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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル39巻12号

2005年12月発行

雑誌目次

特集 ボディイメージ

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.1035 - P.1035

 理学療法の実践場面で,「対象者のボディイメージがよくない」と言われることがあります.脳損傷の場合には,重力への適応不全,身体知覚に対する自己認識の歪みなどを表現する用語として使われていますが,文字通りそのイメージは伝わるもののメカニズムや正確な重症度を問われると曖昧な部分が少なくありません.

 他方,ボディイメージという用語は,精神科領域,看護学領域,体育学の領域などでも使われています.本特集では,この用語のもつ意味について神経科学および現象の両側面から広く検証し,理学療法の発展に寄与しようとする狙いをもっています.

理学療法とボディイメージ

著者: 小澤佑介

ページ範囲:P.1037 - P.1042

リハビリテーション領域の臨床場面で「この症例はボディイメージが悪い」などの表現がよく聞かれるが,意味や定義などが曖昧なまま使用されている印象を受ける.根拠に基づく医療(evidence based medicine:EBM)を実践するにあたり,1つの用語に対してセラピストが共通の認識で論議していくことが重要であると感じている.

 ボディイメージという用語は類似語も多数見受けられ,定訳も未確立であるのが現状といえる.本稿では筆者なりにボディイメージと周辺用語についてまとめ,臨床的知見による捉え方と障害像,理学療法領域におけるボディイメージの可能性についても論ずる.

脳とボディイメージ

著者: 泰羅雅登

ページ範囲:P.1043 - P.1051

はじめに

 最近の研究によると,脳内には3種類の身体再現(body representation)があると言われている.1つはボディスキーム(body schema)で,様々な感覚入力(深部感覚,皮膚感覚,前庭感覚,視覚,運動指令の遠心性コピー)を利用して,脳内に体部位の動的な再現がなされている.したがってこの脳内再現は運動系との関連が深い.2つめは,体部位構造記述(body structural description)と呼ばれ,主として視覚情報による体部位の脳内再現があると考えられている.この脳内再現の障害は,自分であれ,他人であれ,その身体の部位を言い当てることができない自己身体部位失認(autotopagnosia)の症状として現れる.3つめの脳内再現はボディイメージ(body image)あるいはボディセマンティクス(body semantics)と呼ばれるもので,体部位の名前,機能などの語彙・意味の脳内再現があると考えられている.また,脳損傷例から,体部位構造記述とボディイメージあるいはボディセマンティクスは左側頭葉に,ボディスキームは前頭-頭頂連合野連関にそれぞれ機能局在していると考えられている.本稿では,頭頂連合野との関連で,この分類でいうところのボディスキーム,特に手の運動に関する神経基盤について述べる.

空間識とボディイメージ

著者: 高橋正紘

ページ範囲:P.1053 - P.1058

はじめに

 ボディイメージは,「空間や重力環境に対する自己の姿勢や運動の認知あるいは感覚」を意味するものであろう.空間識は自己に対する外界空間の認知や感覚を指すので1),ボディイメージとはコインの裏表の関係である.まず理解を助けるのに相応しい,いくつかの例を紹介したい.

 健康者はベッド上で右や左に体軸を回転移動しても,ベッド面は空間的に水平に保たれ,自分が空間内を移動すると感じられる.では,両側の前庭器(三半規管,耳石)の機能を失うと,どのような感覚が生まれるだろうか.第二次世界大戦後のひと時,結核の特効薬,硫酸ストレプトマイシン(ストマイ)が大量に使用され,多くの人が前庭機能を消失した.貴重な体験が患者である医師により報告されている2)

 若い医師が関節結核を疑われ,3か月あまり連日硫酸ストマイを注射された.ある日,洗顔中に突然立てなくなり,激しいめまい,吐き気,嘔吐を経験する.数日間ベッド上安静を強いられるが,ベッド上で寝返りすると,ベッドが自分の身体の周りを回った.起立可能になって,廊下をゆっくりと歩いてみる.動かないはずの廊下が,まるでビニールチューブのように,くねくねと左右上下に揺れてしまった.

 異常感覚は次第に軽快したが,眼を閉じると起立は不安定で,発症後1年以上を経ても改善しなかった.ベッドが身体の周囲を回る感覚こそ,前庭機能消失に伴う典型的なボディイメージであろう.なぜこの現象が前庭機能消失者で起こり,健康者には起こらないのだろうか.この疑問の解消が本稿の目的の1つである.

