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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル34巻6号

2000年06月発行

雑誌目次

特集 精神疾患をもつ患者の理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.375 - P.375

 理学療法現場においても,精神疾患を合併した片麻痺患者,身体運動能力の低下をきたした精神分裂病患者,自殺企図患者の理学療法が増えてきているが,患者と治療者との対人関係のあり方,自発性を引き出す方法など精神疾患に関する理学療法の体系的アプローチは十分とは言いがたい状況である.そこで,適切な精神面の評価や専門医との連携,理学療法を展開するうえで留意すべき点について,第一線で活躍している方々に解説をお願いした.

精神疾患をもつ患者のリハビリテーション

著者: 伊藤良介

ページ範囲:P.377 - P.382

 1.はじめに

 精神疾患は決してまれな疾患ではなく,精神疾患と他の疾病が合併することも珍しくない.リハビリテーション(リハ)の場でも精神疾患と身体障害を合併する障害者をみることは多いが,リハはその治療効果が障害者本人の意志や意欲に依存する部分が大きいため,精神疾患をもつ身体障害者に対するリハは難しい問題を抱えることになる.ここでは,神奈川リハビリテーション病院での治療の進め方を紹介し,最近の実情を示し,このような障害者に対する一般的な対応を検討する.またこれは,リハ医の立場から精神疾患を合併する身体障害者のリハをいかに円滑に効果的に進めるか,との観点から経験的にまとめたものであり,精神疾患に対する考え方や治療環境の違いなどによって様々な方法論があり得ることをあらかじめお断りしておく.

精神疾患をもつ脳卒中片麻痺患者の理学療法

著者: 坂本周介

ページ範囲:P.383 - P.388

 1.はじめに

 精神疾患に対する狭義の意味での理学療法,運動療法は,現在のところ確立されたものはない.我々が精神科病棟で理学療法を行う場合は,主として身体的問題に関してであり,その対象には,内部障害,予防医学としての健康増進などが含まれる.広義の意味では,運動の効果として精神安定,攻撃性の発散,達成感の獲得など精神・心理的な面も含まれるが,精神科においてこのような効果を期待して運動を処方する場合は,理学療法というより運動という活動(activity)を利用した行動療法や精神療法の範疇に含まれるのではないかと考えられる.

 理学療法士が精神面の効果を目的として運動処方に関わる場合は,精神・心理的状態を評価して個々の患者の状態に合わせて理学療法プログラムを立てる必要がある.一般に精神科病棟における理学療法士の業務は,精神疾患の合併症として身体障害が起こった場合の一次,二次障害の治療,廃用による二次障害の予防,あるいは長期入院による体力低下防止を目的とした健康増進など身体的アプローチが中心となる.

 近年,精神科でも入院患者の高齢化が進み,特に長期入院を余儀なくされる慢性精神分裂病(以下,分裂病)患者等では,元来の精神疾患のほかに,内科疾患や加齢に伴う変形性関節症,病棟内での転倒による骨折など整形疾患の合併が多くみられるようになってきている.

 そこで本稿では,精神疾患としては最も一般的であるが,多様な精神症状が出現する分裂病を中心に論を進め,そうした症状に対する理学療法としての対応,リスク等について,筆者の経験を踏まえて述べることにする.

自殺企図のあった患者の理学療法―分裂病患者を中心に

著者: 三木晃

ページ範囲:P.389 - P.394

 1.はじめに

 精神障害は決して特殊な病気ではない.このストレス社会において誰もがかかりうる可能性のある身近な病気である.分裂病の発病率だけみても,文明社会では100人に1人弱といわれており,職場,学校でのつまずき,家庭内での葛藤などのストレスが誘因となって起こる.その結果,自殺という不幸な事態を招くこともある.

 ところが,こころの病気を専門的に扱う精神科に行きにくいことも事実である.「内科に通っています」とはいうが,「精神科に通っています」とはなかなかいえないものである.精神障害という言葉だけで誤解や偏見,いわれのない差別を受けたりもする.昨今のテレビや新聞の報道には,誤解を生むような批評,批判的報道が多い.精神障害は“こころの病気”であるという正しい知識と理解が必要である.

