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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル35巻3号

2001年03月発行

雑誌目次

特集 回復期リハビリテーション病棟

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.159 - P.159

 今回の特集は2000年4月に,医療保険上新設された“回復期リハビリテーション病棟”である.

 回復期リハビリテーション病棟はリハビリテーション・システムの要(かなめ)であるとともに,具体的リハビリテーションアプローチのモデルとも位置付けられている.また,リハビリテーション医療の独自性が認められたと同時に,大きな変革を迫るものでもある.

回復期リハビリテーション病棟成立の背景

著者: 石川誠

ページ範囲:P.161 - P.166

はじめに

 2000年4月の診療報酬改定により回復期リハビリテーション病棟入院料が新設された.日本リハビリテーション病院・施設協会が数年前より要望してきたリハビリテーションを専門とする病棟である.一方,同時期に介護保険制度が施行となった.厚生省は保険請求事務に若干の混乱が認められる程度で,まずまず順調な滑り出しと評価しているようである.また,2001年1月から健康保険制度改正,3月からは第4次医療法改正がスタートする.これら矢継ぎ早に実施される制度改革や新たな制度はお互いに密接に関係し,今後の保健・医療・福祉の方向性を示したものと考えられる.

 以下では,回復期リハビリテーション病棟が如何なる経過で新設され,各種の制度改革のなかにあって,どのような意義があるのか述べたい.

回復期リハビリテーション病棟のあり方

著者: 大川弥生

ページ範囲:P.167 - P.178

はじめに

 2000年4月の診療報酬改定によって「回復期リハビリテーション病棟」が新設されたことは,リハビリテーション(以下リハと略す)医療の独自性が医療制度のなかで初めて認められたことであり,リハ医学を専門とする身としては大変喜ばしいことである.特に今回の診療報酬改定で「急性期と慢性期との谷間におちこんで,リハ医療は消滅してしまうのではないか」という危機感が強かったなかで,これは大きな朗報であった.これによって,適切なリハを行わないままに退院や転院がなされてしまったために,本来発揮できるはずのADL能力が十分に発揮できずに寝たきりになったり,また本来自宅復帰できたはずの人ができなくなるようなことが回避されると期待される.

 しかし一方で,これはリハ医療のこれまでの姿がそのまま認められたというものではなく,大きな脱皮を迫られていることを肝に命ずるべきである.万一,「回復期リハ病棟」が目的とする“寝たきり予防”や“自宅復帰促進”を実現できなかったり,リハの名のもとに社会的入院の隠れ蓑になったりしてしまえば,「回復期リハ病棟」の今後の発展はなく,またリハ医療全体にも大きくマイナスとなるであろう.したがってリハ医療界全体として,「回復期リハ病棟」のみでなくこれをより良いリハの発展のために,これまでの対応を再検討しそのあり方について考える好機としてとらえるべきと思う.

 なお,前述した危険を避けるためにも,本特集の対談で厚生省の則安課長補佐が述べられているように,回復期リハ病棟のあるべき姿の方向づけとして,詳細なリハ総合実施計画書の使用が義務づけられている.また厚生省の指導のもとに「地域リハ懇談会」が開催され,回復期リハ病棟を中心として議論がなされた.筆者はこの会で回復期リハ病棟のあり方についての報告をさせていただき,それをもとにして報告書1)が作成され全国に配布された.また2001年2月には,自助努力として回復期リハ病棟連絡協議会が,その質的向上を最大の目標として発足するはこびとなっている.

 本稿ではこれらをふまえて,「回復期リハ病棟」のあり方について,特に具体的対応のポイントをPTとの関連の深い点を中心に論じることとしたい.

 なお,筆者自身はこれまでリハの現状について様々な見地からの再検討を行い,より良いリハプログラムの確立を目指して,プログラムによる効果の差についての検証を通して,「目標指向的リハプログラム」を体系化してきた.その具体的対応のポイントは表1に示しているが,PT・OTによる病棟ADL訓練3),「できるADL」と「しているADL」の明確な区別2)など,今回の「回復期リハ病棟」で重視されている考え方と基本的に同じであり,我々の経験を今後の回復期リハ病棟のあり方や具体的なすすめ方を考えるにあたって役立てていただけることも多いと思う.詳細については既論文2-38)等を参照いただきたい.

