icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル35巻11号

2001年11月発行

文献概要

原著

内側型変形性膝関節症に対する距骨下関節弾性固定付き足底板の効果について

著者: 戸田佳孝1 金秀貴1 月村規子1

所属機関: 1貴晶会戸田整形外科リウマチ科クリニック

ページ範囲:P.829 - P.833

文献購入ページに移動
 目的

 変形性膝関節症(膝OA)は中高年の多くの人口が罹患する一般的な関節疾患である9).米国のシングフォード市での調査からは45歳から64歳までの女性の12%が単純X線像で膝OA像を示し,6%が症候性の膝OAであったという4).膝OAは内側大腿脛骨関節にのみ生じることが多く,内側関節単独罹患型(内側型膝OA)は外側単独罹患型の10倍であったとの報告もある1)

 内側型膝OAに対する非手術療法の代表としては外側楔状足底板があり,理学療法でも活用されることが多い.そのなかでも最も普及している足底板は,靴の中敷き型足底板であろう.しかし,靴中敷き型足底板の作用は,踵骨を外反させることによって大腿骨頭中心から踵骨を結ぶ荷重線(ミクリッツ線)が膝関節を通過する部分を変化させ,損傷軟骨への負荷を軽減することであり,大腿脛骨角における内反変形を外反矯正する作用は有さない3,11,17).つまり,靴中敷き型足底板の作用は大腿脛骨角における内反変形を手術的に矯正する高位脛骨骨切り術とは基本的に異なる.

 著者らは,靴中敷き型足底板が大腿脛骨角を変化させない理由は,距骨下関節に固定性がないため,踵骨における外反矯正力が距骨や脛骨に伝導されないのではないかと考え,距骨下関節8字型弾性固定バンド付き足底板(バンド型足底板)を考案した12,13)

 過去の研究結果では,装具業者が採型後作製した靴中敷き型足底板を3か月間以上装着していた26例をバンド型足底板装着に変更したところ,靴中敷き型足底板を装着していた時よりも大腿骨脛骨角が有意に矯正され,Lequesne重症度指数を用いた8週間装着後の疼痛指数も有意に改善した8,12).また,誕生日の奇数日の者にはベルト型足底板,偶数日の者には靴中敷き型足底板を装着させた8週間の前向き調査の結果からもバンド型足底板を装着することによって,靴中敷き足底板では得られなかった大腿骨脛骨角の有意な矯正や,8週間装着後のVisual analogue scaleの有意な改善が観察された13)

 しかし,実際には足底板装着前後における単純X線上の足部アライメントの変化を測定していなかったため,どのような機序でバンド型足底板によって大腿脛骨角が外反矯正されるのかは不明であった.また,靴下のような素材で距骨下関節を弾性固定した場合でも大腿脛骨角が外反矯正されるのか否かという課題も残された.

 そこで今回の研究では,内側型膝OA患者に対する靴下型による距骨下関節固定付き足底板とバンド型足底板装着による単純X線での大腿脛骨角の変化とともに距踵部角ならびに距骨傾斜角の変化を比較検討し,距骨下関節弾性固定の下肢アライメントに与える影響を考察することとした.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら