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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル37巻5号

2003年05月発行

文献概要

ひろば

転倒予防教室について

著者: 大渕修一1

所属機関: 1(財)東京都老人総合研究所 介護予防緊急対策室

ページ範囲:P.424 - P.424

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 全国に2,200万人いる高齢者の少なくとも1割は転倒し,さらにその1割が骨折など重篤な傷害を引き起こすといわれている.股関節頸部骨折の治療には約300万円を必要とするので,乱暴な計算をすれば約6,600億円が転倒のために使われることになる.実際,平成10年度の統計では損傷などの外因により5,300億円以上の医療費が支出されている.転倒は高齢になればなるほど危険が高まることが知られており,今後の高齢化社会を考えると,この値は指数関数的に増加することは容易に想像される.

 転倒と身体機能の関係はよく知られている.体力が落ちると転びやすくなるということがほぼ定説となっている.しかし,それは本当であろうか.アメリカのTinettiら1)は転倒を経験した高齢者の約3割はなんらかの活動低下を起こすと報告している.とすると,転倒によって体力が落ちるとも考えられ,鶏卵論争ではないが,どちらがどのように影響を与えているのか因果関係がはっきりしなくては,適切な予防の方略を見つけることはできない.こうした観点からこれまでの転倒研究を精査すると,前年度の転倒経験などが主要な要因であり,その他の身体機能はそれほど明確な因果関係を持たないことがわかる.特に,この傾向は健康度の高い地域在住高齢者を対象とする場合に強い.結論として,体力が低下することによって引き起こされる転倒もあるだろうが,多くは転倒によって体力が低下すると考えられ,転倒後のフォローアップが転倒予防の鍵になることが示唆される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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