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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル36巻4号

2002年04月発行

雑誌目次

特集 バランス障害と理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.221 - P.221

 日常的に,かつ曖昧に用いられているバランスおよびバランス障害について整理と定義を試みた.バランス障害を引き起こす代表的な部位の中から,脳幹と視床を取り上げた.脳幹梗塞に伴うバランス障害の理解とその動作分析の進め方,視床の障害によるバランス障害の理解と運動療法,ADLへの展開を解説した.さらに,実際には多くの問題を抱えながらもバランス障害ではあまり取り上げられることのなかった変形性膝関節症についても,その障害の実態と理学療法のあり方について言及した.

バランスと姿勢・活動

著者: 内山靖

ページ範囲:P.223 - P.232

 「Aさんは,麻痺の回復は良好ですがバランスが不十分です.」「Bさんは,時としてバランスを崩すことがあるので病棟では車いすが必要です.」

 リハビリテーション領域の日常で耳にする会話である.バランスが日常生活活動に重要な要素であることは容易に想像できる.一方,その定義や範疇を改めて問われると,幾分曖味な印象を拭いきれず,臨床家や対象者によってその意味合いが少しずつ異なっていると感じることもある.

平衡機能障害を伴う脳幹梗塞患者の動作分析

著者: 井出大

ページ範囲:P.233 - P.239

 序論

 脳幹は生命維持に直結した中枢が集積された部位である.脳幹病変による障害像は脳神経障害,小脳性運動失調,排尿障害,意識障害といった症状が多彩に重複している特徴があるといえる.その障害の程度により植物状態,閉じ込め症候群などの重症例から橋でのラクナ小梗塞例のように早期に回復が得られる症例と非常に多岐に渡るといえる.

 横山らは脳幹・小脳病変を有する患者のリハ成績とその阻害要因について検討し,広範囲の脳幹部病変,四肢麻痺,体幹バランス障害,非麻痺側の失調を有するものはリハ成績不良で,歩行やADLが自立したものは無いと報告している1).また小野木らは,脳幹部病変患者の症状,リハビリテーションの効果を検討し,眼症状を伴う症例ではADLの監視が必要であり,片側失調の症例では自立項目が多いが,両側失調と四肢麻痺の症例では障害が重度であり,介護量の軽減が主となったと報告している2)

 このような多彩で重複している障害像を理解し,理学療法における治療戦略の立案を行うためには神経生理学,神経心理学,認知神経科学といった脳科学の知見と運動学,運動力学,工学,福祉工学といった医学と隣接領域の学問の統合と理解が必要であることは自明のことと考えられる.

視床の障害によるバランス障害と理学療法

著者: 松崎裕子 ,   松崎哲治 ,   林克樹

ページ範囲:P.241 - P.246

はじめに

 脳卒中患者の問題点を考えるうえでバランス障害は重要なウエイトを占める.たとえ患者の運動能力が改善してきても,バランスの問題が残存していれば,起居動作や移動動作などの抗重力活動において逆に転倒の危険性が高くなってしまう.外的環境において無意識のうちに,そしてスムーズに行動をしていくためには目的動作を常に支えていく姿勢制御1,2)が不可欠である.

 視床に障害を受けた患者のなかには,運動障害が軽度であるにも関わらず,バランスの問題が残存し活動性が十分発揮できなくなったり,またそのような状態が長く続くことで持続的な筋緊張の異常が起こり,動きに滑らかさを失うものもいる.

 本来,姿勢制御には身体位置を制御するために作り出される力や位置と動きを調整するための感覚情報の統合が大切な情報源となる.様々な感覚情報を中継している視床の障害によって引き起こされる問題は,運動という点だけではなく,感覚情報をうまく統合できずに運動のための手がかりにしていけない情報処理過程にもあり,このことが姿勢制御を困難にしていく.そのための手段として,支持基底面を拡大させ,動作のなかでの姿勢制御を代償していくことで運動を定型化させていく.

