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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル33巻8号

1999年08月発行

雑誌目次

特集 中高年者のスポーツ障害

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.537 - P.537

 国民総スポーツ化といわれ久しい,野球,テニス,サッカー,ゴルフなどを観戦して楽しむスポーツから自らスポーツに参加するものへと変化しており,特に主婦や勤労者など中高年者の増加が特徴的である.中高年者の場合,競技性を高めるというよりスポーツを通して人とのコミュニケーションを拡げたり,身体的,精神的なストレスを解消するなど健康増進に主眼がおかれている.それだけに,加齢に伴う身体機能の変化に適した健康的で安全なスポーツ指導が求められているが,残念ながら理学療法士によるこの領域への関わりはまだ十分とは言いがたい.したがって,スポーツ愛好家として運動量や運動方法を自己判断し,結果的にoveruse syndromeとなり,疲労骨折や腱断裂などをきたす危険性を含んでいることも多い.

 そこで本号では,中高年者のスポーツ外傷・障害の状況,その発生メカニズムを理解し,予防的な観点でスポーツ指導や治療に活かせる企画とした.

中高年者のスポーツ障害の現状と対応

著者: 坂西英夫

ページ範囲:P.539 - P.546

 1.はじめに

 スポーツの意義として,スポーツそのものを楽しむこと以外にも,運動器系をはじめとして心肺機能・神経機能などの身体面,ストレスを解消して生きがいのある生活をするという精神面に良い影響をもたらすことが挙げられ,健康維持・増進のためのスポーツというとらえ方が広くなされている.また,週休2日制の浸透,有給休暇の積極的な活用など余暇の増加やスポーツ施設の普及,新しいスポーツの紹介などがスポーツ参加への導線になっている.更に,ラグビーやレスリングなどこれまで男性に限られていたスポーツ種目への女性の参加も盛んになってきている.

 これらの理由により,スポーツ人口は増加していると思われる.具体的には,1回30分以上の運動を週2回以上,1年以上継続している運動習慣を持っている人口は,男性では全体で24.6%(20~40歳代で最低,年代上昇とともに増加し70歳以上では36.7%),女性では全体で23.7%(20歳代12.6%,30歳代19.1%,年代上昇とともに増加)というデータがある1).年代が上がるにつれて比率の上昇がみられるのは,労働あるいは子育てから解放された年代層のQOL向上,趣味としてのスポーツ参加という意味のほかに,もっと積極的な意味での体力維持さらには生活習慣病予防などの健康意識の存在があるものと思われる.

 さて,高齢化社会の到来といわれて久しいが,65歳以上の人口が1970年では7%,1995年では14%を占めていたが,2000年には17%,2025年には25.8%に達するといわれいる.人口の老齢化は着々と進んでいる.

 中高年者のスポーツ人口は,スポーツ人口の増加と人口の老齢化が進めば増加していくのは当然である.

野球愛好家のスポーツ障害と理学療法

著者: 塩塚順 ,   横山茂樹

ページ範囲:P.547 - P.553

 1.はじめに

 時代の移り変わりや流行に関係なく,野球は広く愛好されている.職場のチームや気の合う仲間とチームを作ったり,中高年になっても長く行えるスポーツである.しかし,レクリエーションとして行われる場合は,年に数回(数試合)しかせず,更に練習をしないでいきなり試合に出る場合が多い.こうしたケースでは,野球は好きでも「愛好家」とはいえない.そこで「中高年野球愛好家」のスポーツ障害の発生状況と理学療法について,アンケート調査結果を交えながら,発生するスポーツ障害・外傷について論じてみたい.

バレーボール愛好家のスポーツ障害と理学療法

著者: 川上佳代子

ページ範囲:P.554 - P.558

 1.はじめに

 近年では健康の維持・増進を目的としたスポーツが盛んとなり,中高年者の参加も多くなった.内容として,競技活動レベル,健康維持・増進を目的としたレベル,レクリエーションレベル,教師・インストラクターレベルなど様々である.

