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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル39巻10号

2005年10月発行

雑誌目次

特集 急性期に必要な薬物療法と理学療法

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.841 - P.841

 理学療法を安全かつ効果的に進めるためには,正確な病態の理解とともに生活機能の向上を共通の目標とした系統的な介入が望まれます.ことに急性期においては,医師や看護師の処置を十分に理解し,全身にわたる適切なリスク管理のもとで,理学療法を実施することが不可欠です.本特集では,代表的な疾患に対する薬物療法と理学療法について,主として同施設に勤務する理学療法士と医師の共著によって臨床に則した内容をご執筆いただきました.

急性期整形外科疾患に必要な薬物療法と理学療法

著者: 江口清

ページ範囲:P.843 - P.849

疾患や外傷を問わず,リハビリテーション(以下,リハ)の重要性については,医療の一環として早期から関係者すべてが意識していなければならない.このような認識が広まる中で,医療チームの一員として,理学療法士(以下,PT)が治療早期から参加する機会が増えつつある.その際,PTが何を問題とし,どのような理学療法を行っているかを他のチームメンバーが理解する必要がある一方,PT側も現在行われている治療について基本的なことは理解できなければならない.運動器疾患に対する治療は日進月歩であるが,今回は,特に急性期の整形外科疾患に関わる薬剤に焦点をあて,基本的と思われる事項について概説する.

合併症への対応

 1.最近の動向―併存する多数の疾患

 昨今は,整形外科領域でも複数の疾患を持つ高齢者を対象とすることが多くなってきた.急性期治療と言っても,併存する疾患を適切な薬剤や処置により治療管理しなければ,骨関節の問題に辿り着かないことがある.

急性期神経疾患に必要な薬物療法と理学療法

著者: 井上悟 ,   鎌田理之 ,   橋田剛一 ,   松尾善美 ,   阿部和夫

ページ範囲:P.851 - P.856

はじめに

 本稿では急性期の神経疾患に必要な薬物療法と理学療法(以下,PT)について解説する.神経疾患の急性期にPTを行うためには,その神経疾患の病態を理解するとともに,神経内科医が行う薬物療法の内容について理解していることが重要である.特に神経疾患では,薬物療法により神経症状に大きな変化が認められる疾患やPTによる運動負荷量に十分配慮しなければならない疾患もある.

 ここでは,日常臨床現場で理学療法士が介入する可能性の高い代表的な急性期神経疾患(Guillain-Barré症候群,慢性炎症性脱髄性多発根神経炎,多発性硬化症,血管炎症候群,脳炎,重症筋無力症,筋炎)について具体的に症例をまじえながら,薬物療法とPTの実際について解説する.

急性期呼吸器疾患に必要な薬物療法と理学療法

著者: 眞渕敏 ,   笹沼直樹 ,   丸川征四郎

ページ範囲:P.857 - P.864

はじめに

 急性期医療においては,外科的,内科的治療と並行しながら,超早期から積極的な理学療法を行うことが重要とされている.しかし,効果的な理学療法を実施するためには,病態の理解と全身にわたる適切なリスク管理のもとで,他の医療職が実施する処置や療法について理学療法士も理解していることが必要不可欠である.本稿では急性呼吸器疾患として,外科術後,急性肺炎,急性心不全を例に挙げ,薬物療法を含めた患者管理について概説し,必要な理学療法について述べる.

急性期小児疾患に必要な薬物療法と理学療法

著者: 横山美佐子 ,   野渡正彦 ,   上田康久 ,   福島崇義

ページ範囲:P.865 - P.874

はじめに

 近年,出生率が著しく低下している中,新生児・小児医療においての救命率は向上しており,これに伴い理学療法を必要とする症例も増加している.小児の集中治療は新生児がNICU(neonatal intensive care unit),新生児期以降から15歳以下がPICU(pediatric intensive care unit)で展開されているが,当院では1980年代からNICUでの理学療法を導入し,PICUにおいても2002年1月の開設時から理学療法士が介入している.急性期医療では,様々な病態が混在し急速に変化していくため,医師の実施する処置や薬物療法を十分理解し,適切なリスク管理のもとで病態に合わせた理学療法を行うことが重要である.

