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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル37巻4号

2003年04月発行

雑誌目次

特集 理学療法教育施設の自己点検・評価

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.269 - P.269

 現代社会においては,透明性と説明責任が強く求められており,医療界・教育界においても例外ではありません.対象者に対して,十分な説明を行ったうえで,同意を得て共通の目標に向かって進んでいくことが必要です.

 本特集では,理学療法士養成施設が急増する現状も踏まえて,教育施設の自己点検・評価に焦点を当て,その実際と課題について整理していただきました.今回は,大学,短期大学,専修学校,大学院という教育形態の違いを通して,理学療法にかかわる教育について考える構成となっています.

第三者機関を含めた教育施設における自己点検・評価のあり方

著者: 潮見泰藏

ページ範囲:P.271 - P.275

 21世紀の幕開けから,わが国の理学療法教育は新たな局面を迎え,それを乗り越えるべく具体的な対応に迫られている.すなわち,近年の養成施設の急増によって,理学療法士の需給バランスが均衡し,さらには逆転するという状況がますます現実味を帯びつつあり,その教育は量から質への転換を図ることが強く求められてきている.

 そもそも大学や専門学校を取り巻く環境は,少子化が進み,学歴の目減りや大学の大衆化が起こり,さらに創造的な学術研究や治療技術の推進が要求され,社会的諸問題の解決も迫られているといった,変化の激しい複雑化した社会である.このような環境は教育施設間の競争や差別化を生んでおり,それは理学療法士養成施設についても例外ではない.各養成施設が教育研究水準をよりいっそう向上させ,かつ社会からの評価に耐えうるよう個性ある教育施設としてさらに充実・発展し,新しい時代が要請する人材の養成および学術研究を積極的に推進していくことが求められている.

大学における自己点検・評価

著者: 嶋田智明

ページ範囲:P.276 - P.284

 大学は,最高の教育機関として,また学術文化の研究機関として,自主的・自律的な判断と努力によって教育・研究活動を展開すると共に,学問と文化を伝承し発展させる社会的責任を負う.この責任を果たすために大学は常に教育・研究水準の向上や活性化に努めることが必要である.

 大綱化・簡易化・自由化をうたって平成3年(1991)に改正された大学設置基準により各大学は,それぞれ自主的・自立的判断と努力によって教育水準の向上や活性化を目指して自由に多様で個性的な教育を展開することが可能となった.いまや各大学は,そのために最大限の努力を払うことが最重要の課題であり,それを果たすことは強い社会的要請である.

短期大学における自己点検・評価

著者: 工藤俊輔

ページ範囲:P.285 - P.292

 近年,国立大学は,そのアカウンタビリティのみならず,その存在自身が厳しい問いを受けつつある.しかしこれは社会からの批判であるとともに強い期待の現れでもある.

 秋田大学医療技術短期大学部は2002年10月1日より医学部保健学科として改組転換した.これを,本学が自己点検・評価報告書などの各種出版物や外部による第三者評価など,自己点検・自己評価を継続して行い,その要請に応えるべく努力してきた結果の反映だと考えるならば,教育施設における社会的役割やその責任を明らかにすることは極めて重要であると思わざるをえない.

