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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル37巻8号

2003年08月発行

雑誌目次

特集 脳卒中の理学療法の展開

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.637 - P.637

 脳卒中片麻痺に対するリハビリテーション,理学療法に関する最近の評価と治療法の展開は多方面にわたっている.どのような情報や方法論が有効なものか,そのトピックスについて理論と背景の整理を行うことは極めて重要である.本特集では,様々な学際的知見を援用しつつ行われてきている臨床応用,治療効果についてそれぞれの立場から論じていただいた.さらに過去の方法と比較して,どのような特徴があるのかを可能な限り具体的なデータによって示し,またその適応と限界についても検討していただいた.

脳卒中における評価と理学療法効果

著者: 潮見泰藏 ,   今井樹

ページ範囲:P.639 - P.646

 脳卒中は代表的な慢性疾患の一つであり,脳血管の障害によって急性発症し,様々な神経症状や精神症状,特に運動麻痺を中心とした重篤な後遺症をもたらす.このため,かつては半年あるいは1年もの長期にわたって入院しリハビリテーション(以下,リハ)を受けることが当然のこととされていた.しかし,近年になって,わが国では大幅な医療制度の改革が展開された結果,医療費の大幅削減に伴い在院日数の短縮化がいまや常識となっている.

 脳卒中に対するリハ医療については,最近ではクリニカル・パスによる脳卒中治療の標準化や急性期リハと回復期リハを明確に区分した脳卒中診療モデルが導入されるようになり,理学療法も時代の要請に即応した新たな実践が求められている.一方,EBPT(根拠に基づく理学療法実践)と呼ばれるように,理学療法による介入の効果を実証する必要に迫られている.こうした理学療法を取り巻く社会情勢の大きな変化の中にあって,従来の理学療法モデルはもはや時代にマッチしておらず,新たな概念に基づいた理学療法モデルを構築すべき時期を迎えているといえる.

脳卒中に対するスリングセラピー

著者: 山中善詞

ページ範囲:P.647 - P.653

 脳卒中に対するスリングセラピーは種々考えられる.個別治療では,試売されているNordisk Slingが理学療法ハンドブックなどに詳しく記載があるが1,2),主には腰痛を主あとする整形疾患を対象に記載されている.

 今回は脳卒中患者用に主として使われるバランスハンガー(スリングハンガー)について紹介し,概要やその方法論,使い方を述べる.当院では一部個別治療,主に外来集団治療に用いている.麻痺した上下肢をセラピストや家族が抱えて運動介助するには4.5~10kg以上の介助負担がかかる.そのため,スリングで吊るすことは家族との自主練習においても負担を軽減することになる.家族にもできて簡単な操作で行えることが重要である.

脳卒中に対する体力科学的評価とトレーニング

著者: 山田純生 ,   森尾裕志 ,   小林亨 ,   竹谷晋二 ,   平野康之

ページ範囲:P.654 - P.660

 本稿は標題とした「脳卒中に対する体力科学的評価とトレーニング」が示すように,脳卒中に対し,体力科学的方法論に基づく評価とトレーニングならびにその際の配慮点を明確にすることで,臨床における脳卒中運動療法に新しい視点を提供しようとするものである.これは何も特別な方法論を意味するものではなく,これまで蓄積されてきた体力科学の知識・方法論を忠実に脳卒中のトレーニングに適応しようとするものであるが,唯一留意すべき点は,健常人と異なる脳卒中の疾患特異性への配慮である.詳細は後述するが,おそらく機能障害の改善を目的とする運動療法の治療標的には疾患ごとに大きな違いはなく,いくつかの項目に要約され得ると思う.にもかかわらず各疾患における臨床が方法論的に著しく異なる様相を呈しているのは,運動療法の遂行に疾患特異的留意点があるからではないかと思う.もしそうだとすると,われわれが整理すべきはその疾患特異的留意点が何かということになる.本稿に紹介するいくつかの新しいデータは,このような考え方から生まれたものである.

 さて,体力科学的評価・トレーニングは改善標的をフィットネスの向上に設定し,その改善を目指すアプローチと思ってよい.したがって“介入標的となる機能障害”とは,フィットネスの構成要素である,心肺持久力,柔軟性,筋力,身体バランス,の4者がその代表的なものとなる.ちなみに,米国理学療法士協会ではこれに身体構造と身体組成を入れた6項目をフィットネス評価項目としている1).身体構造とは文字どおり身体の骨性支持構造であり,整形外科的障害までも包含する新しいフィットネス概念として実に理学療法士らしい視点と思う.これらの項目の中で,本稿では筆者らがこれまで行ってきた主として脳卒中の筋力,心肺持久力についての疾患特異的評価を紹介しながら,その測定意義ならびにトレーニング上の留意点について考えてみたいと思う.

