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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル38巻3号

2004年03月発行

雑誌目次

特集 物理療法の鎮痛作用

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.157 - P.157

 技術革新に伴う物理療法機器の開発は目覚しく,低廉で多機能を有する家庭用の低周波機器から医療現場の最先端のレーザー治療器など,疼痛緩和を主目的とした物理療法機器が用いられている.特に近年,物理療法による鎮痛効果,創傷治癒などに関する基礎実験,臨床データの集積がなされ,その作用機序についても追究されている.

 そこで今回,物理療法による鎮痛および創傷治癒の作用機序を中心に,極超短波治療,低出力レーザー治療,超音波治療,中周波電気治療などの最新情報を提示し,臨床にフィードバックできる特集企画とした.

極超短波治療の鎮痛作用と環境に及ぼす影響―電波防護指針とEMC法制化による物理療法機器への影響について

著者: 岡崎大資 ,   川村博文 ,   辻下守弘 ,   甲田宗嗣 ,   鶴見隆正

ページ範囲:P.159 - P.166

電子機器の電磁波と健康と物理療法

 近年,携帯電話やコンピュータなどによるIT技術の躍進と急激な普及に伴い,日常生活においてわれわれは日本国内の,さらには世界中の膨大な情報を瞬時にして入手することができ,また送受信を行うことが可能となった.この情報のやり取りには人間の感覚によって知覚することのできない「電波」が深く関与している.これらの電波は人体に非常に近い位置で人工電磁場環境を形成しており,近年われわれは日常生活で人工電磁場環境に曝される機会が増加してきた.

 また,われわれは物理療法場面における温熱療法の一つとして,エネルギー変換熱を用いた極超短波治療器や超短波治療器を簡易にかつ効果的に用いることが可能であり,それらはその温熱効果に伴う鎮痛作用や種々の適応などから高頻度に使用されている.これらの機器もまた,人体を人工電磁場環境に曝すことによって効果的に温熱刺激,鎮痛作用を得ることができるというものである.われわれは,これらの機器を使用する際に少し視点を広げ考慮しなければならないこととして,極超短波治療器や超短波治療器の温熱効果のみに注目するのではなく,それら機器の近傍では機器を治療目的に使用する対象者以外の環境においても少なからず漏洩した電磁波によって電磁場環境が形成されていることを理解し,その存在を無視してはならないということがある.

低出力レーザー治療の鎮痛メカニズムと臨床応用

著者: 杉元雅晴 ,   出口清喜

ページ範囲:P.167 - P.176

 Plogが1973年にヘリウムネオンレーザーによる神経刺激を提唱し,疼痛治療が1979年から開始された.本邦でも大城が1980年に胸部の赤アザ(血管腫)に対してアルゴンレーザーで治療し,同部位に合併していた肋間神経痛も緩和させた.この経験を通じて疼痛緩解器の開発に着手し,小型の半導体レーザー治療器を開発した.白戸,大城ら1)により3,635名に及ぶ治療効果が報告された.

 急性疼痛は傷害から組織を守るために発せられる生体の警告信号であり,必要不可欠な反応である.それゆえ,組織の損傷時に生じる疼痛は正常な反応である.ところが,組織損傷が治癒しているにもかかわらず疼痛を生じることがあり,行為障害を引き起こすことがある.このような疼痛には組織損傷時に生じる疼痛とは別のメカニズムが関与していることが指摘されている.そこで,疼痛を分類し,現在まで解明されてきているメカニズムを根底におき,低出力レーザーが作用しうる状況を述べる.

超音波治療の鎮痛・創傷治癒メカニズムと臨床応用

著者: 青木一治 ,   上原徹

ページ範囲:P.177 - P.182

 1938年6月22日ベルリンのMartin-Luther病院で坐骨神経痛の女性に使用されたのが,超音波が最初に治療用に用いられた記録であるとされている1,2).しかし,超音波の最初の大規模な応用は,第二次世界大戦中のSONAR(水中音波探知)であった.超音波の短いパルスを水中に発進し,その反射波が探知器に到達する時間から物の存在や距離がわかるため,このパルス―反射波テクノロジーは画像診断への応用につながった2,3).当初のSONARは探知しやすいように強度の高い超音波を使用していたため熱くなり,水中の生物に影響することがわかった.これが生体組織の加温という特定の目的を持つ臨床用超音波装置の開発に結びついた.温熱作用として腱,靱帯,筋膜などのコラーゲン含有量の高い組織への加温があり,臨床場面では深部加熱療法として用いられてきた.その後超音波には非温熱効果もあることがわかり,非温熱効果をもたらす低強度のパルス超音波は組織治癒を促進し,炎症を緩和し,経皮薬の浸透を強めることが報告されるようになった3)

