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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル35巻9号

2001年09月発行

雑誌目次

特集 自営理学療法士の活動

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.605 - P.605

 1965年にわが国に理学療法士が誕生して早くも36年になる.現在,理学療法士の大多数は医療機関に勤務しており,徐々にではあるが,保健・福祉領域での勤務も拡大している.しかし,残念ながら,理学療法士が独立して行う診療行為に対して診療報酬が支払われるという形態での開業権は未だ実現していない.しかし,理学療法士のわずか一部ではあるが,理学療法士としての技能を基盤として,フリーな立場で仕事をしている方々が存在する.今月号では,そのような理学療法士の活動を紹介した.将来的に何らかの形態で理学療法士の開業が可能になるのか否かの判断材料になれば幸いである.

〈私の職場〉

訪問リハビリテーションを中心として

著者: 足立このみ

ページ範囲:P.607 - P.612

はじめに

 自営理学療法士の先駆けということでのご指名であるが,「自営」という言葉は現在の私にはピンとこず,とまどいさえ感じている.現在は複数の組織に関わる非常勤として個人の確定申告のみを行っている.したがって,「自営」というよりも「フリー」という言葉のほうがしっくりすると思われる.

 1994年3月病院を退職,95年8月訪問リハを中心とする業務内容の1人法人の有限会社を設立.

 1997年9月福祉用具販売会社設立.

 1998年8月訪問リハビリテーション中心の有限会社解散,同時に社団法人長寿社会文化協会のポイントを設立.

 1999年10月福祉用具販売会社を離れる.

 1つの施設,病院に常勤するという就業形態から距離をおき,多元的に就業形態を考え,試みてきて8年,過去の経験を反省とともに振り返り,できうることなら次への展望を考えられたら良しと思って,恥ずかしながら書かせていただくことにする.もちろんこれが志ある理学療法士(以下PT)の方々にとって勇気を奮いたたせることになるのか,足をひっぱることになるのかは当方責任をもちかねることを了承いただくとともに,現在自営なさっている諸先生方が失笑なさることになるやもしれないと覚悟している次第である.

地域や施設等での予防的な実践活動と啓発活動を中心として

著者: 鶯春夫

ページ範囲:P.613 - P.618

 開所までの経緯

 私は昭和61年に理学療法士免許を取得し,民間の整形外科病院に1年間勤務した後,特例許可老人病院である橋本病院に勤務することとなった.入院患者の半数近くが行き場のない重度の寝たきりという状態のなか,積極的な離床運動や物理環境的アプローチ,理学療法士的レクリエーション,季節行事の企画・運営のほか,訪問活動やデイケアなどを展開してきた.

 平成3年度には橋本病院院長が特別養護老人ホームの嘱託医をしている関係から,その特別養護老人ホームが主催する介護者教室の講師を初めて務めることになった.講義の内容は,私が日本理学療法士学会などで発表してきた病院での実践活動を一般向けに分かりやすくまとめたものとした.

在宅を中心として

著者: 小山樹

ページ範囲:P.619 - P.622

はじめに

 現在,理学療法士,作業療法士(以下,PT・OT)の開業は認められていない.我々の行っていることは,そのなかでどう自分たちの目指すリハビリテーションを追求していくかの模索である.病院勤務を経て在宅に携わるうちに,利用者のニーズを満たしながら,そこで働く前向きなPT・OTのニーズをいかに実現し,形にしていくかということから取り組みは始まった.

 一般に「開業=自由によいリハビリテーションが提供できる」「開業=儲かる」といったイメージがあるかもしれないが,自由に展開できるぶん責任がついて回り,組織のなかで働く場合,しばりはあるが,逆に保護されているともいえる.また,しばりのなかの自由もまた存在する.独立を選ぶか否かは個人の自由であるが,開業権が認められることにより選択肢は広がることになる.今後の参考になるかはわからないが,現状等を述べさせていただきたい.

技術指導を中心として

著者: 中野昭二

ページ範囲:P.623 - P.628

 はじめに

 世界でも有名な活火山である阿蘇山を有する熊本に赴任して早くも24年の月日が経ちました.学生時代から数えて35年,社会人になってから32年の歳月です.私が会社を設立したのは1995年の5月,以来今日まで丸6年が経過して7年目に入りました.バブル崩壊後の日本は構造不況の真っ只中であったにもかかわらず,会社の事業は順調に右上がりを続けることができ,ほんとうに運がよかったと思います.事業が軌道にのったことで,最近は少し周りが見渡せるようになってきました.日本ではPTには診療報酬を受け取る形での開業権は認められていませんが,私のような開業スタイルも1つの方法ではないかと思います.将来は独立をと目指しておられるPTの皆さんに少しでも参考になれば幸いです.

