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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル35巻1号

2001年01月発行

雑誌目次

特集 整形外科疾患に対する外来運動療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.3 - P.3

 整形外科疾患の運動療法については,これまで術後早期からのプログラム実施に関する臨床研究に重点がおかれてきたが,在院期間の短縮化や診療所の増加などにより,外来医療のあり方が重視され始めている.整形外科疾患の保存的療法は理学療法の源流だけに,その評価からフォローアップまでの理学療法過程を見直し,より効果的で迅速な外来運動療法の実施が求められている.

 そこで本特集では,外来で多く遭遇する整形外科疾患を対象にして,その最新の知見を加えた外来運動療法の取り組みを企画した.

変形性股関節症に対する外来運動療法

著者: 山本昌樹 ,   山本博司 ,   川上照彦 ,   石田健司 ,   榎勇人 ,   野村卓生

ページ範囲:P.5 - P.11

はじめに

 変形性股関節症に対する股関節への牽引療法は,歴史的にVoss1)やO'Malleyら2)が提唱した筋解離術と同様,関節内圧の減少による即時的な除痛効果3,4)やリラクセーションを目的とした保存療法の1つである5,6)

 本稿では変形性股関節症患者(OA患者)に対する股関節への牽引ストレスがもたらす組織的影響をはじめに述べ,その効集機序を推察する.更に当部にて実施している外来OA患者への牽引療法の客観的な評価結果より,その適応や今後の外来OA患者に対する運動療法としての位置づけを検討していく.

変形性膝関節症に対する外来運動療法

著者: 嶋田誠一郎 ,   和田真 ,   佐々木伸一 ,   馬場久敏

ページ範囲:P.12 - P.18

はじめに

 我が国では,高齢化社会にともない,変形性膝関節症(以下,膝OA)が増加の一途をたどっている.疫学的な観点からみると膝OAの有病率の高さは他疾患と比較しても特筆すべきものがあり,高齢となるにつれ増加し80歳以上では44%に達するとされている1).また高齢者における,その性差については男性で11~19%,女性で20~44%とされ,女性での高発生率が知られている2,3).今後,膝OAに対する予防を含めた医療対策は,高齢者のQOLを維持・改善するうえでますます重要性を帯びてきている.このような背景から,国際的にも2000年から2010年を「骨と関節の10年」(the decade of bone and joint)とし,関節の変性疾患に関わる諸問題の国際協力による解決が1つの目標として提唱されている点は頷けることである.

 一方,医療経済学的な観点からみると,人工膝関節置換術などの手術的療法は,膝OA患者のQOL改善に貢献してきた.しかし,膝OAの有病率の高さを考慮すると,手術療法のみに頼った治療選択では医療財源を圧迫することにもなりかねない.今後,入院期間の短縮化や外来医療の重視傾向により,効果的な膝OAに対する外来における保存療法の充実が求められている.

 ところが,我々理学療法にとって,膝OAはあまりにも日常茶飯事に遭遇する疾患であり,手術後の後療法としての理学療法に関心を寄せることはあっても,その保存療法にはあまり着目してこなかったのが現実であろう4).しかし,保存療法による膝OAに対する諸問題の解決や進行防止,更には予防への挑戦は,ますます重要性を帯びてくることが予想される.本稿では膝OA患者に対し,主に当院で実施している生体力学的評価を通して,その病態について述べ,その外来運動療法の現状と課題について言及したい.

腰痛症に対する外来運動療法

著者: 伊藤俊一 ,   白土修 ,   石田和宏

ページ範囲:P.19 - P.26

はじめに

 腰背部痛の原因は,整形外科はもちろん内科疾患に伴う関連痛,更に心因性によるものなど各科領域にわたり多種多様である1,2).外来の理学療法において腰背部痛を主訴とする者は,患者総数の50%以上を占めるとの報告3)もあり,腰痛症は外来で最も多く遭遇する疾患の1つとなっている4)

 腰痛症治療の基本として,重篤な神経学的脱落所見がない限り第1に保存療法が選択される1,2,4).したがって,理学療法においては,評価による腰痛の状態の鑑別とその結果に基づいた治療法の選択,更に処方した運動療法の継続が極めて重要となる.

 本稿では,腰痛症の理学療法についての現状と,その評価と評価結果に基づいた治療法の選択を具体的に検討するとともに,筆者らが行ってきた腰痛学級による運動継続に関する方法について述べる.