回復期リハビリテーション病棟における理学療法士の役割―これまでの反省とこれからの課題

著者: 岡野文男 ,   原道也

ページ範囲:P.179 - P.182

はじめに

 発症からの時期,施設により理学療法の果たすべき役割は異なるのだろうか.それでは平成12年4月に新設された“回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)”についてはどのように考えればよいのであろうか.同一条件下にある患者であれば,回復期リハ病棟で有ろうと無かろうと,PTの果たすべき役割は変わらないはずである.新たにこのような制度の成立をみると,今日までのリハビリテーション医療が必ずしも肯定的に受けとめられていないとも考えられる.

 本稿では,従来の理学療法が抱えている問題を指摘しながら,当院における回復期リハビリテーションの取り組みを紹介し,PTの役割を再考することにしたい.

回復期リハビリテーション病棟をめざして―チーム内の理学療法士の役割

著者: 楢山浩生 ,   平岡幸雄 ,   中根理江

ページ範囲:P.183 - P.185

はじめに

 2000年4月の診療報酬改定で「回復期リハビリテーション病棟」(以下,回復期リハ病棟)が新設され,リハビリテーション(以下リハ)をうける患者・家族にとって大きな転機が訪れたといえる.

 在宅支援を目標に濃密なリハを展開するため,当院においても,「回復期リハ病棟」の開設に向けて2000年2月より準備を進めてきた.本稿では,開設準備の経験をふまえて,理学療法士(PT)としての反省点と「回復期リハ病棟」におけるPTの役割についてチーム全体で検討してきた内容を紹介することにしたい.

[対談]回復期リハビリテーション病棟の機能と理学療法士の役割

著者: 則安俊昭 ,   吉尾雅春

ページ範囲:P.187 - P.204

 司会 昨年の4月に介護保険がスタートし,リハビリテーションはいろいろと大きく影響されるところがありました.その介護保険のスタートと同じ4月に医療保険において回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)ができました.これはリハビリテーションにおいてかなり画期的なことです.但し全く新しい制度なので,現場においてはPTだけではなく,リハビリテーションに関係するスタッフ,看護婦さん,またリハビリテーション関係以外の病院においても,さて,回復期リハ病棟とはどういうものなのか.具体的にはどういうふうに運営をすべきかということはいろいろな戸惑いもあるようです.そこで今日は厚生労働省から則安課長補佐(医師)においでいただき,現場では本来どうすべきであるのかご意見を伺いたいと思います.

 また今回の対談の相手は吉尾先生ですが,先生にお願いした理由は,1つには回復期リハ病棟はADL能力向上を重視していますが,吉尾先生は昨年のQOL-ADL研究大会の会長でいらっしゃったことです.もう1つの理由は,PT協会で長年診療報酬対策委員として診療報酬に関係する調査をしたり,指針も出してこられました.このような理由で,対談のお相手としてはまさに適任と思っております.ではまず,回復期リハ病棟ができた経緯について,則安先生からお話し下さい.

とびら

「親になって,想うこと」

著者: 河野智行

ページ範囲:P.157 - P.157

 本誌の巻頭「とびら」欄は,私にとって日常臨床のなかで感じている悩みやストレスに対し,先輩から教えや励ましの言葉をもらう場所です.まさか,若輩者の私が書くことになろうとは思いもせず,同じ考えをもって読んでいる方たちに申し訳ないと考える反面,このような貴重な機会を与えてくださった先輩に感謝したいという気持ちでペンを取ることにしました.

 私が理学療法士として小児の臨床に携わり6年が過ぎようとしています.思えばこの間,人生の節目を迎えるごとに,子どもとその家族への関わり方が変わっていきました.臨床に立ちはじめた頃は,子どもの未獲得な機能や能力ばかりに着目していて,親御さんと十分に話もできず,両親や周囲の環境をも含めて障害をとらえることができませんでした.先輩方の接し方は自然で,世間話から母親の思いを聴いたり,今子どもが直面している問題や,環境・状況を把握するように展開していく日常会話のやり取りに耳を傾けては,その技術を盗むのに必死でした.あれは入職2年目を迎えたころ,小児のある研修会に参加した際,講師の先生が話された言葉が心に刺さったことを良く覚えています.「君は脳性麻痺に興味があるのか,それとも脳性麻痺児なのか」と…….

