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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル33巻6号

1999年06月発行

雑誌目次

特集 最新・理学療法関連機器

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.385 - P.385

 運動療法,物理療法をはじめとして,我々は日常的に様々な理学療法機器を使用している.最近では,従来にない新しいコンセプトに基づき評価と治療の新たな局面を拓きつつある.そこでこの特集では,これらの機器の原理,新規性,適応と禁忌,実際の症例への適応例を示し,展望についても記述することが目標となった.特にこのような企画の場合,製作メーカーの紹介に終わる恐れがないわけではないので,実際の適応に重点をおき,その長所だけでなく短所あるいは限界にも触れていくこととした.

新しいコンセプトの運動負荷装置―トレッドミルとエルゴメータの展望

著者: 大森豊 ,   山田純生 ,   網本和

ページ範囲:P.387 - P.393

 1.はじめに

 運動を評価したり,治療としてプログラミンクする場合,我々は可動性(mobility),筋力(strength),持久力(endurance),巧緻性(skill)といった運動の要素を思い浮かべる1).運動負荷機器は,それらを客観的に,しかも動的状態の評価を行うために,臨床的に多く用いられている.

 トレッドミルや自転車エルゴメータは,closed kinetic chainによる複合的な関節運動(エルゴメータは純粋にはsemi-closed kinetic chainと言うほうが賢明かもしれない)であり,効率的に運動を行うためには,可動性,筋力,巧緻性のすべてが効率的に統合されていることを必要としている.しかし残念ながら,トレッドミルやエルゴメータでの運動の主な目的は持久力とされる場合がほとんどである.そこで本稿では,ソフトウェアとハードウェアの両面からこれらの負荷機器を,可動性,筋力,巧緻性の考え方をもとに紹介したい.

 トレッドミルの運動負荷量はACSMの式2)で算出される負荷要素(スピードと角度)の増大と身体の負荷量には正の相関がある.しかし,最近開発された下り勾配トレッドミルや水中トレッドミルでは,必ずしもその関係が当てはまるとは限らない3,7,8).また,運動の様式(ストライド歩行,後ろ向き歩行など)によっても,その負荷量は変化を示す4-6).したがって,これらの機器をより有効に利用するためには,その機能的な特徴を明確に把握することが必要となる.

エルゴメータに関しては,市販されている半臥位型のエルゴメータを用いた基礎研究11-14)ならびに臨床応用について述べ,更に半臥位型のエルゴメータによるclosed kinetic chainでの筋力評価の可能性についてまとめてみたい16-20).そして最後に,これらを臨床応用する場合の関係を整理して,運動負荷機器利用に関する考え方を提示する.

物理療法機器―多用途経皮的電気刺激装置ダイナトロン650

著者: 篠原英記

ページ範囲:P.394 - P.401

 1.緒言

 電気刺激療法は,電気の存在が十分に理解されていない古代エジプト時代,ヒポクラテスの時代から,シビレエイなどの発生する電気を用いて治療として用いられてきた1,2).その後,17世紀以降には静電気発生器や蓄電器などが発明され,1744年Kratensteinは麻痺筋を電気刺激して治療した.1791年,Galvaniはカエルの筋に金属を接触させることで筋収縮をおこし,筋生理学の研究を行った.これを契機として,直流断続波形を用いた電気刺激療法機器が開発され,この療法の発展に結びついた3).1831年には,Faradyが電磁誘導による感応電流発生装置を考案し,感応電流療法の元となった4).近年まで,経皮的電気刺激療法としてこれら2つの電流が用いられ,筋萎縮の予防,末梢神経麻痺の回復,そして筋力増強などを目的として行われてきた.しかし,これらの治療法はただ漫然と行われてきたきらいがあり,また,機器そのものの性能にも問題があったため,不十分な結果に終わっている.

 近年,新しい機器の開発と臨床適応に関するさまざまな研究がなされ,障害に応じた電気刺激療法のあり方(利用する波形・周波数・出力・刺激時間・治療時間など)が定まりつつある.本稿では,従来の経皮的電気刺激の問題点,新しく開発された経皮的電気刺激療法の適応とその利用法を読者に供覧する.

