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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル34巻9号

2000年09月発行

雑誌目次

特集 早期理学療法―そのリスクと効果

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.601 - P.601

 疾病・障害の発症早期からの理学療法が必要不可欠であることは,いまや常識的な概念であるといっても過言ではないだろう.しかし,様々な障害や病態に対していかにして具体的に早期から開始し,そのリスクを考慮しつつ最大限の効果を得てゆくのかという点に関しては必ずしも明確になっていないようである.そこで今回の特集では,より具体的な方法論を中心に論じていただくこととした.

早期理学療法―筋力低下へのアプローチ

著者: 山﨑裕司

ページ範囲:P.603 - P.609

 1.はじめに

 歩行などの粗大動作を維持するためには,ある程度の下肢筋力が必要なことが明らかとなっており1-4),加齢や廃用性変化による筋力の減衰が高齢者の動作能力低下や転倒の原因となる可能性は高い.一方,加齢や廃用による筋力低下は大きく変化させ得る体力要素であり,この点から筋力低下へのアプローチは理学療法のなかでも極めて重要なものである.

 筋力を維持増強させるポイントは,廃用症候群の予防と筋力トレーニングであり,その方法は具体的,かつ明確である.しかし,離床や筋力トレーニングは,体力が低下した高齢者や障害者にとってかなりの苦痛を伴う労作であり,動機づけの問題から適切な処方やプログラムの継続ができない症例が少なくない.つまり,筋力低下に対するアプローチの主要な問題の1つは,「何を行うか」ではなく,「如何に行ってもらうか」にある.

 そこで本稿では,筋力トレーニングの方法論よりもむしろ,実践に際しての意義づけや動機づけを如何に行うかという視点にたって,筋力低下へのアプローチを見直した.なお,誌面の都合上,高齢者の廃用性筋力低下を射程において解説した.

早期理学療法―関節可動域へのアプローチ

著者: 瀧昌也 ,   内田成男

ページ範囲:P.610 - P.617

 1.はじめに

 関節可動域障害は,骨関節疾患,脳卒中,脊髄損傷および神経筋疾患などのリハビリテーションのなかで最もよくみられる機能障害の1つである.この機能障害は,長期臥床や術後の長期固定など関節の不動により出現し,比較的早期に形成される.また,理学療法における日常生活活動をめぐるトレーニングや歩行練習を妨げる要因となり,これらの自立を阻害する因子ともなりかねない.

 一方,急性期における過度な関節可動域運動(以下,ROMex)は過用・誤用症候を引き起こし,治療の遅れ,更には入院期間の延長ということにもなりやすい.例えば,慢性関節リウマチのような寛解と増悪を周期的に繰り返す炎症性疾患に対する積極的なROMexは腫脹や痛みを増悪させ,炎症の軽減を妨げることがある1).また,脳卒中片麻痺などの完全麻痺肢は筋緊張が低下して関節が不安定な状態にあり,過度なROMexは直接的に靱帯や関節包に機械的なストレスを加えることになる.したがって,このような場合に行うROMexは,関節周囲の軟部組織に容易に断裂,内出血をきたし,痛みを誘発する危険性が内在している.

 上田ら3)は,廃用症候群を含む機能障害が重度なほど,また基礎疾患が重度なほど過用・誤用症候群が生じやすく,それを知っていれば「スパルタ的」なトレーニングなどは絶対に行えるものではないと述べ,理学療法士はこれらの障害を予防するためにも,可及的早期にROMexを開始することが良いとしている.

 このように,ROMexを始めとする急性期理学療法の必要性は以前から指摘されているが,反面でリスクが大きいのも事実である.そこで本稿では,関節可動域を制限する諸問題について基礎知識を整理し,理学療法士が早期にROMexを実施する際のリスクと効果を中心に述べることとする.

早期理学療法―運動麻痺へのアプローチ

著者: 大峯三郎 ,   蜂須賀研二

ページ範囲:P.619 - P.628

 1.はじめに

 日常の理学療法の対象となる機能障害の1つに脳血管障害,脊髄損傷,各種神経疾患や末梢神経損傷などに起因する中枢性および末梢性の運動麻痺がある.これらの運動麻痺の回復に対する理学療法は,その大部分が既に運動療法を中心とした治療プログラムとして体系化されており,広く臨床において実践されているのが現状であろう1-7).特に脳卒中後の片麻痺に対する運動療法ではその治療効果に賛否両論があるものの,様々な治療テクニックが紹介されている.

