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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル37巻5号

2003年05月発行

雑誌目次

特集 こどもの理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.361 - P.361

 障害をもったこどものリハビリテーションおよび理学療法についての課題は,多くの領域を巻き込みながらそれぞれ相互の連携と協力を必要とするところに特徴がある.またこどもが成長発達してゆく存在であるために,長期にわたっての展望と対応策の持続性がとりわけ重要となる.

 本特集では,このような視点からこどものリハビリテーションの現状と展望について論じていただき,主要で個別的な障害に対してそれぞれの立場から論述していただいた.これらを統合し連携することで,ぜひ臨床現場に生かしていただきたい.

こどものリハビリテーションの現状と展望

著者: 小池純子

ページ範囲:P.363 - P.371

 陣内1)はこどものリハビリテーション(以下,リハ)の特殊性として次の4項目を挙げている.

 ①対象となる障害の多くは「先天的要素」をもつ.

 ②成長・発達とのかかわりが大きい.

 ③両親,特に母親の存在が大きい.

 ④こどものリハのゴール(目標)は,そのこどもにとってふさわしい教育の場を与えることである.

 こどものリハは,言い換えれば「先天的」あるいは発達期に生じた障害の小児期におけるリハである.「発達・成長」「両親」「教育」はこどものリハにおけるキーワードであるが,小児期においても障害児がどのような成人期を迎えるのか,すなわち職業を含めた生活スタイルの構築,二次的合併障害への対応などを念頭においてリハを進めなければならない.

脳性まひ児の理学療法

著者: 原泰夫

ページ範囲:P.372 - P.376

小児理学療法の意義

 診療報酬改定など医療を取り巻く状況は年々厳しくなってきている.小児の領域も例外ではなく,その影響は今後より深刻な形で現れてくることが予想される.短期的な成果や目に見える治療効果を求める声が強まる中で,われわれが培ってきた良い部分を保ちつつ,一方これまでのいわば悠長な対応から脱却し,厳しくなる状況に即して対応を変化させていかなければならない.今われわれは否応なしにこの状況に適応することを求められている.現場から見れば,そこには負の要素(成人と小児を同一視した制度を施行する側の無理解)が強いと感じられるが,一方,前向きに考える要素として,変わらざるを得ないこの状況下で今までのむだや多分に経験主義的,感覚的であった部分をより客観化して,自分達の使命と役割を見直し,こども達と家族のために真に役立つ方向に体制を変えていく良い機会として捉えることも可能だろう.

 障害児のリハビリテーションの価値を認めない考え方や,逆に即効的な方法が宣伝されることに対して,われわれはもっと地に足の着いた治療の必要性を主張していかなければならない.それにはセラピスト自身が,しっかりした知識・技術を身につけ,丁寧に着実な対応をしていくことでこどもは変わる,という確信をもつことが必要である.

知的障害児の理学療法

著者: 押木利英子

ページ範囲:P.377 - P.385

 知的障害児を定義することは容易ではない.まして知的障害児の理学療法と問われて想起するものは誰もが同義ではないと思われる.本稿では,精神遅滞の定義やその変遷を踏まえたうえで,運動発達遅滞を伴う精神遅滞児を理学療法の対象としての知的障害児とし,精神遅滞の定義,病因,評価,療育活動,運動発達理学療法の実際について述べる.

精神遅滞の定義

 知的障害を規定するものに精神遅滞がある.精神遅滞の定義は,WHO,イギリス精神衛生法,アメリカ精神遅滞学会(The American Association on Mental Deficiency;AAMD),日本の学校教育法,心身障害者対策基本法などでそれぞれの運用目的に合わせて定めているが,一致したものは見当たらない.例えば,AAMDによれば「精神遅滞とは,一般的知的機能が明らかに平均よりも低く,同時に適応行動における障害を伴う状態で,それが発達期に現れるもの」と定められている.しかし,「明らかに平均よりも低く」という知能の測定方法,「適応行動における障害」という適応行動の評価法や「発達期」をいつまでとするかなど諸説あり,統一は難しい.ただし,定義のほとんどが知的機能,知的能力,社会適応性などを指標とした発達を精神発達としている.そして,精神遅滞を持つこどもの精神発達は生涯を通じて固定しているものではなく,流動的でかなりの幅があり,変化しうるものという共通概念がある.この概念に基づいて教育的,療育的,医学的介入が試みられているのが現状である.