在宅における環境制御・コミュニケーション機器

著者: 神沢信行 ,   山嵜敏夫 ,   山下隆昭

ページ範囲:P.402 - P.408

 1.はじめに

 リハビリテーションの場面においては,日常生活活動の自立が目標のひとつとなるが,重度の障害により自立が困難な場合では介護量の軽減をどのように図るかということも重要である.この介護量の軽減を図る方法としては,対象者の日常生活活動能力の向上,介助者への介護方法の指導,機器の導入などがある.

 重度身体障害者が日常生活活動を遂行する上においては,介護者の確保は重要な要素である.介護者は家族である場合がほとんどで,献身的な努力には頭が下がる思いである.しかし,家族の健康などにも留意して,ヘルパーやショートステイなどの導入も検討していくべきであると考える.家族の介護は,いわゆる「痒いところに手が届く」介護であり,息の合った介護がされている.そのために,ヘルパーなどの導入には消極的な場合もあるが,家族の心身における健康と障害をもっている人自身の自立のために,他者の導入も必要であると考える.第33回日本理学療法士学会において,故定藤教授は講演のなかで「介助を頼むことができることも自立である」と述べられたが,街頭で介助を依頼することのみならず,自宅におけるヘルパーの導入もこの主旨に則っていると思われる.

 本稿では,介助量の軽減のみならず機器の導入による自立,および最近脚光を浴びている介助犬についても触れてみたい.

在宅で利用できるリフト,車いす

著者: 松葉貴司 ,   秋山洋子

ページ範囲:P.409 - P.414

 1.はじめに

 近年では,在宅における使用を念頭に福祉機器が開発され,多くの機器が市場に登場するようになってきた.また,決して豊かではない我が国の住宅事情のなかで,これら福祉機器を受け入れやすい住宅設計が注目されるようになり,在宅におけるリフトや車いすの利用を検討する機会が増えている.

 我々は,横浜市における住環境整備事業に従事するなかで,福祉機器の導入を検討するに当たって,その選択肢が広がってきたことを感じている.しかし,本当に有効利用できる機器は少ないことも実感している.本稿では,これらの経験から,在宅で利用できる機器について紹介する.

とびら

1人の理学療法士として,1人の障害者として,1人の人間として

著者: 真鍋清則

ページ範囲:P.383 - P.383

 私が理学療法士になろうと考え始めたのは中学3年生の頃(1969年)である.生まれながらに視力障害を被っている私は小学4年生の時から盲学校で教育を受けた.目の不自由な人が選ぶ職業はそんなに多くない.当時,盲学校で教育を受けている生徒は,本人が望むと望まないに関わらず三療の資格(按摩・マッサージ・指圧師,鍼師,灸師)を養成する課程に進学するのが普通であつた.三療の資格を取得した後に開業する人,開業治療院で働く人,三療の教師を目指す人,そして病院に勤務する人等が主であつた.私の頭のなかでは,三療の資格で病院に勤務することに疑問をもっていた.リハビリテーションが今ほど知られていなかった時代であり,理学療法士という名称は私の知るところではなかった.

入門講座 パソコンによる学術情報整理学・2

インターネットを利用した文献検索法

著者: 佐藤満

ページ範囲:P.415 - P.419

 Ⅰ.変化の速いインターネット

 先月号に引き続き,インターネットを利用した学術情報収集について紹介します.インターネット上に散在する数々の医学関連情報へのアクセスについては前回に触れました.今回の入門講座はインターネットで提供されている医学系の文献検索サービスを中心に紹介します.今回も話題のほとんどは,World Wide Web(ワールドワイドウェブ:WWW)と呼ばれる,「インターネットホームページ」を提供するサービスを利用するものばかりです.

 WWWのページは変化が非常に激しいことが特徴です.1998年の1年間で200万台ものWebサーバがインターネット上に誕生しました1).毎日,数えきれぬほどのホームページが新規に開設されます.一方,1か月に数万~数十万の単位でページが消滅するといわれます.存続しているページの内容改編はさらに激しいわけですから,インターネット上の無数の情報は一時として同じ状態を維持することはなく,刻々と姿を変えていきます.

