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高齢者と若年者における段差昇段時の拇趾・踏面間距離について
著者: 相馬正之1 吉村茂和1 宮崎純弥1 山口和之2 舟見敬成2
所属機関: 1東京都リハビリテーション病院理学療法科 2財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院リハビリテーションセンター理学療法科
ページ範囲:P.1019 - P.1022
文献購入ページに移動高齢者の転倒は,身体的な損傷を引き起こすと同時に,再転倒に対する恐怖心から活動の制限や歩行の不安定性を助長させる原因のひとつとなっている.高齢者においては,転倒の発生率が17.7~19.8%であり,転倒の原因がつまずきであることが多い1,2).つまずきについては,平地歩行中に起こる内的要因に起因する場合と突出した障害物や段差につまずく外的要因に起因した場合のいずれかが推測される.
内的要因に起因すると推測される平地歩行中の最小足尖・床間距離の報告は,1~3.2cmの範囲にあり足尖部の挙上が低い値を示すことで一致し3~5),さらに西澤ら6)は,最小足尖・床間距離に加齢の影響が認められなかったと報告している.しかし高齢者においては,若年者と比較し,最小足尖・床間距離に差は認められないものの,ばらつきが大きく最小足尖・床間距離が低下している歩行周期が存在しているとの報告もあり,つまずく可能性が示唆されている7).一方,外的要因に起因するつまずきについては,環境と身体の適応が不十分なときに生じやすいとされている.そのため障害物や段差を越える際には,課題に対してclearanceを調整する随意的制御が重要になると考えられる.Clearanceと随意的制御の関係について中條ら8)は,若年者を対象にtoe clearanceが障害物の高さに伴い有意に増加し,複雑な制御が行われていることを報告している.このように障害物を越える際のclearanceの報告は散見される9,10)ものの,段差昇降時のclearanceに着目した報告は認められない.
本研究の目的は,高年者と若年者における段差昇降時の拇趾・踏面間距離に着目し,段差昇段時の随意的制御について検討することである.
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