特発性側弯症に対する外来運動療法

著者: 八幡元清

ページ範囲:P.27 - P.35

はじめに

 近年,特発性脊柱側弯症の早期発見・早期治療の重要性が問われ,小・中学校において側弯症の定期検診が実施されるようになり運動療法を指導する機会が増えている.

 特発性側弯症の治療は進行の程度により保存的治療と手術療法に大別される.そのおおよその目安として,Cobb角(図1-2参照)が10~20度では運動療法とADL指導,20~40度では運動療法と装具療法,40~50度では装具療法,または手術療法,50度以上では手術療法が適応となる1)

 側弯症に対する運動療法は,筋力強化,拘縮の予防,バランス機能,呼吸機能の維持改善などを目的として実施され,長期間の継続が必要とされている2).特に思春期の特発性側弯症患者は,精神的にも不安定であり,治療が継続できないなどの多くの問題を含んでいる.

 本稿では,まず脊柱側弯症の分類と評価および予後について簡単に触れ,当科で実施している装具療法と運動療法を紹介する.次に,運動療法の観点から側弯症患者の躯幹筋力と脊柱可動性の特徴について述べる.また,運動療法と側弯進行について触れ,最後に運動療法を継続するための工夫について述べる.

肩関節周囲炎に対する外来運動療法

著者: 小室透 ,   米田稔

ページ範囲:P.36 - P.44

はじめに

 肩関節周囲炎は,「肩の疼痛と運動制限を有し,明らかな器質的障害のないもの」として定義されるが1),臨床上みられる症状は疼痛や運動制限の程度だけを取り上げても様々である.そして,肩関節周囲炎は適切な理学療法が行われれば良好な成績が得られる疾患であるが,適用する手技の時期や方法を誤ると,かえって症状を悪化させてしまうこともある.例えば,炎症の強い時期に,炎症部を刺激するような可動域運動や筋力増強運動を行えば,痛みの増悪と更なる機能障害を引き起こす.しかし,愛護的になりすぎれば,可動域の制限や機能障害を残す結果となる.したがって,注意深い評価のもとに,各症例の病態に即した理学療法を選択していく必要がある.

とびら

達成動機

著者: 佐々木誠

ページ範囲:P.1 - P.1

 理学療法士養成校の教員になって,毎年思うことであるが,最近の学生は理学療法に対して非常に高い目的意識をもって入学してくるものだと感心させられる.理学療法のことが社会的にも正しく認識されてきている証しであろうとも思うが,それにも増して,これほどまでに多種多様な人種の若者が出現してくるのであるから,そんな中で目的をもって理学療法士を目指そうとする方々を,私はただそれだけで尊敬してしまう.

 入学してきたそのような学生達をどれだけ伸ばしてあげられるかが,私に課せられた役割なのであろうと思う.知識や技術を習得させることは,場合によっては学習用コンピュータシステムのほうが効率がよかったり,ゼミナール形式で学生の自由な発言を引き出すだけで上手くいったり,デモンストレーションの後の学生同士のロールプレイにちょっと手出し・口出しするのみでいいのかもしれない.もちろん教員として,そこには授業展開の工夫と臨機応変な対応の用意をしておくわけではあるが,学生自身が十分動機づけられていれば,限られた知識を駆使した問題解決を根気強く続けようとするのであろうし,技術の未熟さを学友同士で,あるいは教員を頼りに少しでも解決しようと試みるようである.まさに,学生自身の達成動機をよりよく喚起することが大切なことのように思う.

Case Presentations

長期臥床により嚥下障害を引き起こした患者の1例―うつ伏せ療法を試みて

著者: 広田桂介 ,   橋爪伸幸 ,   小田原弘子 ,   並河正晃

ページ範囲:P.45 - P.48

はじめに

 現在我が国では,世界に類をみない高齢社会を迎え,それに伴う諸問題はますます深刻化している.特に,脳血管障害などが原因で寝たきり状態に陥った高齢者の増加は,社会的にも深刻な問題となっている.

 このような状況のなか,寝たきりおよび寝たきりになる可能性が高く,廃用に伴う様々な症状を抱えている高齢者も少なくない.なかでも,嚥下障害を併発している患者は多く,これを原因とする肺炎は,高齢者の死亡率の大半を占めるといわれている.このような患者は筆者らの経験上,上頸部後屈位状態をとっていることが極めて多いように思われる.

 今回,寝たきりによる廃用症候群として嚥下障害をきたした患者の頸部後屈位状態に着目し,従来どおり頸部の他動的関節可動域運動(ROMex)等の理学療法を実施したが,明確な改善傾向が認められなかったため,筆者の前任職場であるみさき病院(福岡県大牟田市)で開設当初より実践研究(厚生省長寿科学研究・大友班)を続けている「うつ伏せ療法」を用いたところ,嚥下障害のみならず種々の症状の改善がみられた.この症状を通し,老人医療における理学療法の必要性および重要性を実感したので,若干の考察を加えて報告する.