専修学校における自己点検・評価

著者: 中屋久長 ,   保村譲一

ページ範囲:P.293 - P.299

 平成14年3月29日,学校教育法第82条の6の規定に基づき,専修学校設置基準の一部を改正する省令が出され,第1条の2,3項として次のように加えられた.第1条の2「専修学校は,その教育水準の向上を図り,当該専修学校の目的および社会的使命を達成するため,当該専修学校における教育活動等の状況について自ら点検および評価を行い,その結果を公表するよう努めなければならない.2.前項の点検及び評価を行うにあたっては,同項の趣旨に即し適切な項目を設定するとともに,適当な体制を整えて行うものとする.3.専修学校は,第1項の点検及び評価の結果について,当該専修学校の職員以外の者による検証を行うよう努めなければならない.」 情報の積極的な提供:第1条の3「専修学校は,当該専修学校における教育活動の状況について,広く周知を図ることができる方法によって積極的に情報を提供するものとする.」付則「この省令は,平成14年4月1日から施行する.」さらに省令要綱で詳細が定められ,省令参照条文として,学校教育法第82条の6が掲載されている.すなわち,「専修学校は,次の各号に掲げる事項について文部科学大臣が定める基準に適合していなければならない.一)目的,生徒の数又は課程の種類に応じて置かなければならない教員の数,二)目的,生徒の数又は課程の種類に応じて有しなければならない校地及び校舎の面積並びにその位置および環境,三)目的,生徒の数又は課程の種類に応じて有しなければならない設備,四)目的又は課程の種類に応じた教科及び編制の大綱2)」としている.これらの法規に従って各専修学校に置いても自己点検・評価が行われ教育水準の向上に努め,目的および社会的使命を達成すべく努力が行われている.周知のとおり,理学療法士の教育養成はこれに加え,「理学療法士及び作業療法士法」の「学校養成施設指定規則」の条件を満たすことで養成施設としての指定を受けることになる3,4)

私立リハビリテーション学校連絡協議会における自己点検・評価の試み6)

 平成8年11月,私立リハビリテーション学校連絡協議会(以下,私立リハ学校連絡協議会)は自己点検・評価について検討をし,実施にあたっては種々の抵抗や評価項目に不十分な点があることを鑑み,会員校の一部において「リハビリテーション関連職種養成施設における自己点検・評価」を試験的に実施し十分な結果を得られなかったものの専門学校における課題がある程度示唆されたので,その実施内容について紹介する.

大学院における自己点検・評価―理学療法学教育・研究をいかに展開するか

著者: 乾公美

ページ範囲:P.300 - P.305

 理学療法士の教育は,1990年代に大きく様変わりしてきた.すなわち,1992年の広島大学医学部保健学科理学療法学専攻科(以下,広島大学)の開学を皮切りに4年制大学での教育が始まり,これまで短期大学であった養成校の大学化が進み,また地方自治体の理学療法士を含む保健医療従事者養成のための大学が次々と設立された.1996年に広島大学が大学院医学系研究科を設置し,待望の理学療法学の高等教育機関における教育・研究が始まった.一方で,規制緩和に伴い専門学校の設置が相次ぎ,理学療法教育の2極化が顕著になった.しかし,文部科学省は平成3年に「大学が単位を与えることのできる学修」に関する通達を発し,また専門課程の総授業時間数が1,700時間を超える短期大学や専修学校卒業生に,大学への編入学や大学院入学の道を拓いた(平成10年8月14日,文部省告示第125号).

 大学院の使命は,「学問の自由」の精神に基づき,学理の真理を教授・研究し,社会の発展・人類の繁栄に貢献することにある.高度教育研究機関である大学院は,それぞれの専門分野における研究能力を有する人材の養成や,社会において指導的役割を担いうる高度な専門知識や能力を有した人材を養成するという重責を負っている.これまでの大学院は,将来大学の教員や研究所の研究員を志す者に必要な高度な研究の力を付与するための教育機関として位置付けられていた.しかし現在では,高度な専門性を有する職業に必須な専門能力や,その分野に関する研究能力に長けた者を養成する機関としての役割や,職務上の必要性からあるいは自己研鑽を求める人達の生涯学習を支援する役割も課されている.一方で大学院には国際的水準あるいはそれ以上の教育や研究が求められ,グローバルな貢献が期待されている.

とびら

コミュニケーション

著者: 小田嶋尚人

ページ範囲:P.267 - P.267

 人とコミュニケーションがうまくとれていますか? 私自身は苦手だと思っています.思っていることの10分の1ほどの気持ちも相手に伝わっていないような気がするからです.あとで「ああ言えば良かったかな? こう言えば良かったかな?」と考えることがよくあります.特に初対面の人とはなかなか話が続かず,そのようなときは開き直って「自分は無口なのだから,会話が続かないのは私だけではなく相手にも責任があるのだ」などと勝手に言い訳をしたくなります.