介護との関わりを中心として

著者: 岡部正道

ページ範囲:P.629 - P.633

 仕事は人生の「パーツ」

 理学療法士の開業権については誰もが興味を持っていることと思う.もし実現したら,独立した事業を起こしてみたいと思う人がいて当然のことである.しかし,私の場合は,こういういい方をすると,そういう方面に日夜ご尽力頂いている方々から怒られるかも知れないが,余り興味がないのである.

 私にはコンピュータ関係の会社を起こしている兄と1年の3分の1が海外出張というライフスタイルをとっている弟がいる.年に1回くらいしか兄弟が顔を合わせることはないのだが,いつか弟がこんな話をしていたのを思い出した.会社の同僚が,「おまえは英語ができるから海外で仕事ができていいな」と羨ましがっていると,「今のような仕事がしたかったから英語が必要だっただけだよ」と答えたそうだ.

とびら

“Doing”だけでなく“Being”にも

著者: 斎藤功

ページ範囲:P.603 - P.603

 理学療法士になって15年が過ぎた.しかし,自分はまだ“ヒヨッコ”の域を出てはないと感じている.未だに自分のライフワークとして一番関心のあるものは何なのか,何を目指すべきなのかが実感として湧いてこない.昨今よく目にするキーワードとしてアイデンティティーやジェネラリスト,スペシャリストなどがある.理学療法士は何ができるのか,社会に対して何をしていくべきなのか,私にはテーマが大きすぎて考えもつかない.ましてや田舎の一般病院に勤務する私にとって,スペシャリストは程遠く,ジェネラリストと呼べるほど色々なことも知らず,経験できるものにも制限がつきまとうと感じている.

 私は仕事で気になる分野は一応はかじってみる.そして,自分なりに理解するまで没頭する.没頭しているときはいつでも楽しくなって,次から次へと興味が湧いてくる.しかし,私の最大の欠点が熱しやすく冷めやすいという性格であるため長続きはせず,最終的には自分のものにはならずに何事も中途半端で終わってしまっている.

入門講座 映像情報の活用法・3

映像の撮り方と取り込み

著者: 夏目健文

ページ範囲:P.635 - P.638

 1.はじめに

 現在,デジタルカメラ(以下デジカメ)やデジタルビデオカメラ(以下DVカメラ)の撮影方法を述べた技術書は多数出版されている.そこには,カメラ撮影でフラッシュによる影をなくすためにライトやレフ板を利用して光を多方向から当てることや,室内で窓際の人を撮影する際のフラッシュの利用,ビデオカメラの構え方や撮り方などが詳細に述べられている.撮影では,こういった撮影テクニックのほかに,カメラの設定について理解しておく必要がある.

 デジタルで映像を扱うようになり,映像を編集段階で処理することが普通となった.しかし,あくまでもオリジナル画像をきれいな画質にすることにこだわり最小限の画像処理で済ませたい.映像の撮り方と動画をパーソナルコンピュータ(以下パソコン)に取り込むためにしておくことが,今回のテーマである.映像の撮り方では,静止画像と動画に分けて筆者の私見を交え述べる.また,パソコンへの取り込み(以下キャプチャー)では,トラブルを起こさないために,筆者が現在キャプチャー前に行っている設定を紹介する.

講座 「まち」をつくる側からの提言・3

高齢社会における「まち」と理学療法

著者: 中村大介

ページ範囲:P.639 - P.644

 1.はじめに

 理学療法の最終的な治療ゴールは,高齢者・障害者が「まち」で自立した生活を送ることであろう.しかし実際には,高齢者・障害者が「まち」に適応した生活を送ることは難しい.それは「まち」や都市空間が,個別的な配慮の可能な住まいや居室と違い,より汎用性を重視した整備が求められるためであり,かりに高齢者・障害者に自発的な動因要求があったとしても,外的な建築的条件などによって行動が制限されたり,影響を受けやすいためである.また「心のバリア」といわれるように,「まち」や建物が人の心を閉ざす心理的なバリアをっくってしまうことも要因として考えられる.

 本稿では,高齢社会における「まち」と理学療法との関わりについて考えるために,人間と環境の対応関係からみた生活環境の捉え方と建築分野で行われている福祉のまちづくりを紹介し,「まち」づくりの考え方,問題点を整理したうえで,その解決の展開や可能性として建築・都市のユニバーサルデザインについて述べる.