 これらの理学療法やリハビリの効果については,十分な実証が得られていないものも存在するが,過去,種々の研究手段を用いてその効果の検証が行われており,多数報告されている.しかしながら,脳卒中後の運動麻痺そのものが多彩な障害像を呈することや麻痺の回復過程も様々であり,患者の異質性などを含めた多くの影響因子があるために明快な結論に至っていないのが実情のようである.今日でも,なおこれらの点について論じられたり,研究が依然として行われている背景にはこのような要因の存在を否定することはできないように思える.

 理学療法あるいはリハビリの効果としての運動麻痺の回復に関する研究のほとんどは,従来の治療法と神経生理学的理論に基づくファシリテーションテクニックなどの治療法を用いた手技の比較や集中的な治療法(intensive treatment)とそうでない治療法などの治療時間の相違による効果の検証などの無作為化比較対照試験(randomized controlled trial:RCT)が大部分である.また,これらの研究内容をみると,むしろ運動麻痺の回復といつた機能障害に言及したものよりも,これらを含めたADLなどの能力障害の観点から各種の評価表を用いて相対的な運動麻痺の回復を論じたものが目立っている.これらの背景として,1980年代から米国の医療に経済効率の概念が導入され,リハビリ医療の内容が能力障害のレベルでの向上を目的としたアプローチに重点が置かれるようになったことなども影響していると思われる8)

 結論的には治療介入により有意に運動麻痺や能力障害の改善がみられ,早期に行われる理学療法あるいはリハビリの効果については肯定的に捉えているものが多い.しかしながら治療手技や治療時間などの相違による効果の差異については統計的に有意差がないとするものが大半である9-18)

 一方,末梢神経損傷による運動麻痺に対する理学療法の効果の検証についての報告は,中枢性神経疾患に比較して少ない.その背景として,損傷部位や傷害の程度で運動麻痺の症状が異なるために一概にはいいきれないが,不全麻痺であれば神経の回復と共に正常な機能回復が得られやすいなどの予後の問題や局所的な筋力低下を伴うが日常生活への支障が意外と少ないなど7,19),末梢神経損傷では運動麻痺の性質が中枢性の運動麻痺のそれと異なる点などが考えられる.

 いずれにしても,リハビリの過程で早期に行われる運動麻痺に対する理学療法の主な目的は,麻痺の改善を図ることは当然として,運動療法を中心とした理学療法の施行による二次的合併症や廃用症候群の予防がその中核をなしており,裏を返せばこれらに対するリスク管理(全身的,局所的)であり,その結果生じる広義での身体的な変化を理学療法の効果として捉えることができる.

 一言に運動麻痺といってもその範疇がかなり広いために,本稿では臨床上頻繁にみられる脳血管障害による片麻痺や末梢神経損傷による運動麻痺の観点より,早期理学療法の効果およびリスクについて文献的考察を中心に私見を交えて論じたいと思う.

早期理学療法―呼吸循環器系(酸素搬送系)へのアプローチ

著者: 高橋哲也 ,   安達仁 ,   谷口興一

ページ範囲:P.629 - P.636

 1.はじめに

 疾患を問わず,早期に理学療法を開始する重要性が指摘されて久しい.それは単に入院期間の短縮や医療費抑制の観点からだけではなく,その後の生命予後や社会復帰に有益であることが,1940年代に負傷した兵士を早期離床させた経験や,1960年代の宇宙開発に伴うbed rest研究によって証明されてきたからである.Bed rest(いわゆる「無為臥床,寝たきり」)による呼吸循環器系の退縮は速やか(24時間以内)に起きるといわれ1),高齢者では数日間の安静臥床でも無視できず,早期からの理学療法が極めて重要といわれる所以である.

 本特集では疾患ごとではなく,障害レベルでのアプローチに焦点をあてる目的で,本稿の呼吸循環器系を1998年の日本理学療法士協会全国研修会で山田2)によって提案された「酸素搬送系(oxygen transport system)」ととらえ稿を進めたい.

早期理学療法―バランス機能へのアプローチ

著者: 江西一成

ページ範囲:P.637 - P.643

 1.はじめに

 リハビリテーション(以下リハ)医療の領域では,いまや早期離床・早期起立は常識となっている.ところが,近藤1)は,脳卒中の急性期リハの是非をめぐる議論において,日本の実状は,リハ開始の遅れが「数日ではなく数週間である」ことを問題点として指摘した.このことからも分かるように,早期理学療法すなわち急性期における理学療法の可及的早期開始が必ずしも広く実行されているとはいえないようである.ここには,脳卒中において長年議論されている急性期の脳循環自動調節能と起立性低血圧の関係というリスク管理の問題,更に脳神経外科や内科などの主診療科とリハ科との連携の問題などがあるといえよう.