 ところで,コミュニケーションのとり方には色々なタイプの人がいます.例えば表面的にはどんな人ともうまくつきあえる人,あるいは相手の意見は聞かず,自分の意見が100%正しいと思っている人.また常に相手よりも上の立場に立ち自分が一番でなければならない人など….特殊な例ですが,私の知り合いには初対面の人に対しても,相手を怒らせるところからコミュニケーションを始める能力を持った人がいます.コミュニケーションのとり方は本当に人それぞれです.

講座 医療制度改革と理学療法の動向・1

平成14年医療費改定の内容

著者: 手島邦和

ページ範囲:P.307 - P.311

 平成14年4月の医療費改定は例年になく特徴的なものであった.

 第1に医療費改定では前例のないマイナス改定であったこと,第2に理学療法については診療報酬算定の根底を変更する内容であったことである.

プログレス

腱組織の役割と適応性

著者: 久保啓太郎

ページ範囲:P.312 - P.314

 筋・腱複合体は,収縮要素(筋線維)と弾性要素(主に腱組織)で構成されている.これまで,ヒトの身体運動における弾性要素の機能的役割に関する研究は,関節角度や床反力などの身体外部から測定されるパラメータを通しての推定が主であった1).一方,腱組織(腱および腱膜)の特性に関する研究は,動物やヒト屍体を用いて行われ,その結果をヒトの身体運動に適用することが一般的であった.しかし,ヒトの腱組織の特性をin vivoで把握することは身体運動のメカニズムの解明のためには必要不可欠である.なぜなら腱組織の形状や機能は,動物とヒトでは異なり,また生体と屍体とでは異なるからである.

 最近われわれは,超音波法によりヒト生体における腱組織の粘弾性に関する測定法を開発した.そこで本稿では,ヒト生体における腱組織の粘弾性の定量化(研究1),トレーニングが腱組織の粘弾性に及ぼす影響(研究2),身体運動における腱組織の機能的役割(研究3),について最近の研究結果を紹介する.

1ぺ-ジ講座 理学療法用語~正しい意味がわかりますか?

徒手療法

著者: 藤縄理

ページ範囲:P.315 - P.315

 「徒手療法」という用語を文字どおり解釈すれば「手を使った療法」となり,理学療法のかなりの部分が徒手療法に含まれてしまう.しかし,実際にはそのような用い方をしていない.

 徒手による治療には,マニピュレーション(manipu-lation)やモビライゼーション(mobilization,モビリゼーションと表すこともある),マッサージ(massage)などがある.また,最近理学療法の文献に紹介されている手技として,マッスルエナジー(muscle energy),マイオフェイシャルリリース(myofascial release),マイオフェイシャルマニピュレーション(myofascial manipulation),マイオセラピー(myotherapy),ストレイン・カウンターストレイン(strain-counterstrain)などがあり,さらにはカイロプラクティック(cairoprac-tic)やオステオパチー(osteopathy)という用語も見かける.本稿では徒手療法の定義と治療手技について紹介する.

学会印象記

―第18回日本義肢装具学会学術大会―むだを省き,学会本来の目的をめざし!

著者: 長倉裕二

ページ範囲:P.316 - P.317

 第18回日本義肢装具学会学術大会が,平成14年11月23,24日の2日間の日程で福岡市の中州,天神の繁華街中央に位置するアクロス福岡で開催されました.大会長の蜂須賀研二教授(産業医科大学リハビリテーション医学講座)をはじめ,福岡県内の施設,九州圏内の義肢装具製作業者,全国の義肢装具士養成校の学生の参加や援助もあり,盛大に行われました.この学会ではいくつかの新しい試みが行われたので,その試みとシンポジウム,講演の概要について報告します.

新しい試み

 まず,第一に驚いたのは会場の位置です.私も今まで多くの学会に参加してきましたが,この学会場は周りの環境が他の学会場と違っていました.学会場はショッピングモールの一角に位置し,地下や1階,2階部分には多くの一般テナントがありました.学会場の外には一般の買い物客が往来し,ごく自然な買い物風景の中に学会が開かれていたようにも見えました.学会終了後夕食や買い物へ行くことを考えても,移動しやすい位置にありましたので,初日の土曜日は18時までシンポジウムなどが開催されていましたが,参加者も食事の時間を気にすることなく,最後まで参加することができました.