 中高年者のバレーボール参加者には主婦が多い.フルタイムで仕事を持っている人でない限り,子育てからの解放と家事労働の軽減によって余暇時間が増えるため,比較的スポーツ参加が容易になってくると考えられる.また同時に,体の衰えを自覚し始める頃でもあるので,健康・体力づくりを目的とした運動に対する意欲は更に強いといえる.

剣道愛好家のスポーツ障害と理学療法

著者: 田中聡 ,   宮本賢作 ,   山田英司 ,   江村武敏 ,   辻伸太郎 ,   森諭史 ,   乗松尋道

ページ範囲:P.559 - P.567

 1.はじめに

 近年,生涯スポーツが重要視されるなかスポーツ人口は増加傾向にあり,中高齢者も様々な形態でスポーツを楽しんでいる.その中でも剣道は児童と高齢者が対戦でき,かつ少年期から高齢に至るまで長期間継続可能な数少ないスポーツの1つである.また,高齢者が高段者となり高度な技を有することも剣道の特徴である.

 スポーツ安全協会の統計によると,剣道における全活動内容中の障害発生率は0.38%であり,スポーツ障害全体の平均0.94%と比較してかなり低率で比較的安全なスポーツであるといえる1).しかし剣道は,防具をつけているとはいえ竹刀を用い相手と有効な打突を競い合う格闘技であることに違いなく,相手との接触,体当たりなどが行われるコンタクトスポーツでもある.また,裸足で床面を跳躍することが多く剣道特有のスポーツ外傷・障害が発生していることも事実である.

 本稿では長期間剣道を継続している中高齢選手を中心に,剣道によるスポーツ外傷・障害(本稿では両者を総称して傷害と呼ぶ)の発生状況からその要因を検討し,傷害に対する理学療法の在り方について述べる.

とびら

道具

著者: 河添竜志郎

ページ範囲:P.535 - P.535

 私たちの生活は様々な「道具」に囲まれて営まれている.何かひとつのものを手にするときには目的に合った「道具」を探し,あらゆる角度から評価し購入し使い始める.有効な場合には喜びを持ち生活に変化が訪れ,期待はずれだった場合には押入れの隅っこに仕舞われていく.文房具や電化製品,食器から衣服,家具や自動車や家も「道具」のひとつといえる.このように普段「道具」を選び,使い方を身につけて有効に活用することで生活の質を高めようとしている私たちが,ひとたび仕事の面に目を移すと“道具選び”という点にあまりにも無頓着になっていないだろうか.

入門講座 パソコンによる学術情報整理学・4

データベース・表計算ソフトの活用法(医療情報管理用)

著者: 湯元均

ページ範囲:P.568 - P.574

 Ⅰ.はじめに

 近年は,LAN(Local Area Network)やインターネットに接続されているか否かに関わらず,パソコンを見かけない職場は少なく,いろいろな目的で日常的に使用されている.

 冒頭からこんな表現をすると眉をひそめる読者も多いかもしれないが,筆者は元来怠け者である.この「怠け者」ということは情報管理を行ううえで重要な要素であると考えている.医療現場には処方情報,実施情報,保険請求情報,各種報告情報など様々な情報が縦横無尽に行き交っている.これらの情報には重複情報も多く,また関連する情報も多い.特に定型業務や重複業務の処理にはパソコンは大きな力を発揮してくれる.本稿では,怠け者がより怠ける時間を作れるよう筆者の経験をベースに紹介したい.

講座 高次神経機能障害のリハビリテーション・4

注意障害

著者: 加藤元一郎

ページ範囲:P.575 - P.581

はじめに

 脳損傷例の臨床では,患者や家族から「ぼんやりしている」「仕事や作業がすぐに中断する」「集中力がない」などの日常生活上の全般性注意障害の訴えを聞くことが多い.また,物忘れの症候を持つ脳損傷例の多くが,注意や集中力の障害を自覚していると言われる1).更に,機能の再建を目指すリハビリテーションの場面でも,注意障害の要因は見逃すことができない.すなわち,「ぼんやりしていて指示が入らない」「課題への取り組みが長続きしない」「落ち着きがない」などの注意の異常が前景にでているケースが散見される.このような注意の障害に取り組むためには,まず,注意障害に関する正確な把握とそれへのリハビリテーションの方法の理解が必要である.