プログレス

三次元運動解析装置と床反力計を用いた身体運動の力学的解析―最近のトピックス

著者: 石井慎一郎

ページ範囲:P.645 - P.647

はじめに

 映像による運動解析の歴史は,1980年代にMuybridgeによって行われた複数の写真機を用いた連続撮影による馬の走行に関する研究に端を発する.その後,シネフィルムが運動解析に用いられるようになり,1980年代以降は,コンピュータの性能が向上して計測装置は飛躍的に進化し,運動解析は二次元解析から三次元解析へ,運動学的解析から運動力学的解析へと発展を遂げた.そして更に最近では,運動解析装置の普及や解析方法の開発が進み,様々な運動学的・運動力学的パラメータが半自動的に得られるまでになっている.

 このように,三次元運動解析を取り巻く環境は,この数年間で大きく変化した.新しい技術の導入が積極的に行われ,三次元運動計測はより速く,より簡単に,より確実に行えるようになり,更に加速度的に進化を続けている.そこで本稿では,三次元運動解析における最先端の領域ではどのようなことが起きているのかレポートしてみたい.

学会印象記 第36回日本理学療法学術大会

21世紀の理学療法の夢を追求

著者: 中澤住夫

ページ範囲:P.648 - P.649

 21世紀最初の第36回日本理学療法学術大会は,平和都市広島の広島国際会議場において,5月24日(木)から26日(土)までの3日間の日程で開催された.テーマは「21世紀の理学療法―臨床・教育・研究の展望―」で,内容は大会長講演1題特別講演1題,シンポジウム4題,教育講演4題,セミナー4題,市民公開講座1題,一般演題850題であった.

 本大会は21世紀最初の学術大会に相応しい幾つかの新たな取り組みがあった.

第38回日本リハビリテーション医学会学術集会

横浜港から21世紀への新たな船出

著者: 藤澤宏幸

ページ範囲:P.662 - P.663

 学会メインテーマ

 本年6月14日から16日にかけて,横浜市(パシフィコ横浜)で開催された第38回日本リハビリテーション医学会学術集会に参加した.学術集会は横浜市立大学医学部リハビリテーション科教授である安藤徳彦大会長の「提言」に始まり,招待講演2題,特別講演1題,特別ディスカッション1題,シンポジウム2題,パネルディスカッション5題,ワークショップ7題,一般演題(口述468題,ポスター130題,ビデオ4題)という内容であった.

 学会の2週間ほど前に送られてきた抄録集を手にして,改めて感じたことがあった.本年度学術集会のテーマは「21世紀への船出,リハ医学の充実と普及」であった.まさに21世紀幕開けの年にふさわしいテーマであるが,それ以上に「リハ」という呼称が新鮮に思えた.20世紀後半,「リハビリテーション」は日本社会のなかで「リハビリ」さらには「リハ」として定着した.このように社会に定着した「リハ」が21世紀にどのように発展し,社会に貢献できるのかを問うものとの印象を受けたからである.

Treasure Hunting

生活障害にアプローチする理学療法士をめざして―原口 忠氏(奈井江町立国民健康保険病院)

著者: 編集室

ページ範囲:P.651 - P.651

 日本列島は尋常でない猛暑続きである.せめて誌面を通じて涼風をお伝えできればというわけで,前月に引き続いて北海道から原口忠氏にご登場いただいた.氏の居住する奈井江町を一躍有名にしたのが,2000年4月にスタートした介護保険制度.地方自治体として全国で初めて老健施設を開設したり,病院,特別養護老人ホーム,デイサービスセンター,訪問看護ステーション,老人介護支援センターなどすべてを町が運営し,保健・医療・福祉の連携を実のあるものにするため老健施設や福祉施設にまで開放型共同利用制度を採用,住民に安心感を与える施設運営を行っていると評判を呼んだからである.

 その町立病院で1人理学療法士として働いているのが原口氏だが,北海道という地域特性に由来する種々の課題がまだまだ残されているようだ.

初めての学会発表

そこから得たもの,感じたこと

著者: 星野仁美

ページ範囲:P.652 - P.653

 世界平和のシンボルを持つ広島県.その平和記念公園内にある広島国際会議場にて第36回日本理学療法学術大会が2001年5月24~26日の3日間にわたって開催されました.理学療法のルーツをたどれば「戦争・兵士・義足」であり,21世紀の幕開けの年に原爆が投下されたこの地で本大会が開催されたことは,大きな意味づけがされていたように思います.そして私は初めての学会発表であり,私個人にとっても大変意味のあるものであったことはいうまでもありません.今回,ここで皆さんにその体験をお知らせできる機会を得ることができたので,学会発表をするに至ったきっかけから,発表を終えて職場に戻ってからまでを私の感じたことを中心に述べさせていただきたいと思います.