理学療法の現場から

近ごろ話題の「権利」についてチョット考えてみませんか

著者: 篠崎泰子

ページ範囲:P.318 - P.318

 日本で「権利」という言葉が日常的に登場しはじめたのは,戦後の日本国憲法制定からであり,この言葉が私的概念として根付きはじめたのは,つい最近のことである.

 それまでは,権利という概念をよく知らなかったために,個人には,ましてや女性や子どもには,お上や男性,大人からの支配を受けずに,自分の意思で自由に考え行動することなどできないのは当たり前のことであったし,拒否したくてもそれを不服として言い表わす根拠となる言葉を見出だすこともできていなかった.

入門講座 理学療法ワンポイントアドバイス➍

循環障害―急性心筋梗塞

著者: 井澤和大 ,   渡辺敏 ,   山田純生 ,   大宮一人 ,   岡浩一朗

ページ範囲:P.319 - P.323

 急性心筋梗塞(acute myocardial infarction;AMI)は発症を契機に心機能障害のみならず,身体的,精神的障害をももたらし,未解決の様々な課題を有している.本稿では,心臓リハビリテーション(以下,心リハ)の概念について,主に急性期,回復期に絞って概説し,最後に身体的精神的側面に関する心リハの効果と2次予防に向けた運動指導法についてわれわれのデータを中心に述べる.

AMIの病態と治療

 AMIとは,冠状動脈の閉塞による心筋への血流の途絶が心筋の壊死を引き起こし,心室細動などの致死性不整脈や心ポンプ不全,心破裂などの重篤な合併症により生命に危険が及ぶ病態である.

循環障害―心不全

著者: 佐藤滋 ,   小笠原るみ子 ,   斉藤雅彦 ,   小林昇 ,   谷口泰代 ,   上嶋健治

ページ範囲:P.324 - P.328

 近年,心疾患患者への運動療法が積極的に行われるようになった.本邦でも急性心筋梗症発症後あるいは狭心症への運動療法の効果はほぼ確立した感がある1).また米国では,弁膜症や心筋症あるいは虚血性心疾患を原因とする心不全患者への運動療法も積極的に行われ,中等度までの心不全の運動療法プロトコールも確立されつつある2).しかし,本邦では心不全への運動療法はいまだ一般化されておらず,一部の施設でのみ行われているにすぎない3).この背景には,心不全の原因は多様であり,なかには病状の不安定化を来す危惧があることが挙げられる.しかし,近年の急性期病院での在院日数短縮化への流れや,長期安静臥床による合併症および脱調節などの防止の観点から,心不全への積極的な運動療法は時代の要請である.そこで本稿では心不全,特に慢性心不全についてその病態,検査方法とその所見,薬物療法および運動療法についての基本的なポイントを概説する.

循環障害―末梢循環障害

著者: 高倉保幸

ページ範囲:P.328 - P.331

 まず,末梢循環障害を四肢の循環障害と考え,代表的な疾患を大別してみると,①四肢の動静脈の病的異常に伴う四肢循環障害,②外傷後に生じる四肢の循環障害,③骨への血流障害に基づく骨壊死や骨端症などがあげられる.この分類は原因疾患に基くものであり,整形外科の教科書に準ずるものである.疾患を病理学的に捉え,疾患の治療を目的とする整形外科の分類としては妥当なものと考えるが,これはあくまでも整形外科医や病理医など,医師のための分類である.やはり,理学療法士は理学療法のアプローチからみた分類を,自分たちで独自に考えていくべきであろう.このような立場から,筆者は若手の理学療法士を対象に,①アウト(排出)の問題,②イン(供給)の問題に分けて循環障害に対する理学療法の方法を説明することが多い.このような用語の用い方や考え方は,少々独断的ではあるが,部分的であっても具体的な臨床的なヒントを与えることを目的として,この方法で話を進めることをお許し願いたい.