 健康者にも姿勢や移動の異常な感覚は生まれる.体操競技の床運動や吊り輪で,競技者は複雑な宙返りを実演する.この際,宙返り中に自分の姿勢が判らなくなると,必ず着地に失敗する.練習を重ね,速い動作中の姿勢や移動が判るようになると,着地に成功する.同様の現象はフィギィアスケートの空中スピンでも起こる.あまりに速く連続して回転すると,感覚情報が制御に追いつかず,姿勢をコントロールできなくなる.

 ごく普通の環境でも,異常な感覚やバランスの崩れは経験される3).例えば車や船の移動で揺すられると,乗り物酔いとして吐き気や身体の不安定が起こる.無重力空間滞在初期には,移動中に宇宙酔いが起こる.体操選手の着地失敗や乗り物酔い,宇宙酔いは,同じ原理で説明可能である.これらがなぜ起こるか,日常生活では通常なぜ起こらないかを,以下に解説する.

運動とボディイメージ

著者: 橋本公雄 ,   内田若希 ,   船橋孝恵

ページ範囲:P.1059 - P.1064

はじめに

 人は生涯における身体的な発達に伴い,体型,外見,バランス,機能の変化とともに身体に対する意識も変化する.児童期には身体の大きさや強さが急速に変化し,身体に対する気づきが高まり,青年期には性的機能の促進がみられ,より“女性らしさ・男性らしさ”を求めるようになる.中高年期では外見の変化と体力の低下がみられ,これらの身体的変化を否定する気持ちと,受け入れようとする気持ちの葛藤が生じる.

 このように,身体あるいは身体的変化とそれらに対する意識はすべての世代の人々に関わるものであり,そこに自己概念の一部としてのボディイメージの問題が存在する.ボディイメージは,身体の内的・外的感覚からなるイメージであり,触覚や筋感覚刺激に結びつく活動によって発達する1).健全なボディイメージを有する人は,自分の身体の形や大きさについて正確に知覚し,肯定的な感覚と思考を持ち,これらの評価に基づく方法で行動する.しかし,逆に否定的な自己評価を有するとボディイメージ障害となり,異常な行動へと連動する場合も少なくない.もちろん,このようなボディイメージは身体的変化だけではなく,メディアや文化的な影響,さらには個々人が参加する活動などの影響を受けて形成されることは言うまでもない.

 運動・スポーツへの参加は身体的変化をもたらし,健康やパフォーマンス発揮と関連するために,運動・スポーツ心理学研究でもボディイメージやこれに類する心理的概念は研究対象となっている.そこで本稿では,運動・スポーツ心理学の研究領域におけるボディイメージの概念,変容のメカニズム,評価法,そして運動・スポーツとボディイメージの変容について概観する.

看護とボディイメージ

著者: 前川厚子

ページ範囲:P.1065 - P.1071

ボディイメージとは何か

 近代ボディイメージ研究の創始者として知られるSchilder(1935)は“ボディイメージとはその人の心の中に映った心像(心理的事象)である”と定義している1).ステッドマン医学大辞典では,ボディイメージすなわち身体図式は頭頂葉皮質に組み込まれたすべての身体感覚の大脳への投射と表現し,実際に解剖学的見地からみた身体や他の人からみた身体の概念とは異なり,自分自身の身体についての概念(ボディシェーマ)であるとしている.また,看護研究者のWood(1975)は“ボディイメージは身体そのものが受ける影響に応じて変動する動的概念である”としている2).そしてSmith(1984)は“私たちはそれぞれが自分自身のボディイメージを持っている.このイメージは生まれたときに作られ,成長するに従って,様々に形成されていく”と述べている3).Piaget(1958)は,子どものボディイメージは生まれたときには白紙の状態であるが,乳児期に親やまわりの人々が与える影響によって形あるものになっていくことを示している.絶え間ない世の中の刺激を固有の体験として取り込みながら新たな概念を形成していく.すなわち,ボディイメージは自分の身体に関連する知覚と経験によって形成され,刺激との相互作用のなかで常に修正されていく動的概念であり,固定化したものではないことを示している.つまり,ヒトが人間として成長発達していくときに,ライフステージの諸段階で自分自身の特有な体験に基づき,感覚・感性に届く内的,外的刺激とその反応から脳裏に焼き付けられ,変換される自己の鏡像である.あたかも,自分の認識している“自分の姿”が鏡に映っているように見えるのであるが,身体状況の変化に伴って調整が加えられ,シネマフィルムやビデオテープのように前向きに流れていくものと考えられる.

 一方,生涯にわたり連続的に変化していくボディイメージのファジーな現象は,本質的に個人のみが認知しうる体験・知覚・態度であり,複雑で抽象的な側面を持つために,決定的な解釈がしにくく,それを明確に定義することは現段階では難しい.とりわけ,精神医学や生理学,臨床心理学,看護学,社会心理学など多方面のアプローチからボディイメージの理論が創生されていることを見ると,これからの学際的な研究ゾーンに位置づけられる分野と考えられる.