1ページ講座 理学療法評価のコツ・6

持久力の評価と解釈

著者: 小室透

ページ範囲:P.420 - P.420

 持久力は,呼吸循環器系(酸素供給機能),筋,心理面などの多くの要因により左右されるものである.したがって,その評価を行うに際しては,何を評価しているのかを明確に把握しておく必要がある.

 本稿では,持久力評価を便宜的に,①総合的持久力の評価,②呼吸循環器系能力に関する持久力の評価に分けて,評価法とその解釈について述べる.

講座 高次神経機能障害のリハビリテーション・2

失行症

著者: 種村留美

ページ範囲:P.421 - P.427

 失行症の歴史的背景

 失行症とは,古典的定義に従えば,知的障害,失認,麻痺,失調や振戦等による運動障害を示さず,物品が何であるかを理解しているにもかかわらず,その用途にあった協調運動が行えない状態を指す.

 具体的にいうと,失行症は1900年にLiepmannにより提唱され,最終的には観念運動失行,観念失行,肢節運動失行に分類した.以後,1912年にKleistにより構成失行が,1940年にBrainにより着衣失行が報告され,現在では失行と名が付く症状はこれらに加えて,口腔顔面失行,歩行失行(または躯幹・下肢失行),脳梁失行などが挙げられる.しかし,このなかでも着衣失行,歩行失行,構成失行と記載された障害とは異なリ,誤った言葉の使い方がなされていると多くの専門家が指摘している.

プログレス

骨格筋に進入する自律神経

著者: 野条良彰 ,   竹内義享 ,   浅本憲

ページ範囲:P.428 - P.430

 1.筋肉に入り込む神経の種類

 骨格筋に進入する神経には,①筋線維を収縮させる運動神経(α,γ運動神経),②筋肉の収縮伸展度を検出する筋紡錘と腱器官への知覚神経(Ⅰa,Ⅱ,Ⅰb線維),③動脈壁の平滑筋を収縮,弛緩させる血管運動性の交感神経,④筋組織や結合組織における組織傷害,炎症を検知して痛みを感じさせる知覚神経(Aδ,c線維)などがある.①と②の運動神経と知覚神経は,筋収縮に関わる.これらの神経線維はもともと太い軸索(神経突起)と厚いミエリン鞘(髄鞘)に被覆されているため,線維の外径は太く(12~20μ),α,Ⅰa,Ⅰbといった神経線維の興奮伝導速度は身体の中で最も速い(70~120m/秒)部類に属する.俊敏な我々の筋肉運動にふさわしい性質を持っている.それに対して,③と④の血管運動神経と痛みの知覚神経とは,筋肉内の環境調節と環境状態の感知に係わり,無髄線維で細い(0.3~1.3μ).こうした細い神経線維の伝導速度は遅い.特に交感神経とc線維は最も遅い(0.5~2.3m/秒)部類に属する.なお,痛みのAδ線維はごく細い有髄線維でc線維よりも太く,速度も速い.動物界を見わたしたとき,こうした無髄の神経線維は原始的な動物から備わっており,系統発生的に古く,基本的な神経といえる.このように筋肉には進化した神経と原始的な神経が一緒に入り込んでいることになる.

TREASURE HUNTING

理学療法士の眼で養護教育に取り組む―上田節子さん(堺市立百舌鳥養護学校分校)

著者: 編集室

ページ範囲:P.431 - P.431

 養護学校で働く理学療法士が増えているといっても,教育現場であり治療を行う場ではない養護学校では理学療法士として採用されるケースはまだまだ少ないという.多くは,教師の資格がなければ,訓練助手として採用されているようである.今月ご登場いただいた上田節子さんは堺市職員で,理学療法士として養護学校に勤務する数少ないお一人である.