 注意は様々な認知機能の基盤である.ある特定の認知機能が適切に機能するためには,注意の適切かつ効率的な動員が必要である.また注意機能は,広く社会的生活を営むための様々な行動に介在し,これを統合する役割も持つ.したがって,脳損傷後の注意の障害は,多くの認知行動障害を引き起こす.しかし,全般性注意の障害と個々の神経心理学的障害(失語,失行,失認,健忘など)との関係は非常に複雑であり,注意障害が特定の神経心理学的障害の本質である場合から,単にそれに重畳している場合まで様々である.例えば,学習障害における注意障害の果たす役割は極めて重要であることは良く知られている.すなわち,記憶障害は,注意機能に大きな負荷をかける活動で顕在化することが多い.また,特定の認知機能が障害されていることが明白な場合でも,その背景にしばしば注意の障害が潜んでいることがあり,これが改善されることで認知行動障害の回復がみられることもある.更に日常生活上の問題や社会的な行動障害の改善を目指したリハビリテーションのプログラムには,注意障害の視点からのアプローチが必要となることも多い.

 しかしながら,このような注意障害への関心が脳損傷例の臨床に持ち込まれたのは近年のことである.この理由の1つは,注意の定義が困難であり,注意の異常を他の認知障害から厳密に分離することができないことに因るであろう1).注意の定義は曖昧であり,注意という言葉によって表される現象は多様な側面を持っている.したがって,まず注意機能の概念と分類について簡単に整理してみたい.なお,本稿では,方向性注意およびその障害(無視症候群)については触れず,話題を全般性注意(generalized attention)のみに限ることとする.

1ページ講座 理学療法評価のコツ・8

感覚

著者: 内山靖

ページ範囲:P.582 - P.582

 1)治療指向的な評価を

 理学療法評価において,仮説(観察・情報収集などから得られる予測や経験から生まれる推測)のない検査の羅列や実施は「労力多くして易少なし」に陥ることが多い.臨床においては,とりあえず(一応やってみて,結果をみてから考えようか),アクセサリー(教科書に載っているし,やっておかないといけないかなあ)検査は患者さんにとって貴重な時間と苦痛を伴うだけで禁忌ともいえる.

 特に筋緊張,平衡機能,感覚は,神経学の検査方法を準用するだけでは理学療法を実施するための有効な解釈が困難になりやすい3大検査である.問題提起の検査ではなく,問題解決すなわち治療指向的でなければ評価本来の意味は乏しい.

TREASURE HUNTING

生活に密着したリハビリを追求する―岡部正道氏(老人の介護とリハビリ研究所代表)

著者: 編集室

ページ範囲:P.583 - P.583

 リハビリテーションの究極の目的がより質の高い生活の再構築にあることは,大方の関係者が認めるところだろう.世界に冠たる高齢社会にあって,老人たちが未来に夢をもって「生きる喜び」を感じとれるようなシステムづくりが日本の各地で求められているのではあるまいか.そんな潮流を先取りして,岡部正道氏が「老人の介護とリハビリ研究所」を立ち上げ,在宅訪問リハを始めたのが11年前,理学療法士だからこそできる老人リハをめざして,今日も地域を駆け回っておられる.

あんてな

理学療法士と障害者スポーツ

著者: 奥田邦晴

ページ範囲:P.584 - P.585

 我が国における障害者スポーツは,元来リハビリテーションの一環として健康増進や体力向上,廃用症候群の予防そして積極的な社会参加等を目的として行われてきた.しかし最近では,本スポーツを一般のスポーツと同様,競技スポーツとして捉えている選手や,楽しみとして,あるいは自己のアイデンティティの確立として行っている選手が多くなってきている.

