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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル36巻8号

2002年08月発行

雑誌目次

特集 ファシリテーションは今

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.551 - P.551

 これまでいくつかの特集でファシリテーションに焦点が当てられ,基本的技術の紹介からその批判まで多くの論文が報告されてきた.その結論は,いくつかの技術や理論の「統合」が近い将来もたらされる,というものであったと編者は記憶しているが,はたして現状はそうであろうか.そこで本特集では,ファシリテーションに関する理解の現在の到達点を示していただき,その適応,効果(evidenceに基づいた)と限界について論述し,他の方法論との差異を強調していただくこととした.もちろん統合がなされているとの認識に立つ立場であれば,そのことを主張しそれぞれの論文では可能なかぎり症例の経過に基づいた具体的な効果を示していただくことを志向した.

ファシリテーションの神経生理学的基礎

著者: 森茂美

ページ範囲:P.553 - P.561

はじめに

 ヒトや動物の身体は頭部・体幹そして左右の上肢・下肢など数多くの運動分節(motor segment)でつながれている.代表的な運動分節である手足の動きは分節運動(segmental movement),そしてその姿勢は分節姿勢(segmental posture)と呼ばれる.中枢神経系(central nervous system)は手足がスムーズに動くように,伸筋そして屈筋の背景活動(background excitability)を調節して分節姿勢を,またそれらの一部を選択的に活動させて分節運動を作り出している.手足の伸筋や屈筋にみられる背景活動は筋トーヌスとしてとらえると理解しやすい.部分運動分節にみられる筋トーヌスに対して,全体姿勢の筋トーヌスを姿勢筋トーヌス(postural muscle tone)とも呼ぶ1).中枢神経系の障害に際しては,しばしば運動分節に筋トーヌスの異常が発現する.そしてその結果,全体姿勢(total posture)が乱れて異常な姿勢反射(postural reflex)が発現し,随意的に運動を実行したり制御することが難しくなる2).本章では,第1に生命活動を制御する脳幹の基本的機能を,第2に脳幹網様体に対する感覚信号の投射様式,そして第3に筋トーヌスの制御と歩行運動の制御にかかわる神経機序を解説し,第4に脳幹の機能を維持するという観点からファシリテーションの神経生理学的基礎を考察する.

関節疾患のファシリテーション

著者: 石井慎一郎

ページ範囲:P.563 - P.571

はじめに

 関節疾患とは多くの場合,重力環境下における力学対応が関節の機能解剖学からみて合目的性を欠いたことで引き起こされる環境適応障害と解釈できる.例えば不良姿勢や誤った動作習慣が原因で慢性疼痛を引き起こしている症例を考えると理解しやすい.こうした症例では重力環境下における力学対応の方略が問題なのであって,合目的な方略を学習しないかぎり疼痛の再発は防げないのである.

 関節機能解剖からみて合目的性を有する力学対応を実現させるためには,自分の身体がどのような状態にあるのか,自分を取り巻く力学環境がどのような状態にあるのか,力学環境への適応状態がどのような状態にあるのか,ということが正しく認識されなくてはならない1).また,関節機能解剖的合目的性のある身体運動を保障するためには,筋の反応性,筋力,筋の伸張性や関節の可動範囲といった運動学的要素も重要である.

 これらの条件が満たされて,自分の動作の方略に問題があることを認識し,正しい方略を選別して,正しい力学対応を選択・実行できるのである.こうした身体運動制御の基礎には,関節内部および周囲の,滑膜・関節包・靭帯・筋・腱および皮膚などに存在する固有受容器からの入力情報が必要不可欠なのである2)

 身体運動制御のメカニズムに立ち入り,望ましい力学対応を学習させることは運動療法の本質的な部分である.われわれ理学療法士の治療的介入は,よろずなんらかの形で情報入力の一次器官である固有受容器を刺激しており,良きにつけ悪しきにつけ,身体運動制御のソフトウェアに干渉している.関節ファシリテーションを考えるにあたって,われわれは固有受容器からの入力情報がどのように身体運動制御に必要なのかを理解し,関節疾患との関連性について考えなくてはならない.その理解がなされた上で,何を何の目的でファシリテーションすべきかという戦略的思考を組み立てることが重要なのである.

