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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル33巻4号

1999年04月発行

文献概要

特集 嚥下障害/熱傷

熱傷とスプリント

著者: やさききよし1 長谷川鉄士良2

所属機関: 1医療法人社団嵐川大野中央病院リハビリテーション科 2医療法人社団嵐川大野中央病院

ページ範囲:P.261 - P.267

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 1.はじめに

 人類の手の使用は,その後の生活に様々な変化をもたらした.その1つ「火の使用」は,他の動物に比較すると,食生活を始め,あらゆる分野に多大なる影響を及ぼし,人類が今日の文明社会を築き上げた大きな要因といえる.そして,これは「未完成である人間」に様々な試練を与えることになった.「火の事故」はその1つであり,我々の脳裏には財産を「灰」と化する力を持ち,自らの身体も傷つけるものである「熱傷,やけど」が浮かび上がる.熱傷は,日常生活のなかで常時「熱」を使用することで常に受傷する可能性があり,我々に様々な機能障害をもたらす.

 今回は,熱傷により起こりうる関節運動の障害を,装具・スプリント療法を通じ,予防・改善してゆくにはどのように行うべきかがテーマである.筆者らは直接これらの患者に接することは少ないが,ここで,再びセラピストの立場から熱傷による関節運動の障害の基本的な要因について考えてみたい.

 熱傷は,火を使う我々にとって,「あつい!!」「あチ!!」という言葉とともに,日常生活のなかでいとも簡単に多くの人が受傷する損傷の1つである.我々が日々受傷する熱損傷は,受傷部に発赤をみる1度熱傷が多く,損傷部位を冷却すれば数日のうちに自然に治癒していく.実際,熱による損傷が完全に炭化してしまう4度熱傷まで4段階に分けられる.更に2度熱傷は,その損傷の深さにより浅層・深層の2つに分けられる(図1,次ページ).

 臨床上,我々が非常に苦労するのは,2度熱傷でも深部にわたるものであり,治療訓練時の感染予防,痛みのコントロールから,損傷部位の治癒とともに形成される肥厚性瘢痕(hypertrophic scar)をいかに抑制・改善するかである.この肥厚性瘢痕は,皮膚組織を短縮させることにより様々な障害をもたらす.なかでも,四肢の関節拘縮による運動障害は,日常生活に大きな障害を残すことになる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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