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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル39巻11号

2005年11月発行

文献概要

講座 基礎理学療法学研究方法論・2

動物を対象とした基礎理学療法学研究方法論

著者: 沖田実1 中野治郎2

所属機関: 1星城大学リハビリテーション学部リハビリテーション学科理学療法学専攻 2長崎大学医学部保健学科理学療法学専攻

ページ範囲:P.1001 - P.1008

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理学療法領域における動物実験の必要性

 一般に,科学の実験,試験,教育,材料採取に動物を利用することを動物実験という.その目的は,①再現性の高い正確な実験の実施,②人体実験の代替,③能率的な実験の実施,などが主である.医科学ならびにその関連領域においては疾病の病態やその発生メカニズムの解明,あるいは新薬の開発やその効果判定など,多岐にわたって動物実験が行われており,その結果から得られた科学的な証拠を基盤に臨床での治療体系が組み立てられている.

 一方,理学療法は疾病そのものの治療ではなく,疾病によって生じた運動障害の機能回復を促すことが主目標であり,例えば,拘縮や廃用性筋萎縮などが治療対象となる.しかし,運動障害に関しては医科学ならびにその関連領域ではこれまでさほど着目されておらず,その病態や発生メカニズムのすべてが解明されているわけではない.すなわち,運動障害の治療に最も深く関わる理学療法士自身が解決していかなければならない重要な課題といえる.ただ拘縮1つをとってもその病態などを解明していくためには対象症例の関節周囲組織が必要となり,現実的には倫理上の問題などもあり,生体組織の採取は不可能に近い.つまり,この代替手段として拘縮の動物実験モデルからの生体組織の採取が行われるのであり,動物実験は理学療法領域においても不可欠となってきている.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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