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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル35巻1号

2001年01月発行

文献概要

講座 応用行動分析学・1

理学療法における応用行動分析学の基礎―1.理論と技法

著者: 山本淳一1

所属機関: 1筑波大学心身障害学系

ページ範囲:P.59 - P.64

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 1.はじめに

 3回の連載では,理学療法の現場で遭遇する問題を解決し,患者にとって満足度が高く,そしてまた,よりよい治療効果をあげるための「応用行動分析学(applied behavior analysis)」の考え方と技法を体系的に概説する.行動分析学(behavior analysis)は,米国の心理学者スキナー(B.F. Skinner元ハーバード大学教授:1904-1990)が体系化した心理学・行動科学に関する学問で,行動や心の動きを,環境との相互作用という点から徹底的に分析することで,個人の行動や心の働きが生じる原因を明らかにすることを目的としている.行動分析学の基本的な考え方は,個人とそれを囲む環境との相互作用の分析を徹底させることで行動の可変的な部分を明らかにするというものである.その応用部門である応用行動分析学は,教育,医療,福祉,看護,リハビリテーションなど,いわゆるヒューマンサービスに関する多くの領域でその基本的な考え方,枠組み,技法が用いられてきており,大きな臨床上の実績をあげてきている.

 心理学というと,医療領域のなかでは精神科,心療内科などでその技法が用いられていることが多かったが,行動分析学は従来の心理学の基本的を方法を更に発展させ,個人とまわりの環境とのダイナミックなシステムを変えることで,治療実績や指導成果をあげていこうとするものである.その意味で,医療領域のなかでも非常に広い領域をカバーするものである.医療現場のなかで,個人と環境との相互作用による見方と技法が何故必要なのだろうか?例えば,どのような素晴らしい薬が開発されても,患者が医師の指示どおりその薬を飲まなければ治療にはつながらない.同様に,素晴らしく有効な運動療法が開発されても,実際に患者が理学療法士の指示に適切に従ってそれを実施しなければ治療につながらない.薬を指示どおり飲んだり,運動療法に意欲的に取り組むことは広い意味での「行動(behavior)」である.したがって,行動の科学である行動分析学の知見を十分採り入れることで治療成果を大きくあげることができる.

 これまで,我が国では,応用行動分析学の基本的な紹介はなされてきたが,有効な方法であるにもかかわらず,理学療法の現場でその知見は十分用いられてこなかった.そこで,連載の第1回目では,理学療法の現場で遭遇する事例を検討し,問題点を洗い出し,それらの問題を解決するための応用行動分析学の理論と技法をまとめる.

 連載第2回目では,今回述べる枠組みや技法を更に発展させ,どのように問題を分析し問題解決していくかについて詳述し,新しい技法と知見を紹介していきたい.連載第3回目では,下記に示す事例のほか,様々な事例について応用行動分析学の観点からの,より実践的なアプローチとその活用方法を紹介する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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