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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル34巻11号

2000年11月発行

雑誌目次

特集 脳卒中のバランス障害

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.769 - P.769

 脳卒中例の基本的な問題のなかで,その定義を含めて「バランス障害」ほど複雑な様相を示し,それに伴い様々な治療的接近が試みられているものはあるまい.脳卒中のバランス障害には多くの要因が交絡していることは周知の事実であり,これまでにも様々な形で探究されてきた.

 しかし,最近の測定機器の進歩,動的バランスという概念の普及から新たに脳卒中のバランス障害を捉えなおす時を迎えている.本特集ではこの古くて新しい,しかし極めて重要な課題に関して多角的な分析を行っていただいた.

脳卒中のバランス障害の経過とその対応

著者: 望月久

ページ範囲:P.771 - P.776

 1.はじめに

 バランス能力の定義は明確には定まっておらず,関連する用語である,立ち直り反応や平衡反応,姿勢反射との臨床的な対応関係も議論のあるところである1).筆者らはこれまで,「バランス能力は身体重心線を一定の支持基底面内に収めることのできる能力である」という最も操作的な定義を基本に,重心動揺計を用いてバランス能力を評価する指標について検討を行ってきた.これまでの結果では,患者の歩行能力や臨床的なバランス能力評価法との対応では,身体の動揺の大きさを表す重心動揺面積と,一定の支持基底面内で身体重心を随意的に動かせる範囲である安定域面積(重心移動域面積)の比をとると,疾患によらない普遍的な意味でのバランス能力と強い関連を示すことを見いだしている2)

 本稿では重心動揺計を用いたバランス能力評価法の紹介と脳卒中患者のバランス障害の特徴およびバランス障害の経過について,これまでの研究結果と症例を基に検討したい.

脳卒中片麻痺患者のバランス機能と歩容

著者: 福士宏紀 ,   諸橋勇 ,   高橋明

ページ範囲:P.777 - P.783

 1.はじめに

 歩行は地球上で人間が行う移動運動のなかで最も自然なものであり,また生活のあらゆる面で不可欠な運動である1).脳卒中患者の関心の多くが「再び歩けるか」という点に注がれ,臨床場面において歩行の獲得に多くの時間が費やされるのもこのためであろう.

 脳卒中患者の姿勢や歩行は神経学的病変に起因する特徴を呈するが,脳病変の直接的結果あるいは間接的に起こる問題,損傷に対する代償として起こる問題は個人差が非常に大きいことから,治療の根幹にかかわる障害構造を理解することは非常に複雑な過程となる.そのため適切な治療法の選択を誤ったり,治療期間が遅延してしまうといった事態が非常に起こりやすい.歩行という移動手段において最も重要なものは安定性に関する能力であり,患者がどのように安定を獲得しているかという視点から歩行障害を理解することは治療戦略を考えるうえで非常に重要なことと思われる.

 本稿では脳卒中片麻痺患者のバランス機能を制約する因子について検討し,片麻痺患者の姿勢や歩容との関連について考察する.

脳卒中のバランス障害と高次神経機能障害

著者: 髙杉潤 ,   沼田憲治

ページ範囲:P.784 - P.790

 1.はじめに

 近年,理学療法の分野でも高次神経機能障害の話題が多く取り沙汰されている印象を受ける.高次神経機能障害から波及する運動機能の影響について,その関連性の高さが明らかにされてきたことが主な要因であろう.

 脳卒中患者のバランス障害の原因ひとつをみても,単に運動麻痺や感覚障害,廃用症候群だけでは説明しきれない難解な問題が実に多いことに気づく.このような場合,高次神経機能障害と関連づけることで解決の糸口を見い出せることも少なくない.中枢神経疾患患者に対する理学療法をより有効なものにするために脳機能全体を含めた総合的な評価がなされることが重要と考える.

 脳卒中のバランス障害には様々な要因が関与するが,本稿では高次神経機能障害による影響について主にどのような徴候があるのかを述べる.アプローチについては,筆者らの臨床上の工夫点も一部触れながら,諸家の報告を紹介することにしたい.

