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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル36巻2号

2002年02月発行

文献概要

特集 理学療法に関わる整形外科の最新知見

股関節再建術と理学療法

著者: 神戸晃男1 西野暢2 山口昌夫1

所属機関: 1金沢医科大学病院リハビリテーション部 2金沢医科大学病院整形外科

ページ範囲:P.88 - P.94

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はじめに:

 人工股関節の歴史および概要

 骨切り術などの関節温存手術が適応とならない,荒廃した股関節の再建術として種々の関節形成術が考案され,臨床応用がなされてきた.なかでも,人工股関節(THA)の発展は目覚ましく,現在,全世界では年に約600,000例,本邦では約60,000例ものTHAが行われている.

 人工股関節の歴史は意外と古く,1890年代に象牙製の人工関節をセメントで固定したという報告や,1923年にはSmith-Petersonがガラス製のカップを関節の代わりに挿入したという報告をしている.その他にも,Wiles,Moore,Judetらにより各種人工関節が盛んに開発,臨床応用されてきた歴史がある.現代の人工股関節は1960年代にCharnleyによって開発されたものを原型としているが,低摩擦人工関節(low friction arthroplasty)といわれるCharnleyの人工股関節の出現により人工股関節の術後成績は飛躍的に向上した1)

 その後,セメント使用ステムにおいて,再置換術を行う際にインプラントの抜去が困難であること,若年者での術後成績が不安定であったことなどより,セメントを用いないタイプの人工股関節が再注目されることになり,1980年代より様々なセメント非使用人工股関節が開発されてきた.また,成績向上を目指して,セメント非使用臼蓋コンポーネントとセメント使用大腿骨コンポーネントを組み合わせたハイブリッドタイプの手術が行われるようになった.

 関節の動きを温存しつつ痛みを取り除くことができる人工関節の出現は画期的なものであり,理学療法の発達も相俟って,日常生活は勿論,ショッピング,旅行,またスポーツへの参加も可能となった.その一方で,飛行機のエコノミー症候群で注目されているように,肺塞栓,下肢静脈血栓症など人工股関節置換術の周術期および後療法期での合併症が大きな社会問題となってきており,医師および理学療法士を含めた医療チームの連携が重要となってきている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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