あんてな

乳幼児期から成人期までの地域リハ活動への取り細み

著者: 山川友康

ページ範囲:P.432 - P.433

 Ⅰ.はじめに

 平成7年12月に厚生省から障害者の自立と社会参加を促進させるために,「障害者プランーノーマライゼーション7か年戦略-」が策定された.この指針に基づいて,各市町村レベルで今後10年間における数値目標を盛り込んだ障害者福祉計画が策定されている.地域に密着した生活者の立場からのニーズに,きめこまかく対応できる療育センターのサービス提供が求められる.在宅福祉サービスの充実に伴い,従来の通所や外来型サービスから訪問型サービスに移行し,利用者の生活重視の視点がより鮮明になると考えられる.当センターでの取り組みの概要を紹介して,地域における福祉の転換期の療育状況を報告する.

リレーエッセー 先輩PTからのメッセージ

女性PTよ

著者: 田口順子

ページ範囲:P.434 - P.434

 先日,何年ぶりかで,いや中には学校を卒業して以来初めて顔を合わせた人もいたりして,日本の理学療法士界の発展を支えてきた女性PTが18人程集まった.

 わが国で初めて創設された医療発祥の地,国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院も早や35年が過ぎ,最前線の職場を停年で去る人も年々増えてきている.今回はA大学を退官されたPT教育界のT女史,T大学の臨床ひと筋に打ち込んでこられたK女史のご苦労様会であった.30数年前,当時お化け屋敷のロケ地として使われていたほどのポロ校舎の一隅,女子寮で語り合ったそれぞれの夢と,今になってもやっぱり変わらぬ語り口を重ね合わせながら,実に経験豊かで現実的な考え方とその成長振りを,ただただ感服して聞いたことであった.

報告

慢性関節リウマチ・変形性膝関節症患者のTKA術前・術後の筋力の推移について

著者: 前川昭次 ,   今井至 ,   平岩康之 ,   福田眞輔

ページ範囲:P.435 - P.438

はじめに

 人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty;TKA)は下肢人工関節のなかでも最も頻繁に施行される手術で,最近では材質,デザイン等の進歩により安定した長期成績が得られるようになり1),我々理学療法士にとっても,特に整形外科術後の患者が主体の施設では最も遭遇する機会の多い手術の1つである.にもかかわらず,TKA術後の理学療法に関する報告は予想以上に少なく,とりわけ方法論に言及した報告はごく僅かである.したがって,それぞれの施設や整形外科医が作成した術後のプロトコールに沿って画一的な理学療法が施行されているのが現状であるといえよう.

 TKA術後の理学療法は一般的に関節可動域(ROM)の改善,筋力増強,歩行訓練が主体となる.そのなかで筋力増強は,大腿四頭筋を中心に実施され,術直後ではセッティングより開始し,徐々に抵抗運動へと移行することが通例である.この方法は確かに効果的で,普遍的ではあるが,術後退院までの数週間に施行すること,筋機能だけでなく,関節自体の運動機能の改善を目的としていること等を前提にした場合,果して最適な手段であるかという疑問が残る.この点については,術前から術後にかけて筋力の推移を観察した報告が散見されるが,術後の筋力増強法については,一般的な方法を踏襲している.

 そこで筆者らは,以上の問題点および疑問点から,術後の最適な筋力増強法について再考するに至った.この報告では第1段階として,TKA患者をRA群およびOA群に分け,術前,術後3週,術後6週の筋力の推移およびその他の測定値がどのような傾向を示すかを検討するものである.

機能的電気刺激を用いた完全四肢麻痺患者のトランスファーについて

著者: 大西秀明 ,   大山峰生 ,   伊橋光二 ,   八木了 ,   半田康延 ,   吉田忠義

ページ範囲:P.439 - P.443

はじめに

 脊髄損傷や脳血管障害などの上位運動ニューロン障害では,下位運動ニューロンを含む末梢神経に電気刺激を与えると,それに支配されている麻痺筋は収縮する.この原理を応用して,適切な電気刺激を行うことにより関節運動を引き起し,失われた機能を再建しようとするものが機能的電気刺激(functional electrical stimulation;FES)である1-3),FESによる動作機能の再建については数多くの報告があり,そのほとんどが対麻痺を対象とした起立・歩行動作の再建や四肢麻痺を対象とした上肢機能の再建である4-8).これらの報告はすべて,患者自身のADLを直接的に改善することを目的としており,介助者の負担の軽減を目的としたFESについての報告はみない.