脳卒中の動的バランスと装具の効果

著者: 梶原良之 ,   石神重信

ページ範囲:P.791 - P.799

 1.はじめに

 系統発生上人間の立位姿勢の獲得は極めて重要な意味を持っており,人間の進化を方向づけたものである.重力下にて存在し続ける以上,四足歩行から二足歩行へと変化していくうえで体重心の位置を調節する必要があり,筋紡錘入力による頸部・体幹・骨盤帯・下肢への抗重力筋の維持作用1)が必要となり,その制御方法も,反射性・反応性・予測性へと姿勢制御様式2)による違いや,前庭系・視覚系・体性感覚系などの生体機構3)の違いにより,複雑な環境に中枢部からの各効果器,受容器が対応できるようになった.

 我々は臨床上,常に転倒という不測の事態に対処する必要が多くなり,複雑に変化してきた回路を理解し解明しなければ転倒を起こさないための検討はできない.これに対して各施設においてもバランスの評価・トレーニングを行っており,その研究報告は年々増加傾向を示し4-7),評価・トレーニング機器としても多種多様な物が各メーカーにより開発検討されている8).しかしながら,評価・検討項目も異なり,統一された動的バランスの指標は確立されていないのが現状である.

 今回,動的バランス障害について文献的・力学的・神経学的見地から検討を行い,当院における脳卒中片麻痺患者の動的バランス測定の検査データを処理し,更に装具におけるバランスへの影響について検討を行って新たな知見を得たのでここに報告する.

とびら

悩める今日この頃……

著者: 米澤有里

ページ範囲:P.767 - P.767

 今年で理学療法士となって12年目,ちょうど病院勤務と行政職に携わった期間が等しくなる.このたびの介護保険の導入を機に,改めて行政における理学療法士のアイデンティティについて考え悩むこととなった.

 私が学生の頃は地域リハビリという言葉はまだ新しく,履修科目にもなかった.その頃は老人保健法の制定後間がなく,機能訓練事業や訪問指導事業を立ち上げている市町も少なく,理学療法士が地域に出ることが珍しい時代であった.やがて少しずつ地域リハがすすみ,学会や研修会でも話題になるようになった.

入門講座 退院指導・3

介護療養型病床入院患者の退院指導の実際

著者: 西田宗幹 ,   東條秀則 ,   植松光俊

ページ範囲:P.801 - P.805

 Ⅰ.はじめに

 急速に高齢化が進行するなか,介護保険という新しい保険の後押しもあり,新しい病棟形態として「介護療養型病床(以下,療養型病床)」が誕生した.療養型病床の前身として設定された「介護力強化病棟」は在宅生活へのスムーズな移行の実現を目的としたものであった.

 当院も療養型病床をもって,年間約260名の高齢障害者を中心としてリハビリテーション(リハ)医療を展開しており,平成9年度から病棟作業療法を,平成11年度から病棟理学療法をリハ診療システムとして導入した.そのシステムを定着させるために,種々の問題に出会いながらも,その問題解決に悪戦苦闘しているのが現状である.

 病棟トレーニングを中心としたリハアプローチを実施していく療養型病床では,患者への退院指導をどのように考え,実施していけばよいか,不十分な経験ではあるが,当院における方法を紹介しながら,退院指導の問題点についても触れることにしたい.

講座 運動発達障害・5

運動発達障害に対する理学療法―重症心身障害児の療育

著者: 金子断行

ページ範囲:P.806 - P.811

 重症心身障害児治療の現状

 1.重症心身障害児の発達

 重症心身障害をもつ子どもの発達を規定するのは,先天的要因(遺伝,胎生期からの呼吸や栄養の条件など)や直接脳障害の原因となる感染症や外傷など後天的要因だけにとどまらない.それらの障害が内在するか否かを問わず,環境刺激との相関で発達は進む.すなわち,胎生期から出生後の時間的経過のなかで,主体と環境との相互作用を通じて児は発達を遂げるのである.

 したがって,貧しい環境刺激のもとでは,健常児でさえ十分に能力を開花できない.また,内発的な力が乏しい重症心身障害児では,通常の刺激下にあっても歪んだ発達を遂げる1).そのため,彼らには特別に配慮された環境設定(療育)が必要であり,理学療法士には,その療育の場で姿勢運動に対する治療介入を通して,育児に対する専門的な援助を行うことが求められる.