 本稿では,北里大学病院NICU・PICUにおける薬物療法(表1)と理学療法について,症例をあげながら概説する.

救命救急に必要な医学的処置と理学療法

著者: 木村雅彦 ,   山口芳裕 ,   岡島康友

ページ範囲:P.875 - P.883

はじめに

 生体に高度の侵襲が加わった状態では,多くの臓器,系が通常とは異なる反応を示し,また時々刻々と変化する.臨床現場では病態と治療戦略を把握し,治療の優先順位とその中で理学療法が担うべき役割を理解することが重要である.理学療法の介入に対しても患者の許容範囲は狭いため,即時かつ慎重な判断を求められると同時に,将来を予測した障害を最小化するための理学療法1)をそのつど立案する必要がある.なお本章は本誌1月号の入門講座2)に続く内容として「侵襲」に対する理解を深めるものとお考えいただきたい.

とびら

若い芽を育てる

著者: 峰久京子

ページ範囲:P.839 - P.839

11年ぶりに教壇に立っている.適当な教科書が見あたらず,講義の資料作りに苦慮した11年前に比べると,理学療法士によって書かれたより実践的な書籍や論文が,目を通すのも困難なほどに増えた.また,情報技術の進歩により,パソコンにキーワードを打ち込むだけで瞬時に数多くの情報に繋がるようになった.玉石混淆とも言える情報過多の現代,私たちには知のユーザーとしてTPOに応じて情報を取捨選択するという,さらに質の高い力が必要とされているように思う.

 マイケル・ポラニーは,「知識(knowledge)」という概念を「理論的な知識」と「実践的な知識」に区別し,この2つの側面は互いに類似した構造をもち,両者の存在は解離できないと述べた.さらに,「(文脈をもつ情報である)知識」を「形式知(explicit knowledge)」と「暗黙知(tacit knowing)」とに区別し,形式知からその所有者や状況・文脈を切り離してドキュメントやチャートにしたものを「情報」とした.

学会印象記

―第39回日本作業療法学会―創造力を高め,感性を磨く

著者: 稲垣朋代

ページ範囲:P.884 - P.885

梅雨の最中,6月23日から26日まで第39回作業療法学会が茨城県にて開催された.学会期間中は天候にも恵まれ,連日,真夏のような暑さの中,つくば国際会議場とつくばカピオの2会場には,総勢4000名近い参加者が来場した.私自身,初めての作業療法学会の参加であったが,非常に興味深いテーマがたくさん予定されており,聴講の選択に迷うほどであった.全体の雰囲気など私の感じたことを含め報告する.

 今回の学会テーマは『「生活世界」と「科学の世界」の統合―21世紀の眺望―』で,1日目の夕方から同時開催で5つの教育講演に始まり,最終日の一般市民も参加できる公開シンポジウムで締めくくられていた.特色として,演題登録・査読をホームページから行ったこと,演題の構成をICF分類に統一したこと,学会優秀発表賞,プレゼンテーション技術賞を企画したことが挙げられる.また,特別企画として,作業療法特有の分野である自助具・遊具のコンテスト,つくば市の小・中学校と会議場を結んで,作業療法を含んだ地域における保健・医療・福祉の身近な問題を討論するIT会議が企画されていた.さらに,託児所が設けられており,女性会員への配慮がなされている点にも感心させられた.