 2001年,Bakerらは1975~1999年に超音波治療について報告された英語論文35編を調べ,そのうちランダム化比較試験(RCT;randomized controlled trials)は10編で,その中で有効であったのは2編のみであったと報告した4).この2編の示す疾患は,手根管症候群と肩石灰沈着性腱炎であった.このように,EBM(evidence based medi-cine)に則した面からの有効性は2疾患だけであった.しかし,超音波療法においては周波数,時間照射率,強度,治療時間,照射面積,ストローク頻度,媒介物質など,設定すべき組み合わせが多岐にわたるため,その組合せは一様ではない5).超音波が治療用に用いられて65年,この間研究方法を問わなければその研究報告は膨大な数にのぼる.それでも統一した結果が出されないのは,設定すべき項目が多いことも関与するのであろう.しかし,超音波が他の物理療法機器に比べ,有効性を発揮する治療機器であることは明らかである.それゆえ治療対象となる疾患の拡大が期待できる物理療法の一つであるため,設定とそれに適する疾患の抽出に関する研究が今後も必要である.今回は比較的明らかとされている,鎮痛・創傷治癒効果について述べる.

中周波電気治療の神経ブロック効果と臨床応用

著者: 田舎中真由美

ページ範囲:P.183 - P.188

 物理療法における電気刺激療法の中で疼痛に対して適応されるものには,主に低周波帯域のTENSと中周波帯域の干渉波療法がある.このTENSに関しては多くの報告がなされているが,干渉波療法は臨床で非常に高い頻度で使用されているにもかかわらずその報告は少ない.

 干渉波療法に関しては,中周波帯域の周波数を利用しているが,単独で使用するというわけではなく,周波数の異なる2つのサーキットを交叉させることにより,生体内に低周波帯域の周波数を生み出すものがほとんどである.この干渉波療法もシステムの一部に中周波の連続的な刺激による神経ブロック効果を利用している.

電流知覚閾値を用いた疼痛評価機器の臨床応用―ニューロメーターの実際と課題

著者: 伊藤義広

ページ範囲:P.189 - P.195

 慢性的に痛みをもつ患者から病歴や症状を問診していると,ときに懐疑的になることがある.治療者としてなぜこのような思いにとらわれるのか考えてみると,ほかの理学的検査に比べて「痛み」が主観的情報の代表的なものであり,さらに環境や心理的要因の介入も大きいからである.実際,主訴の多くは痛みであり,いかに効果のある治療であっても患者自身が鎮痛を自覚できなければ有効な治療とはならない.しかしその評価はつまるところ患者の訴えに帰結する.国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)では疼痛を「組織の実質的ないし潜在的な傷害と関連した,あるいはこのような傷害と関連して述べられる不快な感覚的,情動的体験」と定義されている.つまり「痛み体験」そのものが「痛み」なのである.

 疼痛刺激は受容器への侵害刺激としてはじまり知覚神経を経由して体性感覚野で認知される.知覚神経の機能は表11)のとおりAβ線維,Aδ線維,C線維に分けられている.この知覚神経の機能を日常臨床で客観的かつ簡便に評価できれば,疼痛評価としての意義は大きい.そこで本稿ではAβ線維,Aδ線維,C線維それぞれの電流知覚閾値(current perception threshold:CPT)を測定する検査とその具体的な実施例を紹介し,理学療法の疼痛評価手段としての臨床的な意義について述べる.

とびら

当たり前ということ

著者: 濱岡健

ページ範囲:P.155 - P.155

 理学療法士になってから,とんでもない経験が2回ありました.一つは阪神大震災を直接体験したこと,もう一つはインドに1週間ほど滞在したときのことです.