摩擦制動継手付短下肢装具の臨床応用

著者: 岩崎健次 ,   崔賢姫 ,   下浜幸代 ,   矢野光秋 ,   亀田英俊

ページ範囲:P.661 - P.666

 脳卒中や頭部外傷による片麻痺者は,労せずに歩いていたという事実と動作の記憶を有する.歩行に対する多様な価値観を認める理学療法士を片麻痺者の運動の質へと向かわせる1)背景には,片麻痺者本人の歩行に対する強い要望がある.

 短下肢装具(ankle-foot orthosis;以下AFO)は片麻痺者の価値観によっては歩行機能を向上する有用な道具である.歩行におけるAFOの目的は下肢機能の改善または代行である2).AFOの機構上,足関節の3次元の運動を制御することは難しく,一方向制御のために他の方向の運動を犠牲にすることが多い3)

脳卒中に対する治療的電気刺激

著者: 加茂野有徳 ,   村岡慶裕

ページ範囲:P.667 - P.674

治療的電気刺激とは

 脳卒中片麻痺に対する電気刺激療法は,古くから物理療法の一環として他の理学療法と併用して行われてきた1).電気刺激療法には,大きく分けて,機能的電気刺激(functional electrical stimulation;FES),治療的電気刺激(therapeutic electrical stimulation;TES),経皮電気的神経刺激(transcutaneous electrical nerve stimula-tion:TENS)などがある.FESは,低周波の電気刺激を用いて主に中枢神経障害の患者の上・下肢の運動機能(立位,歩行,把持など)や排尿機能を再建し,電気刺激使用時において患者の基本動作能力の回復を目指すものである2,3).それに対し,TESはFESと同様の低周波の電気刺激を用いるが,電気刺激を継続的に与えて筋萎縮の予防改善,筋力増強,痙性の抑制,運動の随意性向上などを図ることがその目的となる.TENSは高周波の電気刺激により鎮痛効果を図る目的で行われることが多い4)

 本稿では,脳卒中片麻痺に対するTESについて,臨床での処方およびその効果について概説するとともに,当センターにおいてわれわれの開発した新しい電気刺激法についても述べ,その効果について歩行時の使用を中心に考察する.

脳卒中に対する経頭蓋磁気刺激

著者: 出江紳一

ページ範囲:P.675 - P.682

 脳卒中片麻痺は,早期の完全治癒例を除いて回復に限界があり,回復の大部分は半年以内に生じる1).これまでの治療方法として,神経筋促通手技2,3),筋電バイオフィードバック療法4),非麻痺側上肢の拘束療法5,6),動筋の電気刺激7)などが報告されている.神経筋促通手技は,通常の運動療法との差は証明されていない2,3).筋電バイオフィードバック療法や非麻痺側上肢の拘束療法を適用するにはある程度の随意運動が必要がある6,7).また動筋の電気刺激では,目標運動が刺激される末梢神経の支配筋群の作用に依存する.例えば橈骨神経を前腕で刺激すると,手関節と中手指節関節の伸展が生じるが,腱固定様作用により近位・遠位指節間関節は屈曲する.また母指は水平外転する.これでは把持準備動作としての機能的な手指伸展動作とは言い難い.以上のことから,慢性期において随意性の回復していない動作を新たに再建する治療法が望まれる.

 経頭蓋磁気刺激(TMS:transcranial magnetic stimulation)は誘導電流により脳を経皮的に興奮させる,いわばelectrodeless electrical stimulationである.一次運動野の刺激による骨格筋の興奮は,運動誘発電位(MEP:motor evoked potential)として記録される.Barkerら8)による最初の報告以来,TMSはその簡便性と「非侵襲性」から,主に運動機能系の基礎的研究と運動障害の診断・評価に広く用いられてきた.近年反復TMSによる中枢神経興奮,あるいは抑制の治療効果が注目されるようになり,うつ病9),パーキンソン病10),脊髄小脳変性症11),書痙12,13),てんかん14)などへの応用が研究されている.

とびら

あるアンケート調査を読んで

著者: 久保田健二

ページ範囲:P.635 - P.635

 最近「患者様から見た理学療法士」というテーマの報告を目にする機会があった.理学療法を受ける立場にある患者さんは理学療法・理学療法士にどのくらい満足しているかを知ることを目的に行われたアンケート調査であった.結果は,理学療法士の治療技術や接遇に関しておおむね満足しているという解答が多かった.アンケート調査であるため,本当に率直な意見を記載されているかという疑問はぬぐいきれないが,われわれにとっては喜ばしいことである.