1ページ講座 介護保険のポイント・9

介護支援専門員(ケアマネジャー)

著者: 香川幸次郎

ページ範囲:P.654 - P.654

 介護支援専門員とは,介護保険におけるケアマネジメントの中核を担う職種であり,ケアマネジャーと呼ばれている.介護保険法では「要介護者等からの相談に応じ,及び要介護者等がその心身の状況に応じ適切な居宅サービス又は施設サービスを利用できるよう市町村,居宅サービス事業を行う者,介護保険施設等との連絡調整等を行う者であって,要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識および技術を有する者」と定められている.介護支援専門員の資格を取得するには,厚生労働省令で定める介護支援専門員実務研修受講試験に合格し,かつ介護支援専門員実務研修の課程を修了しなければならない.なお,受講試験を受けられる要件として,医師や看護婦,理学療法士,作業療法士,介護福祉士,社会福祉士等の資格を有し5年以上の経験のある者のほか,福祉施設等での相談援助業務や介護業務等に従事した者など,幅広い要件が掲げられている.

 介護支援専門員の業務は大きく3者に分類することができる.第1は被保険者に代わって行う要介護認定の申請代行や市町村から委託を受けて行う認定調査である.第2は業務の中核となるケアマネジメント業務であり,要支援および要介護高齢者等の依頼を受け,アセスメントの実施と課題分析,居宅サービス計画の作成を行う.サービス計画の立案は,利用者や家族の意向はもちろん,サービス提供者から意見を聴取し,また担当者会議を開いて行われることになっているが,担当者会議の開催は低調である.具体的な計画を立案する際に,サービスごとに定められた介護報酬額や給付限度額が勘案される.そして,当該地域にある居宅サービス事業者や介護保険施設等との間でサービス利用の調整を行い,週間および月間の具体的なサービス提供プログラムが決定される.また,サービス実施後は,サービス内容の変更や実施状況の継続的な把握が行われる.第3はサービスの給付管理業務であり,利用者個人ごとのサービスの実績管理(給付管理票の作成)やその結果を国民健康保険団体連合会に提出する業務等である.なお,施設利用者に対しても,当該施設に勤務する介護支援専門員が個々の利用者に対し介護計画を立案し,サービスの提供が行われる.

原著

左半側空間無視を呈した1症例に対するリハビリテーションアプローチによるADLへの影響

著者: 江口瑠美 ,   山内千鶴 ,   國島春子 ,   佐々木誠

ページ範囲:P.655 - P.661

はじめに

 脳損傷例のリハビリテーションにおいて高次脳機能障害,特に半側空間無視の存在は,車いすのブレーキ操作を忘れる,車いす駆動時無視側をぶつける,着衣の際に無視側の袖を通さない,食事の際に無視側にある食べ物を見落とす,杖歩行や平行棒内歩行時には非無視側方向へ注意が集中してしまうなど,ADLの多様な側面を阻害することが知られている1-4).しかし,半側空間無視のメカニズムについては注意障害説5),表象空間無視説6),半側空間運動低下説7),方向性注意説8)など様々な見解があり定説がない1,9)のが現状である.

 また,半側空間無視を呈する患者に対してのアプローチは,言語的能力を手掛かりにしたトレーニングで効果を得たとの報告4)がある一方で,逆に言語活動によってトレーニング効果が得られにくいことを示唆する報告5)もあるため,一概に1つの方法がすべての患者に有効であるとは言い切れない.

 そこで,本症例について数多くあるアプローチから左右各大脳半球を個々に刺激することが有効であるか,左右各大脳半球を同時に刺激することが有効であるかを選択理由として,患側上肢他動運動,全身運動(歩行),言語活動を選び出して治療的接近を試み,シングルケースデザイン10,11)にて有効性を比較した.更に,ADL場面においての各アプローチの波及的効果を検討した.

あんてな 第36回日本理学療法士協会

全国研修会の企画

著者: 溝上昭宏

ページ範囲:P.664 - P.666

はじめに

 第36回全国研修会を担当する佐賀県理学療法士会では,平成13年10月5日・6日の2日間の全国研修会開催に向け準備を進めております.佐賀県士会は今年3月,社団法人を認可されました.数年前より全国研修会の開催と法人の取得を大きな目標にして士会活動に努力してきた山田道廣会長以下士会員一同にとって,幸先の良い21世紀の幕開けとなりました.この喜びを全国研修会の成功に繋げられるよう,士会員一丸となって努力しております.