 一方,バランス機能は,リハ医療あるいは理学療法の領域では日常的な用語であり,運動機能の一側面をなすものとみなされている.しかし,この用語を改めて考えると曖昧な定義であることに気づくのも事実である.リハ医学大事典2)によれば,バランスとは「身体の平衡」とされている.更に,「バランスには麻痺,筋力,筋緊張,内耳機能,小脳機能など多くの機能が関与する.“バランス異常”という語が安易に使われている傾向があるが,以上のどの機能の問題なのか分析的にみる必要がある」と記述されている.

 つまり,バランス機能は,特定の1つの機能ではなく,様々な機能が統合された結果としての総合的機能ということができる.更に,その良否が問われるのは少なくも臥床状態ではなく,座位,立位,歩行などの抗重力姿勢においてであり,前述のリスク管理の問題とも大きく関連する.このことから,本邦において,早期理学療法とバランス機能の間には,リスク管理と他診療科との連携という完全に解消したとはいえない問題が存在し,両者の関係を直接的に論じることには大きな困難がある.事実,文献を渉猟してもそのような内容に出会うことはできなかった.

 ところが,米国においては早期リハとバランスの問題が取り扱われている.ただし,早期リハがバランス機能にどのような影響をするかといった直接的なものではなく,早期リハが在院日数短縮に有効であるという認識から,その予後予測の指標の1つとしてバランス機能が取り上げられている.つまり,本邦の医療事情にも通底する経済的観点からの取り扱われ方である.

 以上のことから,本稿では,まず脳卒中をめぐる早期リハの動向,次にバランス機能に関連する研究,そして米国における状況を概観し,そこから早期理学療法やバランス機能をどのように捉えるかという点について述べていきたい.

とびら

『出会い』

著者: 中村純子

ページ範囲:P.599 - P.599

 「エッセー欄ですから,軽いタッチで日頃思われていることを…」との本欄への原稿執筆のご依頼を受け,これも「出会い」の機会をいただいたものとお引き受けすることにした.まずは,こんな稀なチャンスをくださった先輩に感謝申し上げたい.

 今こうしてペンを取って「出会い」を思うとき,理学療法士という仕事に出会えて良かったとの感慨が心から湧いてくる.もしこの仕事に出会うことがなかったら,人の心の痛みをこのように受けとめられただろうか?また,「生きる」ということを真っ正面から見つめて前向きに歩き出した人の笑顔がキラリと光るそんな瞬間を素早く感じ取れる感性があっただろうか?そんなことをしみじみと思う.

プログレス

脊髄小脳変性症の運動療法―最近の考え方

著者: 望月久

ページ範囲:P.644 - P.646

 脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration;SCD)の運動療法は,主に小脳性運動失調による機能障害,能力低下に対して検討されてきた.しかし,SCDは小脳自体,小脳への入出力系,脊髄,大脳基底核,大脳皮質などにも病変が及び,その臨床像は極めて多彩である.症状の進行度や進行過程における症状の変遷も一様ではなく,SCDの病型分類による特徴を前提としつつ,個々の症例の臨床経過に適した運動療法を検討する必要がある.

 本稿の主題はSCDの運動療法に関する最近の考え方の紹介であるが,筆者の知る限りにおいては,SCDの運動療法自体に関して大きな進展はないように思われる.しかし,SCDの疾患概念やSCDの臨床経過に関する臨床的集積,SCDの主要な機能障害である協調性障害やバランス機能障害に関する考え方は進歩または変化しつつある.本稿では最近のSCDの疾患概念,重症度分類の紹介,運動失調に対する評価や対応を紹介することで,SCDの運動療法を検討するに当たっての視点を提供したい.

TREASURE HUNTING

“当事者の声を中心に据えた”理学療法を!―松永俊夫氏(医療法人丘病院リハビリテーション科)

著者: 編集室

ページ範囲:P.647 - P.647

 松永俊夫氏が理学療法士の道をめざして社会医学技術学院の夜間部に入学したときは齢すでに40歳.昼間は医療ソーシャルワーカーとして勤務しながらの通学だった.学生生活の最も切ない思い出が授業開始前の10分間に慌ただしく掻き込むコンビニの夕食だったというから,その志の大きさを思わず想像したくなる読者も多いことだろう.