 阪神大震災からはや9年が経過し今でも思い出すのは,皆様もご存知ですが,この世に起きたとは全く想像できない建物の倒壊,火災,自宅や財産,家族を不幸にして失った被災された方々を目の当たりにしたことです.当時住んでいた社宅は半壊し,住める状態ではなかったため,私はしばらく病院に寝泊りしました.これから先どうなるだろうかと毎日が不安で,職場での勤務がなければ,早くここから逃げ出したいくらいでした.復興が進むにつれ,電気,ガス,水道のライフラインをはじめ交通機関,物流,通信など,普段の生活に欠かせないものが,どんなに大切かを思い知らされました.

講座 患者(家族)対応・3

福祉施設・在宅における対応

著者: 備酒伸彦

ページ範囲:P.197 - P.201

 そもそも私たちの仕事は対人サービスが中心なので,当然,先方との関係性が前提となる.気をつけておきたいのは,この関係性は,こちらから先方への一方向的なものではなく,あくまでも相互関係であるということである.

 関係性が一方的なものであれば,それを良好なものにするのは比較的簡単である.笑顔を振りまき爽やかな対応を心がければ,まずは合格点ということになる.

理学療法の現場から

理学療法実施記録の保管場所

著者: 林秀俊

ページ範囲:P.202 - P.202

 「医科点数表の解釈」(社会保険研究所平成14年4月版)は,「リハビリテーションに関する記録は,患者ごとに同一ファイルとして保管され,常に医療従事者により閲覧が可能であるようにすること」とし,また「病院機能評価 統合版新評価項目 解説集」(財団法人日本医療機能評価機構 平成14年5月)では「記録は患者情報の一元化の観点からできるだけ診療録(以下,カルテ)と一体化された管理が望ましい」としている.

 当院では,平成14年4月,診療報酬改定が行われた際にスタッフと話し合い,実施記録を病棟にあるカルテと一体化することにした.

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

身体障害者手帳

著者: 日下隆一

ページ範囲:P.203 - P.203

 身体障害者手帳とは,身体障害者福祉法(以下,法)に定める身体障害者の証明書であり,視覚,聴覚,平衡機能,音声・言語機能,咀嚼機能,肢体不自由(上肢,下肢,体幹,脳原性運動),心臓機能,腎臓機能,呼吸器機能,膀胱・直腸機能,小腸機能のそれぞれについて,一定程度以上の永続する障害がある方に対して交付される.したがって,身体障害者とは,「身体障害者福祉法別表」に掲げる身体上の永続する障害がある者であって,都道府県知事または政令指定都市の市長から身体障害者手帳の交付を受けた者をいう.

 この身体障害者手帳は,法の規定により,1級から6級(7級は手帳交付なし)までの等級がある.等級によって異なるが,手帳が交付されると,①施設入所,② 更生医療,③補装具の交付,④世帯更生資金・身体障害者更生資金の貸付,⑤自動車運転免許取得費の助成,⑥重度心身障害者(児)介護手当の給付,⑦日常生活用具の給付,⑧ JR等の旅客運賃の割引,⑨ラジオ・テレビの受診料の減免,⑩所得税・住民税の控除などの援助が受けられる.理学療法士に関係の深いものとしては,補装具の交付や日常生活用具の給付の他に,施設入所や厚生医療などとの関わりもあるが,MSWなどが勤務していないところでは,税制上の優遇措置(所得税の障害者控除,特別障害者控除,同居特別障害者扶養等控除/住民税の障害者控除,特別障害者控除,同居特別障害者扶養等控除/住民税の障害者等の非課税限度額/自動車税,軽自動車税,自動車取得税の減免),1種,2種によって割引率・人数(介助者)が異なるが公共料金の割引(自動車税,軽自動車税,自動車取得税の減免/有料自動車道路/JR/航空旅客運賃割引飛行機),障害者控除(身体障害者手帳の所有者,あるいは手帳の所有者を扶養している場合は,申告により年収から一定の額が控除等)などに対する知識も必要となる.また,重度身体障害者の場合は,身体障害者手帳,自動車運転免許証,自動車検査証があれば駐車禁止除外指定車標章(身体障害者の駐車禁止規制適用除外)取得が可能であるが,昨今では健常者による不正使用が問題となっている実態もある.