小児整形外科的疾患の理学療法

著者: 榎勇人 ,   山本博司 ,   沢本毅 ,   野村卓生 ,   岡崎里南 ,   川上照彦 ,   石田健司

ページ範囲:P.386 - P.392

 1741年にNicolas AndryがL'Orthopediに若いcrocked treeの矯正の絵を描き,整形外科は小児の変形を矯正し予防する学問と技術であるとして整形外科学が発展してきた.山本1)は脊柱側弯症はそのシンボルツリーから想像されるとおり,整形外科治療の本流ともいうべきものであると述べている.

 脊椎側弯症の早期発見・早期治療を目指して,わが国では1979(昭和54)年に学校保健法が改正され,全国規模で側弯症の学校検診が義務づけられた.その結果,様々な形でのスクリーニングが始められるようになり2),脊椎側弯症への関心が高まったと同時に早期弯曲の早期治療に成果を上げてきた.当院整形外科でも平成4~13年の10年間に,延べ1,429名の脊椎側弯症患者(その内特発性側弯症患者912名)を診療し,治療を行っている.

小児神経筋疾患の理学療法

著者: 上杉雅之

ページ範囲:P.393 - P.399

 小児神経筋疾患には,先天性筋強直性ジストロフィー症1)や,先天性筋線維型不均等症2)などがあり,その多くが体がやわらかい,ぐにゃぐにゃな乳児である「フロッピーインファント」3)に含まれている.

 その主要な臨床症状は,低筋緊張に加えて ①奇異な姿勢,②関節の受動運動に対する抵抗の減弱,③関節可動域の増大である.

とびら

高齢者・雑感

著者: 金谷さとみ

ページ範囲:P.359 - P.359

 介護保険施設は現在,箱ものごと(施設単位)に機能分化されているが,実はこれは利用者側にはわかりにくく,むしろ施設ごとの括りの中で機能的類型化を図るべきだという意見が出ている.例えば一つの介護老人保健施設で,家庭復帰型,生活介護型,医療型という機能分けをするというものだ.この考え方からすると,やはり理学療法士は家庭復帰型に着目するべきであろうが,果たしてそれだけで良いのであろうか.利用者や家族から見ればどのような型であれ,同額ならば同じサービスを受けたいというのが本音であろう.

 不可逆的に機能低下する高齢者の特性,一人に長期にわたって関わる地域ケアの特性を鑑みれば,理学療法を受ける機会を公平にする意識は重要である.「理学療法の対象でない」「専門性が不明瞭だ」などの意見はあくまでも「こちら側」の発想であり,今後はもっと利用者側に視点を置いて議論すべきかもしれない.とてつもない高齢社会を前に,確固とした社会要請に「精一杯応える」ことを心掛けていかなければ,意欲的な他職種に押されてすぐに蚊帳の外となる.

講座 医療制度改革と理学療法の動向・2

医療保険制度の現状と問題点

著者: 手島邦和

ページ範囲:P.401 - P.406

 前回は厚生労働省が示した「医療制度改革試案」および平成14年4月の医療費改定について説明した.今回は現行の医療保険制度の内容およびその問題点についてやや詳しく取り上げ,改革の方向性について述べてみたい.

医療保険制度の構成

 わが国の医療保険制度には次のような特徴がある.

 1)所得保障,医療保障,社会福祉からなる社会保障制度を構成する重要な1部門である(表1).

 2)1961年(昭和36年)に実現した国民皆保険を維持している.

欧州の英国では保健サービス制度,独仏各国では社会保険方式による全国民を対象とした医療保障制度があるが,米国では公的医療保障制度は高齢者および障害者を対象としたもので国民のカバー率は低く,多くは民間保険などに依っている.

1ページ講座 理学療法用語~正しい意味がわかりますか?

運動学習

著者: 大橋ゆかり

ページ範囲:P.407 - P.407

 運動学習は行動に比較的永続的な変化をもたらすとされている.学習効果が永続するためには,学習結果を長期記憶として貯蔵する必要がある.