 ただ,「やや不満」「不満」の解答も存在していた.その中で少し気になったことは,「説明」に関する不満が少なからず存在したことである.「インフォームドコンセント」が言われるようになってかなりの時間が経過し,社会全体にも浸透している.また,個別療法であれば20分間も(?)マンツーマンで治療を行っている.しかしながら,その一方で,理学療法を行ううえでその内容や具体的な方法,経過や身体の変化に関する説明が不十分であると感じている患者さんが存在している.

1ページ講座 理学療法用語~正しい意味がわかりますか?

注意障害

著者: 網本和

ページ範囲:P.683 - P.683

1.注意とは

 注意という言葉自体は,極めて一般的なものである.「夜道に注意する」「風邪を引かないよう注意する」「歩きタバコをやめるよう注意する」など,留意,配慮,叱責の意味で日常生活において当然のように頻回に用いられている.このことが後述する注意障害の示す医学的,臨床的意味を修飾しその全容を捉えることの困難をもたらしているのである.

 ここで俎上にあげようとする「注意」とは,生理学的には「脳が環境のある一面に集中するために,外来の感覚情報をふるいにかける選択の過程」である.さらに「意識の焦点をあわせて集中することが本質であり,あることを効果的に処理するためにほかのいくつかのことから手を引くこと」であるとされている1).したがってこのような生理学的意味における障害が,注意障害であると考えられる.

学校探検隊

加賀百万石だより

著者: 洲﨑俊男 ,   白田紀子

ページ範囲:P.684 - P.685

大学の概要

 金沢大学医学部保健学科は平成7年10月,国立4年制大学としては全国で3番目に開設された.看護学,放射線技術科学,検査技術科学,理学療法学,作業療法学の5つの専攻を有し,1学年200名の国内最大規模の保健学科となった.さらに平成12年に大学院修士課程,14年に同博士課程を設置し,国内有数の総合的理学療法学教育機関となった.その前身は昭和54年4月(養成校として17番目に設立)に3年制短期大学として文部省が初めて設置した,いまや伝統を持つ学校の一つである.

大学の周辺環境と金沢気質

 学舎は,金沢市中心部を流れる犀川と浅ノ川の間に位置する市内東部の小立野台鶴間地区にある.かつて金沢大学は「城の中にある大学」として全国的に有名であった.現在は,城内にあった学部などの組織は市内東北部丘陵地帯の角間地区に総合移転(ただし最終的に医学部のみ小立野台に残る)したため,教養的科目を履修する1,2年次の学生には角間と鶴間キャンパスとの往復はかなりの不便さをもたらしている.

理学療法の現場から

日々の仕事の場にて

著者: 小林暁美

ページ範囲:P.686 - P.686

 理学療法士として働いて30年近くたつ.この間いくつかの病院での勤務を経験し,現在は地方の50床の個人病院で働いて3年が経過する.医療制度が変わる中,病院の存続をかけて療養型病床を増築し(一般病棟を含めて50床),1単位の通所リハビリテーションを実施している.もともとは外科の病院であったとのことだが,昔から地域の開業医として近辺の人達に利用されており,入院・外来ともに高齢者が多い.

 病院の機能分化により,急性期の医療と慢性期の医療の場が分かれ,地域での病院の役割がおのずと決まった.急性期を診ている病院は,患者さんの状態が落ち着くと一般病院への入院を進めるので,筆者が勤めているような小さな病院へと転院してくる患者さんが多い.特に以前からかかりつけていた病院ということや家族の希望もあって入院する人達が多くなる.これらの患者さんは,病状は重篤な状態を脱しているが,後遺症が残り以前のように生活ができなくなった状態で,特に障害が重度の人達である.さて,当院に転院された患者さんのうち,特にリハビリテーションが必要な方達とお会いして驚くことが多い.それは,急性期に入院していた病院で,病状や予後などの説明がしっかりとなされておらず,本人・家族が理解をしていないことが多いのである.医師は当然説明したと思われるが,本人・家族の理解を得るまでには至っていなかったのであろう.また家族にとっては,退院させられるので「大変だ」という気持ちのほうが先で,まずは次の入院先探しに奔走するのであろう.このような場合,次の病院ではまた初めから説明をすることになるのである.患者さんが一番初めにかかる病院では,その病気・病状・予後などの説明および今後利用できる社会資源を相手が理解できるように伝えてほしいものである.