TREASURE HUNTlNG

統合教育の実現を夢見て―酒井 洋氏(那覇市療育センター)

著者: 編集室

ページ範囲:P.815 - P.815

 沖縄本島を中心に同心円を描くと,大抵のアジアの国々がその円のなかに収まる.沖縄はいわばアジアの“へそ”なのだ.その“へそ”の地からご登場いただくのが酒井洋氏.那覇市療育センターに職場をもちながら,在宅障害児の地域療育活動を支援する「あひるの会」代表,小児在宅人工呼吸療法医療基金「ていんさぐの会」副会長として地域療育活動に熱心に取り組んでおられる酒井氏の幅広い活動の一端を紹介する.

あんてな

「CP勉強会」の活動

著者: 高橋理恵

ページ範囲:P.816 - P.817

 関東地域では,発達障害をもつおこさんとそのご家族に良質で良心的な治療や援助を提供するという目的のもとに,有志が集まってCP勉強会を続けています.今回,この勉強会の沿革と活動内容を紹介することで,現在の会員が勉強会の歴史を知り自分達の立場を再確認するとともに,今後の「CP勉」の活動を再考するきっかけとしたいと考えています,また本稿が,新たに勉強会を立ち上げたいとお考えになっている皆さんのお役に立てば幸いです.

 今年度会員は関東地域で発達障害児を担当している理学療法士,作業療法士,言語聴覚士で,会員数は現在163名(理学療法士103名,作業療法士57名,言語聴覚士3名)です.会員の経験年数は,10年以上45名,10年目から4年目56名,3年目以下62名で,地域別では東京23区50名,同・多摩地区53名,埼玉県29名,群馬県20名,神奈川県5名,千葉県2名,山梨県3名,茨城県1名と1都6県に広がっています.

1ページ講座 診療記録・11

評価会議資料

著者: 菊池詞

ページ範囲:P.818 - P.818

 リハビリテーション評価会議は(施設により異なるが)患者の入院から退院までの諸相において行われ,初期,中期,退院時などがある,評価会議時に提示される資料に記載されるべき内容については「報告書」(第9号)の稿と重複するので,ここでは主に中間評価会議について会議の目的と必要な検討事項について述べることにする.

 まず,評価会議なるものが診療時間を削り多くのスタッフの参集を求めて行われる理由はどこにあるのかを考えてみよう,身体障害領域のリハビリテーション医療が対象とする運動機能・基本動作障害,そして日常生活活動の障害は,多種多様な要因に影響される.結果,これに係わる専門職種は多職種となることから,対象患者の情報と問題点を共有化,これを時系列上に配置し,プログラムの調整や方針の決定を行うことが必須となるからである.

報告

移乗機による排泄介助の試み

著者: 佐藤春彦 ,   永山定男

ページ範囲:P.819 - P.821

はじめに

 洋式トイレでの排泄に要求される動作は大きく分けて,便器への立ちしゃがみと衣服の着脱である.このどちらかを介助するだけなら,1人の介護者でも可能である.しかし,立位が不安定で衣服の着脱もできない重度高齢障害者を,1人で介助してトイレで排泄させるという場合は大きな困難を伴う.こうした介助の困難さにより,被介護者は自らの好みに関わらず,ベッド上での排泄を余儀なくされる恐れもある.

 便器への立ちしゃがみと衣服の着脱のどちらか一方を介助機器で補えば,介護者に過度の負担をかけず,障害者に洋式トイレを使用させることが可能になるかもしれない.この仮説の下,我々は便器への立ちしゃがみを介助する機器として,衣服の着脱が可能な移乗機を用意した.移乗機が実際の排泄介助場面で有効に使われるか否かを明らかにすることを目的に,2か所の老人保健施設において調査したので報告する.

プログレス

摂食嚥下治療―運動機能障害へのアプローチ

著者: 長谷川和子

ページ範囲:P.822 - P.824

 1.はじめに

 1995年第1回の日本摂食嚥下リハビリテーション研究会が開かれ,今年は第6回(学会に変更)を数える,この間の摂食嚥下治療の発展には目覚しいものがある,これほど基本的な生存や楽しみに関わる機能でありながら数年前まで一般に注目されなかったのはむしろ不思議なほどで,目の前にありながら自らの既得の知識の範囲を越えて物事を見ることの難しさを改めて思い知らされる.

 摂食嚥下治療は,この数年の積み重ねで,必要な観点や基本的な治療方法を提示する啓蒙的な段階から,個々の障害像に即して問題を解決してゆくための方法を模索する段階に入ったといえよう.