 人間が外界から情報を取り込む際のボトム・アップ処理は,次のように行われる.視覚を例にとれば,外界の情報はまず網膜上に投射される.しかし網膜上のすべての情報が“見えている”わけではなく,人間が注意を向けた一部の情報のみが“見える”,すなわち“知覚される”.網膜上に映った情報が「短期感覚貯蔵」,知覚された情報が「短期記憶」である.短期記憶も何も手を加えなければ,数分で忘却されてしまう.しかし,短期記憶内にある情報に繰り返し注意を向ける,意味づけする,分析するというような処理をすると,情報が安定化し,「長期記憶」として貯蔵される.

インタビュー

―桑田真澄投手(読売巨人軍)に聞く―もうひとつの動き方

ページ範囲:P.408 - P.409

 「桑田復活の陰に古武術あり」―ここ数年の不振で引退まで取り沙汰されていた桑田投手が,昨シーズンは見事に復活.防御率2.22(12勝6敗)で最優秀防御率のタイトルまで手に入れるという大活躍だった.その陰に,古武術稽古会「松聲館」主宰・甲野善紀氏との出会いがあった.そして,その出会いを仲介したのが,理学療法士として読売巨人軍のトレーナーに転じたことで知られる神谷成仁氏であった.

 一見,畑違いの野球と古武術にどんな関係があるのだろう.古武術の特徴は「ねじらない・うねらない・ためない」だという.従来の運動理論とは対極にあるこの身体運用に桑田投手はなぜ惹かれたのか.いかにしてそれを身に付け,投球フォームにつなげていったのか.

 開幕を前にトレーニングに励む桑田投手と,復活のプロセスを陰で支えた理学療法士・神谷成仁氏のお二人に,同じく理学療法士の竹中弘行氏(湯河原厚生年金病院)が伺った.

理学療法の現場から

夢とこだわり

著者: 石黒友康

ページ範囲:P.410 - P.410

 私が大学病院から現在の職場に移ってから15年が経過した.とてつもなく暑い8月に赴任したが,それはちょうど長男が誕生する1か月前のことであった.その子が現在高校受験の追い込みにさしかかっている(本稿執筆時).したがってこの病院での私の毎日は,子供の成長とリアルタイムに進んできたわけである.

 このような事情もあり,最近昔の8mmビデオを整理しながら,彼の成長の様子を見ているうちにあることに気がついた.親として子供にたくさんの“夢”を与えよう,多くの経験をさせようとするのは当然である.しかし,実際には私自身が,子供に“夢”を見させてもらっていたのである.

入門講座 理学療法ワンポイントアドバイス➎

呼吸障害―急性期

著者: 石川朗

ページ範囲:P.411 - P.414

 呼吸不全において,急性期の明確な定義はない.1983年厚生省特定疾患呼吸不全調査班によると1),呼吸不全とは呼吸機能障害のために動脈血ガス(特にO2とCO2)が異常値を示し,そのために正常な機能を営むことができない状態としている(表1).その具体的基準は,室内空気呼吸時のPaO2が60Torr以下となる呼吸器系の機能障害,またはそれに相当する状態を呼吸不全とし,加えてPaCO2が45Torr未満をⅠ型呼吸不全,45Torr以上をⅡ型呼吸不全としている.また,慢性呼吸不全とは,呼吸不全の状態が少なくとも1か月以上続くものとしているが,1か月未満を急性呼吸不全とは定義付けていない.