 本稿では,まず,藍野病院リハビリテーション科理学療法部門の特徴を報告し,次に分裂病を中心に,心理状態の把握,能力障害の捉え方,対応の基本的態度,臨床での対応などについて触れる.

心因性運動障害をもつ患者の理学療法

著者: 横田一彦 ,   海島麻衣

ページ範囲:P.395 - P.401

 1.はじめに

 理学療法では神経疾患や整形外科疾患などの器質的疾患とそれに由来する身体障害を治療の対象とすることが圧倒的に多いが,そのなかで心因性運動障害をもつ患者を担当することも皆無ではない.理学療法の対象となる主な心因性運動障害は,伝統的あるいは臨床診断では転換型ヒステリーである.また,身体疾患と心因性運動障害や解離型ヒステリーとの合併もまれではなく,理学療法士は対応に苦慮することも多い.

 ヒステリーという言葉は,転換状態もしくは解離状態を主症状とする精神医学的障害に対して用いられてきた.主に健忘や人格的意識の変容などの精神症状を示すものを解離型ヒステリーとし,随意運動系や感覚系の症状を示すものを転換型ヒステリーとする分類が一般には行われている.

 しかし,米国精神医学会のDSM-Ⅲ(diagnostic and statistical manual of mental disorders,third edition,1980)1)ではヒステリーという診断名は削除されている.これはヒステリーが語源として子宮(hysteria)が体内を迷走して生ずる女性の身体的苦痛であるという考えから発しているため女性特有の病態であるという偏見を生ずること,一般の日常会話にも登場するほど広まっているが学問的な概念からは異なった内容を意味していること,多種多様な病態を包含していることなどが理由とされている2)

 そして,解離型ヒステリーは解離性障害とされ,転換型ヒステリーは「身体表現性障害」のなかに「転換性障害」「身体化障害」「身体表現性疼痛障害」などに分割され,DSM-Ⅳ3)へと引き継がれている.また,WHOの国際疾病分類第10回修正(ICD-10)では転換症状は「F44解離性(転換性)障害」の下に解離症状とともにまとめられている4)

 冒頭で述べた転換型ヒステリー,解離型ヒステリーという二分法については,本来「解離」がヒステリー症状全般の機制として指摘されたことを考えると妥当でないという考えも強い5,6).しかし,ここでは「心因性運動障害」という言葉を,DSM-Ⅳにおける身体表現性障害のなかの転換性障害,ICD-10における解離性(転換性)運動障害ととらえ,いわゆる転換型ヒステリーの身体症状と診断,および理学療法施行上の問題を有することのある解離型ヒステリーの症状の一部について述べ,理学療法を進めるうえでの留意点などを解説する.

精神疾患患者の体力増進への取り組み

著者: 三浦久実 ,   武田秀和

ページ範囲:P.402 - P.407

 1.はじめに

 精神疾患患者における入院の長期化は,高齢化や身体合併症,あるいは身体運動能力の低下を招き,それが治療上の問題となったり,社会復帰を遅らせる原因の1つになっている1).1993年に実施された日本精神病院協会の基礎調査によれば,入院患者の半数が5年以上,3分の1が10年を超える長期在院者であり,65歳以上の入院患者が28%を超えるに至っている2)

 このような状況から,精神疾患患者の身体運動能力の低下などに対して,予防と向上を目的としたスポーツを含む運動療法が見直されつつある.しかし,現在精神疾患患者に対する理学療法は,一般的には脊髄損傷や骨折などにより身体に何らかの機能障害がある場合に施行され,制度上,機能障害がない者に対しては実施されていない.

 精神疾患に代表される精神分裂病患者(以下,分裂病患者)の慢性期の症状として,無為自閉や活動性の低下などの陰性症状が挙げられる.長期入院の分裂病患者にはこれらの精神症状を主体とする者が多く,身体運動能力の低下が避けられない事実であることは容易に推測される.

 当院では,重篤な身体機能障害を有しない精神疾患患者に対しても,身体運動能力の低下の予防と向上を目的に運動療法を実施している.本稿は,今日までの経過から当院の取り組みを紹介し,運動療法における要点を述べる.

