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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル34巻10号

2000年10月発行

雑誌目次

特集 悪性腫瘍治療の進歩と理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.685 - P.685

 悪性新生物は生活習慣病とともに現代医療における双墜である.生活習慣病が比較的慢性経過のなかで長期的な関わりを必要とするのに対して,悪性腫瘍では時間的な制約の中で如何に目的を達成するのかが重要な要素となる.

 また,悪性腫瘍に対する治療は,分子生物学的側面を含めた治療技術の進歩に対応した適切な理学療法を展開する必要がある.本特集では,癌患者の包括的な理学療法とともに,白血病,脳腫瘍,乳癌,骨肉般に対する最近の治療に応じた理学療法について解説していただいた.

癌患者の包括的な理学療法

著者: 加藤好道 ,   新井雅信

ページ範囲:P.686 - P.690

 1.はじめに

 従来,癌患者の理学療法は乳癌切除後の肩関節拘縮予防,リンパ浮腫の軽減,骨肉腫による切断後の義足,骨転移による骨折,脳脊髄腫瘍による運動麻痺,肺癌手術後の呼吸機能や肩関節拘縮など,主に運動障害に対する個別の理学療法が行われてきた.最近,癌においても治療成績が向上して延命治療が可能になるに従い,様々に変化する癌患者の状態に即した理学療法が求められるようになってきた.QOLの向上に貢献する,循環器呼吸器,消化器,神経,骨など多臓器の傷害に対し,急性期医療,緩和ケア,地域医療などに及ぶリハビリテーションを包括し,全身的な障害を対象にした包括的な理学療法が必要とされつつある.本稿ではこうした包括的理学療法を行いえたと思われる症例を通じて,今後の癌患者に求められる理学療法を考えてみたい.

骨髄移植前後のリハビリテーション

著者: 星野敬子 ,   小山祐司 ,   矢部普正 ,   古野薫 ,   石田暉

ページ範囲:P.691 - P.696

 1.はじめに

 骨髄移植は,白血病や再生不良性貧血先天性免疫不全などに対する画期的かつ根治を期待しうる治療法として,その有用性が広く知られている.しかしその一方で,骨髄移植の前処置に用いる抗癌剤の大量投与や,放射線の全身照射,無菌室での隔離・安静は,患者の全身的な機能を著しく低下させ,医原性の廃用症候群を引き起こす.また,無菌室での隔離状態により,情緒不安定や易感受性などの心理的問題を生ずる患者が少なくない.

 このため骨髄移植のリハビリテーションでは,高度な全身管理やハイリスク下で,廃用症候群の合併を防ぎ,身体機能の向上を図ると共に,精神的支援も考慮しなければならない.

 本稿では,多面的なアプローチが必要とされる骨髄移植のリハビリテーションについて,チーム医療を重視した当院での具体的対応を紹介する.

乳癌切除術後の理学療法

著者: 渡辺京子

ページ範囲:P.697 - P.702

 1.はじめに

 乳癌は罹患率では我が国の女性癌のトップであるが,他の臓器癌と比較して予後はそれほど悪くはないといわれている.しかし,このまま高齢社会が進むと,乳癌の罹患数・死亡数はいずれも2015年には,結腸癌についで多くなり,罹患年齢も平均56.9歳と予測されている1).したがって,乳癌のリスク因子を下げる意味での検診等による早期発見,早期治療開始および術後のリハビリテーションが重要になってくる.

 1988年から2000年3月までに,当院で出された乳腺処方数は入院751件,外来289件,累計1,040件に上る.特に1995年以降,電子カルテシステムの開始によりオーダリングが容易になり,また,退院後のリハ継続治療システムが充実したこともあずかって,癌患者に対するリハ処方も増加傾向にあり,1999年度の入院リハ全処方数2,451件中癌患者が161件(6,6%),臓器別では乳癌が60例で37,3%を占めている(図1).