1.急性呼吸不全

 急性呼吸不全は呼吸不全が急速に生じただけではなく,生命を維持するだけの換気能力と酸素化能力が障害された状態である.急性呼吸不全においては代謝性アルカローシスの代償としてのPaCO2の貯留や高濃度の酸素投与における低酸素血症の改善の程度が反映していない.そのため,1 PaCO245~55Torr以上で,pH7.35以下の酸血症(acidemia)を伴い,2 酸素吸入濃度を60%以上に保っても,PaO260TorrまたはSaO290%未満を急性呼吸不全の指標としている2)

呼吸障害―慢性期

著者: 宮川哲夫

ページ範囲:P.415 - P.418

 慢性呼吸障害に対する呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)や呼吸理学療法の対象は幅広く,COPD(慢性閉塞性肺疾患)を中心に,結核後遺症,喘息,間質性肺疾患,睡眠時呼吸障害などの呼吸器疾患の他に,神経筋疾患,後側弯などの胸壁疾患,人工呼吸器依存患者,肺気量減少療法や肺移植の術前術後,末期肺癌患者,脳血管障害後遺症,脳性麻痺などがあげられる.ここでは呼吸リハや呼吸理学療法のエビデンスが最も証明されており,かつ臨床現場で遭遇する頻度の最も高いCOPDを中心に解説する.

呼吸障害―人工呼吸器離脱(ウィーニング)

著者: 金尾顕郎 ,   堀竜次 ,   千葉一雄

ページ範囲:P.419 - P.422

 人工呼吸器離脱(以下,ウィーニング)とは,人工呼吸器による呼吸補助を徐々に減じていき,仕事の主体を器械から患者に移していく過程のことである1).抜管と混同され使用されるが,同一でなく抜管はウィーニングの最終段階である.

 人工呼吸器は,種々の要因により呼吸不全の状態にある患者の機械的な呼吸管理に使用される.近年,人工呼吸器管理下にある患者に対する理学療法が,二次的合併症の防止,人工呼吸からの離脱ウィーニングの促進,装着患者のQOLの維持向上などを目的に実施されている.この場合,人工呼吸器を装着された理由がそれぞれ異なるため,呼吸管理上,基礎疾患の状態,呼吸不全の型,呼吸筋力などを把握し,それらに対する人工呼吸器の構造と作動様式などを理解しておく必要がある2)

 本稿では,これらの人工呼吸器装着患者におけるウィーニングのポイントについて,特に呼吸筋機能の評価を中心に説明する.

ひろば

転倒予防教室について

著者: 大渕修一

ページ範囲:P.424 - P.424

 全国に2,200万人いる高齢者の少なくとも1割は転倒し,さらにその1割が骨折など重篤な傷害を引き起こすといわれている.股関節頸部骨折の治療には約300万円を必要とするので,乱暴な計算をすれば約6,600億円が転倒のために使われることになる.実際,平成10年度の統計では損傷などの外因により5,300億円以上の医療費が支出されている.転倒は高齢になればなるほど危険が高まることが知られており,今後の高齢化社会を考えると,この値は指数関数的に増加することは容易に想像される.

 転倒と身体機能の関係はよく知られている.体力が落ちると転びやすくなるということがほぼ定説となっている.しかし,それは本当であろうか.アメリカのTinettiら1)は転倒を経験した高齢者の約3割はなんらかの活動低下を起こすと報告している.とすると,転倒によって体力が落ちるとも考えられ,鶏卵論争ではないが,どちらがどのように影響を与えているのか因果関係がはっきりしなくては,適切な予防の方略を見つけることはできない.こうした観点からこれまでの転倒研究を精査すると,前年度の転倒経験などが主要な要因であり,その他の身体機能はそれほど明確な因果関係を持たないことがわかる.特に,この傾向は健康度の高い地域在住高齢者を対象とする場合に強い.結論として,体力が低下することによって引き起こされる転倒もあるだろうが,多くは転倒によって体力が低下すると考えられ,転倒後のフォローアップが転倒予防の鍵になることが示唆される.

プログレス

介護施設学の現在

著者: 佐藤義夫

ページ範囲:P.425 - P.427

なぜ介護施設学なのか

 「介護施設学」という耳慣れない言葉は,言うまでもなく造語である.

 私が実際に介護施設の問題を考えるようになったきっかけは,直接的にはユニットケアをめぐる議論にあった.その議論が何ともわかりにくかったのである.そして,結局のところ,ユニットケアは建物を小さく区切るといったハードの問題になってしまい,実際に施設で行われている運営については曖昧なまま放置されてしまった.