とびら

星になった理学療法士

著者: 長嶺英博

ページ範囲:P.1033 - P.1033

その理学療法士(以下,PT)は,どことなく芸能人の所ジョージに似た風貌で,いつも周りの人たちを笑わせていました.そして,繊細で正義感が強いとても心優しい人でした.そんな働き盛りの44歳のPTが,今年の3月に突然この世を去りました.彼が寝ている間に,彼の心臓は突然鼓動を止めてしまったのです….

 今年も残り少なくなりましたが,皆さんにとって今年はどのような1年でしたか? 残念ながら私自身は,これまで関わりの深かった方々との辛い別れが,例年になく多い年となりました.

資料 第40回理学療法士・作業療法士国家試験問題(2005年3月6日実施)

模範解答と解説・Ⅵ 理学療法・作業療法共通問題(3)

著者: 伊藤俊一 ,   柏木学 ,   久保田健太 ,   隈元庸夫 ,   佐藤公博 ,   信太雅洋 ,   高倉千春 ,   高橋尚明 ,   田中昌史 ,   田邉芳恵 ,   富永尋美 ,   蛭間基夫 ,   福田修 ,   村上亨

ページ範囲:P.1073 - P.1078

1ページ講座 理学療法関連用語~正しい意味がわかりますか?

Cobb法

著者: 峰久京子

ページ範囲:P.1081 - P.1081

◎Cobb法とは:側彎とは何らかの原因で,前額面において脊柱が側方に彎曲した病態である.脊柱のX線側彎計測法には,Cobb法とRisser-Ferguson法とがある.Cobb法はScoliosis Research Society(SRS)が主唱している計測法で,Cobb法で計測された角度はCobb角として表される.

◎側彎の範囲の決定:側彎のX線撮影は,全脊柱と骨盤の上1/2が入るように長尺フィルムが用いられ,初診時には立位での正面像と側面像,必要に応じて臥位や側方屈曲した正面像が撮影される.

学校探検隊

出会いの学び舎

著者: 福島龍二 ,   駒場章一 ,   安達佳輝 ,   指宿立 ,   武田知樹 ,   吉原理恵子 ,   興梠貴美恵 ,   新納真子

ページ範囲:P.1082 - P.1083

History―あゆみ

 市内中心街の一角にこぢんまりと建つ大分リハビリテーション専門学校は,大分県初の理学療法士養成校として1993年4月に設立されました.1995年に作業療法士科,2001年には言語聴覚士科開設と各学科の充実を図りながら,リハビリテーションにおける医療専門職の育成を進めています.中でも理学療法士科は,今春第10期生がこの学び舎から巣立ち,本校の歴史を考える上で大きな1つの節目を迎えました.

 また近隣には本校の母体である学校法人平松学園が運営する他の医療福祉系専門学校(6校6学科)ならびに短期大学・高等学校・幼稚園・ビジネススクール等があり,朝夕多くの学生が行き交う華やいだ雰囲気は,学校周辺の日常的な特徴の1つとなっています.

入門講座 ICFに基づく評価と記録・4

症例報告書にICFの概念を取り入れてみよう

著者: 浅川育世

ページ範囲:P.1085 - P.1092

はじめに

 臨床実習において症例報告書の作成を課題とする理学療法士養成校は多いものと思われる.一般に症例報告書はケースレポートやケースサマリーとしてまとめられる.また,時期によって初期・中間・最終評価時報告書とも呼ばれる.本稿ではこれらを総称して「症例報告書」として扱うこととする.症例報告書の作成を臨床実習に課すことの主な目的は,症例の把握や実施した理学療法を客観的に点検・評価すること,実習を通して体験的に学んだ総合的な知識等を記述するという作業により確実な知識とすること,症例や実施した理学療法の内容を正確・簡潔に第三者に理解できるように表現するとともに記録する方法を学ぶことなどが挙げられる1).つまり,症例報告書を作成するということは,理学療法士になるための登竜門といっても過言ではない.また科学的根拠に基づく理学療法(evidence-based physical therapy;EBPT)という観点から見れば,その基礎を構築するための大切な作業とも言えるのではないだろうか.