Treasure Hunting

「こまるカップ親睦駅伝大会」って知ってますか?

著者: 今井保

ページ範囲:P.49 - P.49

 20世紀最後のオリンピックシドニー大会も,日本女子の期待どおりの活躍のうちに幕を閉じました.そのなかでも最強の3選手を送り込んだ女子マラソンでは,日本列島が沸き返るなか,見事な金メダルを高橋尚子選手が獲得しました.優勝後のインタビューで,彼女が飄々と「楽しいレースだった」と答える様には,日の丸の重圧や,レース前の厳しい練習などを微塵も感じさせない強さがありました.我々がこの「走る」という最も単純なスポーツに,2時間以上もの長い間釘付けにさせられるのには,それなりの理由があります.それを幾つか挙げてみました.

 1)ルールがわかりやすい.

 2)強い者が勝つ.

 3)強くても,必ず勝てるわけではない.

 4)ミスによって勝敗が左右されることはない.

 5)力を出し切るため,勝者も敗者も美しい.

 つまり,我々は見終わった後に清々しさと満足感を味わうことができるのです.応援していた選手が期待どおりに走れなくても,その選手が精一杯走っている姿を見ただけで納得し,満足してしまいます.そして更にこの競技を10倍楽しく観戦できる方法があります.それは,自分も走ってみるということです.

あんてな

地域理学療法の課題と展望

著者: 小山樹

ページ範囲:P.50 - P.51

 介護保険の導入とともに,地域理学療法に対するニーズが高くなってきた.介護保険下で理学療法士として地域にかかわる場は,訪問リハビリテーション,通所リハビリテーション等があるが,地域において理学療法士の知識,能力をもってかかわれる分野は多い.

 筆者らは1997年より,開業権の無いなかで理学療法士として会社を設立し,独立した立場で地域リハビリテーションに取り組んできた.方法としては,訪問看護ステーションからの訪問リハビリテーション,訪問看護婦の指導,居宅支援事業所からの訪問調査,ケアプランの作成,福祉用具部門として福祉用具の販売,レンタル,住宅改造プランの作成,更に患者や家族,介護者教育,学生教育といった分野で展開している.

プラクティカル・メモ

重症心身障害児・者病棟のトイレット改造―利用者の排泄姿勢と介助的側面からみて

著者: 笹川裕弥子 ,   高橋明子

ページ範囲:P.52 - P.52

 当センターでは平成9年7月に定員40名の重症心身障害児・者入所病棟(以下,重心病棟)を開設した.我々は開設直後に現状の便器の改造を求められ,理学療法士の視点でトイレ改造に着手し,トイレ椅子を導入したのでここに紹介する.

入門講座 生活習慣病・1

生活習慣病の概要と対策

著者: 若井建志 ,   大野良之

ページ範囲:P.53 - P.57

 1.生活習慣病の定義

 公衆衛生審議会(平成8年12月18日)の意見具申「生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について」によれば,生活習慣病とは「食習慣,運動習慣,休養,喫煙,飲酒などの生活習慣がその発症・進行に関与する疾病群」と定義されている.また,その範囲については,表1に例示されるような生活習慣との関連が明らかになっている疾病が含まれるとしている.

 もちろん生活習慣が発症・進行に関与し,生活習慣病としての位置づけが可能な疾病は表1の疾患ばかりではない.喫煙習慣という1つの習慣だけに着目してみても,がん(肺がん,口腔がん,喉頭がん,食道がん,胃がん,膵臓がん,腎がん,膀胱がん,子宮頸部がん,肝臓がんなど),循環器疾患(虚血性心疾患,クモ膜下出血,閉塞性動脈硬化症,バージャー病),呼吸器疾患(慢性気管支炎,肺気腫,特発性間質性肺炎,自然気胸),胃十二指腸潰瘍,歯周病など,実に多くの疾患との関連が指摘されている1,2).更に疫学研究の進展にともない,生活習慣と疾病との新たな関連が見い出される可能性もあり,生活習慣病の範囲は更に拡大していくものと予想される.