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

トレンデレンブルク徴候

著者: 対馬栄輝

ページ範囲:P.887 - P.887

◎トレンデレンブルク徴候とは

 トレンデレンブルク徴候(Trendelenburg sigh)とは「種々の股関節疾患に伴ってみられる理学所見で,患側で片脚起立すると健側の骨盤が患側より下がる症状」と定義1)される.トレンデレンブルクは,この現象が股関節外転筋の機能不全を伴う先天性股関節脱臼症例で観察されることを報告した2).トレンデレンブルクよりも以前の1869年にデュシェンヌ(Duchenne)は,股関節外転筋群の麻痺が原因となって,片脚立位時に患側への体幹傾斜と骨盤の傾斜が起こる現象(デュシェンヌ現象)を報告している3).トレンデレンブルク徴候は股関節疾患に観察され,デュシェンヌ現象は神経麻痺性の疾患に観察されると報告された点が異なるだけで,現象そのものは,ほとんど同一である.

 現在,この2つの現象は,次のように区別されている(図).トレンデレンブルク徴候陽性の場合は,外転筋力の機能不全が存在する下肢で片脚立位となったときに,遊脚側下肢の重量に抗せずに遊脚側の骨盤が墜下する.また,遊脚側への体幹傾斜がみられる場合もある(図b).デュシェンヌ現象陽性の場合は外転筋力の低下している下肢で片脚立位となった時に立脚側へ体幹が側屈し,かつ骨盤傾斜も起こる(図c).

学校探検隊

「わが,国際医療福祉大学保健学部理学療法学科」

著者: 下井俊典 ,   大市剛士

ページ範囲:P.888 - P.889

わが理学療法学科の特徴

 国際医療福祉大学は保健学部,医療福祉学部,そして今年度から薬学部,福岡県大川市のリハビリテーション学部が新設され,4学部11学科からなる医療福祉系の総合大学です.平成7年に開学し,今年で11期生を迎えたまだ新しい大学です.国際医療福祉大学保健学部理学療法学科の大きな特徴として,①ゼミ形式(アドバイザーグループ)による教育,②急性期病院から在宅サービスなどの臨床実習施設を関連施設として有していること,③充実した卒業研究教育,があげられるでしょう.

アドバイザーグループ制度

 まず①ゼミ形式による教育について説明しましょう.本学科は基本的に,1クラス100人の大人数クラス編成です.この大人数クラス編成には,いわゆる「マスプロ授業」になってしまうという短所があります.特に理学療法で重要な,検査,評価手技や介入手技をマスプロ授業で教授,受講することにはどうしても限界があります.そこで本学科では各学年100人のクラスを10名ずつ10班に分け,1~4年の全40名を1つの班として,各班に1名ずつの教員をアドバイザーとして配置したゼミ形式(アドバイザーグループ)を採用しています.このゼミ形式により,マスプロ授業では困難な手技や技術の各論を教授することもできる上に,卒業研究や進路相談など個別の細かい指導もできます.

理学療法の現場から

在宅で楽しむ理学療法士になるために

著者: 浦野幸子

ページ範囲:P.890 - P.890

「靴の脱ぎ方がいい加減!非常識な先生だわ」「電気を勝手につけたからイヤ!」「元気がないからイヤだ」「口調の強い先生はイヤ」「病院の先生の方法と違うから同じにしてほしい」「出した布団をしまって帰らなかった」など,利用者の色々な反応を聞き続けて早5年.しかし,障害を持った「大先輩達」に比べればまだまだ経験は足りない.

 家という場所は,利用者にとって自由な空間であり,われわれは「先生」と呼ばれながらも「はじめまして」の挨拶から始まるただの訪問者だ.1回目で嫌われるとその後の関わりは容易ではない.こんな様々な反応や言葉が耳に入るたびに,「私のどこが? なぜ悪いの?」と思い悩み,「どうにかしなければいけない」「結果を出したい」と気をあせらせ疲れてしまう.病院や施設では味わったことのない利用者からの生の声は,実はもし自分が逆の立場だったら同じことを言っているだろうということに客観的に気づき,素直に受け止められるまでに半年以上かかったような気がする.

