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特集 新しい下肢装具
失調症患者に対する装具と理学療法
著者: 福本和仁1
所属機関: 1熊本大学医学部附属病院理学療法部
ページ範囲:P.658 - P.666
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運動失調を呈する疾患には,脊髄性(後索性あるいは深部感覚性),小脳性,前庭性,前頭葉性などがある.当然のことながら症状や重症度も多彩で,また神経学的にも失調症状の発現機序や病巣局在も異なる.また近年分子遺伝学の進歩により脊髄小脳変性症の遺伝子異常が同定されるようになり,従来の病型分類に疑問が生じている1,2).これは同一疾患名でありながら臨床症状や経過が異なることもあるということを意味し,単なる傷病名からの対応ではなく,より個々人の臨床症状を把握・評価し,病期に応じた治療計画を立てる必要がある3).
さらに運動失調症の特徴としてimpairmentレベルの障害が必ずしもdisabilityレベルの障害と一致しないことから,評価や治療方針を立案する際,その病態を複雑なものにしている4,5).このような運動失調症の持つ複雑な病態を念頭に置きつつ,治療法の一つである装具療法について概説し,また失調症における不安定要素の運動学的分析から,姿勢歩行障害に対する装具や運動療法の適応について述べたい.また当院で開発した装具について紹介し,効果の機序や適応について若干の考察を加える.
運動失調を呈する疾患には,脊髄性(後索性あるいは深部感覚性),小脳性,前庭性,前頭葉性などがある.当然のことながら症状や重症度も多彩で,また神経学的にも失調症状の発現機序や病巣局在も異なる.また近年分子遺伝学の進歩により脊髄小脳変性症の遺伝子異常が同定されるようになり,従来の病型分類に疑問が生じている1,2).これは同一疾患名でありながら臨床症状や経過が異なることもあるということを意味し,単なる傷病名からの対応ではなく,より個々人の臨床症状を把握・評価し,病期に応じた治療計画を立てる必要がある3).
さらに運動失調症の特徴としてimpairmentレベルの障害が必ずしもdisabilityレベルの障害と一致しないことから,評価や治療方針を立案する際,その病態を複雑なものにしている4,5).このような運動失調症の持つ複雑な病態を念頭に置きつつ,治療法の一つである装具療法について概説し,また失調症における不安定要素の運動学的分析から,姿勢歩行障害に対する装具や運動療法の適応について述べたい.また当院で開発した装具について紹介し,効果の機序や適応について若干の考察を加える.
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