Treasure Hunting

子どもらの人生に寄り添いながら―松野俊次氏(豊田市こども発達センター)

著者: 編集室

ページ範囲:P.205 - P.205

 人との出会い,そして耳にした一言に突き動かされて自ら生涯の職業として理学療法の道に入ったという方に何人かお目に掛かったことがある.それほどに心を動かされる出会いを経験されたということだろう.

 今月ご登場いただいた松野俊次氏が小児理学療法の道に入ったきっかけは早稲田大学の学生時代に遡る.生来の子ども好きでYMCAのボランティアリーダーとして種々のグループ活動に参加,そうした活動の1つに「障害児と健常児とのインテグレーションキャンプ」というのがあり,当時東京教育大学付属桐ヶ丘養護学校高等部の松兼功氏に出会う.氏はアテトーゼ型の脳性麻痺で,キャンプファイアーの炎を囲んで,「自分は体に不自由はあるが,心は健康である.心の健康さを大切に障害に負けずに生きていきたい」と話しをされた.大学生とあまり年齢の離れていない松兼氏からのこのメッセージが,松野氏の心中に強い共感を呼んだのも頷ける.

プログレス

脳による運動と行動の制御

著者: 稲瀬正彦

ページ範囲:P.206 - P.208

 運動の制御に関わる脳領域として,大脳皮質運動領野,小脳,大脳基底核,脳幹などがあげられる.これらの領域の働きを簡単にまとめてみると,大脳皮質と脳幹は,直接脊髄に運動指令を送り,脊髄からの最終的な運動出力を制御している.これに対して,小脳と大脳基底核は,大脳皮質や脳幹に働きかけ,これらの領域からの運動指令を調節している,と考えられる.本稿では,以上の領域のうち,随意運動を行うときに特に重要な大脳皮質運動領野の働きを紹介する.

入門講座 生活習慣病・3

糖尿病

著者: 細川和広

ページ範囲:P.209 - P.213

 糖尿病は生活習慣病の1つで,患者数が最近急激に増加していて,その数は日本全国で700万以上ともいわれている.啓蒙活動が以前より普及し,ある程度は糖尿病の知識を持っている人が増えているはずだが,実行が伴わないためか患者数は減少しない.患者数の増加に伴って合併症の進行している症例も増えてきている.理学療法を受けている患者には,糖尿病の三大合併症(網膜症,神経障害および腎症)や脳梗塞,心筋梗塞に罹患している例が多い.今回,糖尿病の診断,糖尿病コントロールの状況を把握するための検査や合併症の有無を調べる検査,更に糖尿病の薬物療法について基本的なことを解説し,最後に理学療法を行ううえでの留意点について述べることにする.

1ページ講座 介護保険のポイント・3

介護保険の財源と給付

著者: 香川幸次郎

ページ範囲:P.214 - P.215

 介護保険制度における財源は大きく二者に分けられ,保険料と国,都道府県そして市町村の負担金である.前者は第1号被保険者および第2号被保険者が納める保険料であり,第1号保険料は財源全体の17%を,第2号保険料は33%を占め,これら二者で財源の5割を賄っている.第1号保険料は,介護保険に要する費用の見込額から,第1号被保険者が保険料として支払う額を算定し,次に第1号被保険者数から基準となる額を定めた後,所得段階別の保険料を算定する.保険料は5段階に設定されており,第1段階(基準額に4分の2を乗じた額;老齢福祉年金受給者,生活保護者),第2段階(4分の3を乗じた額,市町村民税世帯非課税者),第3段階(基準額;市町村民税本人非課税者),第4段階(4分の5を乗じた額;市長村民税課税者で基準所得未満の者),第5段階(4分の6を乗じた額;市長村民税課税者で基準所得を超える者)である.保険料の額は市町村によって異なっており,サービスを多く給付する市町村ほど保険料が高くなる.全国の平均保険料の基準額は2,885円であり,全市町村の90%が2,000円から4,000円未満の基準額である.なお,保険料は保険財政の安定化を図るため,3年ごとに見直すこととなっている.

