icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル38巻8号

2004年08月発行

文献概要

特集 移動動作(分析・介入・介助者への指導)

脳性麻痺を伴う児の移動動作―移動動作獲得改善にあたっての困難性に挑む理学療法を事例から考える

著者: 中徹1

所属機関: 1鈴鹿医療科学大学保健衛生学部

ページ範囲:P.630 - P.639

文献購入ページに移動
人における移動動作とは

 人における移動という行為とは,ある目的を実現するためになんらかの手段を用いて自らの身体全体の空間的な位置を変化させることである.変化させる手段としては自らの身体の運動を使う方法と,主として外部の駆動力による方法がある.「移動動作」と言う場合には前者を指すのが通常であり,独歩を中心に四つ這い移動,ずり這いあるいは座位のままでの座位での移動が含まれるが,手足の不自由な人々の場合は,他者の介助あるいは杖や装具を使用する条件が付帯することもあり,制限された移動動作の段階にとどまることがあり得るであろう.これらの移動動作を本論では,「(独歩などの移動方法)による自力移動動作」,あるいは「(杖や装具などの名称)による歩行」と記すことにする.一方,後者の移動は2種類考えられる.第1は,自ら運動機能を使って乗用車や自転車あるいは車いす・歩行器などを操作することによって得られる移動動作であり,多くの手足の不自由な人々が選択できる移動動作である.これらの移動動作を本論では「移動補助具(移動補助具名)による自力移動動作」と表記する.第2は,それらの移動用具に乗せられて,あるいは他者の全介助によっての移動であるが,重症の運動機能障害を伴う人々は日常的にこの移動に頼らざるを得ない状況にある.この移動を本論では「移動補助具(移動補助具名)による他動的移動」と呼ぶことにするが,誌面の都合で本論では論じていない点を了解していただきたい.以上述べてきた本論で用いる移動および移動動作のカテゴリは筆者がまとめたものであるが,その詳細を表1に示す.

 今日の社会ではバリアフリーの概念が広がりつつあるものの,ハードのレベルですらまだまだ部分的な工夫にとどまっており,ソフトを含めた社会全体のレベルでは自力移動とりわけ独歩が可能であることを前提としてデザインされている傾向がある.このような社会においては杖による歩行や車いすによる自力移動であってもかなりの不利益を感じ,四つ這いによる自力移動が不可能となると他者の援助なしには社会生活が困難であるのが現状である.しかし一方では,脳性麻痺を伴う児など手足の不自由な児たちにとって,移動が可能になるということは,それがどのような移動形態であっても,精神や運動面での発達が促され結果として生活がより多様になるという経験も報告されている1~4)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?