 第5頸髄損傷完全四肢麻痺患者のトランスファーには全介助が必要であり,患者の家族または介護者にとっては深刻な悩みの1つである.特にトランスファーを主に行う者が女性や高齢者であれば,その問題はいっそう重大となり,家族の身体的・精神的負担となり,患者自身の精神的な負担の原因にもなる.そこで,患者自身のADLを直接的に拡大するのではなく,介護者の負担を軽減する目的で,FESを用いて頸髄5,6損傷完全四肢麻痺患者のトランスファーを試みたので報告する.

新人理学療法士へのメッセージ

すくすく育て,新人さん

著者: 佐藤春彦

ページ範囲:P.444 - P.445

 新人さんは,すくすく育て

 当たり前のように先輩の指導に従うのではなく,自分で良いと考えたことを実践し,望ましくないと考えたことには疑問を投げかける.自分の良心に従って,患者さんと対面し,理学療法を行う.そういう新人さんであって欲しいというのが私のメッセージです.

 挨拶もなしにいきなりメッセージを述べてしまい失礼いたしました.私は理学療法士になって今年で11年目を迎える者です.自分ではまだ新人と思っていますので,「新人にもの申す!」などと叫んで飛びかかったりはいたしません.先のメッセージはそのまま自分への訓戒でもあります.少々堅苦しい物言いだったので,ここからは素直に私自身の新人時代を綴っていきます.我が身のことなので,脚色も(おおいに)加えられているかも知れませんが,その辺の所は,大目にみていただきたく思います.

臨床を担う理学療法士に必要なもの

著者: 佐藤房郎

ページ範囲:P.446 - P.447

 社会構造の変化に伴い,私たち理学療法士を取り巻く環境が変わり始めています.一方,毎年3,000人近い新しい理学療法士が誕生し,ここ数年間に理学療法士の数は倍増することになります.こうした情勢をうけて,私たちは専門家としての質がますます問われてきます.ここで私は,臨床家としての理学療法士の質を高めるために必要なものを皆さんに伝えたいと思います.

Case Presentations

慢性肺疾患急性増悪例に対する呼吸理学療法の経験

著者: 山下康次 ,   杉原由恵 ,   川村昌嗣 ,   渡辺英明 ,   原田尚雄 ,   石川朗

ページ範囲:P.449 - P.453

 Ⅰはじめに

 慢性肺疾患(chronic lung disease;CLD)患者が急性増悪をきたした場合,従来は酸素投与量の増量と薬剤(利尿剤,気管支拡張剤,強心剤,抗生剤など)の投与を行い,十分な効果が得られなければ挿管下人工呼吸療法が行われてきた.ところが,高炭酸ガス血症を伴っている場合,酸素投与量増加により呼吸抑制を助長して換気量の低下を招き,更に高度の炭酸ガス血症を招くという悪循環をもたらすことになる.従来,こうした患者に対してはベンチュリ・マスクなどを利用した高流量定濃度酸素投与法などが行われているが,PaCO2値のコントロールが不良な場合は,挿管下人工呼吸を施行される患者が少なくなかった.

 しかし近年,鼻マスク,フルフェイスマスクを使用した非侵襲的陽圧人工呼吸(non-invasive positive pressure ventilation;NPPV)療法がCLD患者の急性増悪例に使用され始め,その有効性が確認されている1-3).今回,当施設にてNPPV管理下にあるCLD急性増悪患者に対し,ICU搬入時より呼吸理学療法を施盆たので報告する.

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文献抄録

ページ範囲:P.456 - P.457

編集後記

著者: 網本和

ページ範囲:P.460 - P.460

 皆様WCPTはいかがでしたでしょうか.壮麗と豪奢,熱情と喧騒とのカオスのなか風のように瞬く間に時は過ぎて,ひょっとしたら疲労困憊もはや脱け殻のごとくなっている,かも知れません.いよいよ次の世紀へと近づきつつあるなあと,コドモの頃自分が42歳のオジサンになるなんて夢にさえ信じることができなかった小生としては,個人的にはいささかの感傷を禁じ得ません.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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