とびら

機能訓練事業はどこに行く

著者: 木之瀬淳子

ページ範囲:P.373 - P.373

 私は,区役所において老人保健法の機能訓練事業や訪問事業に約8年携わってきた.

 今,介護保険制度が始まって保健・福祉サービスは激変しようとしている.そんな渦のなかで老健法の機能訓練の今後について感じていることを書いてみる.

1ページ講座 診療記録・6

業務集計 その1

著者: 荒木茂

ページ範囲:P.408 - P.408

 1)はじめに

 理学療法科の管理運営上,診療に関する集計は必ず必要になる.特に保険課の監査に必要な資料は診療報酬を得ている以上は当然の義務として整備しておかなければならない.しかし,理学療法科に専属の事務員がいない場合,理学療法士がデータの集計等の処理をしなければならない.理学療法士は事務処理の教育は受けていないことが多いので苦手な方が多いのではないだろうか.また,診療業務に忙しい中いわゆる雑用に時間を割かなければならない.理学療法科の管理者は部下にはわからない苦労をしているものである.

入門講座 クリティカルパス・2

クリティカルパスとリハビリテーション

著者: 石田暉

ページ範囲:P.409 - P.418

 Ⅰ.はじめに

 米国で1983年以来導入されている新しい医療制度である診断群類別包括支払い方式(Diagnosis Related Groups/Prospective Payment System;DRG・PPS)は,我が国でも日本版に形を変えて検討が行われているが,同時にそれと表裏一体であるクリティカルパス(Critical Pathway)も臨床各科,看護サイドなど様々な領域で試案が作成されている.

 リハビリテーション(以下リハビリ)サイドでも,厚生省の診断群類別調査研究班(研究責任者:千野直一)の「DRGにおけるリハビリテーション医学からの検討」のなかで日本版リハビリクリティカルパスの試案が作成され,これを基にした研究が始まっている1).筆者もこの研究班に参加し,各種疾患のクリティカルパス作成に携わり,様々な問題点に遭遇し,今後検討すべき幾つかの課題が認められた.本稿では,今後導入されるべき新しい医療制度のなかにあって,日本版のリハビリクリティカルパスのあるべき姿について提言を行う.

プログレス

心疾患の理学療法―最近の考え方

著者: 今井保

ページ範囲:P.419 - P.420

 1.はじめに

 平成8年4月からの健康保険の適応拡大により,心疾患に対するリハビリテーション(理学療法)の必要性も社会的に認められるようになったといえる.しかし,筆者の勤務する国立循環器病センターでは,心臓リハビリテーション(心リハ)部門で行われている心疾患患者の運動療法指導には理学療法士は関わっていない.その補完的役割として,心リハにエントリーできない症例に理学療法が行われているのが現状である.

 こうした状況下ではあるが,心疾患患者に対する理学療法の依頼は年々増加傾向にあり,対象疾患や依頼内容も多様化しつつある.今回,心疾患に対する理学療法について,当センターにおける実際を紹介し,今後の方向性を検討してみた.

TREASURE HUNTING

大学院で学んだ研究姿勢と理想の教師像―久家直巳氏(東北文化学園専門学校理学療法科(現・東北文化学園大学リハビリテーション学科))

著者: 編集室

ページ範囲:P.421 - P.421

 最近,大学院に進学し,多くの分野で専門的な研究に取り組んでいる理学療法士が増えている.すでに完成年度を迎えて修士課程や博士課程を開設している大学もあれば,社会人入学を視野にいれた幅広い大学院課程の新設を検討している大学もあるやに聞くから,理学療法士の大学院進学熱はしばらく続くことだろう.

 今月ご登場いただいた久家直巳氏が東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻内部障害学分野修士課程に入学したのは平成6年,専門学校の教員を続けながら5年の歳月をかけて博士課程を修了された.二股をかけての研究活動だったわけで,ご苦労のほどが偲ばれるが,それだけ達成感も大きなものがあったに違いあるまい.