講座 実践・人事評価・2

目的別人事評価が企業目標との一体性をつくる

著者: 松田憲二

ページ範囲:P.687 - P.693

目的別人事評価を構築する

1.目的別人事評価と総合的人事評価の違い

 人事評価は,業績評価・能力評価・意欲態度評価の3つの評価項目によって構成されるが,その使い方によって目的が異なる.規模の小さな中小企業では,一般的に総合的人事評価を行っているところが多い.

 「総合的人事評価」とは,業績評価と能力評価と意欲態度評価を,年2回の賞与評価と年1回の昇給(昇格)評価に使用することをいう.つまり,夏の賞与評価と冬の賞与評価の各々の評価結果を加えて2で除した結果を,昇給(昇格)評価として使用する.こうすると結果的には,賞与評価の2回だけで済ますことができることや評価者の理解が比較的得やすいというメリットがある.

入門講座 活動向上に生かす動作分析➋

脳血管障害患者の動作分析

著者: 荒木茂

ページ範囲:P.694 - P.700

 脳血管障害患者の評価において,動作分析は非常に重要とされている.しかし,動作分析方法や基準については明確なものがなく,セラピストの経験に基づいた観察力によって行われることが多い.動作分析は,3次元解析装置など測定機器を用いた方法,チェックリストを用いた方法,観察を記述式に書く方法があるが,最近の傾向を見ると,動作の質的評価が重要であるとのことで,観察を記述式に書く方法が好まれているようである.これらの方法はそれぞれ一長一短であり,動作の質的な評価を重要視するあまり,客観性,定量性が損なわれる危険がある.もともと動作の質的評価を行うにはかなりの経験と修行が必要であり,相当な眼力と文章表現力が必要である.

 臨床において実習生や若い理学療法士が最も苦しむのはこの動作分析ではないだろうか.

プログレス

運動学習と大脳半球機能

著者: 清水忍

ページ範囲:P.701 - P.703

 われわれ理学療法士が目標としているのは,対象者の運動技能や行為の(再)獲得であり,運動学習そのものと捉えられる.学習に関する研究は,主に心理学分野を中心に行動研究によって行われてきたが,脳の内部でどのような変化が生じているかについてはほとんど不明確のままであった.しかし,近年の神経科学の進歩に伴い,運動学習によって生じる脳内変化が解明されるにつれ,脳損傷後のリハビリテーション,すなわち,運動や行為の再学習による運動能力の向上と脳の再構成との関係が少しずつ明らかになってきている.そこで,本稿では,最近の研究をもとに運動学習やリハビリテーションと大脳半球機能との関係を中心に述べる.

運動学習における脳内変化

 学習や記憶が成立する背景には神経学的な変化があり,その基礎は神経細胞間の接合部分であるシナプスの可塑性によって生じると考えられている1).このシナプスの可塑性は,シナプス前末端から出る伝達物質の量の増加,シナプス後膜にある受容体数の増加やその感受性の増加,樹状突起の形態的な変化など(図)によってシナプス効率が変化して生じることが知られている2,3).運動の学習や記憶の基礎を成すと考えられている運動皮質ニューロンの長期増強(LTP4)はその代表的な例と思われる.

初めての学会発表

充実した3日間

著者: 糸数健

ページ範囲:P.704 - P.705

 2003年5月22日~24日の3日間にわたり,「科学的根拠に基づく理学療法」のテーマのもと第38回日本理学療法学術大会が長野県で開催されました.今回の大会は私にとって学会発表デビューの場となり,充実した3日間となりました.ここでは発表に至る経緯や,学術大会に参加した感想を記します.

 私は北里大学を卒業し,神奈川県の大和市立病院に勤めて2年目ですが,今回の発表は学生の頃に行った卒業研究がきっかけとなっています.臨床実習を終えたばかりの私は,「日常の理学療法室で行われている数多くの治療技術は本当に効果があるのかな」という素朴な疑問をもっていました.特にバランス機能向上を目的に感覚入力を強化するトレーニングの効果に関しては,過去の先行研究において実験装置の問題で評価方法が一定しておらず,それが多くの場合転倒予防に効果があるとしている一方で,実際の転倒を評価したものがほとんどないということに気づきました.

雑誌レビュー

“Physical Therapy”2002年度版まとめ

著者: 永谷典子 ,   鈴木克彦 ,   南澤忠儀 ,   赤塚清矢 ,   伊橋光二

ページ範囲:P.709 - P.714

 “Physical Therapy”2002年82巻は,表に示す72編の論文が掲載された.近年根拠に基づく医学(EBM)の確立に力が注がれてきているが,今年度はさらにCase Reports(症例報告)の割合も全体の18%と増加しており,臨床に関連した研究の重要性が再確認され,また理学療法の領域,対象者の拡大を示唆するものと考えられる.