学校探検隊

あれから10年……―(その一部あるいは大半を知る者のメッセージ)

著者: 小倉彩 ,   中村智香子 ,   長妻香織

ページ範囲:P.428 - P.429

大学の概略

 北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻(長い!:以下PT専攻)は,日本初の私立4年制大学の理学療法士養成校です.北里大学は1962年(昭和37年)に医療衛生学部の前身である衛生学部の開設に始まり,現在理学,医学,薬学,看護学,医療衛生学,獣医畜産学,水産学の7学部16学科,大学院7研究科からなる生命科学の総合大学となりました.PT専攻が属する医療衛生学部は,医療を支えるコ・メディカルスタッフおよび研究者の育成を目的に,3学科8専攻を有する日本初の医療系学部として1994年に開設され,2003年4月に開設10周年を迎えました.私(小倉)は,そのうちの9年(学生4年,大学院生2年,教員3年目)を知る者として大学を紹介します.

キャンパスライフ

 1年次は全学生が相模原キャンパスに籍を置き,一般教養科目を履修します.2年次からは薬学部が白金へ,水産学部が三陸へ,獣医畜産学部が十和田へと旅立ちますが,やはり相模原が中心で,他学部との関わりも多いため出会いのチャンスは高く,多数のカップルが形成されているようです.最寄り駅は小田急線相模大野とJR相模原ですが,小田急線小田急相模原,相武台前,JR線古淵,原当麻からのバスもあります.各駅から新宿や横浜まで30~40分と交通の便は比較的よく,神奈川県,東京都出身の自宅通学生が約4割います.しかし,駅から大学までバスで20~40分,時には1時間以上かかるため,大半の学生は自転車で通っています.また,下宿生の多くは大学に近いアパートを借りており,自転車が足となっています.学生の体力づくりにも一役買っているとかいないとか….

プラクティカル・メモ

頭部外傷児の移動補助具の一工夫

著者: 上杉雅之

ページ範囲:P.431 - P.431

 意欲が低く,三肢麻痺を有した頭部外傷児へ独自の改良歩行車を作成したので報告する.

1.改良歩行車の紹介

 改良歩行車は既存の物を利用して図1に示すように試作した.既存の前腕支持型四輪歩行車の前腕受けパッドを撤去した後,上部連結棒の前方に小さいロールを本症例の腋窩にくるように取り付け,同連結棒の側方にベルトを上前腸骨棘の下部に当る部分に取り付けた.そして,下部連結棒の中央から他側に棒を渡し,その棒の中央より後方にかけてプラスティックで作られた板を足が重ならないように取り付けた.

あんてな

“手作り”電子カルテの取り組み

著者: 米山優子 ,   倉田考徳

ページ範囲:P.432 - P.435

 近年,医療事故に対するリスクマネジメントが盛んになり,各病院では,医療事故防止のためにいろいろなinformation technology(以下IT)システムを導入する動きが目立つようになりました.また,厚生労働省から1999年4月に“診療録等の電子媒体による保存について”の通達が,2001年12月には“保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザインの策定”が発表され,ますます医療のIT化が進むこととなりました.

 当院でも医療情報の共有化,業務の合理化やリスクマネジメントの観点から,これまでに様々なシステムを導入してきました(図1).まず,2000年6月にオーダリングシステムとイントラネット,院内メールを,2002年4月よりバーコードによる実施記録システムを,そして同年7月には,既製のソフトウェアを組み合わせることで,当院職員による低コストで使いやすい“手作り”の電子カルテシステムを開発・導入しました.

新人理学療法士へのメッセージ

「PT」として「人」として

著者: 常川幸生

ページ範囲:P.436 - P.437

 新人理学療法士の皆様,国家試験合格おめでとうございます.このメッセージを読んでいる頃は,夢と希望を抱きつつも,様々な問題に直面しながら,新しい職場でPTとしてスタートを切っていることと思います.私は今年でPT 4年目になりますが,今回,恐れ多くも「新人理学療法士へのメッセージ」を書く機会をいただきました.PTとして偉そうなことは言えませんが,これまで経験したこと,感じたことを思うがままに綴ってみました.この中から,皆様に伝わるものがあればと思います.