 また,種目数も個人競技,団体競技ともに非常に多くなってきており,いわゆるエリートといわれる一部の人たちを対象としていたものが,重度障害者に至るまで幅広い障害像の人たちが参加できるものになってきている.その名称も,従来の“handicapped sports”あるいは“disabled sports”から“adapted sports”へと変化してきており,これは障害者スポーツが一般のスポーツのルールに改良を加えたり,補装具の適応等を行っただけで,別段,特別なスポーツではないことを意味している.

リレーエッセー 先輩PTからのメッセージ

PTひとり旅―昔ばなし珍道中

著者: 今井章夫

ページ範囲:P.586 - P.586

 まえがき:ふざけたタイトルですが,投稿依頼を機に在職40年を顧みることができ感謝している.とはいえ,私には後輩へのメッセージなど毛頭ない.けれど,ひょっとして1人でも一隅を照らすことにもなれば有り難い.国立金沢病院(765床,23診療科)では,理学療法士ひとりの戦いであった(物療1,看護1).これまで長年にわたり機能できたのは,ひとえに同院名誉院長・竹多外志先生(整形外科),同院長・前久芳先生(整形外科),金沢大学在職中の理学療法士協会長・奈良勲先生,県士会長・灰田信英先生(金沢大学理学療法学科教授)をはじめ,多くの方々のご指導のお陰である.

 物療時代:整形外科の一員(翼)として外来,入院,手術,退院までをみせていただいた.ポリオ,先股脱,筋性斜頸の小児が多かった頃で,母親との関わりのなかで外科医・小児科医の心を知ることができ,医療への関わり方の基本を教えていただいた.

資料

第34回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1999年3月5日実施) 模範解答と解説・Ⅱ―理学療法(2)

著者: 猪田邦雄 ,   小林邦彦 ,   辻井洋一郎 ,   河村守雄 ,   鈴木重行 ,   木山喬博 ,   講武芳英 ,   河上敬介 ,   肥田朋子 ,   石田和人

ページ範囲:P.587 - P.593

 問題35〔5〕

 (解説)第6頸髄節まで機能残存の場合は肩,肘関節の屈筋群が働くため,下肢を持ち上げたり,移動させることは可能である.

プログレス

熱傷急性期治療の最近の流れ

著者: 鈴木幸一郎 ,   河野匡彦

ページ範囲:P.594 - P.594

 1.熱傷ショックとは

 熱傷の深達度がⅡ度以上で体表の30%以上を占める場合を一般に「重症熱傷」と呼んでいる(重症度分類にはいくつかのものがあるが,Artzの基準がよく用いられる).このような重症熱傷の治療経過は,①熱傷ショック期(受傷後数日)と②ショック回復後熱傷創が閉鎖されるまでのものに大別できる.

 熱傷ショックになると血圧低下,頻脈,頻呼吸,尿量減少とともに代謝性アシドーシスが出現する.深くて広い熱傷(すなわち重症熱傷)では全身の血管壁の透過性が亢進し,循環血液中の血漿成分が組織間腔にもれ出る.その結果,全身に浮腫が出現するとともに,血液は濃縮され(Ht値が高くなる)てhypovolemicとなり,心拍出量が減少する.これが熱傷ショックの主な病態であり,受傷直後に始まり2~3日続く.

Case Presentations

競技復帰を目標とした膝複合靱帯損傷後の理学療法―高校サッカー選手の1症例

著者: 鈴木信人 ,   坂本雅昭

ページ範囲:P.595 - P.598

 Ⅰはじめに

 サッカー選手における膝前十字靱帯再建術後の競技復帰について,原ら1)は他の様々な種目より強力な筋力が必要なこと,また,プレー中,膝関節に外旋・外反位および伸展位を頻回受けることにより復帰に長期間を要すると述べている.また,斎藤ら2)は,この長期間にわたる術後後療法期間中の意欲の低下を競技復帰阻害因子として挙げている.