 そこで本稿では,変形性膝関節症(以下,OA)を例に挙げて,関節疾患の成因と固有受容器からの入力情報との関連について述べ,関節疾患における理学療法戦略の構想や戦術の創造に,ファシリテーションという概念をどのように用いることができるのかを論じてみたい.

成人中枢疾患とファシリテーション―ボバース概念を中心に

著者: 大橋知行

ページ範囲:P.572 - P.578

 ファシリテーション・テクニックの意義と課題

 運動障害に対する伝統的な治療の方法は,困難となった運動そのものを繰り返し練習すること,その基礎として筋力を増強すること,関節可動域を改善すること,および物理療法的手段を用いることであった.これに対して,ファシリテーション・テクニックは,姿勢や運動を制御している神経系の働きそのものにアプローチすることを目指した.しかし,この神経生理学的知見を踏まえた様々な試みは,基礎的研究からその理論的根拠が生み出されたというより,むしろ実践的効果からその理論的背景を推察していた面が強かった.この意味で,ファシリテーション・テクニックは,実践的であり,臨床現場において利用者の運動障害に対して一定の成果を上げることができたが,本当に運動障害の起因となる神経系の損傷に対して解剖学的,神経生理学的に意味のある変化を作り出せているのか,その科学的根拠は解明されていないのが実情である.

 また,ファシリテーション・テクニックがリハビリテーションの面からみて,利用者の運動機能や「生活の質」のレベルで本当に価値のある援助につながっているか,また運動学習の面かちみて最も効率的な手段であるかということも問われている.

スポーツとファシリテーション―PNFとスポーツ

著者: 新井光男 ,   柳澤健

ページ範囲:P.579 - P.587

はじめに

 近年スポーツ・トレーニングにおいて固有受容性神経筋促通法(PNF;proprioceptive neuromuscular facilitation)1,2)が用いられることが多い.

 PNFは,1940年代後半に,医師であるKabat博士がポリオ後遺症患者の筋収縮力を高めるために生理学的理論を構築し,理学療法士のKnottとVossと一緒に開発した運動療法である.現在では脊髄性の疾患だけでなく,中枢神経疾患・末梢性神経疾患・スポーツ傷害なども対象とされている.PNFの定義は,「主に固有受容器を刺激することによって,神経筋機構の反応を促通する方法」である2)

 スポーツの神経筋パフォーマンスの向上3)のためにPNFは有益であるが,スポーツ・トレーニングや治療の場面で,PNFの名前だけが先行しており,適用や技術の応用は混乱している.今回,神経筋パフォーマンスにおけるPNFのアプローチの意義と効果に関する検証の報告および限界を述べる.

小児中枢神経疾患とファシリテーション

著者: 小塚直樹 ,   中野勝美 ,   横井裕一郎

ページ範囲:P.588 - P.594

はじめに

 小児中枢神経疾患,特に脳性麻痺(以下,CP)に対するファシリテーション技術に関し,その特性,対象の違い,効果と限界について解説することが本稿の目的である.現在,わが国でCPに対して実施されているファシリテーション要素を含んだ運動療法を考えた場合,ボイタ法とボバースアプローチに二分していると考えて差し支えない.したがって今回はこの二つのテクニック中における促通要素に注目し,その理論を基盤とした理学療法アプローチを実施した症例を通して,臨床的論証(clinical evidence)を展開したい.

とびら

あなたの考え方はいつもupdateされていますか

著者: 赤坂清和

ページ範囲:P.549 - P.549

 理学療法士になるための養成校で学ぶ内容は,理学療法士として働くために必要な知識や技術をカリキュラムで網羅するよう調整されているはずであるが,それだけを身に付けたとしても理学療法士としての十分条件には遠く及ばない.そのことは臨床場面で働き始めると大部分の理学療法士が容易に認識することである.つまり学校で学んだ理論的で体系的な考えを臨床場面で患者さんに応用しようとすると,自分ができ得る理学療法の実践的な方法が不足していて,一人一人の患者さんの機能的あるいは能力的問題に直接的に対応することができない自分に気付く.若い理学療法士は,忙しく働く先輩理学療法士にその状況を部分的にしか伝えることができずに,日々の仕事に追われるようになる.そしていつしか,自分が経験を積み重ねることで学習した,個々の患者さんに十分対応できていない理学療法の実践を漫然と行うようになる.それに加えて,現在の理学療法士の年齢別ピラミッドにおいて20~30歳台が非常に多いことと養成校が年々増加している状況では,臨床経験が少ない理学療法士が学生の指導を行い,新規に入職した理学療法士の教育に携わるようになる.

