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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル37巻8号

2003年08月発行

文献概要

特集 脳卒中の理学療法の展開

脳卒中に対する経頭蓋磁気刺激

著者: 出江紳一1

所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科肢体不自由学分野

ページ範囲:P.675 - P.682

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 脳卒中片麻痺は,早期の完全治癒例を除いて回復に限界があり,回復の大部分は半年以内に生じる1).これまでの治療方法として,神経筋促通手技2,3),筋電バイオフィードバック療法4),非麻痺側上肢の拘束療法5,6),動筋の電気刺激7)などが報告されている.神経筋促通手技は,通常の運動療法との差は証明されていない2,3).筋電バイオフィードバック療法や非麻痺側上肢の拘束療法を適用するにはある程度の随意運動が必要がある6,7).また動筋の電気刺激では,目標運動が刺激される末梢神経の支配筋群の作用に依存する.例えば橈骨神経を前腕で刺激すると,手関節と中手指節関節の伸展が生じるが,腱固定様作用により近位・遠位指節間関節は屈曲する.また母指は水平外転する.これでは把持準備動作としての機能的な手指伸展動作とは言い難い.以上のことから,慢性期において随意性の回復していない動作を新たに再建する治療法が望まれる.

 経頭蓋磁気刺激(TMS:transcranial magnetic stimulation)は誘導電流により脳を経皮的に興奮させる,いわばelectrodeless electrical stimulationである.一次運動野の刺激による骨格筋の興奮は,運動誘発電位(MEP:motor evoked potential)として記録される.Barkerら8)による最初の報告以来,TMSはその簡便性と「非侵襲性」から,主に運動機能系の基礎的研究と運動障害の診断・評価に広く用いられてきた.近年反復TMSによる中枢神経興奮,あるいは抑制の治療効果が注目されるようになり,うつ病9),パーキンソン病10),脊髄小脳変性症11),書痙12,13),てんかん14)などへの応用が研究されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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