 評価では,嚥下造影(VF)検査が誤嚥の有無だけではなく,摂取量や姿勢を変化させた場合の効果を診る治療的評価として行われるようになった.また,内視鏡検査で直接咽喉頭の形態や唾液の喉頭流入の様子を観察することも行われている.これらは誤嚥を防ぐための条件を可視的に検索することをある程度可能にした.

 嚥下食についても,誤嚥しにくい食物という代償的な観点に,機能改善を促す食物の物性やその段階づけという治療的観点が加わってきた.リハビリだけでは解決しない障害に対する手術実施件数の増大も報告されている.

紹介

兵庫県下の訪問リハビリテーション実施機関におけるサービス提供の実態

著者: 村上雅仁 ,   正木健一 ,   小嶋功 ,   大籔弘子 ,   神沢信行 ,   田中真弓 ,   岸典子 ,   澤村誠志

ページ範囲:P.825 - P.829

はじめに

 現在のリハビリテーション(以下,リハ)サービス体系のなかでの理学療法,作業療法を実施する制度上の流れをみると,老人保健事業における機能訓練事業などの予防的リハ,急性期・回復期の治療的リハ,介護保険で対応される通所リハ,訪問リハなどの維持期リハのシステムが存在する.しかし,急性期,回復期,維時期の各期におけるリハの役割が曖昧で,地域間格差から生じるリハサービス提供体制が十分に確立されていないのが現状である.

 澤村は兵庫県で1960年から,兵庫県身体障害者更生相談所の地域リハ活動として巡回相談と在宅指導訪問を行ってきた.その多くの経験から,保健・医療・福祉の縦割り行政組織のため関係職種の連携がとれず非効率であることを問題と捉え,地域活動における横割り連携の必要性から,1973年,兵庫県リハ協議会を設立した.更に,1987年に兵庫県域の中核となる県立総合リハビリテーションセンターの再構築とともに,第二次保健医療圏域(兵庫県は10圏域)におけるリハ中核病院の設置を目指した.

 これには,地域リハの普及・必要性の啓蒙や地域の既存のリハ機能の有効活用を図り,地域リハの拠点を拡充する必要があること,また,ノーマライゼーションの定義から,可能な限り住み慣れた家の近くでリハが行われることが望ましいと考え,リハの圏域を第二次保健医療圏域と同一にすることが適切であるとの判断があった.

 兵庫県では,第二次保健医療圏域内でリハ機能を有してシステム推進の核となり,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士などの専門職員を配置したリハ専門病院のなかから,保健・医療・福祉の連携等協力体制の中核となる10病院(1997年末現在)を地域リハ中核病院として位置づけ,様々な取り組みを実施してきた.地域リハ中核病院の機能は,①圏域内住民に対する急性期リハ,専門リハ,通院リハの総合的な提供,②圏域内の医療機関・市町(機能訓練などの)看護婦,保健婦などに対する技術指導③圏域内のリハ従事者に対する教育・研修とリハ情報の集積・提供および関係機関の連携の中核的機能を果たすことの3つとした.

 その地域リハシステムが圏域内で求められることは,①患者が発症してただちに入院する病院で原疾患の治療に並行して行われる急性期リハ,②これに継続するリハ専門病院で入院して行われる回復期リハ,③病院を退院後自宅から病院へ通院する外来リハ,④機能回復を必要とする者が医療機関以外の市町の保健センター等に出向く維持期リハで,有機的な連携のもとにそれらの機能が遂行されなければならない.

 兵庫県はこの施策とは別に,過疎地域である但馬地域に,保健・医療・福祉の一体的推進および県と市町の協力関係の構築などを基本理念に,市町への理学療法士等を派遣し地域ケアサービスを支援する事業を積極的に行う「兵庫県立但馬長寿の郷」を1994年に設置するなど様々な展開を行ってきた.その後,年月が経過して市町での機能訓練事業の充実,訪問リハへのニーズの増大などリハを取り巻く社会情勢が変化してきた.しかし,保健・医療・福祉の効果的な連携の必要性を求める意見が多いなか,医療機関と行政の訪問活動の役割も曖昧なままで様々なサービスが効率的に提供されていないと考えられる.

