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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル36巻11号

2002年11月発行

文献概要

特集 超高齢者の骨・関節疾患の理学療法

超高齢者の骨・関節疾患に対する総合的アプローチ

著者: 山本精三1

所属機関: 1東京都老人医療センター整形外科

ページ範囲:P.835 - P.841

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はじめに

 わが国では平均寿命が男性78.07歳,女性84.93歳1)となり,世界一の位置は変わらないことと,出生率の低下および衛生・医療の進歩とにより稀に見る人口の急速な高齢化が進行している.高齢者とは65歳以上を一般的にいうが,そのなかで75歳未満を前期高齢者,75歳以上を後期高齢者と呼んでいる.後期高齢者では前期高齢者と比較して,合併症として重篤なものや複数の合併症を保有する頻度が多くなる.さらに90歳以上の超高齢者となると手術あるいは理学療法を行う際は,術前または理学療法前に十分に患者の評価や合併症管理をしておかないと手術や理学療法を十分に生かせないことになる.場合によっては合併症の発生や合併症の悪化を招き,術前よりも精神状態の悪化,さらには日常生活動作(ADL)の悪化を起こしうる.悪化に至らなくても手術により局所の機能が改善されたにもかかわらず全体としてのADLは改善しなかったりすることが起こりうる.

 一方,高齢者の骨関節疾患の手術は,待機的手術と救急・準救急手術に大きく分けられる.待機的手術を行う疾患は膝,股関節の人工関節置換術などが主体となるリウマチあるいは変形性関節症疾患さらには頸椎,胸腰椎の変性疾患である.救急・準救急手術を行う高齢者の疾患は,大腿骨頸部骨折などの骨折外傷や外傷などにより急性発症の麻痺を起こす脊椎疾患などである.原則として,救急疾患である大腿骨頸部骨折などの骨折外傷に対しては,手術により早期に機能回復が可能となる治療法が大切である.後期高齢者,特に女性では既に骨粗鬆症が存在しており,大腿骨頸部骨折の発症機転として室内での立った位置からの転倒という外力の少ない外傷によるものが大部分である.さらに男性においても高齢化に伴い,骨折の発生頻度が増加している.大腿骨頸部骨折を一度起こした患者では,反対側の大腿骨頸部骨折を起こす頻度が高く,予防が重要である.骨折の予防には骨粗鬆症の治療,転倒予防,転倒のリスクファクターの改善や治療などがある.

 次に骨関節の疾患に限ってみても待機的手術の脊椎手術,人工関節手術などでは,手術前に他の骨関節疾患の合併を評価しておかないとADLが改善しないことがある.変形性膝関節症は脊柱管狭窄症を合併することは稀ではなく,一方の手術治療後最も障害の強い部位は改善しても,それまで臨床症状を強く呈してなかった別の部位の症状が強くなり,ADLの改善の妨げとなることは後期高齢者においてよく経験することである.

 このように高齢者,なかでも後期高齢者では,手術する部位だけでなく,内科的合併症,精神的機能,他の骨関節疾患の合併を評価して総合的にアプローチすることが大切である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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