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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル39巻12号

2005年12月発行

文献概要

入門講座 ICFに基づく評価と記録・4

症例報告書にICFの概念を取り入れてみよう

著者: 浅川育世1

所属機関: 1日本工学院専門学校

ページ範囲:P.1085 - P.1092

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はじめに

 臨床実習において症例報告書の作成を課題とする理学療法士養成校は多いものと思われる.一般に症例報告書はケースレポートやケースサマリーとしてまとめられる.また,時期によって初期・中間・最終評価時報告書とも呼ばれる.本稿ではこれらを総称して「症例報告書」として扱うこととする.症例報告書の作成を臨床実習に課すことの主な目的は,症例の把握や実施した理学療法を客観的に点検・評価すること,実習を通して体験的に学んだ総合的な知識等を記述するという作業により確実な知識とすること,症例や実施した理学療法の内容を正確・簡潔に第三者に理解できるように表現するとともに記録する方法を学ぶことなどが挙げられる1).つまり,症例報告書を作成するということは,理学療法士になるための登竜門といっても過言ではない.また科学的根拠に基づく理学療法(evidence-based physical therapy;EBPT)という観点から見れば,その基礎を構築するための大切な作業とも言えるのではないだろうか.

 世界保健機関(WHO)が2001年に採択した国際生活機能分類(国際障害分類改訂版:international classification of functioning, disability and health;ICF)は,従来の国際障害分類(international classification of impairments, disabilities, and handicaps;ICIDH, 1980年)において指摘されてきた種々の反省を踏まえ提起されたもので,今日のリハビリテーション実践において急速に普及してきている.従来のICIDHは,臨床実践において職種を越えた共通の障害概念を提起するものであった.理学療法士教育においても,障害像の理解に寄与する考え方として積極的に導入が試みられ,臨床実習の際に重要な課題となる症例報告書においても本モデルに従い障害像を整理することが指導されてきた.新たに提起されたICFが普及しつつある今日,改めて障害モデルを基礎に症例報告書を作成することの意義,ならびにICFを基礎にする上で従来のICIDHとの相違点を整理し,症例報告書のまとめ方にどのように反映させていくかを明確にすることが必要と考える.

 以上のことを踏まえ本稿では,症例報告書にICFの概念を取り入れることの意義,ならびに具体的な応用方法について私見を述べていきたい.

参考文献

1)進藤伸一:臨床実習終了時のケースレポートの書き方.PTジャーナル31:345-349,1997
2)大川弥生:WHO国際障害分類を障害者のための臨床現場にどういかすか.PTジャーナル36:21-26,2002
3)障害者福祉研究会編集:ICF 国際生活機能分類―国際障害分類改訂版―.中央法規,2002
4)上田 敏:評価にいかすICF―「プラスの診断学」とは何か―.PTジャーナル36:507-511,2002
5)上田 敏:ICFの基本的な考え方―生活機能(プラス面)の重視と階層論的理解を中心に―.PTジャーナル36:271-276,2002
6)大川弥生:介護保険サービスとリハビリテーション.中央法規,2004
7)日本理学療法士協会(編):臨床実習教育の手引き.4版,日本理学療法士協会,2000
8)網本 和:ケーススタディの書き方.鶴見隆正(編):標準理学療法学―臨床実習とケーススタディ―,pp90-95,医学書院,2001
9)上田 敏:リハビリテーションを考える,青木書店,1983
10)大川弥生:理学療法プログラムに生かすICF(2)―リハビリテーション・プロセスへの患者・家族の主体的関与・決定―.PTジャーナル36:696-703,2002
11)独立行政法人国立特殊教育総合研究所 世界保健機関(編):ICF活用の試み―障害のある子どもの支援を中心に―.ジアース教育新社,2005
12)Cieza A et al:ICF core sets for chronic widespread pain. J Rehabili Med 44:63-68, 2004
13)Cieza A et al:ICF core sets for chronic low back pain. J Rehabili Med 44:69-74, 2004
14)Dreinhofer K et al:ICF core sets for osteoarthritis. J rehabili Med 44:75-80, 2004
15)Cieza A et al:ICF core sets for osteoporosis. J Rehabili Med 44:81-86, 2004
16)Sucki G et al:ICF core sets for rheumatoid arthritis. J Rehabili Med 44:87-93, 2004
17)Cieza A et al:ICF core sets for chronic ischemic heart diseae. J Rehabili Med 44:94-99, 2004
18)Ruof J et al:ICF core sets for diabetes mellitus. J Rehabili Med 44:100-106, 2004
19)Stucki A et al:ICF core sets for obesity. J Rehabili Med 44:107-113, 2004
20)Stucki A et al:ICF core sets for obstructive pulmonary diseases. J Rehabili Med 44:114-120, 2004
21)Brach M et al:ICF core sets for breast cancer. J Rehabili Med 44:121-127, 2004
22)Cieza A et al:ICF core sets for depression. J Rehabili Med 44:128-134, 2004
23)Geyh G et al:ICF core sets for storoke. J Rehabili Med 44:135-141, 2004
24)原口健三他:ICFは臨床実習に活かせるか? ―ICFによる症例研究指針(モデル案)―.リハビリテーション教育研究9:9-11,2004
25)丹羽敦他:ICFの概念をとり入れた臨床実習への試み―第1報 臨床実習指導者へのアンケート調査より―.リハビリテーション教育研究9:12-16,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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