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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル38巻3号

2004年03月発行

文献概要

特集 物理療法の鎮痛作用

超音波治療の鎮痛・創傷治癒メカニズムと臨床応用

著者: 青木一治1 上原徹1

所属機関: 1NTT西日本東海病院整形外科

ページ範囲:P.177 - P.182

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 1938年6月22日ベルリンのMartin-Luther病院で坐骨神経痛の女性に使用されたのが,超音波が最初に治療用に用いられた記録であるとされている1,2).しかし,超音波の最初の大規模な応用は,第二次世界大戦中のSONAR(水中音波探知)であった.超音波の短いパルスを水中に発進し,その反射波が探知器に到達する時間から物の存在や距離がわかるため,このパルス―反射波テクノロジーは画像診断への応用につながった2,3).当初のSONARは探知しやすいように強度の高い超音波を使用していたため熱くなり,水中の生物に影響することがわかった.これが生体組織の加温という特定の目的を持つ臨床用超音波装置の開発に結びついた.温熱作用として腱,靱帯,筋膜などのコラーゲン含有量の高い組織への加温があり,臨床場面では深部加熱療法として用いられてきた.その後超音波には非温熱効果もあることがわかり,非温熱効果をもたらす低強度のパルス超音波は組織治癒を促進し,炎症を緩和し,経皮薬の浸透を強めることが報告されるようになった3)

 2001年,Bakerらは1975~1999年に超音波治療について報告された英語論文35編を調べ,そのうちランダム化比較試験(RCT;randomized controlled trials)は10編で,その中で有効であったのは2編のみであったと報告した4).この2編の示す疾患は,手根管症候群と肩石灰沈着性腱炎であった.このように,EBM(evidence based medi-cine)に則した面からの有効性は2疾患だけであった.しかし,超音波療法においては周波数,時間照射率,強度,治療時間,照射面積,ストローク頻度,媒介物質など,設定すべき組み合わせが多岐にわたるため,その組合せは一様ではない5).超音波が治療用に用いられて65年,この間研究方法を問わなければその研究報告は膨大な数にのぼる.それでも統一した結果が出されないのは,設定すべき項目が多いことも関与するのであろう.しかし,超音波が他の物理療法機器に比べ,有効性を発揮する治療機器であることは明らかである.それゆえ治療対象となる疾患の拡大が期待できる物理療法の一つであるため,設定とそれに適する疾患の抽出に関する研究が今後も必要である.今回は比較的明らかとされている,鎮痛・創傷治癒効果について述べる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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