理学療法の現場から

医療技術職として―医療の質を考える

著者: 横田浩子

ページ範囲:P.597 - P.597

 臨床で思うこと

 近年,医療費の削減・抑制などが国の政策として叫ばれ,医学的リハビリテーションにおいても早期治療・早期退院を目指す傾向が強くなってきている.

 一方,医学的問題を多く抱えている患者も,発症からの計算日数のみの医療保険制度にしばられている.これらの患者は転院や在宅での介護制度の利用,また訪問リハビリテーションの施行で対処されている.はたしてこれで良いのかと考えさせられる臨床の毎日である.

プログレス

機械刺激に対する細胞の形態応答

著者: 河上敬介

ページ範囲:P.598 - P.600

 近年,細胞生物学,生物物理学,分子生物学などの発展に伴い,光刺激・化学的刺激などの多くの刺激に対する細胞応答のメカニズムが解明されてきている.そして,唯一解明が遅れていた機械刺激のメカニズムにもメスを入れることができる状況になりつつある.そこで,機械刺激に対する血管内皮細胞の形態応答と,そのメカニズム解明のためのバイオイメージング的手法を用いたアプローチを紹介し,理学療法の細胞生物学的もしくは分子生物学的効果判定の可能性について考えてみる.

1ページ講座 理学療法用語~正しい意味がわかりますか?

循環

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.601 - P.601

 1.監視型運動療法と非監視型運動療法

 1)監視型運動療法(supervised exercise training)

 虚血性心疾患患者や心不全患者に対する運動療法は,突然死などのリスクを発症する可能性があるため,医療従事者による監視下で行われることが望ましい.運動療法における監視の定義は幅広く,単に心電図や血圧のモニタリングのみにとどまらない.運動療法を行う際の監視の定義について表にまとめた.

 心疾患患者の運動療法は,最終的には患者自身で管理できるようになることが望ましい.そのため,監視型運動療法中には,運動時の脈拍数などを運動処方どおりに管理できるように指導することが必要である.

学校探検隊

医科大学に併設した専門学校教育

著者: 伊藤恭子 ,   有澤衣寿実

ページ範囲:P.602 - P.603

 概略

 白壁の町,大原美術館,吉備団子,そして最近ではマスカット球場で知られている岡山県倉敷市に本学院がある.全国では10番目,中国地方では最初の理学療法士・作業療法士の3年制の養成校として,昭和49年に川崎医科大学とその附属病院に併設して開校した.初代学院長は,当時,川崎医科大学の学長であり,また日本のリハビリテーション医学の草分けとして知られる,故水野祥太郎,そして二代目の現学院長は現在リハビリテーション医学界の大御所である明石謙と,豪華な大看板を擁している.小心者の筆者は「この紋所が目に入らぬか!」と,時に虎の威を借りたくなる.

入門講座 コミュニケーション技術・2

理学療法現場におけるコミュニケーション困難例への対応

著者: 武田秀和

ページ範囲:P.604 - P.608

はじめに

 理学療法において,患者からの情報収集や効果的な治療計画の立案・実施などにコミュニケーションが不可欠であることは周知のとおりである.コミュニケーションは,人と人との間で相互に行われる情報交換であり,ことばによる言語活動が最も効率的である.しかし,実際には顔の表情やジェスチャーなどの非言語的な手段も多く利用し,意思疎通を図りながら情報伝達を行っている.

 臨床の現場では,理学療法士と患者,患者をとりまく家族,あるいは患者同士などとの間で様々なコミュニケーションが交わされている.それゆえに,疾病の種類,障害の重症度や理解度,社会・心理的背景などからコミュニケーションが十分取れず,理学療法の遂行に困難をきたす症例に遭遇することも少なくない.

 そこで本稿では,理学療法現場におけるコミュニケーション困難例への対応の仕方について,具体例を通し紹介する.なお,症例については,インフォームド・コンセントの配慮を加えておく.