 今回,少年期よりサッカーを始め,将来海外にサッカー留学するという高い目標を持った症例に対し,早期競技復帰に向けて,全身の筋力増強を含め術後早期からの積極的な理学療法を行った.更に,競技特性を考慮してプレー中の動作を組み入れるなどの工夫をし,モチベーションの維持を図っていった結果,良好な経過をたどったので報告する.

特別記事

理学療法の新時代を拓いた第13回WCPT学会

著者: 編集室

ページ範囲:P.599 - P.599

 20世紀最後に開催された第13回世界理学療法連盟(WCPT)学会は(社)日本理学療法士協会の10年間に及ぶ準備活動の成果が実を結び,大きな成功を収めて6日間の日程を終了した.学会には当初の予想をはるかに上回り,世界の5つの地区,70か国から延べ5,700名余の理学療法士が参加し,文字通り学会テーマ「文化を超えて」(Bridging Cultures),学術交流と職能の連帯を深めた.本学会の成功は,我が国の理学療法の歴史に新たな地平を切り拓き,新しい時代を画するものといえよう.

 学会初日の開会式には天皇・皇后両陛下がご臨席,日本の理学療法が欧米の支援を受けて発展してきた経緯に触れながら,理学療法士が今日,高齢者や障害者の生活の質の向上のために果たしている役割を高く評価されるお言葉を述べられ,パシフィコ横浜国際会議場の国立大ホールを埋め尽くした3,000名余の参加者に深い感銘を与えた.

第13回WCPT学会印象記

〈Social Events〉程よい緊張と和やかさが共存した学会運営

著者: 大渕修一

ページ範囲:P.600 - P.601

 →開会式

 “……15時00分時間ですという清水和彦進行委員長の合図のもと天皇皇后両陛下をお迎えする分刻みのスケジュールが始まった.実行本部の神内擴行本部長の携帯電話には各責任者から準備状況の連絡が刻々と入ってくる.会場外警備の松永篤彦先生.会場内警備の長澤弘先生.VIP対応の清水忍先生.16時40分すべての準備が整ったところに白バイに先導された陛下のお車が到着した.お迎えする進行係の緊張は極限に達した……”.

〈Reseach Reports〉貴重な経験を土台としてバルセロナへ!

著者: 齋藤昭彦

ページ範囲:P.602 - P.603

 5月23日から5月28日にかけて横浜で開催された第13回WCPT学会の研究報告(Research Reports)の印象を報告する.研究報告の発表形式は,一般口演(Platform Presentation)とポスター発表(Poster Presentation)に分類され,すべて英語で発表された.学会プログラムおよび抄録集に掲載された研究報告の合計は1,217題であり,一般口演544題,ポスター発表673題であった.

 一般口演およびポスター発表の参加国は,それぞれ 43か国,31か国であり,一般口演とポスター発表を合わせると48か国からの発表が予定されていた.国別の研究報告数は,開催国の日本が524題と最も多く,次いで,Sweden,UK,USA,Australia,Canada……の順であった(表1).発表分野ではNeurologyが117題と最も多く,次いで,Othopaedics,Kinesiology,Cardiopulmonary,Exercise physiology,Educationの順であった(表2).一般口演,ポスター発表とも数題のキャンセルがあり,実際に発表された演題数は予定された演題数をやや下回った.

〈Keynote Lectures〉21世紀に向けて―Bridging Cultures

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.604 - P.605

 第13回世界理学療法連盟学会は1999年5月23日から28日まで横浜市のパシフィコ横浜で行われた.学会長は日本理学療法士協会会長の奈良勲先生(広島大学保健学科)で,テーマは“Bridging Cultures”(文化を超えて).開会式には天皇皇后両陛下をお迎えする光栄に恵まれ,天皇陛下は御言葉の中で「理学療法が今後とも急速な医学の進歩の成果を取り入れながら,人々の生活の質を向上させるため更に貢献していくよう願っております」と述べられた.5日間の会期で発表演題は1,400を超え,事前予想の倍にも達する入場登録者数となった.私も口頭発表とポスター発表を各1題,座長を2セッション,総合案内のボランティアを8時間と,微力ながらお手伝いをすることができた.