学会印象記

―第19回日本義肢装具学会学術大会―利用者のQOLを高める義肢・装具を目指して

著者: 黒後裕彦

ページ範囲:P.204 - P.205

 学会会場へ向かう途中でコンビニエンスストアに立ち寄った.その店の入り口の脇には販売用の薪が山積みされている.このような光景は他の地域ではなかなかみられないのではないだろうか? ここ仙台では秋になると川辺などで鍋を囲む「芋煮会」が盛んに行われる.そのため,芋煮会用の薪が店頭に並ぶのである.芋煮会が盛んに行われる,そんな季節に仙台国際センターを会場とした第19回日本義肢装具学会学術大会が開かれた.

 今回の学会のテーマは「利用者のQOLを高める義肢装具を目指して」である.この分野では,義肢・装具自体の技術の進歩が非常に重要であるが,それと同じくらい大切なことは利用者の側に立つことであろう.なんといっても主役は利用者である.特に義肢・装具は身体に装着する道具であるため避けがたい様々なトラブルがついて回りやすい.それゆえ,利用者の立場を考慮することはなおさら大事であると考えられる.利用者側の視点に立つ重要性をもう一度再認識する機会をもつためにこのようなテーマが設けられたと思われる.

先輩からのエール

心の支え三脚(棒)支持とストレスをつまみに

著者: 瀧野勝昭

ページ範囲:P.206 - P.206

 人は通常2本の脚で身体を支え,移動している.2本の脚は腕と比較して太く逞しい.しかし身体の二脚支持は水平方向から外力が加わったとき,両脚が接近していればいるほど前後左右からの力のいずれにも弱い.前後に開脚していれば横からの力には脆い.左右の開脚では前後からの力に弱点を持っている.三脚,四脚,それ以上の多脚であれば二脚より水平外力に対応力が優れている.しかし四脚以上の多脚は,脚の長さが同一であれば,地面が凸凹の場合いずれかの脚が地面に接触せず不安定になるものだ.それでは三脚はどうだろうか.支持面が不整地であっても必ず全ての脚は着地している.カメラの三脚が良い例で安定した状態で映写機を支えている.

 人の心も同様で,職業を全うしてゆくには心の支えをもつと安定した仕事の一助となるのではないかと思う.私は何時も心の支えとして三脚支持が優れていると思い,脚を棒に置き換えて次の「3つのボウ(棒)」を心に刻んでいる.第1に希望,第2に予防,第3に辛抱である.

入門講座 スポーツ理学療法 ➌

打撲・肉離れに対するスポーツ理学療法

著者: 宮村司

ページ範囲:P.207 - P.215

 打撲・肉離れはスポーツフィールドにおいて最も多発するスポーツ外傷である.サッカー,ラグビーなどのコンタクトスポーツでは,プレーヤー同士の足,膝,腰による衝突で生じる打撲が見られ,特に相手プレーヤーの膝が大腿四頭筋を直撃する筋挫傷(charleyhorse)はコンタクトタイプの代表的な急性軟部組織損傷である.また急性軟部組織損傷のなかで,対人によるコンタクトを受けないノンコンタクトタイプとして,ダッシュやカッティング,ジャンプなど急激なスピード変化による動作変換で筋線維の一部の断裂,あるいは筋膜の断裂などが原因となる肉離れがある.

 今回のスポーツ理学療法については,明らかに筋の断端を触れるような筋断裂についてはその対象としない1~3)

学校探検隊

アットホームで学生中心型の高知医療学院

著者: 板場英行 ,   小野美紀 ,   近藤聡

ページ範囲:P.217 - P.219

学院の概略

 高知医療学院は,昭和53年に開学した理学療法学科単科の専修学校です.今年で開学26年です.高知市の中心部「はりまや橋」より南へ8km,坂本龍馬で有名な名勝「桂浜」の西方2kmの風光明媚な海岸に立地しています.平成12年2月に従来の学舎のすぐ東側に新学舎を建設しました.この新学舎は,ヨーロッパを感じさせるお洒落なピンク色で,この周辺ではひときわ目立つ建物となっています.また,海岸沿いに立地していることから,教室および管理部門など学生・職員等が常時使用する場所を2階に集中し,教室からは四季折々に変化する太平洋を一望できます.

カリキュラムの特徴

 理学療法の基礎から専門分野にわたるカリキュラム構成ですが,学生が積極的,自主的に学業に取り組める授業プログラムを随所に取り入れています.理学療法を理解し,学習意欲を高めることを目的とした早期臨床体験を,同一敷地内にある附属病院を利用して一年次の前期から実施しています.

