文献詳細
文献概要
特集 進行性疾患―QOL向上への取り組み
緩徐進行型成人筋萎縮症患者のQOL向上への取り組み―K-W病患者との関わりを通じて
著者: 中田正司1 宮村綾子1
所属機関: 1国立療養所札幌南病院リハビリテーション科
ページ範囲:P.485 - P.490
文献購入ページに移動平成7年12月,政府の関係19省で構成する障害者対策推進本部により決定された「障害者プランーノーマライゼーション7か年戦略1)」は,平成5年に策定された「障害者対策に関する新長期計画」を具体的に進めていくための重点施策実施計画と位置づけられている.その基本的考えは,ライフステージのすべての段階において全人間的復権を目指すリハビリテーションの理念と障害者が障害のない者と同等に生活し,活動する社会を目指すノーマライゼーションの理念を実現することにある.そのため7つの視点(表1)に基づき,施策の重点的な推進を図ることとした.
これらの視点からも伺えるように,我々理学療法士の業務は,地域リハビリテーション,Quality of Life(QOL)というキーワードから切り離しては考えられなくなってきている.
QOLとは,一般的に生活の質,人生の質,生命の質などと訳される概念である.しかし,神経筋疾患の多くは進行性であり,いまだ治療法が確立されていないため,患者は自身の機能・能力の低下と常に対峙せざるを得ない状況におかれている.神経筋疾患患者に関わる理学療法士は,QOLの向上を最終的な治療目標に据えて患者と接するものの,QOLの概念があまりにも幅広く,また個人の価値観や置かれている状況によりQOLのとらえ方が多様であるため,現実に目の前にある問題の解決に苦悩しながら,臨床場面を過ごしているのが現実ではないだろうか.
本稿では,Kugelberg-Welander(以下K-W病)の青年に対し,約10年間にわたる入院,在宅生活に理学療法士がどのように関わっていたかを報告するとともに,それらを振り返りながら,緩徐進行型成人筋萎縮性疾患患者のQOLについて述べることにする.
掲載誌情報