 本稿では,Research Reports 24編について,運動療法,運動学,測定・評価,倫理・労務管理,教育・患者教育に分類し要旨を紹介する.またCase Reportsのうち日本では理学療法の経験が少なく興味深い論文のうち5編を選び概略を紹介する.

報告

肩関節周囲炎患者の立位姿勢と足部形態・足圧分布に関しての一考察

著者: 岡部敏幸 ,   川合旬美 ,   和田寿実子 ,   水谷久美 ,   秋山武彦 ,   甲賀英敏

ページ範囲:P.715 - P.718

 足部は身体で唯一地と接触している部位である.したがって,足部は身体アライメントの状態を表出しやすい部位ともいえる.足部の機能障害は身体のアライメントを崩し,全身の機能障害へと波及することが考えられる.われわれは第33回日本理学療法士学会において,肩関節周囲炎患者は肩関節の関節可動域(以下,ROM)制限のみならず,罹病側足部のROMも減少していたことを報告した1)

 今回,追跡調査として肩関節周囲炎患者の立位姿勢と足部形態・足圧分布を調べ,肩と足部との連結,姿勢との関連を探究した.

資料

第38回理学療法士・作業療法士国家試験問題 模範解答と解説・Ⅱ 理学療法(2)

著者: 丸山仁司 ,   藤沢しげ子 ,   秋山純和 ,   潮見泰藏 ,   久保晃 ,   斉藤昭彦 ,   谷浩明 ,   藤井菜穂子 ,   金子純一朗 ,   石井博之 ,   中口和彦 ,   倉本アフジャ 亜美 ,   西田裕介 ,   島本隆司 ,   前田修 ,   福田真人

ページ範囲:P.719 - P.726

書評

―内山 靖・臼田 滋・潮見泰藏 編集―「神経系理学療法実践マニュアル」

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.706 - P.706

 日々の臨床場面で理学療法の対象となる神経系疾患・障害は多岐にわたる.よって,理学療法士がこの領域を究めることは極めて重要なことである.

 これまで,理学療法士によって神経系理学療法に関連した著書はいくらか出版されている.しかし,医学領域でたびたび活用され,人気のある文光堂の編集手法である「実践マニュアル形式」を理学療法領域に適用した著書としては,本書がはじめてである.

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文献抄録

ページ範囲:P.728 - P.729

編集後記

著者: 網本和

ページ範囲:P.734 - P.734

 理学療法の対象領域の多様化が指摘されて長い時間が過ぎた.様々な障害,疾病が対象領域として認知され,それらに対する治療アプローチも多彩になってきている.しかし日々の臨床の中での脳卒中例に対する理学療法の重要性は,このような領域の多様化においてもとりわけ強調されえるだろう.その一方で,主要な疾病であるがゆえにパターン化した治療に陥る危険がないとはいえない.常に斬新な変革が求められる所以である.

 そこで本特集では「脳卒中の理学療法の展開」と題して,新しい展開がいくつかの異なった立場から論じられている.まず潮見論文では「評価と理学療法効果」に関して理学療法モデルの再検討がなされている.このなかで特に評価モデルの検討において,脳卒中の標準的な帰結測定指標の全国調査では,国際的に使用されている指標がわが国ではほとんど使われていない,という衝撃的な指摘がなされている.科学的根拠に基づく理学療法を確立するためには「隗よりはじめよ」ではないが,足元の地道な評価から開始すべきであると痛感する.山中論文ではスリングセラピーの極めて臨床的な適用法が紹介されている.環境適応とフィードバックについて示唆に富む論文となっている.山田論文は,「体力科学的」という新しい方法論について,測定機器,筋力,移動自立度,フィットネストレーニングの点から論じられている.運動麻痺が比較的重度な症例の患側脚筋力の測定意義はこれまで報告されていない分野であり興味深い提言がなされている.岩崎論文では,「ドリームブレース」の特性と適応と効果について症例を例示して解説されている.さらなる臨床応用が期待できると思われる.加茂野論文では,新開発された治療的電気刺激である筋電制御型電気刺激システムの紹介とその効果に関する検証が報告されており,筋活動パターンの変化をもたらすという.出江論文では,脳の非侵襲的刺激法である,経頭蓋磁気刺激の基本的特性と片麻痺治療の背景について解説されている.この領域の著しい進歩を実感するに違いない.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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