脳腫瘍患者の理学療法

著者: 佐野裕子 ,   冬木寛義

ページ範囲:P.703 - P.708

 1.はじめに

 脳腫瘍はその性質がどのようなものでも何かしらの治療を行わない限り“致命的”であること,またその表出する障害像は多岐にわたることより,理学療法のアプローチを定型化することは難しい.米国におけるDRG/PPS(診断群別包括支払い制度)に端を発して,本邦においてもクリニカルパスの導入などの「治療の標準化」が提唱されており,リハビリテーション医療においても例外ではない.

 しかしながら,脳腫瘍例の理学療法においては,腫瘍の発生部位や病理的な性格,それによる身体症状および環境など個別的要因により標準化は困難であり,ケースバイケースの対応に迫られる.進行性であり命に関わる疾患であることから,QOLの向上のためには何ができるのか,理学療法遂行上困惑難渋する症例も多い.

 本稿では脳腫瘍の概要を述べ,食道癌からの転移性脳腫瘍の症例を紹介し,理学療法上の留意点について述べる.

骨肉腫を有する患者の理学療法

著者: 山路雄彦 ,   内山靖 ,   篠崎哲也 ,   茂原重雄

ページ範囲:P.709 - P.715

 1.はじめに

 骨肉腫は,発症率は比較的低いが,悪性骨腫瘍のなかでは最も頻度が高く,10代の男性の大腿骨遠位部や脛骨近位部に多く発生する.1960年代までの5年生存率は5~20%であった1-2)が,診断・治療技術の進歩により現在は60~70%程度3-4)になっている.この間,新しい手術方法も開発され,切断術から患肢温存術へと移行し,近年では患肢温存術が主流となってきている4-5).一方,切断術に伴う義肢もソケットや継手などのパーツの開発も進み,義足歩行も格段に進歩し,歩容の向上のみならず走行やスポーツ活動への参加が可能となっている6).しかし,骨肉腫自体の根治療法が確立していない現状では,生命予後と機能予後の双方を念頭においた治療を展開する必要がある.

 そこで本稿では,最近の骨肉腫の治療方法と生命予後について広く概観した後に,近年盛んになってきた各種患肢温存術と切断術について理学療法の立場から比較を行う.その際,特に術後管理の方法や実際の筋力やADLの回復・獲得について,最終到達レベルとともに時間経過による獲得レベルと再発・予後とを対比させた考察を展開する.これらの点は患者のQOLを考えるうえで重要な要素で,ことに悪性疾患においては生命予後や時間因子を重視した機能獲得の過程を十分に配慮した治療計画が実践される必要がある.

とびら

「苦情」をどう受け止める?

著者: 岩井信彦

ページ範囲:P.683 - P.683

 私が勤務する病院では,介護保険がスタートするにあたり,居宅介護支援事業所を開設した.職員でケアマネジャーである者が兼務することとなり,そのなかに私も含まれていた.4月を目前に,私自身が初めてケアプランを立てる方と面接することになった.ケアマネジャーとしての初めての仕事である.部屋に入るなり,「○○さん,私がケアプランを立てさせていただく岩井です.」と真っ先に名刺を差し出し自己紹介をした.目の前にいるのは下腿装具を装着した70歳代後半の男性脳卒中片麻痺者である.

 しかしよく考えてみると,今まで自分の担当になった患者に,名刺を出してまで自己紹介したことはなかったような気がする.前出の男性も,もし医療保険でリハビリの患者として出会っていたなら,名刺を差し出すことはなかっただろう.医療保険で相対した患者と,介護保険で相対した要介護者と,同じ障害高齢者でありながら接する態度を変えている自分をそこに発見して,ショックを受けたのと同時に,初めて医療保険と介護保険の違いを肌で感じた瞬間でもあった.

入門講座 退院指導・2

人工股関節術後患者の退院指導の実際

著者: 神先秀人 ,   飯田寛和 ,   中村孝志 ,   池添冬芽

ページ範囲:P.717 - P.723

 Ⅰ.はじめに

 人工股関節置換術(THA)後の晩期合併症として,ゆるみ(loosening)や骨融解(osteolysis),脱臼などがあげられる.これらに対し,人工関節や手術方法において種々の改良が試みられているが,未だ克服されるに至っていない.したがって,これらの合併症を予防するための人工股関節保護に力点を置いた指導が必要となる.

