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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル38巻10号

2004年10月発行

文献概要

特集 診療報酬

リハビリテーション関連の診療報酬の課題と展望

著者: 石田暉1

所属機関: 1東海大学医学部リハビリテーション学

ページ範囲:P.811 - P.819

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 高齢少子化の進展や医療技術の進歩に伴う医療費の増加に対し,報酬面での対応は年々厳しさを増し,財務省および官邸サイドの「何が何でも医療費を抑制したい」という方針の前に「GDP比で見たら欧米より低く,1桁にとどまっている」「WHOの平均寿命,健康寿命などあらゆる指標で世界最高レベルの医療が提供されており,このレベルを維持するべきである」などの訴えは空しく打ち消されようとしている.今後も高齢者の増加による避けられない医療費の増加に対し,現状維持あるいは削減が打ち出される中で,新しい分野として幅広い適応の拡大を進めていかなければならないリハビリテーション(以下,リハビリ)医療にとって否が応でも厳しい現実を知らされている.筆者らは,平成14年の診療報酬改定後に厚生労働省および日本医師会に出向き,「単位制の導入ほかでリハビリの現場は20%以上の減収に陥ったところもある」との抗議を行ったが,それに対し「1分あたりの単価はなるほど下がったが,総件数の増加により結果的にリハビリは数十億の増加ですよ」との反論が帰ってきた.リハビリ医療は欧米と比べまだまだ未発達の分野が多く,今後飛躍的な発展が求められるリハビリ医療を一定の財源の再配分の枠の中に押しとどめていいのかの疑問が残る.平成14年および16年の診療報酬改定に直接かかわった者として以下に私見と展望を述べたいと思う.

単位性の導入

 前回の改定で「1日1人の療法士あたり個別療法の上限を18単位とする」という内容は様々な問題点を生み出した.単純に直接治療時間が8時間から6時間になることで,ぎりぎりのスタッフの数で行っている施設では2時間分の治療対象患者をどうするかが現実のものとなった.その対応策として,1)患者の総数を減らす,2)診療報酬を請求しないで治療を継続する(いわゆるサービス治療),3)スタッフの増員をする,などが考えられる.1)に対しては外来患者を中心に治療中断をしたり,回数を減少させたりする.2)に対しては,残業を増やしての対応を行う.3)は一部の私立病院では可能であったが,公的病院では増員にはつながらないばかりか増員計画を白紙に戻す施設も多かったと聞いている.カルテの記入やカンファレンスの参加や移動時間などのいわゆる間接時間が「果たして2時間必要か」という疑問が改定後湧き上がり,間接時間は1日平均1時間で済み,残り1時間は治療に振り当てられるとの調査結果を得た.その後関連団体と話し合い1日上限21単位という要望を直後に厚生労働省に持って行き,良好な感触を得た.しかし,先に示した財源論から,単位を増やしてももし単価が18/21になれば結果的に同じで,また療法士増員に抑制がかかるのではとの配慮から,単純な単位増加の要求は急速にしぼんでいった.一方,米国のリハビリにおける「3時間ルール」やわれわれの調査で,「脳卒中を中心に現在の治療時間が短く不十分で,治療時間をより長くすることでリハビリの効果が上がる」との結論を得て1),1人の患者の1日の治療時間を現在の2時間から最大3時間にする(すなわち9単位)という要求を加えることになった.残念ながら今回の改定では1日あたりの療法士および各患者の単位数の増加は認められなかったが,今後行われるであろう公のtime studyの中で直接時間と間接時間の割合が明らかになり,妥当な単位数が示されるものと思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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