特別寄稿

知っておきたい感染症の知識

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.332 - P.337

 21世紀最初の年である一昨年にはニューヨークでの同時多発テロに引き続き炭疽菌騒ぎが起こり,昨年はウエストナイル熱がアメリカで流行し,今年は年頭からイラクの問題もからんで,1980年に根絶が宣言されたはずの痘瘡(天然痘)が話題になっています.19世紀後半,1868年のハンセンによるハンセン病(かつて「らい病」と呼ばれていました)の原因菌の発見以来,細菌学が進歩し,20世紀後半にはウイルス学が長足の進歩をとげて,人類は感染症との戦いに勝利するかに思えたものです.1977年にアフリカのソマリアで最後の天然痘患者が発見されて以降,天然痘の新規患者の発生はなく,1979年に世界保健機関は天然痘の根絶を確認し,人類は史上初めてひとつの感染症を地球上から根絶したことを宣言しました.この調子で麻疹,マラリア,結核等々,人類を苦しめてきた感染症を克服できるのではないかと考える人も多かったのです.しかしそれは人類の驕りであったのかもしれません.1981年,アメリカのCDCは男性同性愛者の間で後天的に免疫を低下させる疾患が流行していることを報告しました.これが後にエイズと呼ばれることになる病気の初めての報告です.MRSA(メチシリン耐性黄色ぶどう球菌),VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)などの院内感染症,エボラ出血熱などの新興感染症や結核,マラリアなどの再興感染症,そしてバイオテロと,20世紀後半から21世紀にかけてわれわれは感染症との戦いに新たな局面を迎えているといえましょう.本稿ではそんな時代における感染症の基本的な知識について解説したいと思います.

感染症と伝染病

 定義の仕方によっては若干の違いがあると書かれている専門書もありますが,伝染病と感染症についてはほぼ同じ意味と考えてよいと思います.簡単に言えば伝染る(うつる)病気,病原体が伝播されて起こる病気が感染症あるいは伝染病です.ここでいう病原体とは感染症を引き起こす微生物です.病原体にはウイルス,リケッチア,細菌,原虫などがあります.微生物とは言えないかもしれませんが,異常プリオンや寄生虫も病原体に含めています.

新人理学療法士へのメッセージ

立ち止まる勇気

著者: 稲岡秀陽

ページ範囲:P.338 - P.339

 私がPTとなった頃は,「先生,先生」と呼ばれ,貴重な有資格者としての扱いを受けていました.国家試験さえ受かればすぐにいい気になれる時代でした.というより,知識,技術もないのに,自分でその気になっていただけかもしれません.そこから私の失敗が始まっていたわけです.

甘い生活

 患者は自己治癒力である程度まで回復します.時間がかかって,ちょっと違った方向にあっても,改善傾向にあるように見えます.それを私は自分が治したかのように,いい気になっていたわけです.でも,日々の生活に追われ,開設準備に追われ,その生ぬるい,甘い生活に浸ってしまう楽さから抜けきれず,何年かが経過しました.気づいたときには,もう既にそのことに目を向けるのが怖く,より一層自分に甘くなっていました.卒業時は,多疾患をみて,治療のできるPTを夢見ていました〔もしかしたらそのテーマ(目標)が大きすぎて,現実的でなく,甘い方向に足を向ける第一歩だったのかもしれないと今は反省のみです〕.そして,口だけは立派になり,蓋を開けたら,どうしようもない名ばかりのPTになっていたわけです.

一日を振り返り,自分と向き合おう

著者: 春日元

ページ範囲:P.340 - P.341

 新人理学療法士の皆さん国家試験合格,ならびにご就職おめでとうございます.このたび,新人の皆さんへメッセージを贈らせていただくことになりましたので,自分なりのアドバイスを書かせていただきます.

時代の流れ?