 家庭もちの40歳の社会人学生が理学療法学科の過密なカリキュラムをこなしていくのは並大抵のことではなかった.3年目の途中で1年間休学,担任の教師には「復学は無理か」と心配させたそうだが,今にして思えば2倍のクラスメートが得られて良かった,と仰るものの,やはり厳しい道のりだったのだろう.

あんてな

ブロック学会のあり方を考える

著者: 勝田治己

ページ範囲:P.648 - P.649

 Ⅰ.はじめに

 第35回全国学会は鹿児島県士会担当により本年5月に開催され,800題を超える演題と2,000人以上の参加者を得て盛会のうちに終了した.ここ数年間の演題数と参加者の急増は学会運営担当者にとって大きな負担となっており,現在のままで行くと数年後の全国学会開催は大都市に限られてしまうのではないかと懸念されるところである.

 我々PTにとって最も関係深い学会としては,この全国学会のほかに最小単位としての各士会学会,そしてその両者の中間に位置するブロック学会がある.ここではこのブロック学会のあり方について私見を述べてみたいと思う.ただし,ブロックといっても筆者が状況を実感できるのは所属する東海北陸ブロックであり,全国8ブロックに共通するビジョンを述べることは能力の及ばないところである.

 したがって,ここでは筆者が学会長として準備中のブロック学会(第16回東海北陸理学療法士学会)をイメージしながら,そのあり方について考えを述べさせていただくことでご容赦願いたい.

1ページ講座 診療記録・9

施設間報告書

著者: 菊池詞

ページ範囲:P.650 - P.650

 理学療法に関する施設間報告書は医師の紹介状とは別に,担当した患者および障害者のリハビリテーションの概要,あるいはその継続を依頼する目的で,医療施設をはじめとする他施設や機関に送られる文書である.

 医療施設の機能分化と入院期間短縮が推進されるなか,1つの医療機関だけでリハゴールを達成することは一部の医療機関を除きもはや困難である.リハ医療のスムースな継続と多様なニーズをもつ患者の生活の再構築を達成するために報告書の意義は大きく,内容についても理学療法士同士のみならず,保健婦や介護職に対しても有用な情報を提供することが求められる.

入門講座 退院指導・1

片麻痺患者の退院指導の実際

著者: 松村文雄

ページ範囲:P.651 - P.655

 Ⅰ.はじめに

 医療改革によって病床区分の見直しや診療報酬の改定による病院の機能分化,在院日数の短縮,介護保険制度導入によるサービスの一元化が図られるなかで,急性期・回復期・維持期の各時期におけるリハビリテーションサービスがますます重要になってきている.

 自宅復帰を目標とするためには,特に急性期,回復期にあって入院中の患者に対して十分なリハビリテーションが提供され,自立に向けたアプローチと退院後の患者・家族の生活の維持がとりわけ大切である.本稿では,当院における自宅復帰を目標とした退院指導の取り組みを紹介する.

講座 運動発達障害・3

運動発達障害の理学療法評価

著者: 河村光俊 ,   烏山亜紀

ページ範囲:P.657 - P.661

はじめに

 我が国において,中枢神経系障害児の理学療法が整形外科的アプローチから神経生理学的アプローチ,神経発達学的アプローチへと主流が移ってから既に30余年が経過した.この間,観血的治療法も同時に進歩して整形外科的治療成績も向上し,欧米では選択的背側神経根切断術(selective dorsal rhizotomy)による成績が多数報告されてきた.筆者も自分の目でrhizotomy後の子どもと接したことがあるが,手術後の理学療法を欠かすことができず,手術が理学療法にとって代われるものではなく,神経生理学・発達学的アプローチのみでも解決できない脳性麻痺児が多く存在する.

 この30年間が経過した現在,変形・拘縮の頻度,程度が飛躍的に改善したとするデータは示されていない.そして,相変わらず股関節脱臼や膝の屈曲拘縮を示す脳性麻痺児は多く存在している.いわゆる重症心身障害児では,多くの部位で変形拘縮を示し,30年前に出会った重症児と様相は変わっていない印象を持っている.

 理学療法士として,出会った全ての子どもに自信を持って満足のゆくサービスを提供できたとは思えない.理学療法士が中枢神経系障害児の短期間治療効果を客観的に示すことを強く要求される時代に来ている.その意味で,信頼性と妥当性を兼ね備えた評価を実施し,自らの治療を検証し,自らを律し,治療法を発展させてゆくプロとしての意識を持たなければならない.