あんてな

第35回日本理学療法士協会全国研修会の企画

著者: 松永義博

ページ範囲:P.422 - P.424

 来る21世紀は,本格的な少子・高齢社会を迎え,医療および福祉に対する需要が高度・多様化するとともに,医療・福祉制度の根本的な変革が推し進められ,医療・福祉の質や経済性が厳しく問われる時代になってきます.このような状況のもと,医療分野では近年,最新機器の開発や導入により的確な診断と科学的根拠に基づいた系統的な治療が展開されようとしています.また,福祉分野では,個々の専門性が活かされた包括的アプローチが構築されつつあり,それぞれの効果を打ち出すことが求められています.

 理学療法分野においても,科学的な根拠に基づいた系統的な評価と治療を早期に確立し,その効果を広く社会に示していくことが必要であると考えます.そこで,今回のメインテーマを「理学療法における最新の評価と治療」とし,医療と福祉の2つの分野に主眼をおいた内容を企画いたしました.

講座 臨床にいかす動作分析・6

機器を用いた運動解析と動作分析―動作分析と表面筋電図を用いた運動解析の関連性

著者: 大工谷新一 ,   西守隆 ,   鈴木俊明

ページ範囲:P.425 - P.429

緒言

 理学療法を行ううえでは,疼痛などの機能障害と関節に加わる力学的負荷の関係を理解することが重要である.関節に加わる力学的負荷には,曲げ,圧迫,牽引,回旋,剪断など1)があり,それらの負荷が骨や軟部組織に加わることで機能障害が生じる.治療者には,機能障害の発生原因を究明し,その原因に対して柔軟に対応する能力が必要であると考えられる2)

 機能障害の発生原因を正しく把握するためには,動作観察が必須である.動作観察によりアライメントが分析でき,関節に加わる力学的負荷を予測することが可能となる.そのため,臨床現場では,肉眼的に観察できるアライメントの変化に応じて,力学的負荷を予測したうえで理学療法内容を検討し,効果を検証していくことが重要である.このプロセスは,治療者の主観的な予測に基づいて実施した治療を,治療者が主観的に評価するというものである.換言すれば,「仮説を仮説で証明していく」過程であり,治療効果が治療者の分析能力に依存するものであるため,科学性の高い作業とはいい難い.

 筆者らは,骨関節疾患,特に下肢におけるスポーツ障害の病態把握において,動作分析所見と動作時の表面筋電図学的所見を総合的に判断して,理学療法評価や治療効果の判定に応用することを試みている3).表面筋電図の臨床応用では,記録や分析の方法を誤ると正確な理学療法評価が行えず,誤った理学療法の選択につながると考えられる.したがって,表面筋電図の臨床応用に際しては,筋電計や記録方法,解析方法に関する正しい知識を持つことが必要である.

 本稿では,表面筋電図の分類,臨床応用に際しての注意点,表面筋電図解析から得られる情報について解説しながら,表面筋電図の臨床応用の実際について,変形性膝関節症患者を例に述べる.

新人理学療法士へのメッセージ

いつまでが,新人なのか

著者: 石橋晃仁

ページ範囲:P.430 - P.431

 「新人」という枠でくくられるのは,いったいいつまでなのか.自分のたどってきたPTとしての12年間を振り返りつつ,思いつくままに述べていきたいと思います.

共に学び,成長するために…

著者: 長倉裕二

ページ範囲:P.432 - P.434

 私も新人といわれる時期には,10年選手の先輩方のことを遠い存在に思っていました.PTになって17年目,いつの間にか時間だけが私を“ベテランPT”に仕立て上げているようです.新人PTへのメッセージというより,自分自身の反省を踏まえ自分に対する問いかけ,ぼやきのようなひとり言を綴らせて頂きます.