入門講座 ICFに基づく評価と記録・2

ICFに基づく評価の進め方と記録

著者: 宮崎哲哉

ページ範囲:P.891 - P.897

はじめに―ICIDHからICFへ

 1980年にWHO(世界保健機関)が「国際障害分類試案」(ICIDH:international classification of impairments, disabilities and handicaps)を作製・出版して以来,その概念はリハビリテーションの世界において広く普及し,障害の理解も深めることとなった.しかしその単一方向的な概念は様々な面で批判的意見を受けるようになり,2001年5月に,「生活機能・障害・健康の国際分類」(ICF:international classification functioning, disability and health)1)が承認されるに至った.しかし本当にICIDHによる障害の捉え方と,ICFによる考え方の間において大きな変化があったのであろうか.われわれはICIDHを用いながらも,単一方向的にのみ障害を分析してきたわけではなく,すでに双方向の影響性を考慮した形へとICIDHの概念を発展させ,評価・治療に取り組んできた(図1).ただし医学的モデルを出発点として社会モデルを指向していたICIDHにおいては,自ずと限界が見えていたのも事実である2).ICIDHの限界点を補充する最終発展型として捉えれば,ICFは理解しやすい.本稿ではそのような視点において,ICFに基づく評価の考え方と記録に関し,臨床上どのように考えるべきかについて述べる.

講座 基礎理学療法学研究方法論・1

社会学的調査による基礎理学療法学研究方法論

著者: 佐藤秀紀 ,   盛田寛明

ページ範囲:P.899 - P.908

理学療法においては,対象となる個人とそれを取り巻く環境などその生活全般に関わる必要がある.したがって,対象とする障害は全般的かつ総合的な概念となる.この考え方は,国際生活機能分類(International Classification of Functioning;ICF)にも反映されている.ICFでは,心身機能・構造(body functions and structures),活動(activities),参加(participation)の各障害レベルを包括する概念として生活機能(functioning)を捉えている.理学療法を実施する際,この生活機能とそれに包括される各障害レベルを重視しつつ,それらの間の相互作用を捉える必要がある.つまり,理学療法が対象とする分野は,社会モデルとしてのパラダイムを持つ.

 社会モデルにおいて,現実の社会集団に生じる諸事象は非定型かつ複雑であるため,その把握が容易でない場合が多い.この混沌とした社会事象を定量的または定性的に把握するうえで有効な手段が社会調査である.社会調査では,複数の場で生じ,かつ反復されることによって一定の共通性や法則性をもつ事象を対象とし,得られた結果には社会的意味づけが必要となる.理学療法では,現象をあまり細分化せずに捉えたほうが現実の姿をよく反映する側面をもつ.社会調査は,何よりも現実の社会事象をありのままに把握しようとし,人間の社会的な生活に即して捉えるものである.

資料 第40回理学療法士・作業療法士国家試験問題(2005年3月6日実施)

模範解答と解説・Ⅳ 理学療法・作業療法共通問題(1)

著者: 伊藤俊一 ,   柏木学 ,   久保田健太 ,   隈元庸夫 ,   佐藤公博 ,   信太雅洋 ,   高倉千春 ,   高橋尚明 ,   田中昌史 ,   田邉芳恵 ,   富永尋美 ,   蛭間基夫 ,   福田修 ,   村上亨

