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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル36巻1号

2002年01月発行

文献概要

特集 臨床現場にいかす障害構造・障害分類

WHO国際障害分類と我が国の障害者関係法制・行政

著者: 寺島彰1

所属機関: 1国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所

ページ範囲:P.12 - P.20

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はじめに

 厚生労働省のホームページで法令検索をしてみると,「障害者」という用語を本文内に含んでいる法令は292件あった.このなかには,障害者を対象としている「障害者基本法」「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」はもとより,「国民年金法」「厚生年金法」「労働者災害補償法」「戦傷病者特別援護法」「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」「災害救助法」等が含まれている.「公営住宅法」等の国土交通省,税金の減免等の財務省,「郵便法」の総務省等,厚生労働省以外の省庁でも,障害者にかかわる制度をもっているところも多いので,法令全体の数はもっと増えるであろう.更に,地方自治体にも障害者関連の条例があるため,市町村レベルまで数えれば,更に数は増える.福祉後進国ともいわれる米国でさえも80以上の障害者に関係する連邦法が存在するといわれており1),先進国には多くの障害者にかかわる法令が存在すると考えられる.

 このように多くの法令が必要なのか,同じような政策を異なった制度が実施しているのではないか,このような疑問が残る.これらのことについては,これまで,あまり理論的に検討されてこなかった.Campbelら2)は,イギリスの障害者施策の発展に障害者運動の果たした政治的役割を強調し,障害者運動により法令の整備を求めていくことの大切さを説いた.Mackelprangら3)は,米国においても,障害者の政治的活動がリハビリテーション法504条や米国障害者法(Americans with Disability Act)等の成立を促したとしている.我が国でも,寺島4)は,身体障害者福祉法改正の背景には政治的な力関係が働いていると述べた.

 Berkowitz5)は,障害者施策が政治的な力関係によって決定される理由として,障害者制度があまりにも複雑すぎて,全体を把握できないことが問題であるとしている.その背景には,①障害政策にかかわる全ての法律・経済・社会現象を理解するために必要な全ての専門知識がある人はいない,②専門ごとに専門用語が作られる等専門化が進み,社会福祉制度を「全体」として見る能力を失ってしまったことを取り上げている.

 今回の国際障害分類(International Classification of Functioning,Disability and Health以下ICFまたはICIDH-2とする)注)の改定の目的の1つに,「健康状態に関連する生活機能状態を表現するための共通言語を確立し,保健医療従事者,他領域の専門家,障害者間のコミュニケーションを改善すること」が含まれている.健康状態に関連するという限定はあるものの,この部分は,まさに,障害者施策に必要とされているものであると思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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