 私は北海道の中規模都市の自治体病院に勤務していますが,最近では,医療事故報道の増加,医学の進歩,診療報酬改定,患者ニードの変化などにより様々なことを考えていく必要に迫られています.時代の流れでしょうが,日々同じことを流れ作業的に行っているだけでは許されない状況です.われわれの治療行為一つにしても,数年前までは当たり前に行ってきたことが,最近では逆効果だったり,そこまでいかなくとも効果的には不明瞭なことが頻繁に露見してきています.まさに日進月歩.そんな中でわれわれに求められるものも年々高度になってきています.当然新人の皆さんへの期待も高まってくることとなります.

学術大会の地とことん紹介

ようこそナガノへ―第38回日本理学療法学術大会開催地ナガノ

著者: 臼井弥生 ,   古田大樹 ,   丸山陽一

ページ範囲:P.342 - P.345

 第38回日本理学療法学術大会は「科学的根拠に基づく理学療法―Evidence-based Physical Therapy」を大会テーマに,平成15年5月22日より24日まで長野市ビッグハットを主会場に開催されます.「ナガノからEBPTを始めよう」を目標に,EBPTの基本概念と方法の理解を深め,現状と課題を確認し,今後の実践を検討していくという流れをもって,大会が企画されています.

 日頃の研究・教育・臨床の集積を持ち寄り研鑽し交流し合う場に,そして日本におけるEBPTの発信の場に,全国の皆さん,ぜひナガノへお集まり下さい.

短報

徒手筋力テストにおける段階づけ

著者: 吉村茂和 ,   相馬正之 ,   山本真秀 ,   長谷場純仁 ,   鮫島菜穂子 ,   斉藤琴子

ページ範囲:P.347 - P.349

 筋力の評価は,患者の機能障害(impairment)を把握することができると同時に活動の制約(activity limitation)も推測でき,理学療法や医学的リハビリテーションなどで重要な評価の一つである.筋力の評価には種々の方法がある1)が,その中でも徒手筋力テストは,器具を使用せず臨床の場ですばやく実施できるなど実用的で有用な方法である.

 Danielsらの新・徒手筋力検査法(manual muscle testing,以下MMT)では,3以上の段階づけ(以下,測定尺度)が3,4,5の3段階となった2).しかし,この3種類の段階のみでは筋力強弱の判別感度が低く,患者の経過観察中に筋力増加または弱化が表面化しても異なる段階へと移行することが困難となっている.しかも,MMTの3以上の測定尺度の判定では,検査者の性別,体格,年齢などにより与える徒手抵抗の強さが影響を受け,さらに被験者の性別,体格,年齢などを考慮して測定尺度が判定されるために,主観的な要素を含み曖昧となっている3).MMTを臨床で使用するためには,より細分化して判別感度を高くし,より客観的な測定尺度が求められている.

立位における真の股関節自動屈曲と影響因子に関する検討

著者: 吉尾雅春 ,   村上弦 ,   乗安整而

ページ範囲:P.351 - P.353

 立位における骨盤は上前腸骨棘と恥骨結節が同じ前頭面上に位置する1)関係にあり,骨盤傾斜角の基準になっている.体幹と平行な線と大腿骨とのなす角が90度になるように姿勢を正した座位では,骨盤は立位よりも20~30度後傾した状態になる.安楽座位ではさらに後傾する.股関節自動屈曲を担う腸腰筋や大腿直筋などの作用は骨盤の傾斜によって異なるものと考えられる2).特に「第3のてこ」3)である股関節における腸腰筋の作用は,大腿骨に対する骨盤の傾斜によって影響をうけやすいものと考えられる.しかし,最新のDanielsらの徒手筋力検査法(第7版)4)でもその配慮は示されていない.

 そこで,股関節屈曲に伴い常に重力の影響を受け,また,基準となる骨盤傾斜角を特定しやすい立位において,骨盤を固定した場合の真の股関節屈曲角度を求め,それに与える影響因子について検討した.

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文献抄録

ページ範囲:P.354 - P.355

編集後記

著者: 内山靖

ページ範囲:P.358 - P.358

 37巻4月号をお届けします.

 4月は出会いの季節です.新しく職場に入られた皆様は,希望と期待に胸を膨らませた毎日をお過ごしのことと思います.今月は,これまで学ばれてきた理学療法教育施設の自己点検・評価についての特集を組みました.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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