堀内敏夫3 冨田豊3
所属機関: 1慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター 2安川電機つくば研究所 3慶應義塾大学理工学部
ページ範囲:P.921 - P.925
文献購入ページに移動中枢神経障害において出現する痙縮は,正常な運動パターンを阻害し,そのまま放置すれば拘縮・変形・疼痛を引き起こす.更に,痙縮はADL・歩行の自立を阻害する大きな因子となるため,その軽減は理学療法を行う上でも主要な課題と考えられる.痙縮とは,上位運動ニューロン症候で,筋緊張の亢進,深部反射の亢進,クローヌスを伴い,筋の伸張の速さに比例して収縮が強くなる速度依存性収縮(相動性伸長反射)の亢進であり,これにはγ運動ニューロンの機能亢進が関与していると考えられている1-3).痙縮に対する運動療法としては,持続伸張や荷重によるストレッチ効果などが臨床でよく用いられている.この治療の原理は,筋をゆっくりと持続的に伸張することで,Golgi腱器官によるIb抑制が起こり痙縮が抑制されるというものである2,11).
痙縮の定量的評価には,電気生理学的検査(H反射,F波)4,5),腱反射6),振り子テスト7),他動的伸張時の抵抗力・表面筋電図1,8,18)などによる検討が試みられている.実際,前述したような運動療法の痙縮軽減に関する治療効果について定量的評価に基づく検討は過去にいくつか報告されている.辻ら8),Tremblayら18)は,痙性麻痺患者の下腿三頭筋に対して持続伸張を行い,下腿三頭筋抵抗トルク,下腿三頭筋および前脛骨筋の表面筋電図にて痙縮を定量的に評価し,ともに痙縮が減少したと報告している.しかし,連続的な他動運動による痙縮の効果を定量的に評価している報告は少なく,辻ら9)の報告,内田ら10,11)による報告以外に,我々の知る限りでは認められない.
今回我々は,従来のCPM装置を更に発展させた,セラピストによる他動運動を記憶再現できる新しい訓練装置,Therapeutic Exercise Machine(安川電機つくば研究所にて開発中,以下TEM12-14))を用い,下肢の連続的他動運動を実施し,痙縮に対する影響について股関節トルク,積分筋電図を指標として検討を加えたので報告する.
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