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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル38巻12号

2004年12月発行

文献概要

講座 実践「臨床疫学」・4

下肢関節傷害に対する理学療法―膝関節靱帯・半月板損傷の理学療法

著者: 高柳清美1 細田昌孝2

所属機関: 1埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科 2東京都立保健科学大学保健科学部理学療法学科

ページ範囲:P.1051 - P.1060

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 本講座の目的は,根拠に基づく理学療法確立のためのシステマティック・レビューと実際の症例への適応について解説することである.本稿では,下肢関節傷害のなかで特に膝関節靱帯損傷〔内側側副靱帯(以下MCL)損傷,前十字靱帯(以下ACL)損傷〕に対する理学療法を中心に概説し,これに沿った靱帯損傷の治療法を紹介する.

ACL,MCLおよび半月板損傷に対する理学療法介入の効果

 The Cochrane Libraryにおいて,ACL,MCLおよび半月板損傷のリハビリテーションにおける理学療法士指導のプログラムおよび介入についてシステマティック・レビューを行っている.データはMEDLINE(1966年~1999年8月),EMBASE(1980年~1997年2月),CINAHL(1982年~1999年4月),CURRENT CONTENTS(1999年まで),The Cochrane Musculoskeletal Injuries Group's spe-cialized register(2001年6月まで)より検索し,方法論の質を11項目(22点~0点)で評価している(表1).レビューした99の論文中,評価基準に合致した論文は,ACL損傷が18,MCL損傷が9,半月板損傷が2,軟部組織損傷が2の計31論文であった.これらの論文の方法論を評価した結果は表2のようになり,平均および標準偏差は9.8±4.5点(18~1点)であった.C,E,Fの評価が低く,二重盲検法による比較研究が少なかったことが伺える.ACL,MCLおよび半月板損傷における理学療法の開始時期や方法は整形外科的処置法の改良や進歩に影響され,次々と報告された運動学的,力学的基礎研究の結果によっても左右され変更されてきた.特にACL損傷の観血的治療法は多くの手術法が考案され,今では用いられなくなった方法も少なくない.関節の可動性,筋力は合併症,疼痛,安静期間や手術侵襲の大きさに深くかかわり,機能的予後にも影響を及ぼす.下肢関節の傷害に対するリハビリテーションの効果は整形外科的処置と理学療法介入の相乗・相和されたものとしてみる必要がある.そこで,The Cochrane Libraryの報告と評価基準(表1)をもとに,最近の研究論文を加えて,1994年から2004年8月までの10年間の研究論文を中心にシステマティック・レビューを行った.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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