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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル34巻12号

2000年12月発行

文献概要

あんてな

米国の医療制度と在宅リハビリの関わり

著者: 早野真佐子1

所属機関: 1インターナース社

ページ範囲:P.892 - P.894

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 Ⅰ.米国医療制度の転機

 米国では,1980年代の連邦政府によるDRG(診断関連グループ)制度導入により,病院は在院期間を大きく短縮させる必要性に迫られた.DRG制度では,診断関連グループに対する病院への医療費償還額があらかじめ決定されているので,同一の診断関連グレープに属する患者の医療費は,入院期間の長短にかかわらず,決められた定額しか支払われない.つまり,患者が長く入院すればするほど,病院は赤字経営となる可能性が高くなる.逆に,短期間で効率的に質の高いケアを提供できる病院は,経営効率が高まり良好な経営状態を保つことができるわけである.最初は連邦政府の運営する高齢者対象のメディケア患者に適用すべく導入された制度であるが,政府ができるのなら民間でやっていけない訳はない,とばかりに民間の保険会社もすぐこの方法に追随した.

 80年代末には,このような状況に危機感を抱いた東部の病院で,患者ケアの質を維持しながらもケアの効率化を計るケースマネジメントが初めて導入された.ケースマネジメントの中心的なツールであるクリティカルパスは,病院内における同一疾患グループに属する患者のケアを標準化することに成功し,在院期間短縮に大きく貢献した.言うまでもなく,ケースマネジメントは,急性期ケアを行う病院を中心に全米で急速に広まっていった.更に 90年代に入ってからのマネッジドケアの隆盛が,患者の早期退院に拍車をかけた.こうして,全米において,急性期ケアを効率的に効果的に行い,患者を中間施設や家庭へ早期退院させざるを得ない状況が現出したのである.患者は今まで以上に重い状態で自宅や中間施設へ退院していくことになった.一応急性期を脱して状態は安定したものの,まだ各種のヘルスケア専門家によるケアを必要とする患者たちが,数多く地域に帰っていくことになったのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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