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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル37巻10号

2003年10月発行

文献概要

特集 身体と環境

脳障害における身体と環境

著者: 宮本省三1

所属機関: 1高知医療学院理学療法学科

ページ範囲:P.853 - P.861

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 脳障害後の運動機能回復は「運動学習(motor learning)」である.運動学習とは「経験によってもたらされた行動上の適応変化」と定義される.この行動上の適応変化をもたらしているのは「脳(中枢神経系)」である.決して関節や筋肉が学習するわけではない.

身体と環境との相互作用

 脳障害における身体と環境という主題を考えてゆくための出発点としてひとつのエピソードを記しておこう.ある病院に,50歳代で脳卒中片麻痺となり,20年以上長期入院している70歳代の女性がいる.彼女が社会復帰できない理由についてはここでは触れない.彼女の人生を一言で語ることはできない.彼女は雨の日を除いて,毎日早朝と夕方に病院の周辺を散歩している.一本杖を持ち,分廻し歩行で歩き続けている.歩いた歩数は数え切れない.彼女の身体(足)は環境(地面)との相互作用を20年間繰り返し反覆している.しかし,その歩容は20年前も今も相変わらず分廻し歩行のままである.セラピストは,単に身体と環境との相互作用を反覆するだけでは,運動学習や運動機能回復が生じないことを肝に命じておくべきである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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