講座 理学療法にいかすICF・5

理学療法プログラムに生かすICF(1)―目標指向的アプローチ

著者: 大川弥生

ページ範囲:P.609 - P.615

 1.最良のリハビリテーション達成のための理学療法―理学療法士としての専門性とともに「リハビリテーションに携わるものとしての専門性」の発揮を

 ICFの生活機能・障害構造論はリハビリテーションにおける実践的ツール(道具)・武器である.特にプログラムの作成・進行において,これが果たす役割は大きい.そこで今回は,リハビリテーション・プログラムづくりとその進め方の中でICFをいかに活用するかについて,特に理学療法プログラムの視点から整理することとする.

 本講座1~4)や特集5)で述べてきたように,リハビリテーション・プログラムにおいてICFが重要なツールとなるのは,リハビリテーション(全人間的復権)が患者の「生活・人生」という,非常に広いものを対象としているからである.またリハビリテーションの具体的プロセスは極めて複雑な過程3,5)であり,プログラムとしては無限ともいえる選択肢の中から,その患者にとって唯一無二の,一つにしぼったプログラムを立てて進めていくもの3)である.そこでこそ,「生活・人生」についての構造的把握のツールであるICFが大きな力を発揮するのである.

特別寄稿

リハビリテーション医療システムの確立を目指して

著者: 安藤徳彦

ページ範囲:P.618 - P.621

 1.序文

 国は,医療機関から福祉制度の諸組織にまたがるリハビリテーション(以下,リハ)の保健・医療・福祉ネットワークを構築することを督励し,各都道府県はこの線に沿って,リハビリテーション協議会と広域支援センターを設置して,医療機関と福祉施設との相互連携システム構築に向けて活動を開始した.この施策の目的は,急性期の治療から回復期を経て介護まで,リハ医療を遅滞なく体系的に実施できるシステムを構築することである.

 長期間の治療と介護を必要とすることが多く,しかも有病率が高い脳血管障害のような特定の疾患では,二木氏が言う保健・医療・福祉複合体が同一系列の中に医療機関と福祉施設を併設して,自己完結的に体系的なサービスを提供するシステムを整えており,この中で救急治療から福祉までが実行されている.しかしこの複合体方式では,脳血管障害を除く他の大部分の疾患は対象外にされてしまうことが多く,しかもこの特殊な組織の多くは人口のまばらな温泉地周辺にできたリハ専門病院を核として成り立っており,大都市圏にはほとんど存在せず,したがってリハを必要とする脳血管疾患患者は,いったん入院した市中の医療機関から遠隔の温泉地に移送されている現実がある.

 横浜市立大学でリハ科に併診依頼が多い疾患は,

 ①変形性関節症・脊椎症・リウマチ・膠原病を含む骨・関節・結合織疾患

 ②パーキンソン病・脊髄小脳変性症・多発神経炎などの神経・筋疾患

 ③その他脳・脊髄外傷,脳腫瘍,小児の発達障害,糖尿病,循環器疾患,呼吸器疾患

 などである.

 これらの大部分は外科・内科系診療科の治療と並行してリハを行う必要があり,それゆえにリハ専門病院に転送されることは少なく,また自己完結的な複合体組職からは疎外されている.

 リハ医療は早期開始が必要だと言われ,障害予防が大事な使命だとも言われている.しかし,一般医療機関ですべての疾患に対して障害が顕在化する以前からリハを開始すること,例えば開胸・開腹手術前に呼吸訓練が依頼されたり,炎症期のリウマチに安静固定を目的に,装具製作が依頼されることはまだ非常に少ない.障害が顕在化した後でさえもリハの開始は遅れがちである.早期にリハを開始することは治療期間を短縮させ,生命を救い,QOLを向上させ,医療費の節減にもつながることは明らかだが,その意義は医療従事者からも社会からも十分に理解されていない.この原因は何よりもあらゆる医療機関でリハ専門医が圧倒的に不足していることにある.リハ医が存在すれば他のすべての診療科から患者は併診依頼され,その効果は広く他の診療科に浸透していく.一般医療機関にリハ医を充足するには,医学部で卒前教育を実施する以外に方法はないのだが,全国でリハ医学教育の体制はまだ整っていない.

 この機会に,一般医療機関,大学病院,地域医療圏におけるリハ,そしてリハ医の役割と他職種との連携について,意見を述べさせていただく.