変形性膝関節症の姿勢制御機能と理学療法

著者: 高橋昭彦 ,   木俣信治

ページ範囲:P.247 - P.255

はじめに

 電車がカーブを通過する際,車内で立っている私たちの体は遠心力で曲がる方向と反対方向に傾く.しかし運転手の上体は曲がる方向に傾いている.同様な現象は私たちが車を運転しているときにも経験される.運転者の上体はカーブの中心に向かって無意識に傾き,助手席に乗っている者の上体はそれと反対方向に傾く.運転者と同乗者は同じ車内で同じ感覚刺激を受けているにもかかわず,姿勢は正反対に制御される.両者の違いは,自分が静止空間のなかを電車や自動車と一体となって移動していると意識するか,車内の決まった空間に位置していると意識するかの違いである.また,考えごとなどをしながら電車のなかで立っていると,通常ならば何でもない程度の不意な外力でも,転倒してしまうほどの過剰な反応をしてしまったという経験をお持ちの方も少なくないだろう.つまり物理的な状況からくる情報は同じでも,注意の持ち方ひとつで,あるいは得られた情報をどう解釈するかによって姿勢の制御の仕方は大きく異なってくるのである1)

 体の各部位が,体の他の部位に対して,あるいは外界に対してとる位置関係を脳は体性感覚・平衡(前庭)感覚と視覚情報によって検出する.このうち筋肉の緊張度・関節の屈曲度・触覚などの情報をつかさどる体性感覚と角加速度刺激(回転)・直線加速度刺激(移動)・重力などの情報をつかさどる平衡感覚によって身体地図が描かれる.また,成長にしたがって視覚や皮膚感覚を介して外界と体の位置関係が記憶され,これらの経験から空間地図が形成される.更に身体地図と空間地図が高位中枢で統合され(図1),床や地面は動かない,自分の体が静止中に網膜上を移動するものは動いているといった経験識が形成される2).生体の周り(環境)には様々な情報があふれているが,私たちはただ単純に感覚器官からの情報を受動的に処理しているのではなく,情報は生体によって認知されるときに初めて意味をなすものである.すなわち多くの場合,私たち自身がアクティブに働きかけることによる運動指令信号の脳内のコピー(efference copy)と,その結果生じる感覚信号(reaf-ference)の相互作用によって感覚情報の認知が行われる.

 姿勢制御は環境のなかで私たちが安全に運動するのを保障してくれるのみならず,過去に指令された運動時の状況の記憶を含んだ適応学習が遂行されることによって,次に行われるべき動作へのスムーズな移行など運動学習においても重要な役割を果たす3).しかしながら,本邦において,高次中枢までを含めた姿勢制御機能について述べられている報告は極めて少なく,更に整形外科系の運動器疾患を対象に,認知的側面を含めた姿勢制御機能について検討した報告は皆無である.

 本稿では,これまで関節位置覚などの体性感低下が指摘されながらも,筋力低下や可動域制といった要素が注目されてきた変形性膝関節(以下,膝OA)の姿勢制御機能について,知覚・注意などの認知過程から検討することを試みる.更にこれらの認知過程を考慮した変形性膝関節症に対する理学療法の進め方についての提言を行う.

とびら

全介助の患者さんからのメッセージ

著者: 石峰幸恵

ページ範囲:P.219 - P.219

 最近担当した患者さんのことをお伝えします.痴呆が進行してきたAさんは,薬物を誤飲し入院してきました.それ自体は大事にいたらなかったものの,追い討ちをかけるように動脈閉塞症による大腿切断,脳梗塞重症肺炎と病気を発症し,排痰の目的で理学療法の指示が出されました.Aさんの排痰は,それはもう大変な作業でした.Aさんの気管には変形があり,呼吸介助法などで大量の痰が上がってくるにもかかわらず,カニューラの挿入が困難で,SpO2モニターの値がどんどん下がってしまう状態だったからです.

 ご家族から気管切開の同意を得るまでの3日間,1日1回はブロンコファイバーといっしょに,もう1回はナースと2人で1時間余りの悪戦苦闘.冷汗をかきながらの治療が続き,Aさんは肺炎を乗り切りました.しかし,右上下肢は弛緩状態,左は大腿より切断,痴呆も進行し,自分から意志表示することもありませんでした.高齢の奥さんと2人暮らし,在宅での介護も困難でした.

