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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル35巻10号

2001年10月発行

文献概要

講座 「まち」をつくる側からの提言・4

自動車による郊外の移動

著者: 山田稔1 秋山哲男2

所属機関: 1茨城大学工学部都市システム工学科 2東京都立大学大学院都市科学研究科

ページ範囲:P.737 - P.742

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 1.はじめに

 我が国では,これまでの交通政策の大部分が道路整備であった.特に戦後の急速な自家用車の普及に伴い,それに対応すべく,安全で渋滞のない自動車交通の環境の整備が目指されてきた.

 1970年代の後半から,交通事故や幹線道路沿道の生活環境の問題がクローズアップされ,また新規道路用地の確保が困難になってくるに伴って,ただ漫然と自動車の増大に対して道路整備で対応するのではなく,各種の交通手段を組み合わせた総合的な交通体系整備の重要性が指摘されるようになった.

 しかし,その一方で,都市への人口の集中と,都市周辺部の比較的地価が安価な場所への住宅立地がいまだに続いている.そのため,ごく一部の大都市や,都市の中心地区を除く多くのところで,公共交通の整備や運営の困難,交通サービス水準の低下,自家用車への一層の依存といった悪環環が繰り返されてきている.

 自宅最寄りバス停でのバスの頻度が低いといったような,公共交通サービスの低下に対しては,例えば買い物などの外出頻度を抑えたり,徒歩圏域で用を済ませるといったような,生活そのものを妥協している人も少なくはない.更に,公共交通が存在しないケースも多く存在する.その場合には,生活に必要な交通を行うためには,自らが運転できる車を保有しているか,あるいは家族に送迎してもらうことが必要になってくる.しかし,家族に送迎してもらうこともなかなか容易なことではない.

 ここで特に留意すべきことは,低所得者,高齢者,また特定の種類の障害を持つ人たちにとって,経済的あるいは身体的制約から,自ら車を運転することが困難な場合が多いという点である.すなわち,公共交通サービスの不十分さがもたらす問題が,社会のなかの特定の人たちに大きく降りかかってくるという特徴があることである.

 本稿ではまず,このような自家用車に依存せざるを得ない現状について触れたうえで,今後に考えられる個別交通のあり方について述べる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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