雑誌レビュー

“Physical Therapy”2001年版のまとめ

著者: 中村浩 ,   正田隆信 ,   石井亜紀

ページ範囲:P.622 - P.627

はじめに

 21世紀初めの“Physical Therapy”は,1月号の“Guide to Physicl Therapist Practice, Second Edition”の特集号より始まる.2001年は第81巻となり,68編の論文が掲載されている.その内容は表に示すとおりである.10月号は,“Evidence- Based Clinical Practice Guidelines”として特集論文が組まれており.EBM全盛における“EBCPGs”の確立に力点が置かれていることがうかがわれる.全巻を通してみると,新しい世紀の出発にふさわしい内容の論文が満載されていると感じられた.

 本稿では,Research Reports を運動療法,物理療法,運動学,検査・測定・評価,教育・管理・調査の5項目に分類し,43編の論文のうち25編について,その要旨を紹介する.また.Case Reports(3編),特集号およびSpecial Issues については,その概略を紹介する.

 なお,本文中の[( )] 内の数字は論文の掲載号と通巻のページを示す.

資料

第37回理学療法士・作業療法士国家試験問題(2002年3月3日実施) 模範解答と解説・Ⅱ―理学療法(2)

著者: 伊橋光二 ,   大島義彦 ,   内田勝雄 ,   八木忍 ,   伊藤友一 ,   三和真人 ,   百瀬公人 ,   小野武也 ,   鈴木克彦 ,   南澤忠儀

ページ範囲:P.628 - P.634

書評

―Barbara Engstrom,Catherine Van de Ven(編著)陶山哲夫・草野修輔・高倉保幸・赤坂清和(監訳)―切断のリハビリテーション―知っておきたい全プロセス

著者: 丸山仁司

ページ範囲:P.594 - P.594

 本書は,患者のリハビリテーションのプロセスを念頭において,切断患者のリハビリテーションを実施するチーム,なかでも理学療法士のために書かれている.原著は,1985年に初版,1993年に改訂第2版,1999年に改訂第3版を出版し,そのたびに内容を充実させてきた(本書はその第3版の全訳である).

 著者は,イギリスのクイーン・メリー・エリザベス大学付属ローハンプトン・リハビリテーションセンターの理学療法士およびその他の専門職が中心である.ローハンプトン・リハビリテーションセンターは切断者のリハビリテーションについても,国際的に有名で,高い評価を得ているリハビリテーションセンターである.さらに他機関の専門家の参加も得て,世界的に活動しているバーバラ・エングストロム,キャサリン・バン・デ・ベン両氏により編集されていることから,内容が大変豊富である.

―山本康稔,加藤宗規,中村恵子著―腰痛を防ぐらくらく動作介助マニュアル―動画CD-ROM付

著者: 中俣修

ページ範囲:P.616 - P.616

 医療従事者の職業病とされる腰痛の原因のひとつに挙げられるのが,不適切な動作介助の方法である.そのため介助者には,腰痛を予防しつつ動作介助が円滑に行える身体の使い方が要求される.本書では,動作介助研究会という自主的研究会にて合理的で実践的な動作介助の方法を研究している山本康稔氏,加藤宗規氏,中村恵子氏による動作介助の方法が紹介されている.

 本書は,「動作介助の意義」「動作介助の原則」「寝返り」「起き上がり」「立ち上がり」「トランスファー(移乗)」「動作介助における力学」「腰痛とその予防」「各種姿勢」「ベッド・車イスなどの福祉用具J「まとめ」の11章で構成され,動作介助の原則からベッド・車イスの選択という基本から臨床まで幅広く解説されている.実際の方法については動画CD-ROMを併せて利用することで,紙面上の連続写真では分かりづらい介助者の動き,スピード,動作のタイミングなど視覚的に捉えやすくなるよう工夫されている.

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文献抄録

ページ範囲:P.636 - P.637

編集後記

著者: 網本和

ページ範囲:P.640 - P.640

 この後記は,ワールドカップと静岡で開催された日本理学療法学術大会の終了後に記しています.世界中を巻き込んだ興奮のゲームと,個人的にはある種の高揚感のうちに過ごした学術大会の余韻を楽しみながら本号を読了しました.

 さて今号の特集は「ファシリテーションは今」といういささかうがったタイトルが付されています.これはもちろん過去を回顧する意味での「今」ではなく,現在と未来をつなぐ地点での「今」であろうと考えられます.まず総論としてその神経生理学的基礎に関して,森先生に詳しく論述していただきました.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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