入門講座 関連領域の基礎知識・4

循環器領域

著者: 長田尚彦 ,   三宅良彦

ページ範囲:P.257 - P.262

 近年の循環器領域の診断,治療はめざましい進歩があり,それらをすべて把握することは一般の循環器医にとっても困難となった.また心臓疾患は一般の人だけでなく,循環器を専門としない医師にとっても“死”に直結する疾患というイメージが強く,なかなか理解しがたいと考えられている.循環器疾患の数は分類すると200以上といわれているが,臨床的に理学療法士が知っておくべき疾患は数多いとはいえない.

 外来での運動療法の代表的な適応疾患といえば,①高血圧,②高脂血症などがあり,また外来および入院で運動療法の適応となるものはといえば,①虚血性心疾患(狭心症および心筋梗塞),②慢性心不全などがある.今回はこれら虚血性心疾患を除いた循環器疾患の基本的な病態,運動療法の有効性,実際の運動療法における注意点などについて述べる.

あんてな

第37回日本理学療法学術大会の企画

著者: 内田成男

ページ範囲:P.263 - P.265

 #ようこそ静岡へ

 静岡県は日本列島のほぼ中央で首都圏と中京・近畿圏の中間に位置し,古くから交通体系の整備が進んでおり,東海道新幹線の駅・東名高速道路のインターチェンジの数は全国屈指となっています.また温暖な気候や豊かな自然に恵まれ,霊峰富士をはじめ駿河湾・御前崎・浜名湖・南アルプス・伊豆など見所もいっぱいです.お茶・わさび・ピアノ・プラモデルなど日本一を誇る県産品もたくさんあります.また,サッカー王国としても有名で,なんとJリーガーの輩出がもっとも多く,全てのチームで静岡県出身の選手が活躍しています.お国自慢はほどほどにしておきますが,静岡県や会場となっている「グランシップ」の詳細は下記のホームページを参照して下さい.

 静岡県のURL:http://www.pref.shizuoka.jp/

 グランシップのURL:http://www.granship.or.jp/

理学療法の現場から

住環境整備と介護保険制度

著者: 金光末子

ページ範囲:P.267 - P.267

 「えっ! 住宅改修にお金が出るの!?」平成12年4月に介護保険制度が施行されたとき,私が最初にいった言葉である.20万円の支給限度額は十分な金額とは言い難いが,今まで支給がなかった旭川市在住の私にとっては朗報であった.現在は,患者さんの住宅改修に大いに利用している.

 介護保険施行当初はどうしたら支給を受けられるかが皆目わからず,私は当院の医療相談室に幾度となく足を運んだのを億えている.医療ソーシャルワーカーに何度も同じような質問をしたので,かなり迷惑がられていたような気もするが,その甲斐あって最近は少しずつ制度の流れも理解できるようになってきた.

学校探検隊

最終学籍番号理学療法学科399番

著者: 星永剛

ページ範囲:P.268 - P.269

 学院の沿革

 国立療養所箱根病院附属リハビリテーション学院を紹介しよう.

 本学院は,厚生労働省(開設当時は厚生省)が管轄する理学療法士・作業療法士を養成する3年制の専修学校(各学科の学年定員は20名)として,1981年4月に脊髄損傷,成人筋ジストロフィーおよび周縁神経疾患の医療とリハビリテーションを機能付与されている国立療養所箱根病院(現在は脳卒中の診療およびリハビリテーションも行っている)に附設されました.

講座 理学療法にいかすICF・1

ICFの基本的な考え方―生活機能(プラス面)の重視と階層論的理解を中心に

著者: 上田敏

ページ範囲:P.271 - P.276

 1.はじめに

 ICF:国際生活機能分類(国際障害分類改定版)の成立にいたるまでの経過と内容の概略,そして今後の課題については本誌1月号の特集論文1)で詳しく述べたのでここでは繰り返さず,ICFの基本的な考え方を主に次の2点にしぼって,しかも理学療法をはじめとするリハビリテーション医学全般における臨床的意義を中心に検討することとしたい.