あんてな

第36回日本理学療法学術大会の企画

著者: 梶村政司

ページ範囲:P.216 - P.218

 開催地広島の歴史

 開催地広島は,明治22年(1889年)に市制を施行し,軍都また学都の性格を持った近代都市として発展してきましたが,昭和20年(1945年)8月6日,原子爆弾によって壊滅的な打撃を受け多くの人命と街を失い,辛うじて生き残った人々も被爆の苦しみを背負うこととなりました.

 この廃墟のなかから,広島は,堪え難い悲しみと苦しみを乗り越えて復興に立ち上がりました.昭和24年(1949年)には,広島を平和記念都市として,市民の英知と努力,国内外からの温かい援助などによりめざましい復興を遂げてきました.

講座 応用行動分析学・3

理学療法における応用行動分析学―3.治療場面への応用

著者: 山﨑裕司 ,   長谷川輝美 ,   山本淳一 ,   鈴木誠

ページ範囲:P.219 - P.225

 1.はじめに

 理学療法への探求は大きく分けて2つの視点から捉えることができる.1つはより有効な治療方法を追求する視点であり,これまでの理学療法士の研究活動はここに集約されてきたといってよい.もう1つは,十分な理学療法効果を得るために患者の行動をより適切な方向へ導くかという視点である.言い換えれば,理学療法に対する動機づけを如何に行うかという視点でもある.運動療法や日常生活動作指導など理学療法の大部分は患者の協力や努力なくしては成立しないため,後者の視点を欠いて有効な理学療法を適切に提供することは不可能であろう.

 本稿では,これまでの2回の連載で紹介された応用行動分析学の理論・技法をもとにして,患者の動機づけを行うためのアプローチ方法をより具体的な形で提供する.

書評

―川村次郎・竹内孝仁(編集)―義肢装具学(第2版)

著者: 武智秀夫

ページ範囲:P.166 - P.166

 この度,川村次郎,竹内孝仁両先生の編集による義肢装具学(第2版)が上梓された,まず最初に40名近い執筆者の書かれたものを理学療法士,作業療法士養成校向けのものにまとめられたことに敬服する.

 順を追って本書の内容を紹介しよう.Ⅰ部は歩行のバイオメカニクスで健常歩行,義肢装具歩行が,ついで義肢装具のバイメカニクスが総論として述べられている.Ⅱ部は義肢編で,切断,義肢総論,下腿義足,大腿義足,股義足,サイム義足,足部部分義足,義手,切断者のリハビリテーション,Ⅲ部は装具編で,装具総論,片麻痺の下肢装具,対麻痺の下肢装具,スポーツ障害の装具,小児装具,整形外科的治療装具,靴型装具,足装具,杖,歩行補助具,頸椎装具,側弯装具,腰背痛の装具,脳性麻痺の装具,リウマチの装具,末梢神経損傷の装具,手の外科の術前・術後の装具,頸髄損傷の上肢装具,車いす,座位保持装具,自助具・福祉用具,義肢装具の材料学,義肢装具に関する法と制度であり,項目として義肢装具を網羅している.また,各項目毎に演習問題がつけ加えられているのも特徴的である.

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文献抄録

ページ範囲:P.226 - P.227

編集後記

著者: 大川弥生

ページ範囲:P.230 - P.230

 年度のおわりの3月になったが,今年度は世紀末から新たな世紀へのかけ橋となった年度である.リハビテーション(以下リハと略す)についても,回復期リハ病棟という,ADL重視というリハの原点のもとづく新しい制度ができた.

 回復期リハ病棟は病棟でのADL訓練を重視するものである.本誌では既に1995年に「病棟訓練」の特集を組んできた.その後,本誌の姉妹誌ともいうべきOTジャーナルでも病棟訓練の特集が組まれ,病棟訓練の重要性が再認識される様になってきた.そして今回病棟を“集中的リハアプローチをする場所”と位置付けた回復期リハ病棟がスタートした.本誌もこの様な流れを作る一助として貢献できたのではないかと本誌編集委員の一人としても嬉しい限りである.そしてまた,本号での回復期リハ病棟の特集が新たな動きを生む契機になればと期待している.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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