 しかし,やみくもに活動制限を加えることは,患者の不安を高め,ADLやQOLの低下を招きかねない.更に,THAの対象者が比較的高年齢層であるため,活動性の低下は,骨粗鬆症や心肺機能の低下など“老化現象”を助長することに直結する.すなわちTHA術後の退院指導にあたっては,合併症の予防,身体機能の維持,QOLの向上といった3点を考慮に入れての指導が求められる.

 本稿では主に変形性股関節症(股OA)患者のTHA術後退院指導に関して概説する.

1ページ講座 診療記録・10

リハビリテーション医療におけるPOS

著者: 杉元雅晴

ページ範囲:P.724 - P.724

 POS(Problem Oriented System)を実践するために,SOAPによる診療記録をL.L. Weed博士が提唱し,約30年が経過した.その後,短期間で効率の良い理学療法をしなければいけないという医療状況のなかで,目標設定を主としたクリティカルパス(criticalpathways)が重要視されている.また最近,EBPT(Evidence-Based Physical Therapy)という言葉をよく耳にするようになった.それは,患者の治療を身近な理学療法情報誌や知識で済ませないで,治療の根拠について論じていくことである.そこでは,個々の問題の本質を熟慮しながら問題解決過程を科学的に理論立てし,フローチャート様式に整理して,理学療法を実施していくことが要求されている.しかし,評価内容(A)を記録しにくい用紙となっている.また,ゆきすぎると検査・測定に頼りすぎ,「患者の訴え」に耳を傾けなくなる.一般に,「患者の訴え」よりも療法士による検査結果が優先されがちである.

症例報告

老人保健施設から独居での在宅復帰に長期間を要した大腿骨頸部骨折術後の症例―理学療法をめぐる反省を踏まえて

著者: 金澤寿久 ,   田中敏之 ,   中嶋夕紀

ページ範囲:P.725 - P.729

はじめに

 今回,大腿骨頸部骨折術後,病院で4か月半にわたる理学療法を受け,老人保健施設(以下,老健施設)での9か月間の入所期間を経て,独居での在宅復帰を果たした症例を通じ,入所後4か月目には比較的高いADLレベルを再獲得していたにも関わらず,その後,在宅復帰までに5か月も要した原因について検討した.

TREASURE HUNTING

原点に立ち返って運動療法を見直したい―森岡 周氏(高知医療学院理学療法学科)

著者: 編集室

ページ範囲:P.731 - P.731

 学会発表や誌上発表などで森岡周氏の活躍ぶりをご存じの読者も多いことと思う.理学療法士になって9年目にして,共著を含んで学会発表は100をこえ,まとめ上げた論文は40本にもなるというから,氏のアクティブな仕事ぶりは容易に想像がつこうというものである.

 森岡氏は1971年高知市生まれの29歳.地元の高校を卒業したあと,母親から勧められて理学療法士を志し高知医療学院に入学.学生時代は欠席,遅刻の常習犯,ひたすらアマチュアバンド活動に熱中し,べースを弾く毎日に明け暮れていたそうだ.それでもなぜか成績優秀,3年間で無事卒業し,資格取得後は近森リハビリテーション病院で3年間の臨床経験,そして母校の教員になって6年目,まさに脂の乗り切ったところといってよいだろう.

学会印象記 第37回日本リハビリテーション医学会学術集会

リハ医学の確立に向けて

著者: 石倉隆

ページ範囲:P.732 - P.733

 第37回日本リハビリテーション医学会学術集会が防衛医科大学校病院リハビリテーション部の石神重信先生を会長とし,「リハ医学の確立と展開―リハ医療の有効性―」をメインテーマに,東京ビッグサイトを会場として平成12年6月22日から3日間の日程で開催された.

 江東区有明に位置する会場への往復には,新交通“ゆりかもめ”を利用し,その車窓からはあのフジテレビ新社屋や東京タワー,レインボーブリッジ等が見え,“おのぼりさん”には絶好のロケーションであった.また,会場もさすがにビッグで,同じ会場内で異なる複数の催事が同時進行している様には驚きと異様さすら感じ,大都会東京を強く印象づけられる学会となった.

