雑誌レビュー
“Physiotherapy Canada”(2003年版)まとめ
著者:
中山恭秀
,
臼井友一
,
長谷川光久
,
石田久美子
,
斎藤由美子
,
大津陽子
,
川井謙太朗
,
村田千恵
,
小倉理枝
,
木山厚
ページ範囲:P.871 - P.877
“Physiotherapy Canada”は,カナダ理学療法士協会(Canada Physiotherapy Association;CPA)が発行している雑誌である.今年で55巻を数える歴史のある雑誌で,年4回発行されている.理学療法士に開業権が認められているカナダを思わせる多岐にわたったテーマによる研究報告がなされている.日本でもガイドラインやEBMに関して検討が多く見られるようになったが,カナダでもそれまでの先駆的な研究報告をもとにして後方視的に検討されている.2003年版4誌に収録されている19論文を,7つの専門領域に分類して誌面の許すかぎり紹介したい.
基礎系(6編)
○P4の構築と関連妥当性:自己評価式痛み強度測定法の検討
Spadoni GF, et al:Development and Cross-validation of the P4:A Self-Report Pain Intensity Measure:32-40
理学療法士は,痛みの評価の際にしばしばNPRS(numeric pain rating scale)を用いる.NPRSは0~10の11段階で患者が評価するものであり,測定の性質はVAS(visual analog scale)と比べて等しいもしくはそれ以上に効果的であるとされている.これまでに,NPRSの誤差は約27%であったことを見出しているが,多くの機能評価法の誤差が10~20%であることに比べると高い.この研究は,新しく疼痛の評価方法(P4)を提案することを目的とする.質問のアイテムを55人の理学療法士,7人の医師,2名の大学教授に調査・検討し,選ばれたアイテムの尺度を検討した結果,シングルアイテムとして用いられるNPRSを利用することなった.そして最終的に評価方法の整理を行い,朝,昼,夕方,活動時の痛みというアイテムを選択し,この代表値をP4値とした.オンタリオにある5つの外来理学療法部門において診療を受けている106人の患者を対象に,シングルアイテムとしてのNPRSの測定に加えて測定した.結果,P4値はNPRSとの相関が見られた.また,99名の患者で再現性などを確認し,高い信頼性が得られた.これにより,P4はNPRSよりもより詳細な情報を得ることができ,さらに高い再現性も得ることができた.この結果は,痛みの変化を見るためには熟練を要するということを示唆している.(川井)