一人職場に勤務して

 このメッセージを読まれている方の中には,新卒で一人職場に勤務されている方もいらっしゃるのではないでしょうか? かくいう私も新卒で一人職場に飛び込んだ一人です.

より良い対応を

著者: 桒原慶太

ページ範囲:P.438 - P.439

 新しく理学療法士になられた皆様,おめでとうございます.理学療法士に対する社会ニードが高まる中,病院以外の様々な場面で活躍している方も多いと思います.中には社会経験が豊かな方も少なからずいらっしゃると思います.そう思うとたいへんおこがましいのですが,「病院」にしか勤めたことがない私が,やや狭い視点からですが,日頃思っていることを綴ります.

高度なコミュニケーション能力が必要です

 厚生労働省の国民意識調査によれば,「医療はサービス業」という認識を大部分の国民が持っているそうです.また,メディアでも医療従事者の態度や言動に対する不満が報じられることが多くなってきたと思います.それに応じるかのように,最近では多くの病院・施設でも職員を対象とした接遇研修を取り入れているようです.「患者さん」を「患者様」と呼称するのが浸透してきたのもここ数年のことと思います.しかし,現場ではどうでしょうか.患者様と友達感覚で会話をしたり,中には威圧的に接している職員をみかけませんか.

紹介

日本および大韓民国の理学療法士による国際学術交流の試み

著者: 李相潤 ,   三浦雅史 ,   桜木康広 ,   盛田寛明 ,   齋藤圭介

ページ範囲:P.441 - P.443

 近年,科学や通信方法の飛躍的な発展により,世界の情報は数え切れないほど散乱しており,さらにネット社会の到来はそれらを加速化させている.それに伴い,われわれ理学療法士にも幅広い学際的な学問が求められるようになり,医療から保健や福祉などの分野へとその活躍の場が発展してきた.

 筆者は,大韓民国(以下,韓国)の物理治療士(日本の理学療法士に相当)の免許取得後,日本の大学を卒業し,現在日本の4年制大学で理学療法教育に従事している.これまで,日本と韓国(以下,日韓)の理学療法を経験したが,日韓の理学療法における臨床での共通点と相違点を認識させられた.日韓両国は,1963年に欧米の理学療法を主な範としてスタートしており1,2),理学療法教育に大きく影響を及ぼす医療システムも,国民健康保険制度が基本的に制度化されているという共通点を持っている.しかし数年間の日本での理学療法の経験から,日韓の医療現場や社会需要などの違いにより日本は運動療法重視へ,韓国は物理療法重視へと向かってきたという印象を持った.そこで,青森県理学療法士会は,韓国水原(スウォン)市物理治療士会との学術交流を通して,両国間における理学療法の発展や理解などを目的とした国際学術交流を行った.

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文献抄録

ページ範囲:P.444 - P.444

編集後記

著者: 網元和

ページ範囲:P.450 - P.450

 小児ではなくてこどもである.本特集のテーマに使われた「こども」という言葉には,医学モデルに集約される対象としての小児(対概念は成人や老人であろうか)のもつイメージの範囲を大きく超えていると思われる.いみじくも療育という語があるように.社会と教育の視点なしには,こどものリハビリテーションあるいは理学療法は齟齬をきたすのである.

 この意味で本特集に取り上げられたそれぞれの論文は十分にこの視座を含むものとなっている.小池論文では,特に早期発見,早期療育の重要性と関連施策および地域における療育システムの概要と意義が述べられている.障害の多様化重複化を背景としてさらに進んだ療育システムについての提言が,医療モデルから生活モデルへの転換を要請しているとの指摘はよく理解できる.原論文では,脳性麻痺児の理学療法において最も注意すべき点として他動的運動に加え自発運動を準備することの重要性が強調されている.押木論文では,知的障害児の理学療法において発達過程に応じたステップが紹介されておりチームアプローチのもとでの方略が述べられている.榎・他論文では,小児整形外科的疾患の理学療法に関して特に側弯症に対するアプローチを詳細に述べていただいた.上杉論文では,小児神経疾患のうち先天性筋強直性ジストロフィー症例の症例を取り上げその理学療法の実際について述べていただいた.長期にわたる治療アプローチとその記録は多くの示唆をもたらすだろう.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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