1ページ講座 介護保険のポイント・1

介護保険制度

著者: 香川幸次郎

ページ範囲:P.58 - P.58

 長寿,高齢化の進展とともに,老後の生活不安として「自分や配偶者の身体が虚弱になり病気がちになること」「自分や配偶者が寝たきりや痴呆性老人になり介護が必要になったとき」が世論調査の上位を占めるなど,介護が老後の最大の不安要因となっている.こうした背景として,要介護高齢者の増加や介護期間の長期化,核家族化や女性の社会進出に伴う家族介護機能の低下等があげられ,介護を家族の問題としてではなく社会で支える介護の社会化が強く求められてきた.しかし,これまでの高齢者介護は家族の肩に負わされ,サービスの提供も老人福祉や老人保健,老人医療と縦割り行政的な対応がなされ,同時に医療費の圧迫等が指摘されてきた.こうした弊害を是正し,①老後の最大の不安要因である介護を社会全体で支える仕組みを創ること,②現在の縦割りの制度を再編成し,利用者の選択により民間を含む多様なサービス主体から,保健・医療・福祉にわたる介護サービスが総合的・効率的に提供されるサービス体系を確立すること,③今後増大する介護費用を賄う財源として,サービス需給の権利性の確保,給付と負担の対応関係が明確で,負担に対する理解が得やすい社会保険方式を採用することを基本的な考え方として,介護保険制度が創設された.

 介護保険法は,加齢に伴って生ずる心身の変化により要介護状態になった者が,その有する能力に応じ自立した生活を営むことができるよう,必要な保健医療サービスおよび福祉サービスを給付することを目的として,平成9年12月17日に公布された法律である.

講座 応用行動分析学・1

理学療法における応用行動分析学の基礎―1.理論と技法

著者: 山本淳一

ページ範囲:P.59 - P.64

 1.はじめに

 3回の連載では,理学療法の現場で遭遇する問題を解決し,患者にとって満足度が高く,そしてまた,よりよい治療効果をあげるための「応用行動分析学(applied behavior analysis)」の考え方と技法を体系的に概説する.行動分析学(behavior analysis)は,米国の心理学者スキナー(B.F. Skinner元ハーバード大学教授:1904-1990)が体系化した心理学・行動科学に関する学問で,行動や心の動きを,環境との相互作用という点から徹底的に分析することで,個人の行動や心の働きが生じる原因を明らかにすることを目的としている.行動分析学の基本的な考え方は,個人とそれを囲む環境との相互作用の分析を徹底させることで行動の可変的な部分を明らかにするというものである.その応用部門である応用行動分析学は,教育,医療,福祉,看護,リハビリテーションなど,いわゆるヒューマンサービスに関する多くの領域でその基本的な考え方,枠組み,技法が用いられてきており,大きな臨床上の実績をあげてきている.

 心理学というと,医療領域のなかでは精神科,心療内科などでその技法が用いられていることが多かったが,行動分析学は従来の心理学の基本的を方法を更に発展させ,個人とまわりの環境とのダイナミックなシステムを変えることで,治療実績や指導成果をあげていこうとするものである.その意味で,医療領域のなかでも非常に広い領域をカバーするものである.医療現場のなかで,個人と環境との相互作用による見方と技法が何故必要なのだろうか?例えば,どのような素晴らしい薬が開発されても,患者が医師の指示どおりその薬を飲まなければ治療にはつながらない.同様に,素晴らしく有効な運動療法が開発されても,実際に患者が理学療法士の指示に適切に従ってそれを実施しなければ治療につながらない.薬を指示どおり飲んだり,運動療法に意欲的に取り組むことは広い意味での「行動(behavior)」である.したがって,行動の科学である行動分析学の知見を十分採り入れることで治療成果を大きくあげることができる.

 これまで,我が国では,応用行動分析学の基本的な紹介はなされてきたが,有効な方法であるにもかかわらず,理学療法の現場でその知見は十分用いられてこなかった.そこで,連載の第1回目では,理学療法の現場で遭遇する事例を検討し,問題点を洗い出し,それらの問題を解決するための応用行動分析学の理論と技法をまとめる.

 連載第2回目では,今回述べる枠組みや技法を更に発展させ,どのように問題を分析し問題解決していくかについて詳述し,新しい技法と知見を紹介していきたい.連載第3回目では,下記に示す事例のほか,様々な事例について応用行動分析学の観点からの,より実践的なアプローチとその活用方法を紹介する.

症例報告

RAの顎関節症に対する理学療法の経験

著者: 福迫剛 ,   奥猛志

ページ範囲:P.65 - P.68

はじめに

 慢性関節リウマチ(以下RA)は,滑膜の炎症を主病変とする疾患で,顎関節に炎症を起こすと顎関節症を呈し,疼痛や開口制限をきたすことがある.RAでは約60%の患者が顎関節症を発症するといわれるが1,2),臨床では四肢の関節症状に意識が集中して顎関節症状を見落とすことが多いようである.今回,RAの顎関節症発症初期の症例と発症後長期間経過した症例に対してレーザー治療および開口運動を施行し,その経過について検討したので報告する.

