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特別寄稿
クライアントの「生きがい・幸せ」をいかに支援するか―理学療法士の社会的責務
著者: 半田一登1
所属機関: 1九州労災病院リハビリテーション科
ページ範囲:P.315 - P.321
文献購入ページに移動 リハビリテーション(以下,リハビリ)の目標あるいは理念として「全人間的復権」という言葉が使われてきた.この言葉には哲学的な響きや宇宙的な意味合いが強く,そのため臨床現場では具体的な目標にならない状態が続いている.「全人間的」という言葉は人間を評価する方法のひとつであるが実際に全人間的な評価が行われている事実を私は知らない.家庭教育にしても学校教育にしても社会にしても全人間的評価は存在しない.あえて全人間的ということを前面に出すのであれば,それは治療の目的というよりは社会改善運動と言って良いのではないだろうか.リハビリ医療は現実の中で具体的な目標を目指す治療のはずであり理学療法然りである.また,「復権」という言葉の意味は一度なんらかの理由でなくした権利を再び得ることである.それでは身体に障害を得たことによって何の権利をなくしたのであろうか.身体の自由をなくしたことによって決して権利の制約を受けるものではないことこそが理念として大切なのである.このように考えてみると「全人間的復権」という言葉は観念的な場では通用しやすいものであるが日常的な臨床現場では非常に不都合である.それらの結果,リハビリ医療の方向性が不透明になり質的低下の一因になっている.
昭和40年に「理学療法士および作業療法士法」が公布されて以来40年近くが過ぎ去った.その間に理学療法士は3万人をはるかに超え,高齢者は巷にあふれ,疾病構造は大きく変化し,不景気で国民の不安感は募るばかりである.クライアントの身体だけではなく心理的にも社会的にも対応する医療がリハビリであるならば時代の変遷の中でリハビリの目標も時代と共に変わることが必要である.そこで,今回はリハビリの新しい目標として「生きがい・幸せ」を掲げることの意味と,それに伴ってクライアントにいかなる理学療法を提供することによって「生きがい・幸せ」に結びつけることができるかを具体的に記述する.
昭和40年に「理学療法士および作業療法士法」が公布されて以来40年近くが過ぎ去った.その間に理学療法士は3万人をはるかに超え,高齢者は巷にあふれ,疾病構造は大きく変化し,不景気で国民の不安感は募るばかりである.クライアントの身体だけではなく心理的にも社会的にも対応する医療がリハビリであるならば時代の変遷の中でリハビリの目標も時代と共に変わることが必要である.そこで,今回はリハビリの新しい目標として「生きがい・幸せ」を掲げることの意味と,それに伴ってクライアントにいかなる理学療法を提供することによって「生きがい・幸せ」に結びつけることができるかを具体的に記述する.
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