 世界保健機関(WHO)が2001年に採択した国際生活機能分類(国際障害分類改訂版:international classification of functioning, disability and health;ICF)は,従来の国際障害分類(international classification of impairments, disabilities, and handicaps;ICIDH, 1980年)において指摘されてきた種々の反省を踏まえ提起されたもので,今日のリハビリテーション実践において急速に普及してきている.従来のICIDHは,臨床実践において職種を越えた共通の障害概念を提起するものであった.理学療法士教育においても,障害像の理解に寄与する考え方として積極的に導入が試みられ,臨床実習の際に重要な課題となる症例報告書においても本モデルに従い障害像を整理することが指導されてきた.新たに提起されたICFが普及しつつある今日,改めて障害モデルを基礎に症例報告書を作成することの意義,ならびにICFを基礎にする上で従来のICIDHとの相違点を整理し,症例報告書のまとめ方にどのように反映させていくかを明確にすることが必要と考える.

 以上のことを踏まえ本稿では,症例報告書にICFの概念を取り入れることの意義,ならびに具体的な応用方法について私見を述べていきたい.

講座 基礎理学療法学研究方法論・3

ヒトを対象とした基礎理学療法学研究方法論

著者: 松尾善美

ページ範囲:P.1093 - P.1099

はじめに

 ヒトを対象とした基礎理学療法学研究は,基礎医学を含む幅広い基礎学問に基づいて実施される必要がある.健常者の運動学・運動生理学に関連した分野では,狭義の運動学(kinematics),運動力学(kinetics)に加え,神経生理学,運動生理学などに分類できる.

 神経系理学療法では,古くは下等動物の制御機構や臨床観察を出発点にし,集積されてきた経験に基づいて組み立てられた運動発達学や運動制御,運動学習,認知再教育などによって神経学的障害を解釈し,これまでアプローチを行ってきた.図1は,Umphredが1990年に示した図を改変したものであり,神経系理学療法の基礎となっている基礎科学と1970~80年代までの発展およびその後の未来を示している1).われわれ理学療法士は,これまでどのように基礎理学療法学の学問構築を行ってきたのであろうか? 理学療法の発展には,基礎理学療法学の発展が必要不可欠であり,経験則を基にした理学療法だけではなく,理学療法介入のアウトカム研究とともに動物実験,電気生理学あるいは画像所見などによる基礎理学療法学の最新の成果に基づく臨床介入の発展性が問われている.本稿では,筆者がこれまで他研究者とともに関わってきた計算理論による運動制御について,生体の運動モデル研究の内容を紹介しながら,基礎理学療法学研究方法論を紐解いて行きたい.

報告

脳卒中片麻痺患者における市販体重計を用いた下肢荷重力評価の検討

著者: 村田伸 ,   大田尾浩 ,   有馬幸史 ,   溝上昭宏

ページ範囲:P.1101 - P.1105

緒言

 脳卒中片麻痺患者(以下,片麻痺患者)の下肢機能評価には,従来からBrunnstromステージ(以下,Br.ステージ)や上田の12グレード片麻痺機能テスト(以下,12グレード)が用いられてきた1).しかし,理学療法アプローチなどによって,基本動作能力や歩行能力の改善が認められても,Br.ステージや12グレードが改善されない場合が少なくない.また,その評価法自体,検者の経験に左右されたり,検者の主観的な判断に委ねられる場合も考えられる.動作能力の改善を機能レベルに反映させるためには,機能評価を定量的に行うことが求められる2)

 近年,片麻痺患者の下肢機能を定量的に評価し,歩行能力との関連や歩行の予後予測に用いた研究2~7)が散見されるようになった.しかし,その測定には等速性筋力測定機器や重心動揺計など,高価な測定機器を使用しているため,測定できる臨床現場は限られている.

 そこで筆者らは広く臨床応用が可能で,リハビリテーション専門職のみならず,介護スタッフでも簡単に下肢機能を評価できる方法(簡易下肢機能評価法)の開発を目的に研究を進めた.本研究はその1つの取り組みとして,片麻痺患者を対象に,座位姿勢において下肢で地面を最大限に押す力を下肢荷重力として,市販体重計を用いて定量的に評価し,その測定値の信頼性と妥当性について検討した.

 今回,信頼性はテスト―再テスト法による再現性から評価した.信頼性の検討には,精度,再現性,整合性を確認する方法8)が用いられるが,下肢荷重力測定値の安定性と状態依存性を主に検討することが重要であったため,テスト―再テスト法を採用した.また,測定値の妥当性は構成性,基準関連性(併存性),予測性を確認する方法8)が用いられるが,今回は併存的妥当性から評価した.すなわち,片麻痺患者の下肢機能を評価する指標として汎用されているBr.ステージ,歩行速度,Activities of Daily Living(ADL)との関連性から検討した.

