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脳卒中後の筋痙縮患者におけるAshworthスケールとα運動ニューロンの興奮性との関係
著者: 瀧昌也1
所属機関: 1藤田保健衛生大学病院リハビリテーション部
ページ範囲:P.150 - P.150
文献購入ページに移動Modified Ashworth Scale(MAS)は,研究や臨床場面において,筋痙縮の評価として最も広く使用されているが,その評価には限界がある.上位運動ニューロン病変患者の筋緊張亢進は,痙縮やthixotropy,筋粘弾性の変化などから生じる.しかし,MASは筋緊張亢進のこれらの構成要素を区別することはできない.また,MASは他動的なストレッチによる抵抗感と認められた角度からなり検査者の主観的な印象に依存する.本研究の目的は,MASが客観的な神経生理学的試験(H反射)と相互関係が存在するかどうかを証明することである.対象は,初回発症,少なくとも6か月経過した成人片麻痺患者であった.他動的な筋ストレッチの抵抗は背臥位にて麻痺側足関節を評価した.すべての検査は1人の検査者によって行われた.H反射はHmax:Mmax比,H反射潜時で評価された.25名の片麻痺患者の内,MASスコア1が14名(Aグループ),スコア2が10名(Bグループ)であった.1名がスコア3であったため除外とした.発症後期間は,Aグループ17.2か月,Bグループ10.2か月であった.H反射潜時平均値は,Aグループ平均33.2ms,Bグループ平均34.5msであり,グループ間には有意な差は認められなかった.Hmax:Mmax比は,Aグループ平均0.55,Bグループ平均0.58であり,グループ間において有意な差は認められなかった.Hmax:Mmax比は,両グループ間には有意差が認められず,スコア1よりスコア2グループ患者のほうが高い値を示した.Hmax:Mmax比とMASの間にはわずかな相互関係を示した.このわずかな相互関係は,MAS自体の問題に起因するかもしれない.それは,このスケールは他動的な筋ストレッチの抵抗で評価されるため,検査者の主観的な判断に依存するからである.
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