 1)生活機能(functioning)という新概念のもつ意義:すなわち障害(マイナス面)だけでなく生活機能(プラス面)を重視する必要性

 2)階層論的理解の意義:特にリハビリテーション医学の臨床における「基底還元論」的思考からの脱却の重要性

特別寄稿

中華人民共和国における理学療法と作業療法―現状と課題

著者: 紀樹栄 ,   劉建軍 ,   常冬梅 ,   願越 ,   張琦 ,   陳立嘉

ページ範囲:P.277 - P.283

 中国リハビリテーション医療の現状

 リハビリテーション医学という新しい理念が中国国内に導入されたのは1982年であり,以後,日常の医療のなかに理学療法,作業療法などのリハビリテーション治療技術が取り入れられるようになった1).そして1989年,中華人民共和国衛生部は「総合病院の規模別管理基準」を発表し,更に1996年には,「総合病院リハビリテーション医学科の管理規範」を示し,異なるレベルの病院に対して,それぞれ具体的に規則を設けて,リハビリテーション科の方向づけを図った.衛生部の規則によると,高級病院のリハビリテーション科には2名の専門セラピストが,三級病院には4名の専門セラピストが配置されることとなった2,25)

 中国では,社会の発展,科学の進歩と人民の生活水準の向上にともない,人々の平均寿命は著しく伸びている一方,高齢社会を背景として老年病をめぐる問題が顕著になっている.リハビリテーション医学・医療に対するニーズも増大し,疾患による機能障害と能力障害を最低限に抑えることが大きな課題となっている.この課題に応えるため,政府はリハビリテーション医療に技術的・経済的援助を行い,この10数年の間に各省,市,県の病院に相次いでリハビリテーション科を設置,一部の医学校にリハビリテーション医学講座を開設したり,WHOの協力を得て,リハビリテーションに関する研修会を開いて多くのセラピストを養成してきた.また今日では,老人医療の専門家をリーダーとして,多くの青壮年が参加するリハビリテーション専門チームが作られるまでになっている2)

1ページ講座 理学療法用語~正しい意味がわかりますか?

シナジー(共同運動)

著者: 星文彦

ページ範囲:P.284 - P.285

 ヒトは単関節運動から多関節運動まで無数の運動が可能であるが,いくつかの関節や筋群が同時に,あるいは順序立てられて活動することにより目的や条件にあった動作が可能となる.例えば,テーブルの上にあるコーヒーカップを持とうとして手を伸ばしたとき,手指を開くと同時に手関節を背屈している.これらは自動的に行われているもので,一定の関節運動と筋活動パターンを示す.

 1876年Ferrierが,伸筋と屈筋との拮抗筋間協調活動に基づく筋運動をcoordinated synergic muscular movementとして初めてシナジーという概念を用いたといわれている1).また,立った姿勢でテーブルの上のコーヒーカップを取ろうとする場合,手を伸ばすという随意運動と並行して姿勢を維持するための活動が自動的に行われている.この運動も一定の運動パターンを呈する.Bernsteinは,階層性運動制御の立場から,随意運動を行う場合,随意運動そのもののほかに姿勢を維持するためのコマンドが必要で,それは局部の感覚情報を含めた条件により特別な筋活動パターンを呈する運動として表出される.彼はそれを姿勢シナジー(postural synergy)と称した2)

報告

自転車エルゴメトリーにおける呼吸循環反応に対するハンドル把持高の違いの影響

著者: 佐々木智幸 ,   佐々木誠

ページ範囲:P.287 - P.291

はじめに

 運度負荷試験において運動負荷量を設定するための機材として,トレッドミルや自転車エルゴメーターなどが広く用いられている.トレッドミルによる一般的な運動負荷試験では,傾斜と速度で運動負荷量を規定し歩行や走行といった運動を実施するため,測定器材による差異や運動姿勢への配慮は比較的少なくて済むと考えられている.しかし,自転車エルゴメトリーには種々の形状があり,ペダルのクランク長がパワー出力に影響を与えること1,2),サドルの高さやサドルシャフトの傾斜が運動負荷時の生体反応に影響を与えること3)が知られていることから,運動姿勢への配慮が必要と考える.