雑誌レビュー

“Physiotherapy”(2000年版)まとめ

著者: 久保晃

ページ範囲:P.668 - P.673

はじめに

 “Physiotherapy”は英国の理学療法協会が発行している歴史ある雑誌である.例年,理学療法ジャーナルの9月ないし10月号に前年のレビューが掲載されている.本年も2000年86巻の内容を概観してみる.

 昨年1999年85巻をまとめられた高橋哲也氏と同様に,“Peer-reviewed papers”を日本理学療法士協会の7つの専門領域部会に照らして分類してみた(表).昨年に比べて理学療法基礎系と教育・管理系理学療法の論文数が多いが,それはどこに分類するのが妥当であるかを判断しかねるものを無理やり基礎系と教育・管理系に振り分けたためである.日本の理学療法に関連した雑誌に比べると盛り込まれる内容は,はるかに広範な題材にまで及んでいる.

 通読して目を引いたことは,第13回WCPT学会(横浜)で発表された内容が論文にされていたことである.5月号には100名の健常者によってなされたエキセントリックステップテスト(台上から床へ踏み出す動作時の台に残っている側の膝関節)の動作分析(Selfe J:Motion analysis of an eccentric step test performed by 100 healthy subjects,(5):241-247)が掲載されていた.12月号にはシンポジウム2:「痛みへの挑戦」を担当された座長(Haker E)が巻頭言を執筆し,そのうち3名のシンポジストが論文“慢性疼痛管理中の活動性の増加と機能改善(Harding V,et al: Increasing activity and improving function in chronic pain management,(12):619-630),理学療法における疼痛と偽薬:善意のうそ?(Simmonds MJ:Pain and the placebo in physiotherapy:A benevolent lie ? (12):631-637),疼痛を緩和する方法としてのマッサージ(Lund I:Massage as a pain relieving method,(12):638-639)を載せている.なお,このシンポジウムの要約は理学療法学27(4):117-119に報告されている.

 また86巻に盛り込まれた全ての内容のインデックスは,12月号の雑誌の中央部に別色刷りになっているのでそちらを参照していただきたい.

資料

第36回理学療法士・作業療法士国家試験問題(2001年3月2日実施) 模範解答と解説・Ⅲ―理学療法(3)

著者: 乾公美 ,   武田秀勝 ,   乗安整而 ,   宮本重範 ,   橋本伸也 ,   吉尾雅春 ,   田中敏明 ,   小塚直樹 ,   青木光広 ,   石川朗 ,   高柳清美 ,   片寄正樹 ,   小島悟

ページ範囲:P.674 - P.679

ひろば

群馬大学国際交流第1回理学・作業療法学専攻シアトル海外研修に参加して

著者: 梅原健一

ページ範囲:P.634 - P.634

 今回,幸運にも激戦を勝ち抜き3月25日から4月8日までの2週間,米国シアトルでの海外研修に参加することができた.英会話に不安があったものの,リハビリテーション先進国である米国の様子を垣間見るチャンスに胸を躍らせた.群馬大学では,これまで看護学専攻の学生には研修の機会があったが,理学療法・作業療法学専攻にとっては初めての試みで,PT・OTの2~4年生14名が参加した.最初の1週間はタコマのピュージェットサウンド大学(UPS),次の1週間はシアトルのワシントン大学(UW)で,それぞれ講義・講演,病院見学を中心としたスケジュールであった.

 UPSはのどかで落ち着いた街にあり,芝生の緑と桜が心を穏やかにしてくれた.ここでは修士課程の学生が通常受講している講義や実習のなかに,我々も一緒に参加させてもらうことができた.学生は一方的に講義を受ける立場ではなく,教員と対等に堂々と意見を交わす姿にまず驚いた.講義はまさにディスカッションの場であった.また,この大学の特徴であるclinic observation(学内に診療所を設け,患者さんが定期的に通ってきて,教員の指導のもと学生が評価・治療を行う)の存在は貴重なものであり,かつ学生達が堂々と治療者として接する態度にも感心させられた.同大学には様々な条件の変化に対応するための屋外環境が設けられており,在宅ケアに対する意識の高さを感じた.

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文献抄録

ページ範囲:P.680 - P.681

編集後記

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.684 - P.684

 世界各国の理学療法事情を調べると,ほとんどの国で理学療法士の開業(診療報酬が支払われている形態),もしくは営業(患者が支払う自由診療としての形態)が行われている.なかでも,米国においては,約半数の州で医師の処方を必要としない診療(free access)も可能となっている.

 わが国で理学療法士の開業もしくは営業が実現しない背景には法的な制約や民間療法に従事する方々との競合など種々の要因がある.しかし,この課題は時間をかけてでも善処すべきことではないかと考える.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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