雑誌レビュー

“Australian Journal of Physiotherapy”1999年版まとめ

著者: 若山佐一

ページ範囲:P.831 - P.835

はじめに

 本誌は,オーストラリア理学療法協会の機関誌として年4回発刊されている.創刊が1954年であり,1999年で45巻となる,1990年から続いていた表紙のデザインが45巻から変わり,暗青色の背景に,薄青色のヒトの形にも似せたPhysiotherapyのPを表す大きな‘P’がデザインされ,2号の読者からの書簡では概ね好評であった.

 構成内容および論文数は,Editorial論説1編,Leading article筆頭論文3編(以上は依頼論文),Original article原著論文16編,Short report短報(case reportを含む)6編,Professional issue専門的論点1編,Topical therapyトピック1編(以上は原則的に投稿論文),Critically appraised Paper批評的論文評価(文献批評),書評,書簡となっている.

資料

第35回理学療法士・作業療法士国家試験問題(2000年3月3日実施) 模範解答と解説・Ⅴ―理学療法・作業療法共通問題(2)/共通問題(1)補充解説

著者: 坂井泰 ,   高橋正明 ,   内藤延子 ,   水間正澄 ,   渡辺雅幸

ページ範囲:P.837 - P.841

書評

―David S. Butler(著),伊藤直榮(監訳)―バトラー・神経系モビライゼーション―触診と治療手技

著者: 藤縄理

ページ範囲:P.783 - P.783

 本書は神経系モビライゼーションの世界的な第一人者であるDavid S.Butlerが著した“Mobilisation of the Nervous System”の日本語訳である.原著は1991年に初版が出版され世界中で読まれていて,Butler自身も世界中で招待され講習会を行っている.日本では1997年に日本理学療法士協会第32回全国研修会で特別講演と研修後の講習会を行った.今までに3回来日し,全国各地で5回講習会を行っている.また,原著の協力者で“Clinical Reasoning”の章を担当しているMark A. Jonesは1994年以来5回来日し,Maitland Conceptの徒手的療法講習会を行っていて,神経系のモビライゼーションについても紹介している.それ以来,ずっと原著の翻訳が待ち望まれていた,まさに垂涎の書である.

ひろば

PNFスクールに参考して

著者: 勝浪省三

ページ範囲:P.814 - P.814

 1)はじめに

 PNF(固有受容性神経筋促通手枝)は,1940年代初頭,Kabat博士とPTであるMargaret Knott氏によりワシントンDCで開発が始られました.その後1948年,カリフォルニアのバレーホにカイザー病院リハビリテーションセンターが開所されたとき2人はバレーホに移り,同年PNFスクールを開校して研修生を受け入れ,PNFの啓蒙に努めました.筆者は1999年7月から12月までの半年間,この,PNFスクーリに参加してきたので,その内容を紹介したいと思います.

 このプログラムは3か月コースと6か月コースより成っており,どちらに参加するかは申し込む時点で参加者が決めます.3か月コース参加者6名と6か月コース参加者6名は,最初の3か月間同じプログラムを受けます.この3か月間のプログラム終了後,6か月コースの6人は更に3か月研修するというシステムです.参加者の多くは米国,ヨーロッパからのPTで占められており,日本からの参加者は現在まで3か月コース修了者が11名,6か月修了者が筆者を含めて5名です.また,現在2名の日本人が6か月コースを受講されています.

21世紀に向けての理学療法

サイバースペースを利用した高度専門教育

著者: 小澤純一

ページ範囲:P.824 - P.824

 「脱皮できない蛇は滅びる」,あるドイツの思想家の言葉です.この言葉は,医療・福祉の急激な変革の中に身をおく理学療法士の,21世紀に向けてのあるべき姿を示しているのではないでしょうか.

 臨床での複雑化・高度化するニーズに対応していくには,新しい知見や技術の導入が不可欠です.また,より深くクライアントの人間性を探求しようとすれば,セラピストの深い洞察力も必要です.それまでの自己を止揚し,新たなニーズに対応できるように生成していくためには,教育を受ける新たなチャンスが必要です.

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文献抄録

ページ範囲:P.842 - P.843

編集後記

著者: 網本和

ページ範囲:P.846 - P.846

 異なった意見をうまく取りまとめ,円満に物事を進められる能力を「バランス感覚がよい」などと表現することがあります.このようにバランスという言葉には初めから多彩な意味が含まれているようです.特集テーマは「脳卒中のバランス障害」として,ひとつの疾患,ひとつの障害に絞り込んで論議を尽くそうとさせていただきましたが,いかがでしたでしょうか.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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