特集 移動動作(分析・介入・介助者への指導)
下肢荷重関節痛患者の移動動作
著者:
嶋田誠一郎1
佐々木伸一1
小川真裕美1
北出一平1
川原英夫1
小林茂1
馬場久敏1
所属機関:
1福井大学医学部附属病院リハビリテーション部
ページ範囲:P.640 - P.648
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下肢荷重関節痛を有する患者では,疼痛に伴う起居・移動動作の困難性を伴う.本稿では,下肢関節痛疾患の代表的なものとして変形性膝関節症(以下,膝OA)と変形性股関節症(以下,股OA)の症例を取り上げる.変形性関節症(以下,OA)の理学療法としては,運動療法,物理療法とともに杖などの歩行補助具の使用や装具療法,生活指導などが挙げられる.オランダの調査では,OA患者の44%が杖などの歩行補助具や装具を使用しているとしており,能力障害や疼痛および年齢に関連した機能障害の程度がそれらの使用状況に影響される可能性が指摘されている1).ここでは,OA患者に対する移動動作能力に即時的な効果の期待できる歩行補助具や装具を使用した場合において,自検例の動作解析により算出した関節運動力学的データを提示することによりその具体的な効果を解説する.
膝関節疾患例
ここでは,T字杖,10mm厚のアーチサポート付シリコンゴム製外側楔状足底板(アーチ付ラテラル;中村ブレイス株式会社),支柱付軟性膝装具(P. O.ゲルテックス;日本シグマックス株式会社,図1a)およびレディメイドの硬性膝装具(OAファンタジー;啓愛義肢材料販売所,図1b)の使用を,疼痛が中等度と重度の2症例で提示する.