ページ範囲:P.912 - P.917

原著

年代別にみた立位姿勢バランス能力と足底二点識別覚の変化過程

著者: 森岡周 ,   宮本謙三 ,   竹林秀晃 ,   八木文雄

ページ範囲:P.919 - P.926

一般に立位姿勢バランスは,7~10歳1,2)あるいは9~12歳3,4)で成人と同等の制御能を獲得すると言われている.この理由としては,7歳以降になると姿勢制御のための求心性感覚情報を適切に統合することが可能となり5),成人と同じ立位姿勢の制御戦略が獲得されるためではないかと考えられている1).Foudriatら6)は3歳までは視覚優位な立位姿勢制御であるが,その後徐々に体性感覚優位の制御となり,6歳過ぎには成人と同様の体性感覚優位の姿勢制御へと変化することを明らかにしている.これらの研究からは,立位姿勢バランスの発達は,学童期前半にある程度完成するというのが一致した見解といえる.さらに,森岡7)は開眼片脚立位保持能力が幼児期後半から学童期前半にかけて急激に向上し,学童期後半になるとその伸びは少なくなることを報告している.この中では,片脚立位保持時間は直線的に発達するのではなく,ある年齢から急激に発達していく非線形パターンであることが示されている.

 一方,立位姿勢バランスの退行過程では,発達期における視覚優位から体性感覚優位への姿勢制御戦略の変化とは正反対の変化が報告されている8~11).これは,体性感覚情報が極端に減少した条件下では,高齢者は立位姿勢バランスの安定性を維持することが難しく,視覚への依存度が高くなるというものである12,13).すなわち退行過程では,体性感覚優位な姿勢バランス戦略から視覚優位な姿勢バランス戦略へと逆戻りする傾向にある.そして,年齢と片脚立位保持時間においては直線的な負の相関が示されており14),加齢と共に片脚立位保持時間の退行が認められている15)

紹介

脳性麻痺児の障害理解に向けた啓発活動の経験

著者: 米津亮 ,   鶴見隆正

ページ範囲:P.927 - P.930

近年の保健・医療・福祉は生活支援という側面を重要視している.2001年に世界保健機関(WHO)が定めた国際生活機能分類(ICF:International Classfication of Functioning Disability and Health)1)もその1つである.脳性麻痺を主とした小児理学療法領域でも機能障害中心型療育から家族中心型療育が提唱され2),生活支援を重視した方向性に変換しつつある.

 小児理学療法領域での生活支援の視点に沿った理学療法アプローチに関する報告3~5)は散見される程度であるが,障害をもつ児を取り巻く生活環境下での相互交流が十分になしえていないことが指摘されている.児が日中の大部分を過ごす就学という社会参加の場面において,級友・教師ら周囲の人々は児の運動機能・ADL・行動等に理解ができず,どのように関わり支えたらよいのか戸惑っており,児を含めた社会活動(activity)・参加(participation)が活発化されない要因となっている.児の統合教育・ノーマライゼーションという環境をより具現化するためには,理学療法士をはじめとする専門職が積極的に教育の場や地域理解に関わりを持ち,児を含めた級友・教師に共通理解を深める支援が不可欠で,そのことにより社会活動・参加が高まると考えている.

文献抄録

移動とバランスの障害を呈する在宅高齢者への機能的能力に対するホームエクササイズとグループトレーニングの効果 無作為研究

著者: 大澤諭樹彦

ページ範囲:P.932 - P.932

目的:本研究の目的はホームエクササイズ(以下,HT)の効果を検証することと,HTとグループトレーニングを組み合わせることで,HT単独よりも高い効果が得られるのかを検証することである.

 方法:ノルウェーの6地区を無作為に抽出して,研究参加者を募り75歳以上の77名の在宅高齢者(81±4.5歳)を無作為に2群に割り振った.HT群は①いすからの立ち上がり,②爪先立位,③片脚立位スクワット,④立位股関節最大屈曲を各10回,1日2セッション実施した.理学療法士(以下,PT)によるグループトレーニングを併用した群(以下,CT群)は60分のトレーニングを1週間に2回(計24回)と,HT同様の自宅プログラムを実施した.5~8名で構成されたグループトレーニングの内容は,10分間のウォーミングアップ,20分の筋力運動,20分のバランス運動,10分のクーリングダウンである.HT群とCT群とも12週間のプログラムをPTの監督下で実施した.HTの実施頻度と転倒の有無は各人が毎日記録して,月末に調査者へ返送した.機能評価はベースラインと,介入3か月後,9か月後に実施し,転倒回数は1年間にわたり調査した.

