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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル38巻1号

2004年01月発行

文献概要

講座 患者(家族)対応・1

医療提供者-患者(家族)関係とその対応における基本原則

著者: 久保田まり1

所属機関: 1昭和大学保健医療学部作業療法学科

ページ範囲:P.63 - P.68

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患者の心理的葛藤の理解

1.対象喪失における悲嘆

 精神分析における「対象喪失」とは,自分にとって重要な他者の喪失や,慣れ親しんだ環境や社会的役割の喪失,精神的な拠り所や価値観,自己の所有物を失うことに加えて,病気や事故などによる身体的喪失,身体機能の喪失,身体的自己像の損傷などをも意味する1).そして,このような対象喪失に伴う悲哀の心理的過程は「悲哀の仕事」と呼ばれる.ある一定の時間とエネルギーを費やしつつ,失った対象に対する思慕やとらわれの情から少しずつ現実を受け入れ心の整理をしていくこの過程は,心理・社会的再適応の過程でもある.ところで,理学療法の対象は,身体の一部やその機能を失った患者であり基本的動作能力の回復を図ることを目的としているが,彼らは正に身体的な「対象喪失」による悲哀の渦中にあり,身体的リハビリテーション(以下,リハ)に費やされる時間は,同時に「悲哀の仕事」という心理的再適応の過程にも費やされるのである.

2.リハの過程における患者の心理

 身体の一部や機能の喪失は,家庭や職場での社会的役割の喪失,これまでのなじみの生活スタイルや余暇の楽しみ,社会的地位などの喪失に及び,人生の目標や価値観をも失う結果となる.深刻な喪失体験による患者の心理的変化は,身体面でのリハの過程にも多大な影響を及ぼす.以下では,このような状況下での患者の心理特性について述べる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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