特集 早期理学療法
不全脊髄損傷の早期理学療法―クリニカルパスを用いたアプローチおよび特徴的上肢機能障害・歩行獲得の取り組み
著者:
江口雅之1
原田康隆1
長谷川隆史1
山崎卓也1
山中武彦1
田中宏太佳1
所属機関:
1中部労災病院リハビリテーション診療科
ページ範囲:P.751 - P.760
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脊髄損傷のリハビリテーションアプローチ(以下,リハアプローチ)は,可及的速やかに行われることが必要不可欠とされる.受傷後早期に適切なリハアプローチを受けることが,機能的予後に大きく影響するとした研究が以前から報告されている1,2).脊髄損傷のリハアプローチとして,完全損傷においては定型的アプローチ3)が体系化されている.しかし,不全損傷においては,受傷時の脊髄横断的損傷の程度により症状が多岐にわたるため,定型的アプローチを確立することは困難を極め,いまだ体系化されていないのが現状である.この理由の一つとしては,高齢化が進むわが国の社会背景のなかで,高齢者が不全頸髄損傷(以下,不全頸損)の障害群に占める割合が増加していることがあげられる4).高齢患者の場合,受傷前から医学的管理の必要な既往症を併せ持つことが多いと予想され5,6),より症状を複雑にしていることがうかがえる.
本稿では不全頸損の中でも,比較的臨床で遭遇することが多く,下肢の機能的予後が良好で歩行獲得の可能性が高い中心性損傷について,当院での早期リハアプローチを,特徴的上肢機能障害や歩行獲得に向けた取り組みを中心に述べ,またリハチームのあり方についても概説する.