Q & A

施設間連絡票で診療報酬は得られるか?

著者: 日下隆一

ページ範囲:P.69 - P.69

 Q 患者の施設間連絡票を書いたことに対して診療報酬は得られないのか,他職種の現状はどうなっていますか?(F生/北海道)

 A 現在,医療機関における在院日数の短縮は重要な命題になっている.それは,リハビリテーション(以下,リハ)医療においても同様であり,回復期リハ病棟料,維持期リハ,更には公的介護保険などをキーワードにして,医療機関から他の医療機関,またはその他の機関・施設への患者紹介に伴う情報提供は,その重要性と頻度を増している.地域社会で,情報に関する各種機関の連携は不可欠な要因なのである.

学会印象記 第16回日本義肢装具学会学術大会

評価のあり方を再確認した学会

著者: 廣澤勝利

ページ範囲:P.70 - P.71

 第16回日本義肢装具学会学術大会が,札幌医科大学整形外科教授・リハビリテーション部部長の石井清一先生を大会長とし,「環境に適応した義肢装具を求めて」をメインテーマに,札幌市内の北海道厚生年金会館において,平成12年10月13,14日の2日間の日程で開催されました.

 学会が開催された北海道は年間4~5か月は降雪に見舞われるとのことでした.雪のない生活環境で暮らす身にとって,その生活環境を想像するのはなかなか困難なことのように思いました.石井先生は,学術大会の開催に当たり,義肢装具を考えることは実際にそれを装着する個人の環境(個人の特性)にいかに適応させるかが,最終的な目標となると述べられました.

プログレス

脚延長術術後における理学療法の進歩

著者: 高橋雅人

ページ範囲:P.72 - P.76

はじめに

 本邦で,創外固定器を用い,仮骨延長法による四肢延長術が行われるようになって十数年が経過した.当初は骨をいかに作るか,延長量はどれだけ得られるかなど骨形成が注目されていた.しかしその後,最大延長量を最終的に決定するのは軟部組織である1)といわれるようになり,軟部組織延長の重要性が指摘されている.本稿では,軟部組織延長に対する最近の考え方と,下腿延長術の理学療法を進めるにあたっての視点を提供したい.

書評

―渡辺俊之/本田哲三(編集)―『リハビリテーション患者の心理とケア』

著者: 長澤弘

ページ範囲:P.57 - P.57

 リハビリテーション医療はチームワークが重視され展開される.その中で,患者の心理過程はリハビリテーションの方向づけにおいて大きな要素として考慮する必要がある.

 リハビリテーション医療と精神医学とのリエゾンカンファレンスを実践してきた著者らは,患者のリハビリテーションにおける医療場面の視点に立ち,心理過程を疾患別に具体的に整理し,それらのケアに関して詳細に解説している.さらに看護職,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床心理士,ソーシャルワーカー,それぞれの職種の立場から,心理的問題に対するケアのあり方について具体的な疾患・症例を通じて考察している.

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文献抄録

ページ範囲:P.78 - P.79

編集後記

著者: 鶴見隆正

ページ範囲:P.82 - P.82

 21世紀明けましておめでとうございます.

 皆様にとって新世紀の幕開きは新たな緊張感と期待で胸震える思いだったのではないでしょうか.これからの地球レベルの環境変化や科学の発展は,20世紀には想像もつかなかった大きな変化を人間社会にもたらすことでしょう.では理学療法の世界は,この大きなうねりの中で臨床領域や教育制度などがどのように変革していくのでしょうか.それは理学療法士1人ひとりが第三者的な見方をするのではなく,主体的に臨床・研究・教育や社会活動を積み重ねてゆくことで自ずとこの百年が決まるのではないでしょうか.

 さて,今世紀の最初となります本号の特集は「整形外科疾患の外来運動療法」です.昨今の医療情勢の変化は目まぐるしく,入院期間の短縮化にともない外来機能の役割が一段と注目されてきています.外来患者は痛みや麻痺などの身体的症状を改善して欲しいという思いで,家事や勤務時間を調整しながら受診をしています.それだけに,理学療法士には,患者の心理社会的な背景や生活行動などを考慮したうえで,限られた時間内でいかに効果的な理学療法を実施するかが問われています.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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