 スペシャルプログラムはキーノートレクチャー6題,セミナー13題,シンポジウム7題,ワークショップ7題と非常に内容の濃いプログラムであった.また,たくさんのソーシャルイベントもあり,学術的交流に加えて文化的交流も盛んに行われた.本稿では特にKeynote Lecturesにポイントを絞り,その印象をまとめてみたい.

学会印象記 第36回日本リハビリテーション医学会

分子生物学から生きる喜びまで

著者: 前田哲男

ページ範囲:P.606 - P.607

 第36回日本リハビリテーション医学会学術集会は鹿児島大学医学部医学科リハビリテーション医学講座の田中信行教授を会長とし「21世紀への飛翔~共生のための科学と文化を求めて~」をメインテーマに鹿児島市市民文化ホール,サンロイヤルホテル,ベイサイドガーデンを会場にして平成11年5月20~22日の3日間開催された.学会の前日午前中まで降っていた雨も止み,学会の3日間は晴天で,これは屋外で行われていた身体障害者用自動車展示や参加者の会場間移動に好都合であった.また,会場正面に見える桜島の雄大な姿も晴れた空に映え,風光明媚な観光地鹿児島を印象づける学会となった.

 学会の内容は非常に豊富で,会長講演1題,招待講演1題,特別講演2題,シンポジウム3題,パネルディスカッション4題,通常のセミナー4題,ランチョンセミナー2題,イブニングセミナー1題,市民参加セミナー1題,一般演題650題であった.講演や発表は多くの会場で同時に行われており,3日間の時間を最大限有効に利用していた.これだけ多くの発表が同時に行われると自分が聴きたい発表を探すのが大変であるが,一般演題のプログラムは「脳卒中・治療法」「脳卒中・治療成績」「脳卒中・急性期・リスク」などと同じ脳卒中でも細分化されており,学会参加者が自分の興味ある分野を探しやすいよう配慮されていた.

ひろば

第13回WCPT学会を振り返って

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.558 - P.558

 平成11年5月23~28日にわたりパシフィコ横浜で日本学術会議と共同開催した第13回WCPT学会は関係各位の支援・協力を得て無事終了できた.

 開会式に天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ,おことばを賜ることができたことは,我々関係者にとって大変名誉なことであり,かつ日本理学療法士協会の歴史に永遠に残る出来事であったといえる.今年は国内で国際学会が8件開催される中,両陛下は本学会のみにご臨席頂いたと理解している.両陛下が障害者の福祉にご関心がお有りであることもさることながら,日程が空いていたことや,皇居から横浜までの距離が近かったことなどがご臨席頂いた理由と分析している.

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文献抄録

ページ範囲:P.608 - P.609

編集後記

著者: 鶴見隆正

ページ範囲:P.612 - P.612

 梅雨前線がどっかりと居座り,晴れ間がのぞく気配がない.そんななか福岡,広島を襲った集中豪雨による山崩れは多くの人命と家屋を奪い,現在も行方不明者の捜索が行われています.このような甚大な被害は毎年全国各地で発生していますが,自然の猛威の大きさを再認識したうえで防災対策を根気強くするしかないように思います.

 さて,本号の特集「中高年者のスポーツ障害」が読者のお手元に届く頃には,向日葵が咲き,からりと晴れ渡った炎天下のなかマリンスポーツ,キャンプ,夏山登山などに汗をかいていることでしょう.近年,生涯スポーツとして健康増進を図りながら多様なスポーツに取り組む中高年者が増加していることは喜ばしいことですが,それには加齢に伴う身体機能を考慮したスポーツ指導体制の充実が必要不可欠です.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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