報告

胸部食道癌根治術後早期の咳嗽能力に与える胸部理学療法の影響―術式による差の検討

著者: 大谷真由美 ,   大杉治司 ,   小池達也

ページ範囲:P.435 - P.438

はじめに

 胸部食道癌根治術では,開胸開腹に加え,頸・胸・腹部の徹底したリンパ節郭清による過大な手術侵襲のため,術後,呼吸機能障害をきたしやすい1).更に,反回神経周囲の郭清に伴う同神経の麻痺や気道周囲の郭清により咳嗽不全に陥りやすく,これが術後合併症の一因とされている2)

 筆者らはこれまでに,咳嗽力の低下,無気肺,肺炎を予防する目的で実施された胸部理学療法(chest physical therapy;以下CPT)の効果について,呼吸機能の面から検討してきた1).最近,胸腔鏡を用いた食道癌手術も行われるようになり,一般的には従来の開胸式手術に比して,侵襲は少ないと考えられている.しかし,呼吸機能面から両手術を比較した報告は存在しない.そこで,胸腔鏡下手術と開胸式手術において,CPTの効果に差が生じるか否かを検討した.

症例報告

Lowe症候群の理学療法経過

著者: 上杉雅之

ページ範囲:P.439 - P.441

はじめに

 Lowe症候群(Lowe syndrome)は,1952年にLoweによって報告されたことから名づけられ,その主要病変部位が眼,中枢神経,腎に集中するところから,別名oculo-cerebro-renal症候群とも呼ばれる1).臨床像としては,白内障および緑内障,筋緊張の低下,精神運動発達遅滞,尿細管障害などがみられる.

 本邦では30数例しか報告されていない稀な疾患で2)あり,本論文ではLowe症候群の理学療法経過について報告する.

書評

―砂屋敷忠/吉川ひろみ/岡本珠代(編)―医療・保健専門職の倫理テキスト―悩める医療スタッフと学生のための事例集

著者: 中屋久長

ページ範囲:P.418 - P.418

 「コ・メディカルの教育カリキュラムで何か足りないものがある」と思い続けて20数年が経過した.以前,本学院では「職場倫理管理」という授業科目を10年余り開講していたが,その後の指定規則の改定や過密になったカリキュラムの改善,また,この領域の「倫理」を専門とする教授者が得難いなどの事情により,何時の日か各学科の課程で概論や特論に包含されてしまった.本書はまさに切望していたテキストと思われる.

 編者らは,医療・保健専門職は人々の心身の健康と機能の促進・回復を助けるという尊い使命を持ち,その職に就く準備として科学的知識と技術の修得と同時に,クライエントや同僚,その他の関係者との間に良い関係を築くための準備をすることが極めて大切である.より深い人間理解と医療倫理や生命倫理は生と死,病と癒しに直面した時の人の行為のあり方に影響する.現在の医療・保健はチームワークが主体となり,関係者の倫理確立の必要性が痛感されると強調している.

―(財)神奈川県体育協会(編)―スポーツ医科学ハンドブック

著者: 雨宮輝也

ページ範囲:P.434 - P.434

 スポーツ医科学に関係する本は数多く発刊されているが,本書のように財団法人神奈川県体育協会が編集するといった方法は大変珍しい.私には本書を刊行する「きっかけ」として思い当たることがあるので,そのことから触れてみたい.

 日本体育協会は,47都道府県体育協会の協力のもと,組織内にスポーツ医・科学研究班を組織して,平成2年~4年に「国体選手の健康管理に関する研究」を,また平成5年~11年には「国体選手の医・科学サポートに関する研究」を継続して行っている.この研究は都道府県の国体選手に対するメディカルチェックの実施にとどまらず,選手強化のための体力,心理,栄養など,多方面から積極的にサポートしている事業である.

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文献抄録

ページ範囲:P.442 - P.443

編集後記

著者: 鶴見隆正

ページ範囲:P.446 - P.446

 今ごろは,希望を胸に社会人となったフレッシュマンも臨床現場の第一線に配属され,患者や障害をもった人と向かい合いながら全力で理学療法業務に日夜奮闘しているころでしょう.

 さて,今月号の特集は「精神疾患をもつ患者の理学療法」です.精神分裂病,躁うつ病などの精神疾患は決して稀な疾患ではありません.情報が溢れ,変化の激しい現代社会では,精神的なストレス要因が増大しており,不安や欲求不満などの重積によって社会生活の遂行が困難になり不適応状態に陥る可能性は誰にでもあります.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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