参加型調査により改善を図った栄養不良児のホスピタルマネジメント

著者: 工藤俊輔

ページ範囲:P.932 - P.932

目的:南アフリカ共和国における地域病院の重症の栄養不良児に対するホスピタルマネジメントの改善.

 研究デザイン:研究の内容は3つのステージ(栄養不良児のクリニカルマネジメントの評価,ケアの質改善のための行動計画と実際,そして,目標とされた行動の評価とモニタリングの3段階)より構成され,介入前と介入後の比較をインタビュー法や観察法により行った.参加型のアプローチにより調査のすべての段階で地区と病院の栄養チームを巻き込むよう計画された.

有酸素運動後の温冷刺激に対する痛みの知覚

著者: 石田かおり

ページ範囲:P.933 - P.933

目的:最大酸素摂取量(VO2max)の75%のトレッドミル運動を30分間行い,トレッドミル運動直前と終了5分後,および30分後の温冷刺激に対する痛みの知覚について調査する.

 デザイン:被験者内計画

多発性硬化症患者におけるDynamic Gait Indexの信頼性

著者: 野田裕太

ページ範囲:P.933 - P.933

目的:多発性硬化症患者(MS)の歩行中のバランス障害を評価する有効な手段は少ない.Dynamic Gait Index(DGI)は他のバランス評価との関連が報告されているものの,信頼性のある点数の報告は少ない.今回8課題からなるDGIがMS患者のバランス障害を評価する有効な手段であるかを,検者内,検者間信頼性を検討し,6.1m歩行時間と比較することで明確にする.

 方法:拡張総合障害度2.0~6.0のMS患者10人を対象に短下肢装具,歩行補助具使用してのDGIの課題を行う様子をビデオにて撮影した.MS患者の担当経験がある理学療法士(PT)11人(経験年数4.5~13.5年)が2週間の間隔をあけた2回のビデオ視聴によりDGIを採点した.PTはビデオ視聴前に渡されるDGIの評価基準にそって採点し,2回目は対象者を替えて採点した.DGIと6.1m歩行時間の比較,検者間信頼性はPearson相関係数,検者内信頼性はクラス内相関係数(ICC)を用いて統計学的分析を行った.

書評

―鈴木重行 編著,平野幸伸 著―「ID触診術」

著者: 柳澤健

ページ範囲:P.910 - P.910

 1999年に「IDストレッチング」が刊行されて6年余りが経過した.「IDストレッチング」は疼痛抑制や筋緊張低下・関節可動域改善を目的に日本で開発された手技である.この手技の開発者である名古屋大学大学院の鈴木重行教授が,同手技の講演に全国を飛び回っているなかで,「正確なストレッチングを行うには,まずセラピストが個々の筋を正確に触診できることが基本になる」ということを実感したのであろう.このような必然性から本書「ID触診術」が上梓されたと考えられる.

 疼痛抑制やストレッチングを行うには,まず個々の筋を確実に触診できる基本に加え,軟部組織の機能的変化に対する治療では,単に筋触診ができるだけでなく治療部位が同定できる触診術が求められる.言い換えると,触診時の生体反応を触診指で感知しつつ,治療すべき部位とそれ以外の部位とを個別に(ID:individual)認知することが必要とされる.

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編集後記

著者: 内山靖

ページ範囲:P.936 - P.936

 医療とは医学の社会的適用であり,医療者は,対象者や家族のニーズに基づいた共有できる具体的な目標を設定して,各専門職と協力しながら最大限の支援を実施していく.

 このような理念を示された時にこれを否定する医療者はいないであろうが,実際の医療・福祉現場で確実に実施されているかと問われれば,多くの現実的な課題に直面している場合も少なくないであろう.リハビリテーションは,対象者を全人的にとらえて生活機能を機軸とした介入についてチーム医療をとおして展開する代表的な領域である.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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