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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル34巻3号

2000年03月発行

文献概要

プログレス

学習する脳

著者: 大野耕策1

所属機関: 1鳥取大学医学部生命科学科神経生物学講座

ページ範囲:P.198 - P.199

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 1.はじめに

 生後直後から,私たちは一生にわたって,いろんな事項を記憶し,いろんな操作や動作を学び続けます.母親の声や顔を覚え,食べ物を咀嚼することを学び,歩行を獲得し,好きな物,嫌いな物や怖い物を覚え,言葉を獲得し,更には数,文字を学び,高度の数学や外国語まで獲得していきます.五感からの外部情報を習得する過程を学習といい,それまでのあらゆる経験を保持する過程を記憶といいます.記憶と学習は密接な関係にあり,脳はすべての種類の学習と記憶に関与し,その記憶した情報をもとに,外部情報の認知を行い,行動を決定しています.

 この学習・記憶は大きく2つに分けられます.1つはある事実の記憶で,人,場所,時間など「~」を覚えている,あるいは知識のように「~」を知っているという記憶で,陳述記憶(episodic memory,explicitmemory)と呼ばれます.陳述記憶は常に意識される記憶です.もう1つはあることをどのようにするかという手順,習慣,運動の技能の記憶で,通常,意識しないで学習していくものを手続き記憶(procedure memory,implicit memory)と呼びます.

 学習・記憶には脳の多くの部分が関与していることがわかっています.陳述記憶は大脳の海馬を含む側頭葉が重要な役割を果たし,手続き記憶には小脳,扁桃体,大脳基底核が重要な役割をしていると考えられています.更に,学習・記憶には神経と神経の結合場所であるシナプスでの興奮性が変化し,更に長期の記憶・学習にはシナプスの形態変化を伴うことが明らかになっています.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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