第34回日本作業療法学会

新世紀の幕明けを告げる学会

著者: 網本和

ページ範囲:P.761 - P.761

 汗ばむような五月晴れの陽光のなか,横浜山下公園近くの神奈川県民ホールにおいて5月25,26,27日にわたって第34回日本作業療法学会が開催された.小生がこの学会に参加させていただくのは名古屋で行われたとき以来であるが,その当時に比べ,更に多くの会員の参加があったものという印象を受けた.とにかく大盛況なのである.どの会場も気温の上昇を上回る立ち見の出るほどの熱気であった.またこれは理学療法士学会でも同様であるが,若い世代の参加が多く,自らの上に流れた時間をふと思うほど華やかさが漂う.

 学会のテーマは2000年の節目にふさわしく「作業療法―新世紀へのプロローグ」であり,前日の4種類の教育セミナーを皮切りに436題の一般講演,国際シンポジウム,13の研究会グループによるワークショップなど多彩かつ幅広い関心を鼓舞しうる内容であった.

講座 運動発達障害・4

運動発達障害に対する理学療法―在宅・訪問・通所の場合

著者: 工藤俊輔

ページ範囲:P.735 - P.743

はじめに

 肢体不自由児通園施設は1963年,肢体不自由児(入所)施設に併設された通園部門として活動を開始し,1969年に制度化された.肢体不自由児施設の位置づけは医療機関であり,特に入所施設は整形外科を中心とした医療施設として発展してきた.一方,対象児が在宅であり年齢も低い通園施設は,育児援助や家庭生活への支援などを求められる場面が多く,必然的に福祉の色彩が強い施設として発展してきている.

 また一方で,障害のある子ども達への援助目標はノーマライゼーション理念の浸透とともに大きく変化し,療育には「機能障害の改善」だけでなく,「障害があるための育ちにくさの軽減」や「地域社会で豊かに生活できる人格の育成」が求められるようになっている.つまり,「歩ける」「話せる」という発達指標の向上だけでなく,「ソーシャルスキルや社会性,生きる意欲の育成」が目標となり,療育における育児援助や相談事務の重要性が認識され始めている.山川は1)肢体不自由児通園施設の理学療法士は,①障害像の変化と障害の重度化への対応,②多様な障害内容やニーズの把握,③在宅生活を支援する地域リハビリテーションの導入,④ケアマネジメントの考え方の導入,⑤小児理学療法効果の評価基準の確立,を今後の課題として提言している.

 そこで,まず始めに療育の理念,発達障害の概念について触れ,特に在宅・訪問・通所の対象となる運動発達障害児が必要とする教育との連携を中心に述べることにする.

プログレス

新生児・未熟児の全身運動評価

著者: 小西行郎 ,   佐々木綾子 ,   高谷理恵子

ページ範囲:P.744 - P.746

はじめに

 人は,生後約1年をかけて,一定の順序に従って運動を発達させ,歩行するようになる.そうした運動の出発点として,新生児の運動は一般に非常に未熟なものと受け止められている.小児科の教科書ではこうした新生児の運動は生得的に皮質下や脊髄などに備わっている神経回路網があって,一定の刺激を与えるとそれに応じた運動パターンを出力すると書かれている.そして,生後数か月たって大脳皮質が発達してくるとその反射が抑制されるようになり,運動の制御は大脳皮質にとって代わられるようになる.

 この説は一見Piagetの構成論1)を支持し,運動の随意性の出現と大脳皮質の発達とを結びつけられるので都合がよく,いまでも我が国ではこの説が広く支持されている.しかし,最近の発達行動学的研究では,新生児が外界から特別な刺激を与えられなくても,自発的に手足を動かしていて,こうした運動のなかには様々な原始反射が含まれているという説2)や新生児が意図的に物に向かって手をのばしたり3),人の顔を模倣したりすることが4)いわれるようになり,先に述べた古典的な運動発達論は大きく見直しを迫られている.