あんてな

福祉のまちづくりの現状と今後の展望―日本福祉のまちづくり学会の活動から

著者: 澤村誠志

ページ範囲:P.220 - P.223

日本福祉のまちづくり学会の現状と活動について

 福祉のまちづくり学会は,障害の当事者も参加して,土木,建築,医療,福祉,行政,経済など多様な専門領域を統合するかたちで,1997年に「日本福祉のまちづくり研究会」として設立されました.本学会は,市民生活ならびに福祉のまちづくりにかかわる理論,研究および技術の向上と発展に寄与することを目的としています.長年にわたり,ノーマライゼーションの基本思想から,福祉のまちづくりの重要性を説いてこられた一番ヶ瀬康子先生が,初代の会長に就任されたことでもおわかりいただけるように,福祉のまちづくりが単にハード面でのアクセスを中心としたものではなく,ソフト面での障害のある人々や高齢者を含めたすべての人々の人間としての尊厳と権利擁護を目的としております.本学会には,発会以来,建築,土木,住宅,交通,リハビリテーション医療,社会福祉,福祉用具,情報,行政,権利擁護など,極めて多彩な分野におけるリーダーの方々が参加され,当学会をこれまで支えていただいたことを感謝しております.

 本会は,発会後基盤が整備される一方で,研究会の名称の変更や理事会の設置,委員会の強化,学術団体としての基盤強化などに伴う会則変更が必要となり,2001年に,本会の名称を研究会から“日本福祉のまちづくり学会”に変更しました.同時に,本会の積極的な活動を迅速に方針決定する機関として,理事会を新設致しました.本学会は,上記の目的を達成するために,福祉のまちづくりの理論ならびに研究および技術の向上に関する調査研究,研究大会・講演会・研修会および見学会などの開催,情報の交換,広報宣伝ならびに会報,その他印刷物の刊行および国際協力などの事業を行っております.これらの事業を行うために,総務委員会(藤井直人委員長),事業委員会(秋山哲男委員長),広報委員会(相良二郎委員長),論文委員会(新田保次委員長),会誌編集委員会(小山聡子委員長),国際委員会(川内美彦委員長)などを設置しております.

第39回 日本理学療法学術大会の企画

著者: 星文彦

ページ範囲:P.225 - P.227

きてけさい!!

 「きてけさい」は仙台の方言で,「来てください,いらっしゃい」を意味します.もう一つ同じような意味で「ござい」という言葉があります.これはおばあちゃんが孫を呼ぶときに「おいで」というような意味で,親しみのある,身内で使う言葉です.「みんな,ござい!!」.

 仙台の5月は,新緑がさわやかで,杜の都にふさわしい季節です.三陸の幸も出始めるころで,温泉も豊富で身も心も癒されることと思います.ぜひ,日ごろの疲れを癒しにござい.

報告

Quick stretchを加えた等速性筋力トレーニングによる筋力増強の効果

著者: 逸見聖史 ,   工藤寛教 ,   佐々木誠

ページ範囲:P.228 - P.231

 固有受容性神経筋促通法(proprioceptive neuro-muscular facilitation;以下PNF)は神経筋作用を賦活することを通じてパフォーマンス能力を高める効果を持ち,1940年代後半に医師のH. Kabatと理学療法士のM. Knottによって始められた治療法である1,2).この一つの手技であるquick stretchは運動に際して活動する神経細胞数を増加させ,即時的に筋力を増大させることが知られており,quick stretchを加えて等尺性運動を行うと,この手技を加えない以上に筋力増強の効果が得られることが証明されている3,4).しかしPNFを通じて神経筋活動を賦活させることでパフォーマンス能力を向上させようとする場合,等尺性運動よりもダイナミックな状況下での効果を証明することが必要と考えるが,等速性運動での効果については検討がなされていない.

 そこで,quick stretchを加えた等速性筋力トレーニングを一定期間行うことによって,通常の等速性筋力トレーニングを行った時と比較してさらなる筋力増強がみられるかについて検討し,若干の知見を得たので報告する.