文献抄録

肥満の子供や年少者に対するトレーニングプログラム“OBELDICKS”の評価

著者: 佐々木誠

ページ範囲:P.1106 - P.1106

目的:肥満の子供や年少者におけるトレーニングプログラムの評価はあまりなされていないが,有効性を証明し,治療様式を改善するために必要である.

 対象と方法:われわれは,132名の子供や年少者(平均年齢;10.7±2.4歳)を対象に,医学会ならびにドイツ肥満研究会が開発した基準に基づいた身体運動,栄養教育,行動療法からなる外来でのトレーニングプログラム“OBELDICKS”を,1年間実施し,その有効性(体重減少の程度,合併症と健康行動の改善,副次的な悪い効果の最小化)について検討した.さらにわれわれは,外来トレーニング終了2年後に体重超過の程度をbody mass indexの標準偏差スコア(SDS-BMI)で分析した(n=60).

臨床家の治療選択は非特異的腰痛に対してマニュアルセラピーの治療成績を改善しているか? メタ分析

著者: 籾山日出樹

ページ範囲:P.1106 - P.1106

目的:メタ分析により臨床家が治療技術を決定する裁量を有している場合と,いない場合とで治療期間と痛み,活動制限について調査し,非特異的腰痛(NSLBP)へのマニュアルセラピー(MT)の成果を定量的に比較した.

 対象と方法:調査は2003年8月にCINAHL,EMBASE,MEDLINE,the Physiotherapy Evidence Database(PEDro),the Cochrane Controlled Trials registerなどのdata baseから抽出したMTに関する研究論文とその参考文献,LBPのRCTsのレビューを調査した.288の関連文献を表題と要旨により65文献まで選別し,さらに除外基準に照合し55文献が除外された.除外基準は,痛みと活動制限の標準平均差が不適当,PEDroのQuality Rateが3以下,効果判定できない,effect sizeの算出が不適切,であった.Effect sizeはCochrane Collaboration Revman(ver4.2)のsoftwareにて算出された.MTの効果は痛みと活動制限について検討された.治療期間が3週未満とそれ以上で,臨床家が治療技術を決定する裁量の有無に分けてメタ分析した.

糖尿病患者における活動量変化と足底潰瘍再発との関係

著者: 植木琢也

ページ範囲:P.1107 - P.1107

背景および目的:糖尿病患者の足底潰瘍に対しては除圧処置が有効であるとされているが,実際には潰瘍の再発をみることも多い.この症例報告の目的は,物理的ストレス理論(physical stress theory;PST)の見地から,足底への荷重活動の急激な変化が糖尿病患者の足底潰瘍再発に与える影響について検討することである.

 症例紹介:66歳男性.身長180cm,体重121.5kg.16年前より糖尿病に罹患し,末梢神経障害,左足底潰瘍の合併症があった.足部保護のため靴型装具と短下肢装具を併用していたが,18か月前より左足底潰瘍が再発した.

アレキサンダー法を施行し姿勢の自動調整に改善がみられた腰痛症の1症例

著者: 熊谷香緒

ページ範囲:P.1107 - P.1107

背景と目的:腰痛症患者は,身体の協調した動きや,随意的な運動などのいわゆる姿勢の自動調節に問題があるといわれている.しかしながら姿勢の自動調節の異常と腰痛症の関係については明確ではない.

 アレキサンダー法(alexander technique;AT)は,姿勢の自動調節やそれに伴う筋活動を変化させるための過程を意図的に行うことによって,姿勢を調節する機能を高めることを目的としている.またATが腰痛症を軽減させるという報告もなされている.この症例報告では,腰痛症患者にATによる治療介入を行い,姿勢の自動反応と腰痛の程度の変化を観察し報告する.

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編集後記

著者: 内山靖

ページ範囲:P.1112 - P.1112

 ある学問領域を確立しようとする場合の諸条件を挙げる際には,必ず専門用語の存在が問われます.厳密な定義づけによって共通した概念形成を行い,それらを共有することが学問としての発展と普及に不可欠であることを物語っています.

 何かを共有することは,社会生活を営むうえでなくてはならないものです.理学療法士は対象者のニーズを十分に理解し,目標を共有することで,対象者を支援することが初めて可能になります.人と人とが分かり合えたと感じる際に共有しているものは,言語化した概念のみでなく共通世界に存在するイメージが重要になってきます.医療面接においても言語的なコミュニケーションは,全体の35から40%程度と言われており,醸し出す雰囲気やちょっとした仕草から感じられる非言語的コミュニケーションが重要となります.感じ取ることや気づくことは医療者にとって最も重要な実践能力の1つであり,一朝一夕に身につくものではありませんが,漠然と経験を積むだけで習得されるものでもありません.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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