 そうしたなかで,特にPrechtlらは胎児期から乳児期までにみられる自発的な全身運動(general movement;GM)に注目し,この運動の性質を観察することによって,児の脳障害の有無を判定することができることを見い出した5-7).ここではそうした彼らの報告と我々の行っているGMの客観的診断法などについて述べる.

資料

第35回理学療法士・作業療法士国家試験問題(2000年3月3日実施) 模範解答と解説・Ⅳ―理学療法・作業療法共通問題(1)

著者: 坂井泰 ,   高橋正明 ,   内藤延子 ,   水間正澄 ,   渡辺雅幸

ページ範囲:P.747 - P.753

雑誌レビュー

“Physiotherapy”(1999年版)まとめ

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.754 - P.760

はじめに

 本誌“Physiotherapy”は英国理学療法協会(The Chartered Society of Physiotherapy)が発行している機関誌で,(巻数から判断して)85年にもわたって英国理学療法士の,また世界の理学療法士の代表的な情報資源となっている.医学情報データベース“Medline”には収録されていないため検索に制限があるものの,看護学や保健関連分野のデータベース“CINAHL注1”や“Embase注2”で過去の文献検索が可能になっている.

 1999年の85巻には,54篇の査読を受けた研究論文(Peer-reviewed papers)と1篇の症例報告,14篇の論説(Editorials),6篇の論評(Commentaries),1篇の学会印象記,30通の手紙,更に111冊の新刊本紹介,7篇のビデオ紹介が掲載されている.“Peer-reviwed papers”を日本理学療法士協会の7つの専門領域部会に(半ば強引に)照らして分類すると表のようになり,骨・関節系,神経系理学療法関係の論文が多い.また,その他に分類されうる論文も多く,腫瘍学(oncology)や虐待(abuse)といった話題も含まれている.

 本稿では,特に筆者が興味を引かれ,臨床上有用と思われた論文を“Peer-reviewed papers”のなかから紙数の許す限りレビューした.85巻に掲載された全ての論文のタイトルは,最終号(12号)の中綴じに目次として挟まれているので,参考にしていただきたい.

書評

―米本恭三,他(編)―リハビリテーションにおける評価Ver.2

著者: 丸山仁司

ページ範囲:P.723 - P.723

 評価とは,各機能の検査測定,患者,家族および環境などの情報収集・分析により,その人の全体像を把握すること,すなわち,統合・解釈することである.評価は,リハビリテーション医療において基本的で,しかも必須な部分である.リハビリテーションの分野では,評価に始まって,評価に終わるといわれているように,評価の重要性は,誰でも認知している.リハビリテーションの効果判定を科学的に証明し,より効果のある治療の選択,治療法の開発,すなわち,科学的根拠に基づいた治療であるEBM(Edidence Based Medicine)が最近,叫ばれている.これらの効果判定で重要なことは,測定指標および評価表の選択である.このような時期に,本書が発行されたことは非常に有意義である.

ひろば

介護保険制度について思うこと

著者: 原口忠

ページ範囲:P.734 - P.734

 4月1日より公的介護保険制度が始まった.私の勤務する病院(100床)では,一般病床のほかに50床あった療養型病床群のうち,30床が介護保険適用の介護療養病棟の指定を受け,20床が今までどおりの医療保険適用の療養型病床群となった.

 介護療養病棟に入りたくても,自立や要支援の認定を受けたいわゆる社会的入院に近い患者は選択の余地なく,医療保険適用の療養型病床群に入らざるを得ない.私の理学療法の担当患者の1人である76歳のSさんは,「要介護5」の認定を受け,介護療養病棟に入った.これまでは身体障害者手帳の1級を所持していたので,食事代程度の費用しか必要なかったが,今回は食事代を含めてその3倍近い自己負担となった.

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文献抄録

ページ範囲:P.762 - P.763

編集後記

著者: 内山靖

ページ範囲:P.766 - P.766

 34巻10号の特集は「悪性腫瘍治療の進歩と理学療法」です.

 悪性新生物は生活習慣病とともに現代医療の双璧ともいえます.特に基礎科学の著しい発達をもってしても原因が究明されず,対策が未確立な悪性腫瘍や難病には多くの医学者・臨床家が忸怩たる思いをもっています.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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