学会印象記 第35回日本理学療法士学会

新しい時代に向け理学療法の基本的命題に取り組む

著者: 内田成男

ページ範囲:P.662 - P.663

 今世紀最後を飾る第35回日本理学療法士学会は,鹿児島県理学療法士会担当で5月19・20日の2日間にわたり,鹿児島市民文化ホールを中心に4会場で行われた.会場は錦江湾に面した素晴らしいロケーションに位置しており,学会当日には眼前の桜島が勇壮に噴煙を上げ感動的であった.

 さて,本学会のテーマは「理学療法の効果判定」であり,新たな時代に向けて理学療法の基本的命題に取り組むという意気込みを感じさせられた.当地は明治維新をリードした志士を育んでおり,次代を担うパイオニア的精神が旺盛なのかもしれない.以下に本学会の概要と筆者の印象を述べてみたい.

初めての学会発表

初めての発表体験―新発見の連続

著者: 松澤智美

ページ範囲:P.664 - P.666

 噴煙をあげる桜島を眼前にした鹿児島で,2000年5月19日,20日の2日間にわたり,第35回日本理学療法士学会が「理学療法の効果判定」をメインテーマに開催されました.会場は,鹿児島空港からバスで約1時間,鹿児島市民文化ホール,鹿児島サンロイヤルホテル,鴨池ドーム(ポスターセッション会場),鹿児島県体育館(機器展示会場)の4会場で,それぞれをシャトルバスで結ぶシステムで行われました.

 一般演題数は,これまでの理学療法士学会の中で最も多い約800題,うち約60%がポスター発表で全体に占める割合が従来より大きくなりました.

 本学会は私個人にとり「全国規模の学会で初めて発表する」という一大イベントでもあり,記念となる学会でした.ここでは,私が発表に至るまでの経過と,発表という体験を振り返って得たことを述べたいと思います.

雑誌レビュー

“Physiotherapy Canada”(1999年度版)まとめ

著者: 對馬均

ページ範囲:P.667 - P.671

はじめに

 カナダ理学療法協会の機関誌であるこの雑誌の誌名が“Physiotherapy Canada”と改称されたのは1972年である.1980年代には年6回の発行であったが,90年代に入って間もなく年4回発行の季刊誌となった.以来,一貫して実践的報告を中心とした編集方針が堅持されてきている.

 発行回数が減少した背景には読者からの「自分たちのニーズを満たした内容ではない」という批判があったと聞く.広く臨床家の興味に応える内容を目指した結果,発行回数の削減という形で軌道修正が図られたものと思われる.いたずらに発行回数を増やすのではなく,内容の精選をもって読者のニーズに応えようという姿勢には敬服させられる.今回,この雑誌のvol.51を通読する機会が与えられたので,内容を整理して紹介する.

資料

第35回理学療法士・作業療法士国家試験問題(2000年3月3日実施) 模範解答と解説・Ⅲ―理学療法(3)

著者: 高橋正明 ,   沼田憲治 ,   関屋曻 ,   宮川哲夫 ,   福井勉 ,   柳澤美保子 ,   金承革

ページ範囲:P.672 - P.677

書評

―川村次郎・竹内孝仁(編)―義肢装具学(第2版)

著者: 眞野行生

ページ範囲:P.636 - P.636

 義肢装具学の第2版では,第1版と違って新しい試みがいくつか盛り込まれて更に充実した本となった.

 内容では,総論として歩行や義肢・装具のバイオメカニクスがわかりやすく解説されている.義肢編では,義肢の歴史から最近開発された義肢まで詳しく記載されている.特に適応,義肢の構成,アライメントの調整,義肢をつけての歩行・動作の特徴が詳細に,理解しやすいように記載されている.また装着前の訓練,家事訓練,職業訓練などが盛り込まれており,役立つ本である.

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文献抄録

ページ範囲:P.678 - P.679

編集後記

著者: 網本和

ページ範囲:P.682 - P.682

 今号の特集は「早期理学療法―そのリスクと効果」です.早期,リスク,効果という,最近話題のキイワードを網羅したかのようないささか欲張りな企画です.扱われている個別のテーマも筋力低下,関節可動域,酸素搬送系,運動麻痺,バランス機能という理学療法士なら誰でも経験するであろう身近で重要なものです.

 早期に理学療法を積極的に進めてゆくには十分なリスク管理が必要であり,また常にそれがどのような効果をもち得るのかについての洞察が必要であると,いつも考えてきた筆者にとっても時宜を得た内容でした.いずれの論文も気鋭の筆者による力作であり,十分に堪能していただくことができるでしょう.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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