文献抄録

体重懸垂下トレッドミル歩行中の時間,距離因子および運動学的変化

著者: 寺西利生

ページ範囲:P.232 - P.232

トレッドミルと可変体重懸垂装置の併用は,神経学的損傷を有する被験者の歩行を促通すると報告されている.しかし,臨床における体重懸垂(以下BWS)レベルの選択は,最も健常歩行に近い運動を産み出したという主観的な判断に基づいていた.本研究の目的は,健常者のトレッドミル歩行時にBWSによって誘発される変化を調査することである.対象は,17人(男性8人女性9人)の学生ボランティア(24.3±3.4歳)であった.

方法

 被験者は,最小,10%,30%,50%および70%BWSの5条件下で,1.25m/sの速度でトレッドミル(Quinton Model Q-65,Quinton Instrument社,Bothell,WA)上を連続的に歩行した.

COPD患者における三角筋の二重の形態的変化

著者: 加賀順子

ページ範囲:P.232 - P.232

 本研究はCOPD患者の三角筋の構造的変化を評価する目的で行われた.

 対象はCOPD患者14名(FEV1=22~74%)とコントロール群14名(FEV1=83~121%)で年齢は61±13歳であった.方法は,身体計測,栄養状態,肺機能検査,呼吸筋機能,三角筋の筋力測定および筋生検を実施した.各データの平均と標準偏差を求め,値の分布に関してKolmogorov-Smirnov testを,COPD患者とコントロール群との関係についてはノンパラメトリックMann-Whitney U-testを,その他に回帰直線とSpearmanの順位相関を用いた.

異なる指鼻試験プロトコールによって評価される企図振戦

著者: 藤井浩一

ページ範囲:P.233 - P.233

 指鼻試験(FNT)は,上肢協調性運動の評価のために使用される検査であり神経学的検査の一つである.しかし一般に受け入れられる標準化された検査プロトコールがない.今回の研究は上肢の位置や指が鼻に固定している時間が異なるFNTと機能的作業の関連性を企図振戦評価スコアにて調査した.

 対象者は多発性硬化症患者26名(平均年齢44.1歳)であった.

急性期リハビリテーション実施患者の膝伸展力と立ち上がり動作自立との関係

著者: 中島雅美

ページ範囲:P.233 - P.233

【背景と目的】

 椅子からの立ち上がり動作能力の可否は,日常生活の自立の面からみて重要である.本研究は標準的な椅子からの立ち上がり動作を自立して行うにはどれくらいの膝伸展力が必要かを決定するために実施した.

【対象と方法】

 対象は急性期のリハビリテーションを受けている患者107名(男性:女性=55:52,平均年齢62.1±16.4歳,平均体重76.7±25.3kg,平均身長168.6±11.4cm)であった.

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編集後記

著者: 鶴見隆正

ページ範囲:P.242 - P.242

 昨日は節分.家族の健康と幸福を願って多くの家庭で豆まきが行われたことでしょう.しかし,ここ数年来の児童虐待件数の増加を憂慮していましたが,先般の大阪府下での中学生餓死状態の報道には衝撃を受けました.「児童は人として尊ばれ,社会の一員として重んぜられ,良い環境の中で育てられる」という児童憲章の精神をいま一度かみしめる必要があります.次の時代を担う子どもたちの生活環境,教育環境が「これでいいのか」と,高齢者,障害児・者のimpairment,activity,participationを支援する理学療法界が,物申す姿勢をもつことが重要です.その行動が,人に優しい高齢社会を創る第一歩になると考えます.まさに濱岡氏が「とびら」で述べられているように,当たり前の行動のできる人,社会であってほしいものです.

 さて今月号の特集は「物理療法の鎮痛作用」です.物理療法に関する新しい動向としては,ハード面の機器開発に伴う鎮痛作用の追究と物理療法機器の法制化です.鎮痛作用を検証するには客観性,再現性を踏まえた疼痛評価,分析法が基本となりますが,昨秋の第11回日本物理療法学会では疼痛に関する基礎,臨床研究の一般演題20題,EBMと物理療法に関する特別講演など,理学療法士による研究が着実に積み重ねられている状況を拝聴し,物理療法は「我々の手で」という熱いものを感じました.EMC(electro magnetic compatibility:電磁両立性)の法制化とは,電磁波などを発生する物理療法機器を対象に2007年を目途に世界的な規格化が実施され,規格外の機器の生産販売が禁止されます.このため現有の機器使用まで影響を受ける可能性があり,理学療法界はEMCの動向を把握した対応を早急に取り組む必要性を感じます.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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