脳卒中片麻痺に対する理学療法効果と判定―理学療法効果判定の指標としてのFRT,TUGTの可能性
著者:
須藤真史
,
藤田由香
,
貴田貴子
,
浅利尚美
,
工藤育子
,
野宮育美
,
對馬均
,
対馬栄輝
ページ範囲:P.879 - P.884
はじめに
近年,Evidence Based Practice(根拠に基づく臨床活動)の必要性が強く認識されるようになったことから,臨床研究は治療効果の検証という側面に重きが置かれるようになってきた1-4).このEvidence Based Practiceの意図は,臨床活動を実践するにあたって,勘や経験に頼るのではなく,最新で最適な根拠を基に行おうという点にある.
しかし残念なことに,理学療法の臨床では厳密な形で無作為化臨床試験を行うことには困難が伴うため,理学療法にEvidence Based Practiceを行うのに十分なevidenceの蓄積があるとはいい難い.こういう状況にあるからこそ,我々は自らの手でevidenceを結実させ,蓄積することがまず必要であるといえよう.
Evidenceに基づく理学療法を志向することは重要であるが,我々が今めざすべきなのは,evidenceユーザーではなくevidenceメーカーであり,自らの臨床のなかから帰納的にevidenceを探し出し,明らかにしていくことに他ならない.
ところで,脳卒中片麻痺患者では随意運動の回復段階の評価とともに,平衡反応に代表される姿勢維持能力の評価が重要とされる5,6).これには,足圧中心位置の動揺を指標として,その移動距離や移動面積を計測したり,各種のバランス維持動作の遂行能力を指標とするテストが行われたりしている.なかでも,Functional Reach Test(以下,FRT)7,8),Timed Up and Go Test(以下,TUGT)9)は,立位や歩行における動的バランスを評価する指標として,その簡便さと有効性が明らかにされてきている.
以上の観点から,本稿では,脳卒中片麻痺の活動性につながる立位や歩行時の動的バランス能力に注目し,片麻痺に対する理学療法のevidenceの探索を試みることにする.