 自転車エルゴメトリーの測定値の普遍性を保証するために,エルゴメーターの構造の統一,測定条件の統一が呼びかけられている4)一方で,多くのタイプの自転車エルゴメーターが普及している現状を考慮すると,運動姿勢の影響を検討していくことのほうが現実的と考えられる.ペダリング回数やサドル高などの基準4)があり,クランク長1,2)やサドルの高さ・傾斜3)の影響については検討されているものの,ハンドルの把持高の影響については明確にされていない.

 そこで今回我々は,自転車エルゴメーターによる運動負荷時のハンドル把持高の影響について考察するために,異なるハンドル把持高を設定し,その際の呼吸循環反応を検討し,若干の知見を得たので報告する.

新人理学療法士へのメッセージ

好きなことをやって,御飯を食べよう

著者: 江郷功起

ページ範囲:P.292 - P.293

 若葉が勢いよく成長するこの頃,新人理学療法士の皆さん国家試験合格おめでとうございます.昨年度は臨床実習に卒業論文,就職試験,国家試験とめまぐるしい1年間を過ごされていたことと思います.これにホッとしている方もいらっしゃれば,先輩理学療法士からビシビシ鍛えられている方もいらっしゃることでしょう.このメッセージを読まれる頃には少しずつ職場にも慣れて担当患者数が増えつつある頃だと思います.

 私は民間病院に3年,公立病院に9年,あわせて12年目の理学療法士です.この間,多くの良き師・先輩方に恵まれ現在まで理学療法士という仕事を継続しております.そのなかで私なりに感じたことを自己反省を踏まえて書いていこうと思います.

「ヤヌス」的にものごとを見るということ

著者: 鮫島菜穂子

ページ範囲:P.294 - P.295

はじめに

 私は30歳でPTデビューをはかった者です.猪突猛進に生きてきてはふと立ち止まり,PTになりました.今年で5年目ですが,この仕事に出会えて良かったなあ,と思う今日この頃です.

ひろば

「尿失禁予防体操」を続けています

著者: 寺内淳子

ページ範囲:P.270 - P.270

 10数年ほど前から,東京都練馬区の保健所で「肩こり・腰痛予防体操」を住民の方々に指導していたが,11年前に骨盤底筋体操に出会い,日本コンチネンス協会での学びをきっかけに,「尿失禁予防体操」として練馬区の6か所の保健相談所で,毎年,参加者に「骨盤底予防体操」の実技体験をしてもらっている.始めた当初は,下(シモ)の話はまだまだタブーという世間一般の雰囲気もそのままに,小さな声での質問が多かったのだが,ここ3年くらい前からは,質問の声も大きくなり,皆の共通の悩みとばかりに,取り囲むように講師の話に聞き入る様子に,時代の流れをつくづく感じている.

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文献抄録

ページ範囲:P.298 - P.299

編集後記

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.302 - P.302

 4月.新年度の始まりです.現代社会の日本では,正月以上に気持ちが引き締まる季節になっているのではないでしょうか.新卒として就職された方,ある転機を迎えて新天地を求めた方,そういう方々を迎え入れる方,それぞれの立場で思いは違いますが,不安を打ち消すくらい期待感が大きいものであることを願っています.そして,その期待が現実のものになっていくよう,皆様でご尽力いただきたいものです.

 とは言え,この度の診療報酬の改定では驚きと混乱と落胆と,と言いつつ自身で前向きの表現が全くないのに改めて驚いていますが,臨床現場では対応に相当苦慮されていると思います.単位制を中心とする制度の抜本的改革と大胆な回数制限や逓減性の導入,PT,OT,STの専門性への問いかけなど,すぐに対応できるような内容ではなく,多くの嘆きの中で先述した期待感が果たして実現に向かうものか,疑問が湧いてしまいます.しかし,確かに多くの問題を含む今回の診療報酬改定ですが,理学療法の質を改めて問われた歴史的に意義深い改定であることも事実です.こういうときにこそ理学療法は変革を遂げなければならないと思います.私達が真に期待すべきことを問い直してみる必要がありますが,上田氏の講座「ICFの基本的な考え方」にもヒントはありそうです.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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